機動戦士ガンダム とあるアクシズの超電磁砲 宇宙世紀0088 最強のニュータイプは妹達を救うため、指先一つで宇宙世紀の歴史を貫く 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
宇宙世紀0088年。小惑星基地アクシズ。
今日はネオ・ジオンの建国を祝う「盛夏祭」。基地の居住区には巨大なホログラムの旗がたなびき、いつもは殺風景な軍事施設も今日ばかりは華やかな祭典の会場へと姿を変えていた。
あたし、エルピー・プルは、ステージ裏のハンガーで、特別な式典用塗装が施されたキュベレイMk-IIのコクピットにいた。
「ねえミリィ、やっぱりあたし、バイオリンなんて柄じゃないよ! 操縦桿握ってる方がずっと落ち着くもん!」
「何を言っているんですか。今日のメインイベントは、プルさんのバイオリン演奏と、キュベレイのバイオ・センサーを連動させた『感応波(サイコウェーブ)発光実演』なんですから。これはアクシズ住民に、強化人間の力が『平和のためにある』と示す大事な広報任務ですよ」
ミリィ・チャイルドが移動指揮官機のコンソールから、あたしの機体とステージの音響システムをリンクさせる。彼女は今日、あたしの奏でる旋律に合わせて、キュベレイのバイオ・センサーから溢れる光を制御する演出担当だ。
「お姉様! 私(わたくし)のゲーマルクも、背景で愛のプレッシャーを放出する準備は万端ですわ! さあ、アクシズの天使の輝きを見せて差し上げなさい!」
隣のドックでは、キャラ・スーンがこれまた派手な電飾を施したゲーマルクに乗り込み、やる気満々でプレッシャーを垂れ流している。
「プル、緊張すんなよ。リィナも楽しみにしてるんだからさ」
観客席の最前列で、ジュドーが手を振っているのがモニター越しに見えた。あたしは小さく深呼吸をして、バイオリンを手に外へ出た。キュベレイMk-IIの巨大な掌が、あたしのためのステージだ。
あたしは弓を引いた。
旋律が響き渡ると同時に、ミリィがバイオ・センサーの同調率を上げていく。
あたしの心が音に乗るたび、キュベレイMk-IIの肩部バインダーから、青白い光の粒が蛍のように舞い上がった。それは、強化人間の感応波を視覚化した、この世で最も美しい「サイコ・フィールドの輝き」だった。
(……ああ、みんなの心が伝わってくる)
バイオ・センサーを通じて、観客席にいる人たちの喜びや、束の間の安らぎが流れ込んでくる。戦うためのサイコミュが、今はただ、みんなを笑顔にするための光に変わっていた。
けれど、その光の向こう側。あたしのセンサーは、アクシズの闇に潜む、冷たくて鋭い「もう一人のあたし」……プルツーの視線を一瞬だけ捉えた。彼女は、この温かい光をどう見ているんだろう。
演奏が終わると、アクシズの空を埋め尽くさんばかりの拍手が沸き起こった。
「プルさん、大成功です! 感応波の波形も、今までで一番安定しています!」
ミリィの声が弾む。キャラも興奮してゲーマルクのメガ粒子砲を(空砲で)空に向けてぶっ放し、イリアさんに後でこっ酷く怒られることになるんだけど、今はどうでもよかった。
宇宙世紀0088年。
戦争が日常のこの場所で、あたしたちは一晩だけの奇跡を見た。
兵器であるはずのキュベレイMk-IIが、あんなに優しく光ったことを、あたしは一生忘れない。
「ジュドー! あたしの演奏、最高だったでしょ!」
あたしはキュベレイの掌から飛び降り、仲間の元へと駆け出した。
あたし、エルピー・プル。
いつかこの光が、アクシズを飛び出して、宇宙(そら)の全部を包み込む日まで、あたしは歌って、戦って、走り続けるんだから!