機動戦士ガンダム とあるアクシズの超電磁砲 〜あたしはニュータイプ、指先ひとつで宇宙世紀を撃ち抜く電撃使い〜 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
助けを呼ぶ声は、いつだって、いちばん静かなところから聞こえる。
宇宙世紀0088年。サイコミュ共振の調査権を検体保護部隊に奪われ、あたしたちジャッジメント第7支部には待機命令が下されていた。あたし、エルピー・プルは、第7支部の屋上で、ミリィ・チャイルドと並んで星の見えない人工の空を見上げていた。
「ねえミリィ。テレスティーナって女の人、どうしても信じられない。あいつの放つプレッシャー、ローレン先生とは全然違う……冷たくて、嫌な感じがするんだ」
「プルさん……。私も調べました。あの検体保護部隊、表面上は事故調査が目的ですが、予算の出所は軍の第13開発局——ニュータイプ研究所の直轄なんです」
ミリィが差し出した端末には、驚くべき事実が記されていた。あたしと同じ顔の妹達を何十体も生み出したのは、ネオ・ジオンの幹部グレミー・トト。ザビ家の血を継ぐと自称する彼が、自分だけの“親衛隊”を欲した野心の産物だった。テレスティーナは、そのグレミーに取り入った強化人間技術者の血筋。彼女がやっているのは、共振を止めることじゃなく、グレミーの妹達を借り受け、自分の理論で兵器システムに磨き上げることだったんだ。
その時、キャラ・スーンが、避難誘導を終えて血相を変えて飛び込んできた。
「お姉さま、大変ですわ!わたくしのセンサーが、軍の極秘回線を傍受いたしました!テレスティーナは、プル・シリーズ全機の脳を並列化し、アクシズ全域のサイコミュを強制制御する“最終起動”を、まもなく実行しますわ!しかも——その最後の1ピースとして、原型(オリジナル)であるお姉さまの脳を、ネットワークの“中枢”に組み込むつもりですのよ!」
キャラの報告に、全身に電気が走る。あたしを、妹達を縛る鎖の、いちばん太い鎖にするつもりだ。
「……上等じゃない。あたしが中枢になれば、内側から、全部の鎖を断ち切れるってことでしょ」
「お姉さま!?そんな、危険すぎますわ!わたくし、お止めするのが治安維持局(ジャッジメント)の務め——」
「キャラ。今日だけは、その決め台詞で、あたしを止めないで。……あたし、あの子たちの声が聞こえるんだ。ずっと泣いて、助けを呼んでる。姉さんが、行かなきゃ」
キャラは、ぎゅっと唇を噛んで、それから、涙目で敬礼した。「……かしこまりました。ならばわたくしは、命に代えても、お姉さまの帰る場所を守りますわ」
——その時。屋上の通信端末に、暗号化された短いメッセージが2通、届いた。1通目は、プルツー。
『……姉さん。第5層へ、来ないで。姉さんを中枢にすれば、ネットワークは、完成する。……わたしは、姉さんまで、道具にされるのは、いや。……だから、来ないで。わたしのことは、いいから』
2通目は、ジュドー。
『プル。俺のΖガンダム、いつでも出せる。妹を助けてくれたお前の妹を、今度は俺が助ける番だ。……無茶するなよ。お前は、1人じゃない』
「……ばか。2人とも、ばか。妹に『来ないで』なんて言われて、引き下がる姉が、どこにいるのよ。潜入者に心配される電撃使いが、どこにいるのよ」
あたしは端末をぎゅっと握った。あたしのバイオ・センサーは、もう迷わない。暗闇の奥に囚われた、何十人もの妹達の声を目指して、あたしは真っ直ぐに駆け出した。
「……待っててね。今、みんな、迎えに行くから。1人残らず、あたしの妹だもん」