機動戦士ガンダム とあるアクシズの超電磁砲 〜あたしはニュータイプ、指先ひとつで宇宙世紀を撃ち抜く電撃使い〜   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

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レベル6

数字をひとつ上げれば、人は幸せになれる。そんな話を、あたしは信じない。

 

第5層の旧型サイコミュ試験場は、入口からして妙だった。警備用の無人機が通路を塞いでいるのに、攻撃してこない。ただ、あたしが右へ動けば右へ、左へ動けば左へと、同じ間隔を保ってついてくる。

 

「こっちの動き、読まれてる?」

 

『プルさん、無人機の制御信号が調整槽のある区画から出ています』

 

ミリィの報告に、操縦桿を握る手が強張った。壁の向こうで眠る子たちの感応波を、機械の目として使っているんだ。無人機を壊せば、その負荷があの子たちへ戻るかもしれない。

 

「キャラ、撃たないで。まず、みんなを安全な場所へ逃がして」

 

『承知しましたわ。お姉さまも無茶はなさらないで』

 

キャラのR・ジャジャが避難路の隔壁を支える。あたしはキュベレイMk-IIを無人機の前で止め、バイオ・センサーの出力を落とした。攻撃する気がないと伝わるかはわからない。それでも、誰かの声を聞くには、こちらが静かになるしかなかった。

 

無人機の列が一瞬、揺れた。通信に、かすれたノイズが混じる。

 

『……いたい』

 

「聞こえた。ミリィ、今の声、どの調整槽から?」

 

『複数です。信号が混ぜられていて、まだ特定できません』

 

奥の扉が開き、制御盤の前にテレスティーナが現れた。画面には被験者の名前ではなく、出力の数字だけが並んでいる。

 

「これだけの演算能力を使って、ようやく次の段階が見えるのよ」

 

「あの子たちが痛がってるの、聞こえないの?」

 

「装置の反応よ。あなたが気にする必要はないわ」

 

あたしは言い返すより先に、調整槽の列を見た。ひとつの波に押し込められていても、脈拍はひとりずつ違う。指を握り返すこともできないまま、あの子たちはここにいる。

 

『プルさん、制御盤を急停止すると調整槽の維持装置も落ちます。回線を一本ずつ切り離します』

 

「お願い。あたしは、逆流しないように見てる」

 

そのとき、無人機の一機があたしの進路へ飛び出した。避ければ、後ろの避難路へ向かう。あたしは機体を横にして通路を塞ぎ、装甲で衝撃を受けた。警告音が鳴る。

 

『お姉さま、機体が損傷していますわ!』

 

「平気。あの子たちに返る衝撃より、こっちで受けたほうがいい」

 

言い終える前に、もう一度ぶつかってきた。操縦桿が手の中で跳ねる。怖くないわけじゃない。でも、ガラスの向こうの子たちは、逃げることさえ選べない。あたしには、まだ選べる。

 

『切り離しの順番、決まりました。いちばん負荷の高い回線からです』

 

ミリィの声を聞き、あたしは息を整えた。焦って力を出せば、同じことを繰り返してしまう。速さを競うんじゃない。誰も置いていかないために、ひとつずつ進むんだ。

 

ミリィの指示に合わせ、あたしはバイオ・センサーを受信に切り替えた。強い声を送るんじゃない。途切れそうな声を、どこへ戻せばいいのか確かめる。最初の回線が切れたとき、無人機が一機、膝をついた。

 

『負荷、低下。次に進めます』

 

二本目、三本目。テレスティーナが別の操作を始めると、キャラが機体を制御盤との間へ滑り込ませた。

 

『こちらはお任せを。お姉さまは、その子たちを』

 

「うん」

 

あたしはガラス越しに呼びかけた。

 

「聞こえる? あたしはプル。あんたたちを数字で呼びたくない。起きたら、呼ばれたい名前を教えて」

 

返事はない。けれど最後の回線が切れたとき、あの『いたい』という声は消えた。調整槽の維持灯は、ひとつも落ちていない。

 

「終わった、の?」

 

『装置は止まりました。ただ、容体の確認はこれからです』

 

あたしは操縦桿から手を離した。勝ったとは言えない。あの子たちはまだ眠っている。それでも、もう誰かの数字を上げるために、苦しい声を出さなくていい。

 

試験場を出る前、あたしは記録画面をもう一度見た。空欄のままの名前が、ずらりと並んでいた。目を覚ましたら、ひとりずつ聞こう。好きなものも、嫌いなものも、どこへ行きたいかも。あたしが決めるんじゃなく、あの子たち自身の言葉で。




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