機動戦士ガンダム とあるアクシズの超電磁砲 〜あたしはニュータイプ、指先ひとつで宇宙世紀を撃ち抜く電撃使い〜 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
深夜、あたしたちは、〝ダークサイド〞の入り口にたどり着いた。旧式の重い扉が、不気味に口を開けている。
「……行こう」
「はい、お姉さま」
内部は、想像していたよりも広く、複雑な構造をしていた。無数の古い実験装置が、埃をかぶったまま並んでいる。壁のあちこちには、旧ネオ・ジオン時代の警告標識が、色褪せたまま残されていた。
「……この奥に、テレスティーナがいるはず」
『プルさん、施設の中枢に、強い反応があります。……覚醒装置の起動シーケンス、既に七割まで進行しています』
ミリィの緊迫した声。あたしたちは、足を速めた。
道中、幾つかの警備ロボットが立ちはだかったが、キャラとジュドーの連携で、次々と無力化していった。
「お姉さま、この先です!」
「うん、行こう」
施設の最深部にたどり着くと、そこには、数十人もの人々が、まるで眠るように意識を失って、ケーブルにつながれていた。
「……これ、まさか」
「覚醒儀式の、被験者たちよ」
背後から、聞き覚えのある声。振り返ると、テレスティーナ・ライフラインが、恍惚とした表情で立っていた。
「……テレスティーナ……!」
「あら、また会えたわね、エルピー・プル。……今夜は、特別な夜よ。この施設に眠る古い技術で、新たなニュータイプの群れを、覚醒させる」
「無理やり覚醒させたら、心が壊れるって、知ってるはずでしょう……!」
「知っているわ。でも、それがどうしたの? 犠牲は、常に必要よ。……〝革命〞には、痛みが伴うもの」
その言葉に、あたしの中で、怒りが煮えたぎった。
「……こんなの、革命でも何でもない。ただの、暴力だよ」
「感傷的な物言いね。……でも、もう遅いわ。装置は、じきに起動する」
装置全体が、不気味な光を放ち始めた。あたしは、迷わず走り出す。
「止める……!」
「無駄よ。……今度こそ、あなたを排除する」
テレスティーナが合図すると、影から、複数の武装兵士が現れた。
「お姉さま、こちらは私たちにお任せを……!」
キャラが、素早く前へ出て、兵士たちを次々と無力化していく。ジュドーも、機体整備で鍛えた腕っぷしと勘だけを頼りに、装置の配線を力ずくで引きちぎっていった。
「……よし、これで一部の回路は止めた」
「ジュドー、ありがとう……!」
あたしは、装置の中枢へ向かって突き進む。だが、テレスティーナが、あたしの前に立ちはだかった。
「……ここから先には、行かせない」
「テレスティーナ、あんたは、何度もこんなことを繰り返して……いい加減、気づいて。あんたのやってることは、誰も救わない」
「うるさい……! 私は、ニュータイプ研究の未来のために……!」
「未来のためって言うなら、目の前で苦しんでる人たちを、まず助けるべきでしょ……!」
あたしの怒りが、限界に達した。指先に、これまでで最大級の電流を集める。
「──これで、終わりにする」
放たれた渾身の一撃が、テレスティーナの周囲を取り囲んでいた防御フィールドを、真正面から打ち破った。
「な、っ……そんな、馬鹿な……!」
テレスティーナが、その場に崩れ落ちる。装置の起動シーケンスも、同時に強制停止した。
静寂が、施設全体を包んだ。夜明け前の、静かな決着だった。
「……終わった」
あたしは、その場に座り込みそうになりながら、そう呟いた。だが、まだ完全に終わったわけではない。テレスティーナの背後には、まだ大きな組織の影が、残されたままだった。
イリアが、崩れた瓦礫の合間から、駆け寄ってきた。
「プル……! 無事なのね」
「うん、なんとか。……被験者の人たちも、無事に保護できたと思う」
「よくやったわ。……あとは、私たちに任せて」
イリアの部下たちが、意識のない人々を、次々と丁寧に運び出していく。あたしは、その様子を見守りながら、ようやく肩の力を抜いた。
「お姉さま、お怪我はありませんか」
「うん、大丈夫。……キャラの方こそ」
「私も、平気ですわ。ただ、少し、腕が痺れていますけれど」
「無理してたんじゃない」
「お姉さまのためですから、当然です」
その頼もしい言葉に、あたしは思わず笑ってしまった。夜明け前の薄暗い施設の中に、久しぶりの穏やかな空気が流れていた。
ミリィが、端末を操作しながら、報告を続けた。
「プルさん、保護された方々の容態、確認できました。……幸い、全員、意識を取り戻す見込みだそうです」
「よかった……本当に、よかった」
あたしは、その場に、へなへなと座り込んだ。緊張の糸が切れて、身体中から、力が抜けていく。
「お疲れ様でした、お姉さま」
キャラが、隣に座り込み、優しく肩を貸してくれた。
「……ありがとう、キャラ」
ジュドーも、少し離れた場所で、額の汗を拭っていた。
「……いやあ、まさか、俺の右手がこんなに役立つとはな」
「あんたのおかげで、装置の一部を早く止められた。……本当に、助かったよ」
「ま、そのために来たんだからな」
その飾らない言葉に、あたしは、あらためて、この仲間たちの心強さを噛みしめていた。
夜明けの光が、施設の入り口から、静かに差し込み始めていた。長い夜が、ようやく終わろうとしていた。