機動戦士ガンダム とあるアクシズの超電磁砲 〜あたしはニュータイプ、指先ひとつで宇宙世紀を撃ち抜く電撃使い〜 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
イリアの計らいで、あたしたちはネオ・ジオン内部の非公式な調査権限を得た。標的は、ローレン・ナカモトの研究拠点。
「見つけた。......居住区外縁、旧採掘プラントの地下」
ミリィが解析した座標を、あたしとキャラ、そしてイリアで確認する。
「相当に警戒が厳重ね。防犯ネットワークは独立系。ハッキングは、私の腕をもってしても時間がかかるわ」
「時間、あるの......?」
「稼ぐしかないでしょうね」
移動中、キャラが、あたしの隣で、珍しく緊張した面持ちを見せていた。
「お姉さま。......今回の任務、正直、恐ろしいです。ローレンの発想は、常軌を逸しています」
「うん。......でも、放っておけない」
「わかっています。私も、お供します」
ミリィの通信が、緊迫した声で割り込んだ。
『プルさん、施設周辺の警備配置、確認できました。......予想以上に厳重です。おそらく、内部で何か大掛かりな作業が進行中だと思われます』
「大掛かりな作業......」
『はい。電力消費量が、通常の何倍にも跳ね上がっています』
イリアが、険しい表情で頷いた。
「急ぎましょう。......手遅れになる前に」
現地に到着すると、廃プラントの地下は不気味なほど静かだった。壁一面に、無数のケーブルとカプセルが並んでいる。カプセルの中には──あたしと同じ顔をした、幼い少女たちが、眠るように浮かんでいた。
「......これが」
声が出なかった。何十体、何百体という「妹」たちが、ただの部品のように並べられている。
「壮観だろう?」
聞き覚えのある、冷ややかな声。ローレン・ナカモトが、白衣をひるがえして現れた。
「これが、私の傑作──プル・シリーズ、大量生産ライン。ひとつひとつが、君と同じ波長を持つ〝演算装置〞だ」
「......こんなの、生きた人間を、部品扱いするなんて」
「部品? いいや、これは救済だよ。この子たちは、選ばれし者としてこの世に生を受けた。......ただし、量産される定めとしてね」
ローレンは、機械のパネルを操作した。壁一面のモニターに、複雑な回路図と、都市全域のマップが浮かび上がる。
「レディオノイズ。プル・シリーズの感応波を束ね、増幅させ、都市中の非能力者にニュータイプの資質を〝分配〞する装置だ。......むろん、負荷に耐えられない個体は、脱落する」
脱落。その言葉の意味を悟り、あたしは奥歯を噛んだ。子どもたちが、死ぬということだ。
「......許さない」
「許す許さないの問題じゃない。これは、もう始まっている計画だ。テレスティーナが、既に必要な〝素材〞を集め終えている頃だろう」
その時、地下施設の奥から、テレスティーナ・ライフラインが姿を現した。腕には、怯えた様子の子どもを一人、抱えている。
「あら、賑やかだこと。......ローレン、この子で最後の一人よ。これで最終調律の準備は整うわ」
「テレスティーナ、その子を放しなさい!」
イリアが叫ぶと、テレスティーナは薄く笑った。
「あなたも懐かしい顔ね、イリア・パゾム。......まだ〝人間らしさ〞なんてものにこだわっているの? ニュータイプ研究において、そんな感傷は邪魔なだけよ」
「感傷じゃない。これは、当然の倫理よ」
「倫理? この計画が成功すれば、何千、何万という人間が力を得るのよ。犠牲になるのは、ほんの一握り。......むしろ効率的だと思わない?」
あたしは、拳を握りしめた。この人たちは、命の重さを、まるで理解していない。
「あたしが、止める」
「止められるかな?」
ローレンがパネルのスイッチを押すと、周囲のカプセルが一斉に稼働音を上げ始めた。
「レディオノイズ、起動シーケンス開始。......これで、もう誰にも止められない」
赤い警告灯が、地下施設全体を染め上げる。カプセルの中の少女たちが、苦しげに身をよじり始めた。
「やめて......!」
あたしは走り出しながら、指先へありったけの電流を集める。だが、キュベレイMk‐IIなしでは、この規模の施設を一撃で止めるのは難しい。
「キャラ、子どもたちを外へ! イリアはローレンを、あたしはこの装置を止める!」
「了解ですわ、お姉さま!」
キャラが目にも留まらぬ速さで走り出し、カプセルを次々と割って子どもたちを抱きかかえる。イリアはローレンへ向かい、鋭い蹴りを繰り出した。
あたしは装置のコアへ向かって突き進む。だが、その進路を──あの、あたしと同じ顔をした少女が、静かに塞いだ。
「......個体識別番号、012。命令、装置の防衛」
「どいて......!」
「どかない。......これは、姉さんたちを救う、唯一の方法だから」
その言葉に、あたしは息を呑んだ。
「......救う? これのどこが、救うことになるの......!」
「私たちは、量産される定めの存在。......でも、この装置が完成すれば、〝妹〞という概念そのものが、消える。全員が、同じ価値を持つようになる」
歪んだ、それでも切実な願い。あたしは、その言葉の奥にある悲しみを、痛いくらいに感じ取った。
「......そんなの、間違ってる。あんたたちは、部品なんかじゃない。ひとりひとりが、ちゃんと生きてるんだよ」
赤い警告灯の中、装置は着実に稼働率を上げていく。あたしとプル・シリーズの少女は、譲れない想いを胸に、向かい合ったまま動けずにいた。
『プルさん、装置のコア出力、限界値まであと三分......!』
ミリィの声が、切迫した警告を告げる。あたしは、覚悟を決めた。
「──ごめん。力ずくでも、通らせてもらう」
指先に、これまでで最大の電流が集まっていく。