機動戦士ガンダム とあるアクシズの超電磁砲 宇宙世紀0088 最強のニュータイプは妹達を救うため、指先一つで宇宙世紀の歴史を貫く 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
宇宙世紀0088年。
小惑星基地アクシズ。
あたし、エルピー・プルがこの「治安維持部隊(ジャッジメント)」という名の、少し変わった役割を与えられてから数日が経っていた。
そもそも、あたしみたいなニュータイプ候補生や、キャラみたいな強化人間を居住区のパトロールに回すなんて、上層部の大人は何を考えてるんだろう。
「……ねえ、キャラ。あたしたち、本当は戦場に出るためのパイロットでしょ? なんでこんな迷子探しみたいなことしてるの?」
「お姉様、それは違いますわ! 平和なアクシズの秩序を守ることこそ、強き力を持つ者の義務……。そして何より、制服姿のお姉様を間近で拝見できる、ハマーン様からの慈悲に満ちた試練ですわ!」
キャラ・スーンは、支給されたばかりの治安維持局のジャケットを羽織り、興奮で感応波を撒き散らしていた。彼女のプレッシャーが強すぎて、通りかかった整備兵たちが青い顔をして逃げていく。
あたしたちが今日、巡回を命じられたのは、居住区の最下層にある旧式ドックだった。
ここは開発が止まり、今は浮浪者や、軍の締め付けを嫌う不穏分子が隠れ住んでいるという噂がある。
「……キャラ。あそこ、誰かいる」
あたしのバイオ・センサーが、積み上げられたコンテナの陰から漏れ出す、鋭い「敵意」を捉えた。
それは訓練で相手にする仮想敵とは違う、もっと生々しくて、暗い感情の渦。
「出てきなさい! 治安維持局ですわ。隠れてコソコソするのは、規律違反ですわよ!」
キャラが叫ぶと同時に、暗闇から数条の閃光が走った。
それはビーム・ピストルの光。あたしは直感的にキャラの服を引っ張り、コンテナの影へと飛び込んだ。
「あぶない! ……本気で撃ってきたよ!」
「……不届き千万! 私(わたくし)の制服に傷をつけようものなら、その命、愛の炎で焼き尽くして差し上げますわ!」
キャラが激昂し、腰のホルスターから発信機を取り出した。彼女のプレッシャーが物理的な風となって吹き荒れ、周囲の空気が重く沈む。
犯人たちは、旧式の作業用ロボットを改造した即席の戦闘マシンを繰り出してきた。それは居住区の壁を破壊して、外壁の資材を奪おうとしていた密輸組織の残党だった。
「プルさん、状況を把握しました。対象の機動パターンを解析し、予測進路を送信します!」
通信機から、ミリィ・チャイルドの冷静な声が届く。彼女は管制室でアクシズの防犯センサーをハックし、あたしたちの目を支援してくれている。
「ミリィ、助かる! ……キャラ、あたしが動きを止めるから、トドメはお願い!」
あたしはコンテナの上に飛び乗り、バイオ・センサーを全開にした。
脳裏に広がるのは、機械の構造図と、そこを流れる電力の奔流。
あたしは指先を突き出し、空中に浮かぶ見えないスイッチを操作するように、感応波を集中させた。
あたしの意志が、サイコミュ・リンクを通じて改造ロボットの姿勢制御プログラムに直接干渉する。
「……動いちゃ、ダメ!」
あたしの声に応えるように、ロボットの四肢が不自然な方向に折れ曲がり、激しい火花を散らして硬直した。あたしの「感応波」が、電子の海を強引に書き換えたのだ。
「そこですわ! 覚悟なさい!」
隙を逃さず、キャラが肉薄する。彼女の振るった格闘用ロッドがロボットの核を正確に貫き、敵の戦力は一瞬で沈黙した。
事件が片付き、あたしたちは夕暮れ時(のような照明設定)のメインストリートに戻ってきた。
制服は少し汚れてしまったけれど、あたしの心はどこか晴れやかだった。
「お疲れ様、プル。……怪我はないか?」
ジュドー・アーシタが、心配そうに駆け寄ってくる。
彼の手には、あたしの大好きなイチゴのアイスが握られていた。
「ジュドー! あたし、頑張ったよ! 悪い奴らを、えいって捕まえたんだもん!」
「ああ、見てたぜ。……お前、あんなすごい力、そんなに簡単に使うなよ。もっと自分のことも大事にしろ」
ジュドーがぶっきらぼうにパフェを差し出してくれる。
その手の温かさに触れると、バイオ・センサーを酷使して高ぶっていた脳波が、魔法のように穏やかになっていく。
宇宙世紀0088年。
アクシズという巨大な揺り籠の中で、あたしたちはまだ、大人たちの戦いの道具として数えられているのかもしれない。
けれど、あたし、エルピー・プル。
あたしの持つこの「力」が、隣で笑う仲間のために、そしてこの小さな平和のためにあるのなら。
あたしは、あたしにしかできないやり方で、この時代を駆け抜けてやるんだから!
「……うん、やっぱりイチゴが一番だね!」
あたしはパフェを一口食べて、最高の笑顔でジュドーに笑いかけた。