機動戦士ガンダム とあるアクシズの超電磁砲 〜あたしはニュータイプ、指先ひとつで宇宙世紀を撃ち抜く電撃使い〜 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
翌朝、あたしがジャッジメント第7支部に顔を出すと、キャラが妙にそわそわしていた。
「お姉さま……今日は、私が全力でお守りしますわ」
「……何、急に」
「昨夜、イリアさまから伺いました。お姉さまが、ひとりで抱え込んでいらしたと。……私、悔しいです。お側にいながら、気づけなかったなんて」
キャラの目に、うっすらと涙が浮かんでいた。
「キャラ……」
「私は、ただの騒がしい後輩だと思われているかもしれません。でも――お姉さまのためなら、この命を懸けても構わないと、本気で思っているんです」
その言葉には、いつもの大げさな決め台詞とは違う、真剣な重みがあった。
「……ありがとう、キャラ。でも、あんたの命を懸けさせたいわけじゃないよ」
「わかっています。……だからこそ、お守りする力を、もっと磨きます」
キャラは、格闘用のロッドを構え、真剣な表情で訓練場へ向かった。あたしは、その背中を見て、少し胸が熱くなる。
「プルさん、キャラさんの機体、R・ジャジャの整備データが上がってきました」
ミリィが端末を差し出しながら言った。
「今回の作戦、キャラさんの近接戦闘能力が要になりそうです。……アクセラレータの反転能力は、遠距離からの攻撃には絶対的な防御力を発揮しますが、直接的な近接戦では、ほんの僅かな隙が生まれると解析結果に出ています」
「近接、か。……キャラの得意分野だ」
「はい。だから、お二人の連携が何より重要になります」
その日の午後、あたしとキャラは、初めて本格的な連携訓練を行った。あたしの電撃で敵の動きを封じ、キャラが一気に間合いを詰める。何度も、何度も、呼吸を合わせる。
「お姉さま、もう一度……!」
「うん、いくよ!」
汗だくになりながら、二人は動き続けた。何十回と繰り返すうちに、少しずつ、二人の動きが噛み合い始める。
「今の、良かった! 息、合ってきたよ」
「はい……! もっと、もっと合わせます!」
夕暮れ時、ようやく休憩を取ったとき、キャラがぽつりと呟いた。
「……お姉さま。私、ずっと不安だったんです。お姉さまが強くなればなるほど、私は必要とされなくなるんじゃないかって」
「……そんなこと」
「でも、今日わかりました。お姉さまは、強い力を持っていても、決して一人で戦おうとはしない。……だから私は、お姉さまの隣に立ち続けられる」
キャラは、まっすぐな目であたしを見つめた。
「私は、お姉さまの〝力〞になりたいんです。剣にも盾にも、なんにでも。……それが、私の生きる意味ですから」
「キャラ、あんたなら、剣とか盾とか言わなくても、もう十分あたしの力になってるよ」
「……お姉さま」
キャラの目に、また涙が浮かんだ。今度は、悲しみではなく、嬉しさの涙だった。
「そんな風に言っていただけるなんて……この、キャラ・スーン、生涯忘れませんわ」
「大げさだよ」
「大げさじゃありません。本気です」
その真剣さに、あたしは思わず吹き出してしまった。
「ふふ。……ありがと、キャラ。頼りにしてる」
「はい、お姉さま!」
いつものように叫んだキャラの声が、少しだけ、いつもより優しく聞こえた。
ミリィが、二人の様子を見て、微笑ましそうに端末のカメラを向けた。
「ふふ、いい写真が撮れました。後で記念にお渡ししますね」
「もう、ミリィまで」
賑やかな笑い声が、訓練場に響く。夕日が、二人の影を長く伸ばした。
訓練を終えて支部の廊下を歩いていると、イリアが向こうから歩いてきた。
「二人とも、精が出るわね」
「イリア。……見てたの?」
「ええ、途中から。……いい連携だったわ。あれなら、実戦でも十分に通用する」
キャラが、誇らしげに胸を張った。
「当然ですわ。お姉さまと私の絆は、誰にも負けません」
「その調子で、頼むわね。……ただし」
イリアの表情が、少し曇った。
「相手は、これまでの敵とは、格が違う。油断だけは、絶対にしないで」
「うん、わかってる」
あたしは、キャラと顔を見合わせて、頷いた。
「大丈夫。あたしたち、二人でひとつだから」
「はい、お姉さま!」
その夜、あたしは、キャラの心強い言葉を胸に、久しぶりに、ぐっすりと眠ることができた。
翌日も、あたしとキャラの連携訓練は続いた。ミリィが持ってきた新しいデータをもとに、より実戦的な想定で、動きを磨いていく。
「お姉さま、今度は、私が敵の攻撃を受け止めてから、お姉さまが仕留める、という流れで行きましょう」
「うん、やってみよう」
何度も繰り返すうちに、二人の呼吸は、まるで一つの生き物のように噛み合い始めた。
「......いいですね、お二人とも」
イリアも、訓練の様子を見に来て、満足そうに頷いていた。
「この調子なら、きっと大丈夫よ」
「うん。......頑張るね」
寝る前、あたしは端末を開き、今日の訓練記録を見返した。キャラとの連携は、確実に精度を増している。それでも、相手はアクセラレータだ。この程度の準備で、本当に太刀打ちできるのだろうか。
不安が、胸の奥に、じわりと滲む。だが、今日キャラが見せてくれた真剣な想いを思い出すと、その不安は、少しずつ形を変えていった。
「……大丈夫。一人じゃない」
小さく呟いて、あたしは端末の明かりを消した。カーテンの隙間から、アクシズの夜景が、優しく部屋を照らしていた。
決戦は、もうすぐそこまで迫っていた。