機動戦士ガンダム とあるアクシズの超電磁砲 〜あたしはニュータイプ、指先ひとつで宇宙世紀を撃ち抜く電撃使い〜 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
一方、その頃――アクシズの裏路地。四人の少女たちが、薄暗いバーの一角に集まっていた。壁に貼られた古い広告の明かりだけが、テーブルをぼんやりと照らしている。
「テレスティーナからの依頼、確認したわね」
淡々とした声で言ったのは、リーダー格のシズリ・ヴェイン。彼女の目は、いつも底冷えするほど冷静だ。
「対象は、エルピー・プルとその仲間。……レディオノイズ計画の邪魔をする連中を、排除しろ、と」
「めんどくさいなぁ」
サーシャ・オーレンが、あくびをしながら答えた。
「けど、報酬は悪くないんでしょ?」
「悪くない。だから、やる」
シズリの声には、迷いがなかった。彼女たちは、ネオ・ジオンの非合法工作班――コードネーム『アイテム』。表社会には存在しない、闇の中で暗躍する少女たちだ。
「フレンダ、あんたの得意な奴で、行けそう?」
シズリに問われ、フレンダ・カイエンは、テーブルの上に並べた小型爆弾を見つめて頷いた。
「もちろん。……ただ、相手はプル・シリーズのオリジナル。しかも、かなり手強いって噂だよ」
「関係ない。私たちは、任務を遂行するだけ」
冷たく言い切るシズリの隣で、リコ・タヴィスは、ただ静かにグラスを見つめていた。
「……リコ、あんたはどう?」
「……追跡は、任せて。対象の居場所なら、いつでも」
リコの持つ能力は、対象の座標を精密に追尾すること。彼女がいる限り、逃げることはほぼ不可能だ。
「よし。……全員、準備はいいわね」
「フン。あたしはいつでもいい」
サーシャが、拳を鳴らしながら答えた。彼女の身体は、常人離れした強度を誇る。物理攻撃なら、ほとんど通用しない。
「今回の任務、失敗は許されない。テレスティーナの機嫌を損ねれば、私たちの立場も危うくなる」
シズリの言葉に、フレンダが不安げに視線を落とした。
「……ねえ、シズリ。相手の子たちって、まだ子どもだよね。……本当に、やるの」
「感傷は捨てなさい、フレンダ。これは、仕事」
「……うん。わかってる」
フレンダは頷きながらも、その目には、隠しきれない迷いが浮かんでいた。指先で、小型爆弾の起爆装置をもてあそびながら、彼女はしばらく黙り込んでいた。
「フレンダ? どうしたの」
サーシャが、怪訝そうに顔を覗き込む。
「……ううん、なんでもない。ちょっと、考え事」
「らしくないね、あんたが迷うなんて」
「……そうかな」
フレンダは、曖昧に笑って、それ以上は何も言わなかった。シズリだけが、その様子を、鋭い目で見つめていた。
「作戦は明日の夜。……対象が、ミーとされる個体の保護に動いた瞬間を狙う。逃げ場のない場所で、包囲する」
「了解」
「了解」
「……わかった」
四人の声が、静かに重なった。闇の中で、新たな脅威が、あたしたちに迫りつつあった。
その頃、あたしたちはまだ、彼女たちの存在を知らなかった。
『プルさん、明日の作戦ルート、確定しました。……ですが、気になる通信の傍受記録があって』
ミリィの報告に、あたしは首を傾げた。
「気になる、って?」
『裏社会のネットワークで、〝アイテム〞というコードネームが、頻繁に飛び交っているんです。……何かの部隊名だと思うんですけど、詳細は不明で』
「……アイテム」
なぜか、背筋がぞくりとした。まだ見ぬ敵の影が、確実に近づいてきていることを、あたしのバイオ・センサーが、微かに感じ取っていた。
「イリア、この件、知ってる?」
イリアは、資料を睨みながら、首を横に振った。
「……いいえ。ネオ・ジオンの正規軍とは、別系統の部隊みたいね。テレスティーナが独自に雇った、非合法組織かもしれない」
「非合法……」
「油断しないで、プル。相手が誰であれ、今のあなたたちには、大きな脅威になり得るわ」
あたしは、頷きながら、拳を握りしめた。明日の夜、何が待ち受けているのか、まだ誰にもわからなかった。
その夜、キャラが、いつになく真剣な顔で、装備の点検をしていた。
「お姉さま。明日は、私が先陣を切ります」
「……危なくない?」
「危険なのは、いつものことですわ。それに――お姉さまを危険に晒すくらいなら、私が矢面に立ちます」
キャラの声には、揺るぎない覚悟が滲んでいた。あたしは、その横顔を見つめながら、小さく頷いた。
「……わかった。でも、無茶はしないでね」
「善処いたします、と言いたいところですが……お姉さまのためなら、無茶もいたします」
「それ、あたしが前に言った台詞のパクリじゃない」
「気に入りましたので」
くすりと笑い合う二人の間に、束の間の穏やかな時間が流れていた。だが、その穏やかさの裏側で、闇の中の四人は、既に動き出そうとしていた。
ミリィが、最後の情報を伝えてきた。
「プルさん、キャラさん。……明日の作戦、私も現場近くで支援に回ります。何かあれば、すぐに連絡してください」
「うん、ありがとう、ミリィ」
三人は、それぞれの覚悟を胸に、静かな夜を過ごした。
一方、アイテムの拠点では、フレンダが、一人、窓の外を見つめていた。
「......ねえ、リコ」
「......何」
「私たち、いつまで、こんな仕事、続けるんだろうね」
リコは、しばらく沈黙してから、小さく答えた。
「......わからない。......でも、今は、それしか、生きる道がない」
「......そうだよね」
フレンダは、それ以上、何も言わなかった。ただ、窓の外に広がる夜景を、いつまでも見つめ続けていた。彼女の中に芽生えた小さな迷いは、まだ、誰にも気づかれていなかった。
決戦の足音が、確実に近づいていた。