機動戦士ガンダム とあるアクシズの超電磁砲 〜あたしはニュータイプ、指先ひとつで宇宙世紀を撃ち抜く電撃使い〜   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

34 / 39
能力追跡(AIMストーカー)

「……誰か、いる」

 

夜の見回り中、ミーが不意に足を止めた。あたしとキャラも、警戒態勢を取る。

 

「感応波じゃない、けど……何かに、見られてる感じがする」

 

『プルさん、周辺のセンサーに反応なし。……でも、これ、変です』

 

ミリィの声に、緊張が滲む。

 

『対象の追跡方法が、通常の感応波観測じゃない。……むしろ、あたしたちの〝痕跡〞そのものを消しながら追ってくる感じがします』

 

「痕跡を、消す……?」

 

そのとき、路地の奥から、静かな声が聞こえた。

 

「……見つけた」

 

暗がりから現れたのは、フードを目深に被った少女――イニシア・クロウだった。彼女の周囲だけ、まるで空気が歪んで見える。

 

「あんた、誰……?」

 

「答える必要、ない。……ただ、ここでの〝出会い〞は、なかったことになる」

 

彼女が指先を軽く振ると、周囲の防犯カメラが一斉に不自然な光を放ち、記録データが虚偽の映像に書き換えられていく。

 

「……記録改ざん、能力……?」

 

『プルさん、都市の監視網から、皆さんの映像が消えました……! というより、別の映像に置き換わってます!』

 

ミリィの悲鳴に近い声。あたしは唖然とした。まるで、あたしたちが「存在しなかった」ことにされているようだった。

 

「あんたが、あたしたちを追跡してたの……?」

 

「証拠隠滅、それが役目。……テレスティーナの依頼で、お前たちの行動記録を、すべて消す」

 

「行動記録を消して、何をするつもり……?」

 

イニシアは、初めて薄く笑った。

 

「決まっている。……誰にも気づかれず、消す」

 

その言葉に、キャラが即座に前へ出た。

 

「お姉さまに、指一本触れさせません」

 

「無駄。……私は、痕跡そのものを消す能力を持つ。私と接触した記憶さえ、じきに、お前たちの中から消える」

 

「そんなの……!」

 

「試してみるといい」

 

イニシアが軽く手をかざすと、周囲の空間が奇妙に揺らいだ。あたしのバイオ・センサーが、悲鳴に近いノイズを上げる。

 

「頭が……割れそう……!」

 

「これが、私の力。感応波そのものを混濁させ、〝記憶〞を書き換える。……お前たちが体験した、この夜そのものが、幻になる」

 

「……そんなこと、させない」

 

あたしは、痛みに耐えながら、指先へ電流を集中させた。混乱する意識の中でも、感応波を電流に変換する回路だけは、まだ生きている。

 

「あたしの記憶は、あたしのもの……! 誰にも、書き換えさせない……!」

 

放たれた電撃は、イニシアの展開する〝混濁フィールド〞を貫き、彼女のすぐ横の壁を焼いた。

 

「……っ、直撃を、避けた……?」

 

「今のは、警告。次は外さない」

 

イニシアは、初めて動揺したような表情を見せた。

 

「……強引な力技。理論的には、感応波の直接的な放出には、フィールドが対応しきれない……」

 

「なら、あたしのやり方でいく」

 

キャラが、その隙をついて肉薄する。イニシアは咄嗟に後方へ跳んで距離を取った。

 

「……今日のところは、退く。だが、テレスティーナには報告する。エルピー・プルは、記憶改変能力に対する耐性を持つ、と」

 

「待ちなさい……!」

 

キャラが追おうとしたが、イニシアはすでに、路地の暗闇へ姿を消していた。

 

「……逃げられた」

 

『プルさん、皆さんの記録、正常に戻りました。……でも、恐ろしい能力ですね。存在そのものを消されるなんて』

 

ミリィの声には、まだ動揺が残っていた。

 

「うん……。でも、わかったこともある。あの人、テレスティーナの手先。……ってことは、本装置の場所も、そろそろわかるかもしれない」

 

ミーが、静かに頷いた。

 

「……本装置は、旧司令部の地下。私が、案内できる」

 

「ミー……大丈夫なの?」

 

「……姉さんのためなら、大丈夫」

 

あたしは、ミーの小さな手を、そっと握った。

 

「一緒に行こう。全員で」

 

決戦の舞台が、少しずつ、姿を現し始めていた。夜のアクシズに、静かな緊張が満ちていた。

 

「お姉さま。あの、イニシアという女……ただの工作員ではなさそうですわね」

 

キャラが、まだ痛む腕をさすりながら言った。

 

「うん。……記憶を書き換える力なんて、聞いたこともない。ニュータイプの技術を、悪用してる感じがする」

 

『解析を続けます。……ただ、あの手の能力は、通常の観測機器では捕捉が難しいので、注意が必要です』

 

ミリィの声にも、警戒が滲んでいた。

 

「わかった。……ミー、道案内、頼めるかな」

 

「……うん。任せて、姉さん」

 

ミーは、これまでよりも、はっきりとした声で答えた。姉さんのために役に立ちたいという想いが、その声には、確かに込められていた。

 

三人は、夜の闇の中、旧司令部への道を、慎重に進み始めた。何が待ち受けているのか、まだ誰にもわからなかったが、それぞれの覚悟だけは、揺るぎないものになっていた。

 

道中、キャラが、ふと足を止めて、あたしに尋ねた。

 

「お姉さま。......あのイニシアという女性も、もしかしたら、事情があって、テレスティーナに従っているのかもしれませんわね」

 

「......うん、あたしもそう思う」

 

「もし、いつか彼女とまた出会うことがあったら、今度こそ、話し合う機会を持てたらいいですわね」

 

「そうだね。......誰だって、最初から悪い人間なんていないと、あたしは思いたい」

 

その言葉に、キャラは、優しく微笑んだ。

 

「お姉さまらしい考え方です。......そういうところ、私、大好きですわ」

 

「もう、大げさだなあ」

 

夜の静けさの中、二人の会話が、小さな温もりを灯していた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。