機動戦士ガンダム とあるアクシズの超電磁砲 〜あたしはニュータイプ、指先ひとつで宇宙世紀を撃ち抜く電撃使い〜 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
旧司令部へ向かう途中、あたしたちの前に、四つの人影が立ちはだかった。
「……ここから先は、通さない」
シズリ・ヴェインの声。あたしのバイオ・センサーが、強烈な警報を鳴らす。今まで感じたことのない、桁違いの出力を持つ何か。
「あんたたち……誰?」
「コードネーム、アイテム。……テレスティーナの依頼で、あんたたちを止めに来た」
「テレスティーナの……」
シズリが、静かに右手を掲げた。指先に、荒々しい紫電が渦を巻く。
「これ以上、進みたいなら――あたしを倒してから行きな」
「原子崩し……!」
放たれたのは、あたしの電撃とは比較にならない、荒々しい破壊の奔流だった。あたしは咄嗟にサイコ・フィールドを全開にし、軌道を逸らす。だが、衝撃波だけで、周囲の壁が崩れ落ちた。
「なっ……この威力……!」
「あんたの電撃は、精密で綺麗。……でも、あたしのは、ただの破壊力。性質が違うんだよ」
「お姉さまはお任せください、私は他の三人を……!」
キャラが動こうとした瞬間、サーシャが立ちはだかった。
「あんたの相手は、あたしがしてやる」
サーシャの拳が、キャラの繰り出したロッドを、まるで紙のように受け止めた。
「……硬い……!」
「あたしの身体は、生半可な攻撃じゃ傷一つつかない。悪いけど、無駄な抵抗だよ」
一方、フレンダは物陰から、小型爆弾をいくつも設置していた。
「……ごめんね。これも仕事なんだ」
彼女の指先が、起爆スイッチに触れる。だが――ほんの一瞬、その動きが止まった。
「……何やってるの、フレンダ」
リコの声に、フレンダは我に返る。
「……ううん、なんでもない」
その一瞬の躊躇いが、後にどんな意味を持つのか、この時のあたしたちは、まだ知らなかった。
「あたしは、行かせてもらう」
あたしは、シズリの猛攻を掻い潜りながら、じりじりと前進を試みる。だが、シズリの攻撃は、まるで嵐そのものだった。
「無駄だよ。あんたの電撃じゃ、あたしの原子崩しには届かない」
「……そう、かもしれない。でも」
あたしは、意識を集中させた。ただ電流をぶつけるだけじゃない。もっと、精密に。あの、コインを使った超電磁砲のように。
「一点集中……!」
足元に落ちていた金属片を拾い上げ、親指ではじく。渾身の一撃が、シズリの荒々しい紫電を、狭い一点で貫いた。
「なっ……!」
「精密さなら、負けない……!」
衝撃で、シズリの身体が大きく吹き飛ばされる。だが、彼女はすぐに体勢を立て直した。
「……やるじゃない。でも、まだまだ」
再び構えようとしたその時――
『プルさん、緊急事態です! 旧司令部の地下で、装置の稼働率が急上昇……! テレスティーナが、予定を早めたみたいです!』
ミリィの悲鳴のような声が響いた。
「……まずい。急がないと」
シズリも、その報告を聞いたのか、一瞬動きを止めた。
「……チッ。今日のところは、退くしかないか」
「え……?」
「私たちの依頼は、あんたたちを止めること。でも、装置が暴走すれば、依頼人自身が困る事態になる。……テレスティーナから、緊急撤退の指示が出た」
シズリが手を上げると、サーシャもフレンダもリコも、それぞれ戦いを中断した。
「……覚えときな。次に会う時は、手加減しない」
そう言い残し、四人は闇の中へ姿を消していった。あたしは荒い息を整えながら、旧司令部の方角を見つめる。
「……大丈夫、お姉さま?」
「うん……なんとか。それより、キャラの方こそ」
「私も、まだまだ動けますわ」
強がりながらも、キャラの息は上がっていた。あたしたちは、互いに肩を貸し合うようにして、体勢を立て直す。
「……行こう。もう、時間がない」
破壊された壁の向こうに、赤く光る旧司令部の入り口が見えていた。
ミーが、崩れた瓦礫を避けながら、先頭を歩き始めた。
「……姉さん、こっち」
「うん」
歩きながら、あたしは、先ほどの戦いを思い返していた。あのシズリという少女の力は、明らかに、ただの傭兵のものではなかった。
「……あの子たちも、きっと、何か事情を抱えてるんだろうな」
ぽつりと呟いたあたしの言葉に、キャラが小さく頷いた。
「お姉さまらしい考え方ですわね。……でも、今は、目の前の任務に集中しましょう」
「そうだね。……うん、行こう」
三人は、地下深くへと続く階段を、一歩ずつ下りていった。空気が、次第に冷たく、重くなっていく。何かが、この先で待ち受けている。そんな予感を、あたしのバイオ・センサーが、確かに感じ取っていた。
階段の途中、ミリィから追加の報告が入った。
『プルさん、装置内部の構造図、更新しました。......中枢部へのルートは、複数ありますが、どれも厳重な警備が敷かれています』
「わかった。......ミー、あんたの案内、頼りにしてる」
「......うん。任せて」
ミーの声には、これまでにない確かな決意が滲んでいた。彼女もまた、この戦いの意味を、自分自身の言葉で理解し始めているようだった。
キャラが、あたしの手を、そっと握った。
「お姉さま、いよいよですわね」
「うん。......行こう」
三人は、互いに頷き合い、地下深くの闇へと、足を踏み入れていった。