機動戦士ガンダム とあるアクシズの超電磁砲 宇宙世紀0088 最強のニュータイプは妹達を救うため、指先一つで宇宙世紀の歴史を貫く 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
宇宙世紀0088年。
小惑星基地アクシズ、居住区第3ブロック。
あたし、エルピー・プルは、今日から始まる治安維持部隊(ジャッジメント)の合同演習のために、指定の訓練用ノーマルスーツに身を包んでいた。
「お姉様! その機能美溢れるスーツ姿、私のバイオ・センサーが限界を突破してしまいそうですわ!」
隣で同じく訓練用の装備を整えているのは、キャラ・スーンだ。彼女は年上だが、強化人間としての不安定さを補うためにあたしを「お姉様」と慕うことで精神の均衡を保っている。あたしたちのような次世代パイロット候補にとって、この合同演習は、基地内の不穏分子を制圧するための実戦的なデータ収集の場でもある。
「もう、キャラ。今日は他部署との合同訓練なんだから。ハマーン様に笑われないようにしないと」
演習の内容は、居住区の死角……空き溜まりと呼ばれる、管理システムの監視が届きにくい廃区画での捜索任務だった。
あたしたちは、かつての第一次ネオ・ジオン抗争時に放棄された旧式ブロックへと足を踏み入れた。そこは人工太陽の光も届かず、非常用電力が細々と流れるだけの薄暗い迷宮だ。
「……キャラ、変なプレッシャーがする。誰かがここで、悪いことを企んでるみたい」
あたしのニュータイプとしての感応波が、閉鎖されたハッチの向こう側から漂う、尖った殺意を拾い上げた。
その時、演習用のアラートではなく、本物の爆発音が通路に響き渡った。
「な、なんですの!? 演習のプログラムに爆破なんて含まれていませんわ!」
「訓練じゃないよ、本物だもん!」
あたしたちが駆けつけると、そこには作業用プチ・モビルスーツを不正に改造し、高濃度のプロパン・ガスボンベを積み込んだ一団がいた。彼らは基地のインフラを破壊することで混乱を招こうとする反乱分子の残党だった。
「治安維持部隊ですわ! 貴方たちの浅ましい企み、このキャラ・スーンが愛の鉄槌で粉砕して差し上げますわ!」
キャラが突進する。彼女は暗闇の中でも、強化された動体視力と空間認識能力で、敵のプチ・モビルスーツが放つワイヤーを紙一重で回避し、格闘用ヒート・ナイフでその駆動部を次々と切り裂いていく。
あたしは壁の制御パネルへ駆け寄り、インターフェースを介して意識をダイブさせた。
あたしの感応波がバイオ・センサーを通じて、区画全体の非常用シャッター・システムに干渉する。
「……逃がさないんだから!」
あたしの意志がサイコミュ・リンクを駆け抜け、逃走経路にある電磁ロックを次々と強制閉鎖していった。
同時に、あたしは敵のプチ・モビルスーツが爆発させようとしていたガスボンベの電磁弁に、微細な過負荷(オーバーロード)を送り込んだ。
あたしの感応波は、機械の奥深くにある電気の脈動を直接掴むことができる。
ボンベの起爆回路を一時的に焼き切り、暴発を未然に防ぐ。
「……はい、捕まえた」
暗闇の中で、キャラが最後の敵を制圧し、区画に静寂が戻った。
事件解決後、あたしたちは演習の報告を終え、居住区の明るいエリアへと戻ってきた。
そこには、リィナやジュドーたちが、あたしたちの帰りを待っていた。
「プル! 無事だったか? 廃区画で爆発があったって聞いて、心配したんだぞ」
ジュドーが少しだけ焦った顔で駆け寄ってくるのを見て、あたしは心の底から安心した。
「大丈夫だよ、ジュドー! キャラと一緒に、悪い奴らをやっつけちゃったんだもん!」
「お姉様の采配、それはもう見事なものでしたわ! ジュドー様も、私たちが守ったこの平和に感謝なさいませ!」
キャラの激しい抱擁を躱しながら、あたしたちはいつものようにアイスクリームショップへと向かった。
宇宙世紀0088年。
アクシズの空き溜まりには、まだ拭いきれない戦火の残り香が漂っている。
あたしたちが持っているこの力は、本来は人を殺し、宇宙(そら)を焼くためのもの。
けれど、こうして大切な人たちの笑顔を守るために使えるのなら。
この感応波も、そんなに悪いものじゃないのかもしれない。
あたしはジュドーから渡された冷たいパフェを一口食べて、人工の空を見上げた。
あたしは兵器じゃない。あたしは、あたしだもん。
明日もまた、この小さな日常を守るために、あたしはあたしの力を使うんだ。