機動戦士ガンダム とあるアクシズの超電磁砲 〜あたしはニュータイプ、指先ひとつで宇宙世紀を撃ち抜く電撃使い〜 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
「……で、なんであたしが荷物持ちなの」
両手いっぱいの買い物袋を抱えたあたしに、キャラが振り返った。
「お姉さまが、皆さんの分まで買うと仰ったからですわ」
「言ったけど、こんなに重いとは思わなかったもん」
支部へ戻る途中、作業用ロボットが通路の角で急停止した。積んでいた箱が傾く。あたしは袋を下ろして駆け寄り、落ちかけた箱を受け止めた。
「危なかった……」
「お見事ですわ」
「ただの荷物持ちの延長だよ」
ロボットのそばで、整備担当の人が困った顔をしていた。部品が届くまで、荷物を運べないらしい。箱の行き先は医療区画。中身を聞くと、交換用の毛布と、記録に使う紙だった。
「じゃあ、あたしたちで運ぼう」
「お姉さま、支部への荷物もありますわよ」
「二回に分ければいいもん」
キャラは呆れたように笑って、一番大きな箱を持ち上げた。あたしも小さい箱を抱える。キュベレイに乗っていれば一瞬で着く距離を、今日は歩いて進んだ。
医療区画では、ミリィが調整槽の子たちの記録を整理していた。あたしは買ってきた飲み物を机に置く。
「今日も、変わりない?」
「はい。目を覚ました子は少しずつ話せるようになりました。まだ眠っている子たちも、一人ずつ確認できています」
「よかった。これ、頼まれてた紙」
ミリィが箱を開け、束を取り出す。端末で十分だと思っていたけれど、紙なら、医療担当の人が気づいたことをその場で書けるのだという。あたしは一枚受け取って、空欄の多さに驚いた。
「名前も、好きなものも、まだわからないんだ」
「だから、埋めるのを急がなくていいんです」
そのとき、目を覚ました少女が廊下の向こうにいた。看護担当の人と一緒に、窓辺まで歩く練習をしている。あたしに気づくと、小さく手を上げた。
「こんにちは。今日の絵、見た?」
「……見た。青い花が、好き」
「そっか。描いた子に伝えるね」
あたしが近づこうとすると、少女は看護担当の人の袖を握った。まだ話したいわけじゃないのかもしれない。あたしはそこで足を止め、手を振り返した。
帰り道、あたしは整備担当の人がいた通路をもう一度通った。作業用ロボットはまだ止まったままだったけれど、積み残しの箱には行き先を書いた札が付いている。
「これも医療区画?」
「いいえ、あすなろ園ですわ。急ぎではないそうですけれど」
あたしは箱を持ち上げかけて、さっきの少女が袖を握った手を思い出した。助けたいからといって、何でも自分で運べばいいわけじゃない。
「担当の人に、いつ必要か聞いてからにしよう。あたしたちが勝手に決めちゃだめだよね」
キャラは少し意外そうにあたしを見て、それから頷いた。
「ええ。必要なときに、必要な分だけお手伝いしましょう」
あたしは札の文字を確かめ、箱を元の場所に戻した。手を出さずに待つことも、誰かのためにできることなのかもしれない。
支部に戻ると、キャラがあたしの荷物袋を机に置いた。
「今日は、ずいぶん控えめでしたわね。いつものお姉さまなら、もっとお話を聞こうとなさるのに」
「聞きたいよ。でも、あの子が今はここまでって決めたなら、それを守りたい」
ミリィが記録用紙に『青い花が好き』と書き、あたしに見せた。小さな一行だった。戦いの成果を示す数字より、あたしにはずっと大きく見えた。
「最強とか最弱とか、そんなの関係ないね」
「どうなさいました?」
「大きな力がなくても、箱を運んだり、話を聞いたりできる。あたし、今日もそれを続けたい」
「では、明日の荷物もお願いいたしますわ」
「えっ、そこは手伝ってよ!」
キャラが笑い、ミリィもつられて笑った。あたしは残った飲み物を配りながら、明日は青い花の絵を描いた子に会おうと思った。できることは小さくても、ひとつずつ、目の前の誰かにつながっていく。
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