機動戦士ガンダム とあるアクシズの超電磁砲 〜あたしはニュータイプ、指先ひとつで宇宙世紀を撃ち抜く電撃使い〜 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
「……で、なんであたしまで勉強会に参加してるの」
あたしは、キャラとミリィ、そして相変わらず居座り続けているジュドーに囲まれて、テーブルに広げられた教材を見つめていた。
「お姉さま、来月に控えたパイロット適性の学科試験、記憶してますか?」
「……あ」
そういえば、そんな試験があった。実技はともかく、学科の座学がどうにも苦手なあたしだった。
「ジュドーさんも、たまたま居合わせたので、お誘いしましたの」
「いや、俺は別に……暇だったからついてきただけで」
ジュドーは、少し照れくさそうに頭を掻いた。
「じゃあ、まずは軌道力学の基礎から。……プルさん、この公式わかります?」
ミリィが、端末に表示した数式を指す。あたしは、頭を抱えた。
「……ぜんぜんわかんない」
「大丈夫です、順番に説明しますね」
ミリィの丁寧な解説が始まる。だが、数式を追ううちに、あたしの頭は、次第に眠気に襲われ始めた。
「……ふわ……」
「お姉さま、寝てはいけません」
「うぐ、ごめん……ミリィの声、子守唄みたいで」
「褒めているのか、貶しているのか、微妙です」
そんな和やかなやり取りに、ジュドーが小さく笑った。
「……意外だな。プルって、めちゃくちゃ強いパイロットのイメージだったのに、勉強はてんでダメなんだな」
「……うるさいなあ。あんたはどうなの、Ζガンダムまで乗りこなしてるくせに」
「軌道力学の教科書なんざ、開いたこともねえよ。俺のは、全部、身体で覚えたやり方だ」
「それはそれで、すごいと思うけど」
キャラが、その様子を見て、少し不服そうな表情を見せた。
「ジュドーさん、お姉さまと随分親しくなられましたわね」
「今更かよ。この夏、散々世話になった仲だろうが」
「私は、お姉さまの側近として、些細な変化も見逃しませんの」
「……キャラ、それ、ヤキモチ焼いてるみたいだよ」
「や、ヤキモチだなんて……! 私はただ、お姉さまをお守りする義務がありますから……!」
賑やかなやり取りが続く中、勉強会は、予想以上に長引いた。休憩がてら、ミリィが淹れてくれたお茶を飲みながら、あたしはふと、テーブルを見渡した。
「……なんか、こういう時間、悪くないね」
「同感ですわ、お姉さま」
「私も、こういう賑やかな時間、好きです」
「……ま、俺も、悪くないよ」
夜が更ける頃、あたしの頭には、少しだけ、公式が入ってきたような気がした。
「……今日は、ありがとう、みんな」
「お礼を言うのはこちらですわ。お姉さまと一緒に過ごせて、幸せでしたもの」
「私も、楽しかったです」
「……まあ、俺も、悪くなかったよ」
賑やかな夜が、静かに更けていった。この何気ない日常が、あたしにとって、何よりも大切なものだと、改めて感じた夜だった。
解散したあと、ジュドーだけが、少し遅くまで残っていた。
「……なあ、プル」
「ん? どうしたの」
「あんたたちって、いつもこんな感じなのか。……賑やかで、なんか、いいよな」
「……そう?」
「ああ。……エゥーゴにいた頃は、あんまり、こういう時間、なかったから」
その言葉には、どこか懐かしさと、微かな寂しさが滲んでいた。あたしは、少し考えてから、微笑んだ。
「じゃあ、これからも、いっぱい来なよ。リィナも一緒に。あんたも、もう、あたしたちの仲間なんだから」
「……今更、言うことかよ、それ」
「なによ、素直に喜びなさいよ」
その言葉に、ジュドーは、少し驚いたように瞬きをした。それから、ゆっくりと、頷いた。
「……ありがとな」
「どういたしまして」
片付けを終えたテーブルの上には、まだ、教材やノートが散らばっていた。あたしは、それを片付けながら、明日からの試験勉強のことを考えて、小さくため息をついた。
「……明日も、勉強会、やる?」
「もちろんですわ、お姉さま。合格するまで、付き合いますので」
「頼もしいけど、ちょっと怖いよ、それ」
くすくすと笑いながら、あたしたちは、片付けを続けた。ミリィが、最後に部屋の明かりを消しながら、ぽつりと呟いた。
「……こうして、みんなで過ごせる時間、大事にしたいですね」
「うん、ほんとに」
窓の外には、いつも通りのアクシズの夜景が広がっていた。だが、その何気ない景色さえも、今のあたしには、かけがえのないものに思えた。
「……そうかよ」
窓の外、夜のアクシズの光が、静かに瞬いていた。この賑やかな日常が、これからも続いていくことを、あたしは、心の底から願っていた。
試験当日、あたしは、緊張しながらも、これまでの勉強会の成果を、しっかりと発揮することができた。
「……できた、と思う」
「お疲れ様でした、お姉さま」
「私も、微力ながら、お手伝いできてよかったです」
「……まあ、俺は見てただけだけどな」
「ううん、みんながいてくれたから、頑張れたんだよ」
試験結果は、数日後に発表されることになっていたが、あたしは、結果がどうであれ、この過程そのものが、大切な思い出になったと感じていた。
「……ねえ、今度は、何を一緒に頑張ろうか」
あたしの問いに、キャラが、目を輝かせて答えた。
「もちろん、いつでも、お姉さまと一緒なら、なんでも大歓迎ですわ」