機動戦士ガンダム とあるアクシズの超電磁砲 〜あたしはニュータイプ、指先ひとつで宇宙世紀を撃ち抜く電撃使い〜 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
月面都市グラナダで、アーガマは補給を受けていた。
トーレスは艦内を行き交う人たちを避けながら、ミリィと並んで歩いた。物資が運び込まれるたび、通路には短い呼び声が響く。グラナダに着けば少しは落ち着けると思っていたが、艦の中はいつもより忙しいくらいだった。
「街へ出るなら、今のうちかもしれませんね」
ミリィが言う。トーレスは頷きかけ、立ち止まった。ウォン・リーがアーガマを訪れていたからだ。ブライトに向けられたのは、地球へ降りたハマーンの部隊を追えという命令だった。
補給が終われば、また出る。
「少しだけ、行こう」とトーレスは言った。「戻る時間は守る」
2人が入ったのは、グラナダのピザ屋だった。艦内とは違う話し声に囲まれ、トーレスはようやく肩の力を抜く。ところが、店の奥を見た途端、その足が止まった。
「……セシリア?」
呼ばれた女性が振り向く。トーレスは一歩近づき、それから確かめるようにもう一度名前を呼んだ。
「久しぶりね、トーレス」
ミリィは2人の顔を見比べた。
「お知り合いですか?」
「昔からの知り合いだよ。こんなところで会うとは思わなかった」
トーレスが話し始めると、セシリアも椅子に腰を下ろした。離れていた間のことを、一度に聞くことはできない。言葉を探しているうちに別の思い出が浮かび、話は何度も横道へそれた。ミリィはそのやり取りを聞き、ときどき2人に問いかけた。
セシリアも答えた。だが、アーガマの行き先に話が近づくたび、トーレスは艦の仕事を思い出した。
「次は、いつまでグラナダにいるの?」
「補給が済むまでだと思う。でも、その先のことは俺からは話せない」
トーレスは穏やかに答えた。久しぶりに会った相手でも、艦の行動について軽々しく話すわけにはいかない。
「そうよね」とセシリアは言った。
それ以上、彼女は尋ねなかった。トーレスも、再会の席で仕事の話を続けたくはなかった。ミリィが別の話題を出すと、3人の会話はまた店の中の賑わいに戻った。
けれど、セシリアにはゴットンから命じられた仕事があった。アーガマの行き先を調べることだ。トーレスの前で笑い、昔の話をする間も、その命令は消えなかった。
店を出たあと、トーレスは振り返った。セシリアは入口のそばに立ち、2人を見送っている。
「会えてよかったですね」
ミリィの言葉に、トーレスは「ああ」と答えた。短い再会だったが、声を聞けた。次に会うときには、もう少しゆっくり話せるかもしれない。そう思いながら、彼はアーガマへ戻った。
そのころ、別の場所ではビーチャとモンドが一緒に動いていた。
「待てよ。今の話、聞こえたか?」
ビーチャに促され、モンドは足を止めた。近くにいるのはゴットンの部下、ネルとクレユ・オー。2人の会話を聞くうちに、ビーチャとモンドはゴットンの船が隠された宇宙港の場所を知る。
「ジュドーに知らせるぞ」
「わかってる。ここで見つかったら、知らせるどころじゃない」
2人は声を落とし、来た道を戻った。トーレスとミリィが再会を喜んでいた同じ街で、別の2人は敵の船を見つけていた。互いのことを知らないまま、どちらもアーガマへ向かう。
報告を受けたジュドーたちは、ゴットンの船を攻撃するために出撃した。
艦内に出撃の声が響いたとき、トーレスはピザ屋での会話を思い返した。セシリアにまた会えるかどうか、今はわからない。彼女が自分に何を尋ねようとしていたのかも、わからないままだ。
グラナダの街には、まだ人が行き交っている。店では次の客が席に着き、宇宙港では補給の作業が続く。その賑わいの中で、アーガマの行き先を探る者がいて、隠された船を見つけた者がいた。
トーレスは持ち場へ戻った。
さっきセシリアと話せたことは嬉しかった。その気持ちを、疑いに変えたくはない。けれど、次に会えたなら、あのとき彼女が何を聞きたかったのか、自分から尋ねてみようと思った。