機動戦士ガンダム とあるアクシズの超電磁砲 〜あたしはニュータイプ、指先ひとつで宇宙世紀を撃ち抜く電撃使い〜 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
グラナダの宇宙港へ、輸送船が落ちてきた。
警報が鳴り、荷を運んでいた人々が走り出す。港にいた誰もが、傾いた船体を見上げた。だが、それで終わりではなかった。別の中古輸送船も、続いて港へ向かってくる。
アーガマの艦内でも声が飛び交った。
「次の船の進路は?」
「港側へ向かっています!」
トーレスは持ち場から離れず、届く報告を聞いた。昨日、ミリィと一緒に歩いた街が、窓の向こうにある。セシリアと再会したピザ屋も、その街のどこかにある。
彼女は無事だろうか。
そう考えた途端、トーレスは自分の手を止めかけた。今は港と艦の状況を確かめなければならない。セシリアを案じることと、目の前の仕事を続けることは、どちらも手放せなかった。
宇宙港を混乱させているのは、ゴットンだった。買い占めた中古輸送船を次々に落とし、アーガマをいぶり出そうとしている。
港へ注意が集まる中、艦内では別の報告が上がった。
「ガンダムMk-IIがアーガマを離れた!」
乗っているのはキャラだった。彼女は混乱に乗じて脱走したのだ。
トーレスは一瞬、窓の外へ目を向けた。落ちてくる船は、見ないわけにいかない。だが、その間にも、艦の内側で別のことが起きていた。
「港だけじゃないのか……」
呟いても、警報は止まらない。
そのころセシリアは、自分の正体が知られたことに追い詰められていた。ゴットンの命令でアーガマの行き先を探っていた。昨日トーレスと話したときも、その仕事を抱えたままだった。
彼に会えて嬉しかったのは本当だ。嘘をついたことも本当だった。
スパイ容疑で死刑になると思い込んだセシリアは、ゴットンから移民船のチケットと金塊を受け取った。家族と一緒にグラナダを離れるためだ。
「これで、行ける」
手にしたものを見て、彼女はそう言った。けれど、トーレスの顔を思い出すと、言葉が続かなかった。昨日、彼はアーガマの行き先を話さなかった。それでも、昔のように自分の名前を呼んでくれた。
もう一度会って、嘘をついたと伝えることはできるだろうか。
答えが出ないまま、セシリアは家族との脱出を急いだ。
やがて、ゴットンから渡された金塊が、金塊ではなく時限爆弾だとわかる。
「そんな……」
逃げるために受け取ったものが、シャトルとグラナダを脅かしている。セシリアはそれを抱えたまま立ち尽くした。自分が知らずに運んだものだとしても、このままにはできない。
トーレスに嘘をついた。家族を連れて逃げようとした。そして今、近くにいる人たちまで危険にさらしている。
セシリアは時限爆弾を持ち、ガ・ゾウムにしがみついた。シャトルとグラナダから離すためだった。
アーガマにも、その状況が伝わる。
「セシリアが?」
トーレスは聞き返した。彼女の名前と、時限爆弾という言葉が、すぐには結びつかない。昨日の店で、何かを言いかけていたような彼女の顔を思い出す。
あのとき尋ねていれば、何か変わったのか。
そう考えても、今のセシリアには届かない。
ジュドーはZZガンダムで出ていた。セシリアを助けようと、ガ・ゾウムを追う。
「セシリア、離れろ!」
通信に向かって呼びかけながら、ジュドーは機体を寄せた。彼女が爆弾を抱えたままなら、シャトルも街も危ない。だが、助ける方法を探すことまで諦めたくなかった。
セシリアには、近づくZZガンダムが見えた。
ジュドーが助けようとしている。それがわかっても、彼女はガ・ゾウムから手を離せなかった。シャトルとグラナダを守る。そのために、ここまで来た。
「トーレス……」
名前を呼ぶ声は、彼には届かなかった。
ジュドーはなおも救おうとした。だが、セシリアはガ・ゾウムとともに宇宙へ散った。
報告を聞いたトーレスは、しばらく言葉を返せなかった。宇宙港の警報は収まりつつある。人々は持ち場へ戻り、止まっていた作業も、いずれ再開するだろう。
それでも、昨日のピザ屋での再会を、何も知らなかった頃の思い出には戻せない。
「また会えたら、聞こうと思ってたんだ」
トーレスは誰にともなく言った。
セシリアが何を抱えていたのか。どうして、あの席で行き先を尋ねたのか。聞けなかったことが残っている。
窓の外には、まだグラナダの灯りが見えた。港へ落ちる輸送船を追っていた間に、キャラは艦を離れた。逃げるための金塊に見えたものは、爆弾だった。
トーレスは窓から目を離し、持ち場へ戻った。
セシリアが最後に守ろうとした街を、見つめているだけではいられなかった。