機動戦士ガンダム とあるアクシズの超電磁砲 〜あたしはニュータイプ、指先ひとつで宇宙世紀を撃ち抜く電撃使い〜 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
グラナダを離れても、ジュドーにはセシリアの最後が忘れられなかった。
助けようとして、届かなかった。そのことを考えるたび、今度こそリィナを見つけなければという思いが強くなる。
アーガマは、地球へ向かうネオ・ジオン艦隊の旗艦サダラーンを攻撃するよう命じられた。リィナも艦隊にいるかもしれない。ジュドーは単独で出撃し、ハマーンに誘い込まれるようにサダラーンへ向かった。協力を持ちかけられても応じず、脱出したあとにはラカンのドライセンと戦った。エルとルーの援護を受け、ようやくアーガマへ戻る。
それでも、リィナには会えなかった。
そして、もう1人。アクシズで別れて以来、話せていない相手がいた。
プルだ。
*
キュベレイMk-IIのコクピットで、プルは前方を見つめていた。
ジュドーは敵。近づいてきたら止める。
そう考えると、何をすべきかははっきりする。なのに、彼の名前を思い浮かべるたび、アクシズで会ったときの姿が浮かんだ。
「あたしが案内したのに」
小さく呟く。
ジュドーが宮殿へ向かったこと。リィナを捜していたこと。自分がリィナを連れ出し、ジュドーに呼び止められたこと。思い出せる出来事はある。けれど今のプルには、そこにいるジュドーを敵として迎え撃つことが、正しいことのように感じられた。
プルは操縦桿を握り直した。
*
アーガマがネオ・ジオン艦隊へ近づく。ジュドーはリィナを救い出す機会を求め、今度はZガンダムで出撃した。艦隊の地球降下を阻止するためでもある。
接近する機影を見て、ジュドーは息をのんだ。
「キュベレイMk-II……プルか?」
返事より先に、相手がこちらへ向かってくる。
「プル! 俺だ、ジュドーだ!」
『知ってるよ』
通信から聞こえた声は、確かにプルのものだった。
『だから、止めるの』
ジュドーは機体をかわしながら、もう一度呼びかけた。
「どうしたんだよ。アクシズで会っただろ!」
『会ったよ』
「だったら、話を聞いてくれ!」
『聞いてる。でも、あんたは敵だよ』
会ったことを忘れているわけではない。それなのに、プルはジュドーを敵だと言う。ジュドーには、彼女がなぜそう信じているのかわからなかった。
攻撃を避け、距離を取る。離れれば声が届かない。近づけば、プルも機体を向けてくる。
「リィナのこと、覚えてるか?」
『覚えてる』
「俺があいつを捜してたことも?」
『うん』
「じゃあ、どうして俺を撃つんだ!」
プルはすぐには答えなかった。
問いに答えるために立ち止まることもできない。目の前にはZガンダムがいる。プルは照準を合わせ直した。
「ジュドーは敵」
口に出した言葉は明瞭だった。だが、通信から聞こえる彼の声も、同じくらいはっきりしている。
ジュドーはなおも近づいた。互いの姿が見える距離になっても、プルは銃を下ろさない。
「プル、俺を見ろ」
「見てるよ」
「だったら、俺の話を聞け」
「……聞いてるってば」
ジュドーの顔を見ても、プルの答えは変わらなかった。銃口を向けたまま、彼が次にどう動くかを見ている。
ジュドーは言葉を探した。自分の名を呼ぶことも、アクシズの話をすることも、もう試した。それでもプルは目の前にいる。話し続けるには、まず彼女を見失わないことだ。
そのとき、機体が大きく揺れた。
地球が迫っていた。
「プル、ここで戦ってる場合じゃない!」
ZガンダムとキュベレイMk-IIは、大気圏へ入りかけている。ジュドーはプルの機体へ寄った。肩に損傷を与えながらも、キュベレイをかばう位置を取る。
「離れて!」
プルの声が通信に重なる。
「このままじゃ危ないんだよ!」
「敵なんでしょ、あたしは!」
ジュドーは答えなかった。機体の姿勢を保つことに集中する。プルも操縦桿を握り、警告表示の向こうにいるZガンダムを見た。
自分が銃を向けた相手が、離れずにいる。
その行動をどう受け止めればいいのか、今は決められない。プルはもう一度ジュドーの名を呼ぼうとして、声を止めた。
視界が大気の光に満たされる。
ジュドーはキュベレイMk-IIをかばいながら降下を続けた。プルはその機体を見ていた。敵だという考えが消えたわけではない。けれど、ジュドーが自分を守ろうとしていることも、目の前で起きていた。