機動戦士ガンダム とあるアクシズの超電磁砲 〜あたしはニュータイプ、指先ひとつで宇宙世紀を撃ち抜く電撃使い〜 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
地球へ降りてからも、ジュドーはプルのことを考えていた。
大気圏へ入る直前、彼女は自分に銃を向けていた。呼びかけても、敵だという答えは変わらなかった。あのあとプルがどうしているのか、ジュドーにはわからない。
わからないまま、リィナを捜す道を進むしかなかった。
アーガマはアフリカ上空で嵐に遭い、カプールの攻撃も受けた。地元の漁師に案内されて安全な入江に停泊できたとき、ジュドーはようやくダカールへ向かう手段を探した。リィナがそこにいるかもしれない。
漁船に乗り込んだジュドーは、タマンという少年と、その妹アヌに出会った。
「ダカールへ行くの?」とアヌが聞いた。
「ああ。妹を捜してる」
「妹さんの名前は?」
「リィナ」
ジュドーが答えると、アヌは隣にいるタマンを見た。タマンは船の支度を続けている。
「お兄ちゃんも、妹がいるんだね」
「目の前にいるだろ」とタマンが言う。
アヌは笑わなかった。
船が岸を離れると、ジュドーは進む先を見つめた。ダカールまで、どれほどかかるだろう。早くリィナに会いたい。だが、タマンに急げと言っても、海が静かになるわけではない。
しばらくして、アヌがジュドーのそばへ来た。
「妹さんを見つけたら、どうする?」
「連れて帰る」
「すぐに?」
「できるならな」
アヌはまた兄を見た。タマンは舵を取ったまま、こちらを向かない。
「私も、お兄ちゃんに帰ってきてほしい」
その言い方が気になって、ジュドーは尋ねた。
「タマンは、どこかへ行くのか?」
アヌは答える前に、兄の背中を確かめた。
「危ない仕事をしてる。やめてって言っても、聞いてくれない」
「アヌ」とタマンが呼んだ。
「だって、本当のことだもの」
タマンは振り向いた。
「金が要るんだよ。お前も知ってるだろ」
「知ってる。でも、そのためにお兄ちゃんが帰ってこなくなったら、嫌だ」
ジュドーは口を挟めなかった。2人がどう暮らしてきたかを、今会ったばかりの自分は知らない。タマンの仕事が何なのかも、まだ聞いていない。
それでも、アヌが言葉を尽くしていることはわかった。
タマンは再び前を向いた。話はそこで途切れたが、アヌはジュドーのそばを離れなかった。
やがてジュドーは、タマンがネオ・ジオンのために働いていると知る。金を得るために引き受けた仕事だった。
「知ってたのか、アヌ」
「全部は知らない。でも、やめてほしかった」
アヌはまっすぐジュドーを見た。
「妹さんを捜してるんでしょう。だったら、私が兄を待ってるのも、わかってくれる?」
ジュドーは頷いた。ただ、わかると言うだけでタマンを連れ戻せるわけではない。
「俺にできることを話してくれ」
「お兄ちゃんを止めて。私が言っても、聞いてくれないから」
頼れるはずの兄が、アヌの言葉に耳を貸さない。だから彼女は、出会ったばかりのジュドーに事情を話したのだ。
「必ず無事に連れ帰る、とは言えない」
ジュドーがそう言うと、アヌは唇を結んだ。
「でも、話す。タマンが聞くまで、諦めない」
アヌは少し間を置いて、頷いた。
その後、タマンがカプールでアーガマへの攻撃に出たと知り、ジュドーはZZガンダムで出撃した。
「タマン、聞こえるか!」
返事はすぐには来なかった。アーガマにはザク・マリナーの攻撃も迫っている。ジュドーは艦を守りながら、タマンへ呼びかけ続けた。
「アヌが待ってる!」
『あいつを食わせるには、金が要るんだ』
「それをアヌに話したのか?」
『話してどうなる!』
「話さなきゃ、アヌが何を心配してるかも聞けないだろ!」
ジュドーはタマンの暮らしを知らない。金が要らないなどとは言えなかった。だが、アヌが兄の帰りを待っていることなら、本人から聞いている。
『お前に何がわかる』
「全部はわからない。俺も妹を捜してる途中だ。だから、待ってるやつのところへ戻って、もう一度話してほしいんだよ」
タマンからの返事が途切れる。
ジュドーはアーガマを守るために機体を動かした。説得の答えを待つ間も、攻撃は止まらない。今できることをしながら、もう一度通信を開く。
「タマン。アヌに、お前の言葉で答えてやってくれ」
戦いのあと、タマンはネオ・ジオンへの協力と、戦争で金を稼ぐ考えをやめた。
ジュドーは、アヌと向き合うタマンを少し離れて見た。2人がこれから何を話すかは、2人で決めることだ。
リィナはまだ見つかっていない。プルに何が起きたのかも、わからないままだ。
それでもアヌは、自分の言葉を聞いてくれるかどうかわからないジュドーに、兄のことを話した。ジュドーも、タマンが応じると決めつけずに呼びかけた。
信じたから、必ず望む答えが返るわけではない。
それでも、相手に話すことからしか始められないと、ジュドーは思った。