機動戦士ガンダム とあるアクシズの超電磁砲 〜あたしはニュータイプ、指先ひとつで宇宙世紀を撃ち抜く電撃使い〜 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
タマンとアヌのいる入江を離れても、ジュドーの耳にはアヌの言葉が残っていた。
兄を連れ戻してほしい。あのときアヌは、ジュドーが必ず成功すると知って頼んだわけではない。それでも、兄に届かなかった言葉を託した。
ジュドーには、まだリィナを見つけるという目的がある。ダカールへ向かう道を、ここで止まるわけにはいかなかった。
アーガマはカラバと行動を共にし、ダカールを挟み撃ちにすることになった。ジュドーたちガンダムチームは別動隊として、砂漠地帯から進む。
「見渡す限り、砂ね」
ルーの声が通信に入る。
「敵がいないとは限らないだろ」とジュドーは答えた。
目の前には、いくつもの砂丘が重なっていた。機体を進めれば見通しが開けると思った場所でも、次の斜面が視界を遮る。遠くに仲間の機影が見えている間はいい。砂丘の向こうへ隠れると、その距離が急に気になった。
「互いの位置を確かめながら行こう」
エルの返事が聞こえ、ジュドーは前へ進んだ。
最初の攻撃は、見えていた方向からは来なかった。
砂が跳ね、ディザートザクが姿を現す。ジュドーがそちらへ機体を向けると、別の砂丘の陰からドワッジが現れた。
「旧式の機体だと思って、油断しないで!」
ルーの声が飛ぶ。
「してないよ!」
答えながら、ジュドーは攻撃を避けた。敵はまっすぐ迫ってこない。姿を見せてはこちらの進路を変えさせ、砂丘に隠れる。追えば、別の方向から攻撃が来る。
ロンメル部隊は、この砂漠を知っていた。
「エル、聞こえるか?」
『聞こえる! でも、そっちが見えない!』
ジュドーは機体を止め、通信に集中した。仲間の声は届くのに、どの砂丘の向こうにいるのか、すぐには確かめられない。敵を追うほど、互いの姿を見失う。
「追いかけすぎるな。まず位置を合わせよう」
『わかった!』
ジュドーは敵機から目を離さず、仲間が見える位置へ移った。そこへまた攻撃が来る。相手は、こちらが合流しようとする動きまで見ているらしい。
リィナのいるかもしれないダカールは、この先だ。急ぎたい気持ちが、操縦桿を握る手に出る。ジュドーは息を吐き、前方だけを見るのをやめた。
「ルー、エル。返事をしてくれ。見えなくなったら、俺も呼ぶ」
『了解』
『ちゃんと聞いてるわよ』
2人の声を確かめて、ジュドーは機体を動かした。砂丘の陰へ消えた敵だけを追わない。仲間の位置を見失わない範囲で進む。それでも、ロンメル部隊の攻撃は厳しかった。
一方、ロンメル中佐の前にいるのは、新しい機体を操るガンダムチームだった。部隊は旧式のディザートザクとドワッジで、砂漠の地形を使って戦っている。待ち続けた年月の中で知り尽くした土地が、彼らの武器だった。
だが、戦う相手が子供たちだと知り、ロンメルは衝撃を受ける。
「子供が、あれを動かしているのか」
目の前の機体が強いことは、戦えばわかる。その操縦席にいるのが子供だという事実は、彼が待ち続けてきた時間を突きつけた。
ジュドーには、ロンメルが何年ここで待っていたかはわからない。ただ、敵が古い機体だからといって、簡単に退く相手ではないことは、身をもって知った。
「まだ来る!」
ジュドーは仲間に呼びかけ、迫る機体へ向き直る。ルーとエルも応じた。砂丘を隔てられても、互いの声を聞き、位置を確かめながら戦う。
攻撃を受け、かわし、また前へ出る。
ロンメル部隊との戦いが終わったとき、勝ったのはガンダムチームだった。ザビ家の再興を願い、砂漠で待ち続けたロンメルの夢も、そこで潰えた。
ジュドーはしばらく、機体を動かせなかった。
「ジュドー?」
ルーの声に、彼は顔を上げる。
「聞こえてる。エルもいるか?」
『いるよ』
2人の返事がそろって、ジュドーはようやく前を見た。
ダカールへの道は続いている。リィナを捜すために進む。その気持ちは変わらない。ただ、この砂漠で戦った相手にも、譲れないものがあった。
ジュドーは仲間の機影を確かめてから、機体を進めた。今度は、誰の姿も見失わないように。