機動戦士ガンダム とあるアクシズの超電磁砲 〜あたしはニュータイプ、指先ひとつで宇宙世紀を撃ち抜く電撃使い〜 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
ロンメル部隊との戦いを越えても、砂漠は終わらなかった。
ジュドーたちの水は足りなくなっていた。ダカールへ進むには、どこかで補給しなければならない。ジュドーはコア・ファイターで水を探しに出た。
上空から見る砂漠には、道らしい道もない。ジュドーは地形を確かめながら飛んだが、水場は見つからなかった。焦って進路を変えたとき、機体を制御しきれなくなる。
不時着したジュドーを見つけたのは、マサイという女性だった。
「水を探しているの?」
ジュドーが頷くと、マサイは彼と機体を見比べた。
「仲間もいる。みんな、もう水が少ないんだ」
マサイはすぐには答えなかった。ジュドーは、助けてもらったばかりの相手に、さらに案内まで頼んでいることに気づく。
「無理なら、自分で探す。でも、水のある方角だけでも教えてくれないか」
マサイは砂漠の先へ目を向けた。
「村がある。オアシスも」
その言葉に、ジュドーはようやく息をついた。
マサイの案内で、ガンダムチームは小さな村にたどり着いた。水はそこにあった。ところが、村人たちは分けようとしない。
「必要な分だけでいいんです」
ジュドーが頼んでも、返事は変わらなかった。
砂漠を歩いてきた仲間たちの顔を見る。水を見つけたのに、手が届かない。ジュドーはもう一度頼もうとして、村人たちの視線が自分ではなく、マサイに向いていることに気づいた。
「マサイが連れてきたのか」
誰かが言った。
マサイは何も答えない。村人もそれ以上は説明しなかった。ただ、彼女が立つ場所だけが、周囲から離れているように見えた。
ジュドーはマサイを見た。自分を助け、ここまで案内してくれた人だ。村人の態度だけを見れば、彼女が何か悪いことをしたようにも思える。けれど、ジュドーが実際に見たマサイは、困っている相手を見捨てなかった。
「どうして、あんたまでそんな目で見られるんだ」
マサイは答えを急がなかった。
やがて、彼女の亡くなった恋人タグが、かつてジオンの兵士だったことをジュドーは知る。一年戦争への恨みが残る村で、マサイはタグと結びつけられ、遠ざけられていた。
「タグのことを、知ってるのか」
マサイに問われ、ジュドーは首を横に振った。
「知らない。今、名前を聞いた」
「そう」
「でも、あんたが俺を助けてくれたことは知ってる」
マサイはジュドーを見た。ジュドーは、彼女に何と言えばいいのかわからなかった。タグを知らない自分が、村人たちの長年の思いを解けるはずもない。それでも、見たことまでなかったことにはしたくなかった。
水を分けてもらえないまま、ガンダムチームは村を離れた。
ジュドーは、マサイが案内してくれた理由を考えた。助けてくれたのは本当だ。村で彼女が孤立しているのも見た。その2つを知ったからといって、マサイの考えをすべて理解できたわけではない。
そしてマサイにも、ジュドーには見えていない願いがあった。
亡くなったタグと、彼が乗っていたモビルスーツの強さを村人に認めさせたい。そのために彼女は訓練を重ね、ゲルググでガンダムチームに挑んできた。
「マサイ?」
ジュドーは機体を止めた。彼女が乗っているとわかっても、目の前のゲルググは攻撃してくる。
「どうして俺たちと戦う!」
『見てほしいからよ』
通信からマサイの声が返る。
『タグが乗っていた機体を。あの人が、弱かったわけじゃないってことを』
ジュドーはゲルググの動きを追った。マサイはただ機体に乗って現れたのではない。ここで戦うために備えてきたのだと、その動きが告げていた。
「村の人たちに言えばいいだろ!」
『言ってきたわ』
マサイの返事に、ジュドーは次の言葉を失った。
話せば伝わる。前にタマンへ呼びかけたときは、そう信じて声をかけ続けた。だが、マサイはもう話していたのかもしれない。それでも届かなかったから、今度は戦う姿を見せようとしている。
「だったら、俺たちを倒しても、タグのことをわかってもらえるとは限らない!」
『それでも、見せたいのよ!』
ゲルググが迫る。ジュドーはZZガンダムで応じた。
マサイがここまで訓練してきたことは、戦えばわかる。けれど、攻撃を受け続けるわけにはいかない。ジュドーは彼女の機体を退けた。
戦いは終わった。
ジュドーはゲルググの方を見た。マサイは生きている。だが、勝敗が決まったことで、村人たちがタグを認めるとは思えなかった。自分がマサイを助けられたとも、言えなかった。
「俺が見たことは、忘れない」
ジュドーは通信に向かって言った。
「水を探してた俺を、あんたが助けてくれた。それから、タグのために戦ったことも」
マサイから返事はなかった。
ジュドーは仲間たちのところへ戻る。水を探し、ダカールへ進まなければならない。リィナもまだ見つかっていない。
振り返ると、マサイは村から離れた場所にいた。
人から聞いたことだけで、彼女を知ったつもりにはなれない。自分の目で見たことも、彼女の痛みを消してはくれない。ジュドーはその両方を胸に残したまま、砂漠の先へ向かった。