【祝・原作漫画完結&アニメ4期連動待機中】機動戦士ガンダム とあるアクシズの超電磁砲 〜あたしはニュータイプ、指先ひとつで宇宙世紀を撃ち抜く電撃使い〜   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

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才人工房(クローンドリー)

先に言っておく。ここから先は、あたしの知らない場所の話になる。

 

でも、あたしの「声」は、ちゃんと、そこまで届いていた。

 

地球降下中の、巡洋艦サンドラ。

 

その最下層に、乗組員のほとんどが立ち入れない一室があった。

 

「ここだ」

 

グレミー・トトは、重い扉の前で足を止めた。

 

後ろに続く副官は、緊張した面持ちで、周囲を見回している。歴戦の軍人でも、この静けさには背筋が伸びるらしい。

 

「閣下。ハマーン様にも秘密にしている部屋とは、いったい」

 

「見れば、分かる」

 

扉が、ゆっくりと開いた。

 

ひんやりした空気が、頬を撫でる。消毒液と、かすかな潮の匂いがした。

 

淡い緑の光が、広い部屋を満たしていた。

 

円形に並んだコールドスリープの槽。冷たい液体の中で、少女たちが静かに眠っている。

 

同じ顔。同じ髪。

 

小さな胸が、ゆっくり、上下している。ひとつひとつの槽に、小さな札がかかっていた。

 

数字だけの、名前のない札。

 

副官の喉が、ごくりと鳴った。

 

「これは……」

 

「エルピー・プルを素体に作った、ニュータイプの複製体だ。プルツーから、プルトゥエルブまで。11体いる」

 

グレミーの声は、いつもと同じように穏やかだった。

 

「皆、コールドスリープ中だ。プルツーだけは試験のたびに起こしているが、本格的に目覚めるのは、まだ先になる。……私の、ニュータイプ部隊としてね」

 

「しかし、閣下。このことを、ハマーン様は」

 

「ご存じない。だから、君に見せた」

 

「閣下は、いつから、これを」

 

「ずっと前からだよ。アクシズで、誰にも知られないように、少しずつね」

 

副官は、静かに息を呑んだ。

 

グレミーは、ゆっくり振り返った。

 

「ハマーン様の足元は、いつか崩れる。その時、私に力を貸してくれる者が必要だ。……君は、どちらにつく」

 

沈黙。

 

槽の泡が、こぽ、と静かに上がる音だけが響く。

 

やがて、副官は、深く頭を下げた。

 

「このお方に、お仕えいたします」

 

その声は、迷いのない、軍人の声だった。

 

グレミーは、満足そうに頷く。

 

「ありがとう。……さあ、見てくれ。彼女たちを」

 

眠っている少女たちの寝顔は、驚くほど、あどけなかった。

 

副官は、思わず、小さく呟いた。

 

「……こんな子どもたちを、戦わせるのですな」

 

「そうだ。それが、彼女たちの、生まれた意味だからね」

 

その答えが、ひどく静かで、ひどく、冷たかった。

 

副官は、それ以上、何も言えなかった。

 

ただ、眠る少女たちの寝顔だけが、いつまでも目に焼きついて離れなかった。

 

グレミーは、1番手前の槽に、そっと指先を触れた。

 

眠る少女の頬に、うっすらと光が揺れている。

 

「この子は、特別でね。起きたら、きっと、プルよりずっと激しい」

 

「プル、とは」

 

「いまは、私の手を離れてしまった、もう1人の姉さ」

 

その頃、アーガマの展望窓で、あたしは膝を抱えていた。

 

窓の外には、星が静かに瞬いている。

 

ジュドーは、リィナを失ったと思って、ずっとコクピットに閉じこもったままだ。あたしは、その外側で、ただ、立ち尽くすことしかできなかった。

 

「……ごめんね、ジュドー」

 

呟いた、その時。

 

ふいに、背中を、冷たい風が撫でた気がした。

 

違う。風じゃない。

 

感応波だ。

 

あたしと、まったく同じ形の。けれど、あたしよりずっと冷たくて、静かで、深い。

 

1つ、2つ、3つ……ううん。

 

もっと。10、11。

 

遠い遠い、どこかの地下で、規則正しく息をしている。

 

寝息の1つ1つが、あたしの心臓の音と、少しずつ重なっていく。

 

「……あたしたち、だ」

 

勝手に、そう分かった。

 

プルツーのほかの子たちは、名前も、顔も、知らない。でも、確かに、あたしと同じ場所から生まれた、あたしの――

 

「妹」

 

その言葉が、自然に口からこぼれた。

 

胸が、じんと熱くなる。

 

会いたい。抱きしめてあげたい。

 

あたしは、自分の掌をじっと見つめた。

 

プルシリーズ、っていう名前は、まだ知らない。でも、あたしの中の何かが、もう、その言葉を呼んでいた。

 

あたしと同じ顔で、同じ声で、同じ寂しさを抱えた子たち。

 

どうか、悲しい夢を見ていませんように。ひとりぼっちで眠っているなら、あたしが、そばにいてあげたい。

 

そう思った、ほんの少し後。

 

別の声が、あたしの中で、そっと囁いた。

 

『でも、あの子たちは、あなたを知らない』

 

『あなたも、あの子たちを、何も知らない』

 

あたしは、膝を抱えた腕に、ぎゅっと力をこめた。

 

「……知りたい」

 

声が、震えた。

 

怖い。でも、知らないふりを続ける方が、もっと、怖い。

 

「あたしが何者なのか。あの子たちが、何のために、生まれたのか」

 

窓の向こうで、星がひとつ、流れた。

 

星の光は、何も答えてくれない。それでも、あたしは、そこにいる誰かへ、そっと呼びかけた。

 

――おやすみ。もうすぐ、会いにいくからね。

 

そんな約束をしても、返事なんて、返ってくるはずがないのに。

 

でも、確かに、誰かが聞いている気がした。

 

その向こう、遠い遠い地下で。

 

11個の冷たい光のうちの1つが、ほんの少しだけ、強く瞬いた気がした。




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