機動戦士ガンダム とあるアクシズの超電磁砲 〜あたしはニュータイプ、指先ひとつで宇宙世紀を撃ち抜く電撃使い〜   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

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やくそく

先に言っておく。約束は、守るためにするものじゃない。

 

「守りたい」と思えた時にはじめて、ほんとうの約束になる。

 

アクシズが、揺れていた。

 

グレミーの艦隊と、ハマーンの艦隊。ふたつの光が、宇宙のあちこちでぶつかり合っている。

 

その真ん中を、わたしは、ふらふらと飛んでいた。

 

「……気分が、悪い」

 

『だいじょうぶ? プルツー』

 

プルの声が、そっと聞く。

 

『顔、真っ青だよ。きっと、キャラの艦隊と戦ったからだよ。あの人、すっごく強いもん』

 

「……うるさい」

 

『えへへ、ごめん』

 

コクピットの中は、静かだった。

 

静かすぎて、自分の心臓の音が、うるさい。

 

撃った相手の顔が、浮かぶ。

 

ブライトの名前を呼んだ、あの人の声が、耳から離れない。

 

『戻れ、プルツー。アクシズへ』

 

グレミーの声が、通信に入る。

 

わたしは、機体の向きを変えた。

 

アクシズの格納庫に、クィン・マンサを降ろす。

 

扉が開いて、グレミー・トトが、コクピットへ乗りこんできた。

 

「私が、同乗しよう。君を、安定させなければならない」

 

グレミーの腕が、わたしの肩を、ぎゅっと掴んだ。

 

痛い。

 

あたたかい声なのに、指先だけが、冷たかった。

 

「さあ、行こう。敵が、アクシズの中に入ってきた」

 

『……来たんだ』

 

プルの声が、ぱっと明るくなる。

 

『ジュドーが、来たよ』

 

胸の奥が、どくん、と鳴った。

 

アクシズの内部で、ビームの光が走る。

 

2機の機体が、わたしの前に立ちはだかった。

 

Zガンダム。ガンダムMk-II。

 

「ここは、通さない」

 

通信越しの、女の子の声。ルー・ルカと、エル・ビアンノ。

 

わたしは、ファンネルを放った。

 

光が、駆け抜ける。

 

数秒で、2機は、動かなくなった。

 

「ルー! エル!」

 

その声が、聞こえた。

 

あたたかい、まっすぐな声。

 

プルがいつも嬉しそうに呼んでいた、あの声だ。

 

白い巨体が、闇の向こうから、飛びこんできた。

 

フルアーマーZZ。

 

ジュドー・アーシタ。

 

「やめろ、プルツー!」

 

ジュドーの声が、まっすぐ、わたしの胸を打った。

 

「俺は、お前と戦いたくない!」

 

「……敵、でしょう」

 

わたしの口が、勝手に動いた。

 

『ガンダムは、敵』

 

頭の奥で、冷たい声が囁く。

 

グレミーが植えつけた、古い鎖。

 

「敵なら、撃つ」

 

『やめて、プルツー!』

 

プルの声が、悲鳴みたいに響いた。

 

『あんたは、そんなこと、したくないでしょ!』

 

「……したくない」

 

その言葉が、ぽろりと、口からこぼれた。

 

自分でも、驚いた。

 

「したくない。でも、わたしは、そうするように、作られた」

 

「作られたんじゃない!」

 

ジュドーが、叫んだ。

 

「お前は、お前だ! プルじゃなくて、プルツーだ!」

 

グレミーが、わたしの肩を、強く握りしめる。

 

「惑わされるな、プルツー。彼は、君を道具にしたいだけだ」

 

――道具。

 

その言葉に、はっとした。

 

あんた、わたしを、そう思ってるんだ。

 

ずっと、そう思ってたんだ。

 

『ほらね。あたしの言った通りでしょ』

 

プルの声が、優しく笑った。

 

『でもね、プルツー。あんたは、道具じゃないよ』

 

『だって、あたしの妹だもん』

 

その瞬間、胸の奥で、固く閉じていた何かが、ぱりん、と割れた。

 

わたしは、ゆっくり、息を吸った。

 

そして、ゆっくり、手を伸ばす。

 

「……プルツー?」

 

グレミーの声が、遠くで聞こえた。

 

わたしは、コクピットのハッチを、開けた。

 

冷たい宇宙の風が、顔に当たる。

 

目の前には、白い巨大な機体。

 

その手のひらが、そっと、差し出されていた。

 

「来い、プルツー!」

 

ジュドーの声が、まっすぐ、わたしを呼んでいる。

 

「待て、プルツー!」

 

グレミーが、わたしの腕を掴んだ。

 

痛い。振りほどけない。

 

でも。

 

『だいじょうぶ。あたしが、ついてるよ』

 

その声が、わたしに、力をくれた。

 

「放して」

 

わたしは、グレミーの手を、振りほどいた。

 

自分の手で、自分の意思で。

 

そして、ZZの手のひらへ、飛び乗った。

 

「ごめんなさい、グレミーさま」

 

涙が、勝手に、こぼれた。

 

「わたし、もう、あなたの道具じゃない」

 

次の瞬間。

 

遠くから、一筋の光が、闇を切り裂いた。

 

Zガンダムの、狙撃だった。

 

クィン・マンサの頭部が、爆発の光に呑まれていく。

 

「……グレミーさま」

 

わたしは、振り返らなかった。

 

振り返ったら、きっと、泣き崩れてしまうから。

 

爆風が、わたしの身体を、焼いた。

 

意識が、ふっと、遠のく。

 

『プルツー、プルツー!』

 

誰かの声が、遠くで呼んでいる。

 

あたたかい手が、わたしを、そっと抱き上げた。

 

「……ジュ、ドー」

 

「しっかりしろ! もう、大丈夫だ!」

 

その声に、わたしは、小さく、ほほえんだ。

 

『ねえ、プルツー』

 

プルの声が、いつもより、ずっと近くで響いた。

 

『約束、おぼえてる?』

 

「……やくそく」

 

『プリン、また食べようね、って』

 

わたしは、目を閉じたまま、ゆっくりと、うなずいた。

 

「……うん。……食べる」

 

『やった!』

 

プルの声が、ぱっと、花が咲くみたいに弾んだ。

 

『約束だからね。絶対、ぜったいだよ』

 

遠くで、星が、静かにまたたいた。

 

その光が、ふっと、あたたかく、わたしの頬を撫でた気がした。




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