たわけ!ドアホ男子   作:スピリタス3世

73 / 73
Codaは曲の最後の部分を表す音楽用語です。本作では転じて最終回の意味で使ってます。


Coda かなでるセレナーデ

  奏視点  

 

 演奏が終わった後、私たちは楽器置き場まで撤収し、皆と健闘を讃え合っていた。

 

「お疲れ、久石‼︎良かったぞ!」

「大輝こそお疲れ。どう、身体しんどくない?」

「全然大丈夫だ‼︎これからナンパ100人出来るくらいだし‼︎」

「大丈夫じゃないね。病院に帰って。」

「酷すぎるだろ‼︎」

「ねえ、さつき。あのカップルの邪魔しない方がいいよね?」

「そうだね、みっちゃん!」

「全く、アイツらすぐイチャつくんだから。」

「仲良しでいいですね………」

「あの感じ、漫画に描けそうです……っ!」

「自分も沙里のところに行ってきた方がいいですか‼︎⁉︎」

 

 そして、その数分後には、コンクールメンバーだけでなく、

 

「皆さん、めちゃくちゃ良かったです!お姉ちゃんも喜んでました!*1

「だいかなが、今日も今日とて、ラブチュチュ。2年1組、上石弥生です。」

「ぷっw」

「こらそこ、一句詠むな。」

「久石先輩に勝ち逃げされた……っ!最悪なんですけど‼︎」

「イェーイ!」

 

 サポートメンバー。更には………

 

「皆、お疲れ!」

「いや〜、すごかったよ〜!」

「緑、泣いちゃいました!」

「私留年してたら、こんな難しい曲をやることになってたのか………」

「ねえ皆、優子とかギャン泣きしてたよ!」

「はぁ⁉︎してないし‼︎///」

「してたね!」

「だな。」

「………優子、ハンカチ。」

「お〜、みぞれは優しいね〜!」

「その優しさが目に染みるんですけど〜‼︎」

 

 OGの先輩方にまで。そして、この皆に支えられて、ここまで来れたんだ。そう思うと、

 

「皆さん。今まで本当に、ありがとうございました!」

「「「「ありがとうございました!」」」」

「「「「いえいえ〜!」」」」

 

 自然と感謝の言葉が出ていたのだった。

 

 

 

 

 

 それから数時間後、いよいよ結果発表の時間がやってきた。

 

「ドキドキするね〜。」

「うん。」

 

 私は梨々花と一緒にステージ袖で待機した後、雛壇に上がった。関西大会と同じく、大輝は隣にいない。何故ならこれが部長と副部長の仕事、賞状とトロフィーの受け取りだから。震える足で雛壇に立ち、梨々花の隣で、今か今かと結果発表の時を待っていた。

 

「それでは、第66回全国吹奏楽コンクール、高等学校の部・前半の結果を発表します。」

 

 そして、いよいよその時だ。

 

「1番。九州代表、清良女子高等学校。ゴールド金賞。」

 

 まずは清良女子。ゴールド金賞の言葉に、会場中が歓声に包まれる。さて、次は私たちの番だ。

 

「2番。関西代表、北宇治高等学校。」

 

 心臓が張り裂けそうだ。果たしてリベンジは成功したのか、それともダメなのか?この3年間が良かったのか、それとも悪かったのか。長かった練習の結果が、この一瞬で発表される。さあ、どうだ…………っ⁉︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゴールド金賞‼︎」

 

 良かった、本当に良かった‼︎去年のリベンジ達成‼︎そして、人生初となる全国金‼︎梨々花と一緒に歩み、彼女が賞状を、そして私がトロフィーを受け取る。そしてお辞儀する。それが終わって雛壇に戻る時、

 

「やったね、奏!」

「うん!」

 

 梨々花と小さな声で称え合ったのだった。

 

 

 

 

 そして、皆のところに戻る瞬間に蘇る、嫌な記憶。そうだ、関西大会の時は、ここで大輝が倒れて………。大丈夫だよねと思いつつ、どこか不安になりながら、皆のところに戻ると…………

 

「久石、やったな‼︎」

 

 大輝が大喜びしながら抱きついてきた。良かった、今度は無事だ‼︎そして、全国金の喜びを共有できる‼︎

 

「うん‼︎良かった‼︎本当に良かった‼︎ありがとう、大輝‼︎」

「こっちこそありがとう、久石‼︎叶って良かったぜ‼︎」

 

 それが何より嬉しくて、思わず笑いながら泣いてしまったのだった。

 

「ママ先輩!今の写真、撮りました⁉︎」

「うん、撮ったよ!あとで佳穂ちゃんにあげるから、漫画で使ってね!」

「はい‼︎」

「「こらそこ、何してるんですかぁぁぁぁぁ⁉︎///」」

 

 だからか、皆が周りにいることに気がつかなかった。しかも揶揄われたし‼︎なんかムカつく‼︎そうだ、黒江先輩には復讐できないけど、佳穂になら………っ‼︎

 

「ねえ、佳穂。」

「はい、なんでしょう⁉︎」

「私と大輝で漫画は描いてもいいけど、一個条件を課そうか。」

「条件………?」

「来年も全国金、獲って。」

「はい‼︎もちろんです‼︎」

「うわ〜、引退したからって好き放題言ってますね〜。ずる〜。」

「あっ、華子には無理か〜。」

「はぁ⁉︎出来ますけど⁉︎舐めないでもらえます⁉︎」

「それでよし!」

 

 そして、ここから先の北宇治に私は居ない。佳穂たちに次を託し、2度目の全国金を、ひいては北宇治の強豪校としての地位を確立してほしい。そう願いを込めて、私はお願いしたのだった。

 

「照葉、あとは任せたぞ。」

「任されました、兄さん‼︎」

「すずめと弥生は皆を引っ張って。杏奈はその2人についていって。」

「私たちからのお願いだよ〜!」

「頼んだぜ!」

「「はいよ!」」

「は、はいよ………///」

「「かわいい〜♪」」

 

 もちろん皆も同様に。

 

「それじゃあ、佳穂、華子。北宇治をよろしくね。」

「「はいよ!」」

 

 これから先の、北宇治の繁栄を願って。

 

 

 

 

 その後は、バスの出発前に、私たち3年生で集まっていた。

 

「みっちゃ〜ん!終わっちゃったね〜。」

「そうだね、さつき。もう引退だなんて………」

「早いものだね。」

「そ〜ですなぁ〜!」

 

 なんか、ついこの間入学した気がする。それなのに、もう終わり。全国金を獲れた喜びと、北宇治での生活が終わる寂しさが、心の中に同時に存在していた。

 

「うっし!じゃあ留年するか〜!」

「大輝の場合、冗談じゃないからやめてよ。」

「はぁ⁉︎どう聞いても冗談だろ‼︎だって俺、頭いいし‼︎」

「このやり取りがバカ丸出しだから。」

「で〜、お2人の3年間での進展は〜?」

「歳をとった‼︎」

「「「「それだけ〜⁉︎」」」」

 

 そして、もしかしたら大輝と演奏するのも最後だったかもしれない。そう思うと、余計寂しくなったのだった。

 

 

 

 

 だからか、コンクールが終わって片付けも終わったその日の夜………

 

「ねえ、大輝。ちょっといい?」

「なんだ、久石?別にいいけど………」

 

 私は大輝を呼び出した。

 

「終わっちゃったね。」

「だな。」

「…………」

「えっ、それだけ?」

「悪い?」

「いや、悪くねえけど………お前もしかして、寂しいのかw」

「うん。」

「そ、そっか……///」

 

 私は寂しくなって、思わず大輝に寄りかかる。それに少し戸惑ったのか、あるいは照れたのか。大輝の鼓動が速くなるのを感じた。これから先、私たちは別の大学に進学する。同じ東京とはいえ、違う道に。となると、ここで大輝との音楽は終わり。それが無性に嫌で、寂しくて、もっと一緒に居たくて、なんならずっと居たくなった。この間みたいに、大輝がいつ死ぬかも分からない。そう思うと、伝えられることは伝えておこう。ついに私は、そう決意した。

 

「ごめん、大輝。私5年前、嘘ついちゃった。」

「嘘………?」

「あの時、大輝のナンパ断ったじゃん。」

「えっ………?///」

「あれ、嘘///」

「そうか………///」

「だから………その………好きです。付き合ってください///」

「こちらこそ、好きです。よろしくお願いします///」

「なんで敬語なの?///」

「お前だってそうじゃん///」

「そっか………///」

 

 そしたら、大輝も受け入れてくれた。それが嬉しくて、思わず変な口調になってしまった。自分でも緊張してるのが分かる。そんな夜の日だった。

 

 

 

 

 それから約半年後、私は医大に、大輝は藝大に無事合格し、2人で東京に住むことになった。

 

「これから東京で、新しい物語が始まるんだな‼︎」

「大輝、声大きい。」

「いいだろ。お前ももっとテンション上げてこうぜ、()♪」

「まあ、それもそっか………///」

 

 こうして、私と大輝の北宇治での音楽は幕を閉じたのだった。

*1
すずめ




 これで、「たわけ!ドアホ男子」は完結です!最後まで読んで下さり、ありがとうございました!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

世界一幸せな男(作者:トトロのとろろ)(原作:響け!ユーフォニアム)

3年生になり部長になった黄前久美子の前に現れたのは、新入生のサックス奏者だった。ただその新入生の希望する楽器はユーフォニアムだった。そんな新たな仲間達を迎えた北宇治高校吹奏楽部の物語。▼この作品は、アニメ展開を元に原作展開やオリジナル展開を混ぜた話になってます。また一部キャラについては、設定から性格や口調を予想したりしていますが、そもそも性格や口調の予想がで…


総合評価:53/評価:-.--/連載:19話/更新日時:2026年09月18日(金) 10:00 小説情報

元野球部が過ごすクラリネットパートにようこそ(作者:桜紅月音)(原作:響け!ユーフォニアム)

中学では野球部だった主人公の工藤浩輔。▼北宇治に入学し、野球部に行くつもりが、気づいたら吹奏楽部に入っていた。▼知識はあるものの、吹部自体は初心者である彼は、無事に吹奏楽部でやっていけるのか▼不定期更新▼*小説タイトル変更有り▼アニメ基準でやっていきます。▼


総合評価:48/評価:-.--/連載:12話/更新日時:2026年09月17日(木) 00:00 小説情報

カリスマチート転生者先輩 in 北宇治(作者:山田太郎)(原作:響け!ユーフォニアム)

カリスマチート転生者先輩を小笠原世代に生やして、早いうちに吹奏楽部を改革します。▼ガールズラブタグは超保険です。必須タグなので入れましたが、殆ど0です。そこを期待している方はすみません。▼テンポ優先のため、アニメで描かれた部分は必要な部分だけ書きます。未視聴の方はアニメを観ましょう。▼原作2年目で完結しました。3年目はあまり書けるパートがなさそうなので、思い…


総合評価:1935/評価:8.46/完結:8話/更新日時:2026年02月20日(金) 20:00 小説情報

いつか途切れた、音の続きを(作者:いつかの音色)(原作:響け!ユーフォニアム)

 中学二年生のあの時、私は間違えた。私の行動一つで部が崩壊してしまうと、あの時の私は知らなかった。そして、私は逃げてしまった。▼ 周囲への気配りが足りなかった。みんなが何を考えているか、なんて全然考えていなかった。何より、心が弱かった。▼ もう二度と、同じ過ちは繰り返さない。私はもう絶対に、逃げたりしない。▼ ▼△▼ 南中出身、音楽チートの主人公を黄前世代に…


総合評価:3961/評価:8.99/連載:26話/更新日時:2026年09月17日(木) 22:00 小説情報

想いを音色に乗せて(作者:猫柳/nekoyanagi)(原作:響け!ユーフォニアム)

▼ 両親を早くに亡くし、バイトと勉学、音楽の両立に四苦八苦しながら北宇治高校吹奏楽部で己の理想の音色をトランペットで表現しようと頑張る男の子の物語。▼ 原作終了後、大学以降の物語も書きたいなぁと思っております。▼ クロスオーバーは迷っているので念の為です。原作の間に出すことは恐らくないです。▼ キャラタグ一旦消去させていただきます。▼ 青のオーケストラ要素ち…


総合評価:1951/評価:8.98/連載:19話/更新日時:2026年09月11日(金) 07:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>