奏視点
演奏が終わった後、私たちは楽器置き場まで撤収し、皆と健闘を讃え合っていた。
「お疲れ、久石‼︎良かったぞ!」
「大輝こそお疲れ。どう、身体しんどくない?」
「全然大丈夫だ‼︎これからナンパ100人出来るくらいだし‼︎」
「大丈夫じゃないね。病院に帰って。」
「酷すぎるだろ‼︎」
「ねえ、さつき。あのカップルの邪魔しない方がいいよね?」
「そうだね、みっちゃん!」
「全く、アイツらすぐイチャつくんだから。」
「仲良しでいいですね………」
「あの感じ、漫画に描けそうです……っ!」
「自分も沙里のところに行ってきた方がいいですか‼︎⁉︎」
そして、その数分後には、コンクールメンバーだけでなく、
「皆さん、めちゃくちゃ良かったです!お姉ちゃんも喜んでました!*1」
「だいかなが、今日も今日とて、ラブチュチュ。2年1組、上石弥生です。」
「ぷっw」
「こらそこ、一句詠むな。」
「久石先輩に勝ち逃げされた……っ!最悪なんですけど‼︎」
「イェーイ!」
サポートメンバー。更には………
「皆、お疲れ!」
「いや〜、すごかったよ〜!」
「緑、泣いちゃいました!」
「私留年してたら、こんな難しい曲をやることになってたのか………」
「ねえ皆、優子とかギャン泣きしてたよ!」
「はぁ⁉︎してないし‼︎///」
「してたね!」
「だな。」
「………優子、ハンカチ。」
「お〜、みぞれは優しいね〜!」
「その優しさが目に染みるんですけど〜‼︎」
OGの先輩方にまで。そして、この皆に支えられて、ここまで来れたんだ。そう思うと、
「皆さん。今まで本当に、ありがとうございました!」
「「「「ありがとうございました!」」」」
「「「「いえいえ〜!」」」」
自然と感謝の言葉が出ていたのだった。
それから数時間後、いよいよ結果発表の時間がやってきた。
「ドキドキするね〜。」
「うん。」
私は梨々花と一緒にステージ袖で待機した後、雛壇に上がった。関西大会と同じく、大輝は隣にいない。何故ならこれが部長と副部長の仕事、賞状とトロフィーの受け取りだから。震える足で雛壇に立ち、梨々花の隣で、今か今かと結果発表の時を待っていた。
「それでは、第66回全国吹奏楽コンクール、高等学校の部・前半の結果を発表します。」
そして、いよいよその時だ。
「1番。九州代表、清良女子高等学校。ゴールド金賞。」
まずは清良女子。ゴールド金賞の言葉に、会場中が歓声に包まれる。さて、次は私たちの番だ。
「2番。関西代表、北宇治高等学校。」
心臓が張り裂けそうだ。果たしてリベンジは成功したのか、それともダメなのか?この3年間が良かったのか、それとも悪かったのか。長かった練習の結果が、この一瞬で発表される。さあ、どうだ…………っ⁉︎
「ゴールド金賞‼︎」
良かった、本当に良かった‼︎去年のリベンジ達成‼︎そして、人生初となる全国金‼︎梨々花と一緒に歩み、彼女が賞状を、そして私がトロフィーを受け取る。そしてお辞儀する。それが終わって雛壇に戻る時、
「やったね、奏!」
「うん!」
梨々花と小さな声で称え合ったのだった。
そして、皆のところに戻る瞬間に蘇る、嫌な記憶。そうだ、関西大会の時は、ここで大輝が倒れて………。大丈夫だよねと思いつつ、どこか不安になりながら、皆のところに戻ると…………
「久石、やったな‼︎」
大輝が大喜びしながら抱きついてきた。良かった、今度は無事だ‼︎そして、全国金の喜びを共有できる‼︎
「うん‼︎良かった‼︎本当に良かった‼︎ありがとう、大輝‼︎」
「こっちこそありがとう、久石‼︎叶って良かったぜ‼︎」
それが何より嬉しくて、思わず笑いながら泣いてしまったのだった。
「ママ先輩!今の写真、撮りました⁉︎」
「うん、撮ったよ!あとで佳穂ちゃんにあげるから、漫画で使ってね!」
「はい‼︎」
「「こらそこ、何してるんですかぁぁぁぁぁ⁉︎///」」
だからか、皆が周りにいることに気がつかなかった。しかも揶揄われたし‼︎なんかムカつく‼︎そうだ、黒江先輩には復讐できないけど、佳穂になら………っ‼︎
「ねえ、佳穂。」
「はい、なんでしょう⁉︎」
「私と大輝で漫画は描いてもいいけど、一個条件を課そうか。」
「条件………?」
「来年も全国金、獲って。」
「はい‼︎もちろんです‼︎」
「うわ〜、引退したからって好き放題言ってますね〜。ずる〜。」
「あっ、華子には無理か〜。」
「はぁ⁉︎出来ますけど⁉︎舐めないでもらえます⁉︎」
「それでよし!」
そして、ここから先の北宇治に私は居ない。佳穂たちに次を託し、2度目の全国金を、ひいては北宇治の強豪校としての地位を確立してほしい。そう願いを込めて、私はお願いしたのだった。
「照葉、あとは任せたぞ。」
「任されました、兄さん‼︎」
「すずめと弥生は皆を引っ張って。杏奈はその2人についていって。」
「私たちからのお願いだよ〜!」
「頼んだぜ!」
「「はいよ!」」
「は、はいよ………///」
「「かわいい〜♪」」
もちろん皆も同様に。
「それじゃあ、佳穂、華子。北宇治をよろしくね。」
「「はいよ!」」
これから先の、北宇治の繁栄を願って。
その後は、バスの出発前に、私たち3年生で集まっていた。
「みっちゃ〜ん!終わっちゃったね〜。」
「そうだね、さつき。もう引退だなんて………」
「早いものだね。」
「そ〜ですなぁ〜!」
なんか、ついこの間入学した気がする。それなのに、もう終わり。全国金を獲れた喜びと、北宇治での生活が終わる寂しさが、心の中に同時に存在していた。
「うっし!じゃあ留年するか〜!」
「大輝の場合、冗談じゃないからやめてよ。」
「はぁ⁉︎どう聞いても冗談だろ‼︎だって俺、頭いいし‼︎」
「このやり取りがバカ丸出しだから。」
「で〜、お2人の3年間での進展は〜?」
「歳をとった‼︎」
「「「「それだけ〜⁉︎」」」」
そして、もしかしたら大輝と演奏するのも最後だったかもしれない。そう思うと、余計寂しくなったのだった。
だからか、コンクールが終わって片付けも終わったその日の夜………
「ねえ、大輝。ちょっといい?」
「なんだ、久石?別にいいけど………」
私は大輝を呼び出した。
「終わっちゃったね。」
「だな。」
「…………」
「えっ、それだけ?」
「悪い?」
「いや、悪くねえけど………お前もしかして、寂しいのかw」
「うん。」
「そ、そっか……///」
私は寂しくなって、思わず大輝に寄りかかる。それに少し戸惑ったのか、あるいは照れたのか。大輝の鼓動が速くなるのを感じた。これから先、私たちは別の大学に進学する。同じ東京とはいえ、違う道に。となると、ここで大輝との音楽は終わり。それが無性に嫌で、寂しくて、もっと一緒に居たくて、なんならずっと居たくなった。この間みたいに、大輝がいつ死ぬかも分からない。そう思うと、伝えられることは伝えておこう。ついに私は、そう決意した。
「ごめん、大輝。私5年前、嘘ついちゃった。」
「嘘………?」
「あの時、大輝のナンパ断ったじゃん。」
「えっ………?///」
「あれ、嘘///」
「そうか………///」
「だから………その………好きです。付き合ってください///」
「こちらこそ、好きです。よろしくお願いします///」
「なんで敬語なの?///」
「お前だってそうじゃん///」
「そっか………///」
そしたら、大輝も受け入れてくれた。それが嬉しくて、思わず変な口調になってしまった。自分でも緊張してるのが分かる。そんな夜の日だった。
それから約半年後、私は医大に、大輝は藝大に無事合格し、2人で東京に住むことになった。
「これから東京で、新しい物語が始まるんだな‼︎」
「大輝、声大きい。」
「いいだろ。お前ももっとテンション上げてこうぜ、
「まあ、それもそっか………///」
こうして、私と大輝の北宇治での音楽は幕を閉じたのだった。
これで、「たわけ!ドアホ男子」は完結です!最後まで読んで下さり、ありがとうございました!