たわけ!ドアホ男子   作:スピリタス3世

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Codaは曲の最後の部分を表す音楽用語です。本作では転じて最終回の意味で使ってます。


Coda かなでるセレナーデ

  奏視点  

 

 演奏が終わった後、私たちは楽器置き場まで撤収し、皆と健闘を讃え合っていた。

 

「お疲れ、久石‼︎良かったぞ!」

「大輝こそお疲れ。どう、身体しんどくない?」

「全然大丈夫だ‼︎これからナンパ100人出来るくらいだし‼︎」

「大丈夫じゃないね。病院に帰って。」

「酷すぎるだろ‼︎」

「ねえ、さつき。あのカップルの邪魔しない方がいいよね?」

「そうだね、みっちゃん!」

「全く、アイツらすぐイチャつくんだから。」

「仲良しでいいですね………」

「あの感じ、漫画に描けそうです……っ!」

「自分も沙里のところに行ってきた方がいいですか‼︎⁉︎」

 

 そして、その数分後には、コンクールメンバーだけでなく、

 

「皆さん、めちゃくちゃ良かったです!お姉ちゃんも喜んでました!*1」

「だいかなが、今日も今日とて、ラブチュチュ。2年1組、上石弥生です。」

「ぷっw」

「こらそこ、一句詠むな。」

「久石先輩に勝ち逃げされた……っ!最悪なんですけど‼︎」

「イェーイ!」

 

 サポートメンバー。更には………

 

「皆、お疲れ!」

「いや〜、すごかったよ〜!」

「緑、泣いちゃいました!」

「私留年してたら、こんな難しい曲をやることになってたのか………」

「ねえ皆、優子とかギャン泣きしてたよ!」

「はぁ⁉︎してないし‼︎///」

「してたね!」

「だな。」

「………優子、ハンカチ。」

「お〜、みぞれは優しいね〜!」

「その優しさが目に染みるんですけど〜‼︎」

 

 OGの先輩方にまで。そして、この皆に支えられて、ここまで来れたんだ。そう思うと、

 

「皆さん。今まで本当に、ありがとうございました!」

「「「「ありがとうございました!」」」」

「「「「いえいえ〜!」」」」

 

 自然と感謝の言葉が出ていたのだった。

 

 

 

 

 

 それから数時間後、いよいよ結果発表の時間がやってきた。

 

「ドキドキするね〜。」

「うん。」

 

 私は梨々花と一緒にステージ袖で待機した後、雛壇に上がった。関西大会と同じく、大輝は隣にいない。何故ならこれが部長と副部長の仕事、賞状とトロフィーの受け取りだから。震える足で雛壇に立ち、梨々花の隣で、今か今かと結果発表の時を待っていた。

 

「それでは、第66回全国吹奏楽コンクール、高等学校の部・前半の結果を発表します。」

 

 そして、いよいよその時だ。

 

「1番。九州代表、清良女子高等学校。ゴールド金賞。」

 

 まずは清良女子。ゴールド金賞の言葉に、会場中が歓声に包まれる。さて、次は私たちの番だ。

 

「2番。関西代表、北宇治高等学校。」

 

 心臓が張り裂けそうだ。果たしてリベンジは成功したのか、それともダメなのか?この3年間が良かったのか、それとも悪かったのか。長かった練習の結果が、この一瞬で発表される。さあ、どうだ…………っ⁉︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゴールド金賞‼︎」

 

 良かった、本当に良かった‼︎去年のリベンジ達成‼︎そして、人生初となる全国金‼︎梨々花と一緒に歩み、彼女が賞状を、そして私がトロフィーを受け取る。そしてお辞儀する。それが終わって雛壇に戻る時、

 

「やったね、奏!」

「うん!」

 

 梨々花と小さな声で称え合ったのだった。

 

 

 

 

 そして、皆のところに戻る瞬間に蘇る、嫌な記憶。そうだ、関西大会の時は、ここで大輝が倒れて………。大丈夫だよねと思いつつ、どこか不安になりながら、皆のところに戻ると…………

 

「久石、やったな‼︎」

 

 大輝が大喜びしながら抱きついてきた。良かった、今度は無事だ‼︎そして、全国金の喜びを共有できる‼︎

 

「うん‼︎良かった‼︎本当に良かった‼︎ありがとう、大輝‼︎」

「こっちこそありがとう、久石‼︎叶って良かったぜ‼︎」

 

 それが何より嬉しくて、思わず笑いながら泣いてしまったのだった。

 

「ママ先輩!今の写真、撮りました⁉︎」

「うん、撮ったよ!あとで佳穂ちゃんにあげるから、漫画で使ってね!」

「はい‼︎」

「「こらそこ、何してるんですかぁぁぁぁぁ⁉︎///」」

 

 だからか、皆が周りにいることに気がつかなかった。しかも揶揄われたし‼︎なんかムカつく‼︎そうだ、黒江先輩には復讐できないけど、佳穂になら………っ‼︎

 

「ねえ、佳穂。」

「はい、なんでしょう⁉︎」

「私と大輝で漫画は描いてもいいけど、一個条件を課そうか。」

「条件………?」

「来年も全国金、獲って。」

「はい‼︎もちろんです‼︎」

「うわ〜、引退したからって好き放題言ってますね〜。ずる〜。」

「あっ、華子には無理か〜。」

「はぁ⁉︎出来ますけど⁉︎舐めないでもらえます⁉︎」

「それでよし!」

 

 そして、ここから先の北宇治に私は居ない。佳穂たちに次を託し、2度目の全国金を、ひいては北宇治の強豪校としての地位を確立してほしい。そう願いを込めて、私はお願いしたのだった。

 

「照葉、あとは任せたぞ。」

「任されました、兄さん‼︎」

「すずめと弥生は皆を引っ張って。杏奈はその2人についていって。」

「私たちからのお願いだよ〜!」

「頼んだぜ!」

「「はいよ!」」

「は、はいよ………///」

「「かわいい〜♪」」

 

 もちろん皆も同様に。

 

「それじゃあ、佳穂、華子。北宇治をよろしくね。」

「「はいよ!」」

 

 これから先の、北宇治の繁栄を願って。

 

 

 

 

 その後は、バスの出発前に、私たち3年生で集まっていた。

 

「みっちゃ〜ん!終わっちゃったね〜。」

「そうだね、さつき。もう引退だなんて………」

「早いものだね。」

「そ〜ですなぁ〜!」

 

 なんか、ついこの間入学した気がする。それなのに、もう終わり。全国金を獲れた喜びと、北宇治での生活が終わる寂しさが、心の中に同時に存在していた。

 

「うっし!じゃあ留年するか〜!」

「大輝の場合、冗談じゃないからやめてよ。」

「はぁ⁉︎どう聞いても冗談だろ‼︎だって俺、頭いいし‼︎」

「このやり取りがバカ丸出しだから。」

「で〜、お2人の3年間での進展は〜?」

「歳をとった‼︎」

「「「「それだけ〜⁉︎」」」」

 

 そして、もしかしたら大輝と演奏するのも最後だったかもしれない。そう思うと、余計寂しくなったのだった。

 

 

 

 

 だからか、コンクールが終わって片付けも終わったその日の夜………

 

「ねえ、大輝。ちょっといい?」

「なんだ、久石?別にいいけど………」

 

 私は大輝を呼び出した。

 

「終わっちゃったね。」

「だな。」

「…………」

「えっ、それだけ?」

「悪い?」

「いや、悪くねえけど………お前もしかして、寂しいのかw」

「うん。」

「そ、そっか……///」

 

 私は寂しくなって、思わず大輝に寄りかかる。それに少し戸惑ったのか、あるいは照れたのか。大輝の鼓動が速くなるのを感じた。これから先、私たちは別の大学に進学する。同じ東京とはいえ、違う道に。となると、ここで大輝との音楽は終わり。それが無性に嫌で、寂しくて、もっと一緒に居たくて、なんならずっと居たくなった。この間みたいに、大輝がいつ死ぬかも分からない。そう思うと、伝えられることは伝えておこう。ついに私は、そう決意した。

 

「ごめん、大輝。私5年前、嘘ついちゃった。」

「嘘………?」

「あの時、大輝のナンパ断ったじゃん。」

「えっ………?///」

「あれ、嘘///」

「そうか………///」

「だから………その………好きです。付き合ってください///」

「こちらこそ、好きです。よろしくお願いします///」

「なんで敬語なの?///」

「お前だってそうじゃん///」

「そっか………///」

 

 そしたら、大輝も受け入れてくれた。それが嬉しくて、思わず変な口調になってしまった。自分でも緊張してるのが分かる。そんな夜の日だった。

 

 

 

 

 それから約半年後、私は医大に、大輝は藝大に無事合格し、2人で東京に住むことになった。

 

「これから東京で、新しい物語が始まるんだな‼︎」

「大輝、声大きい。」

「いいだろ。お前ももっとテンション上げてこうぜ、奏(・)♪」

「まあ、それもそっか………///」

 

 こうして、私と大輝の北宇治での音楽は幕を閉じたのだった。

*1:
すずめ




 これで、「たわけ!ドアホ男子」は完結です!最後まで読んで下さり、ありがとうございました!
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