もしエウリュステウスの側近にヘラクレス並の化物がいたら 作:名無しのマネモブ
「昨日の結婚式はすごかったな。いきなり結婚式が始まった時は驚いたし何が何だかわからなかったけど、まあ美味い飯が食えたしよかったよ」
「ごちそうおいしかったー!」
「ハハッ、そうだな。あんな美味い御馳走は始めてだった」
マカリオスとキルケーの結婚式が行われた翌日、ミュケナイ王都では市民達が昨日の出来事について話し合っていた。なんの前触れもなく結婚式が始まった事に困惑する者が続出していたが、魔女が怖いから文句は言えないし素晴らしい御馳走を振る舞われたのでとりあえず受け入れる事にしたのであった。
「あんな御馳走をすぐに用意できるだなんて魔女様はスゴいんだなぁ」
「そりゃあそうだよ、アンタ達は知らないだろうけどキルケー様はとてもスゴい魔女、いや大魔女様なのさ」
「へぇ、そうなのか」
「そーなんだー!」
ミュケナイに住むとある一家では妻が旦那と子供にキルケーのスゴさを教えていた。
「大魔女様は神の血を引いておられてるし、私なんかとは比べ物にならない程の大天才でねぇ、私が逆立ちしたって勝てないくらいの凄腕魔女なんだよ」
「ふーん、とにかくスゴい魔女なのか。それとお前も色々あったんだなぁ」
「お母さん魔女だったんだ!スゴいや!」
妻の言葉を聞いた旦那と子供は無邪気に感心しており、妻が元魔女だというカミングアウトを聞いても特に驚く事はなかった……まあ神代の時代なら元魔女などさほど珍しい存在でもないのだろう。
「久々に見たキルケー様はとても幸せそうでよかったよ。あんなに幸せそうなのは私も始めて見たねぇ、あれなら八つ当たりで人を豚に変えたり、御馳走を食べさせて豚に変えたりはしないだろうさ」
「え、なあ大丈夫なのか?俺達昨日はキルケー様の御馳走をたらふく食ってしまったけど」
「ああ大丈夫大丈夫!あれは普通の御馳走だったから豚にはならないよ」
「そ、そうか。まあお前がそう言うなら大丈夫かぁ」
「そっかあ!」
さらりと言われた言葉に旦那は思わず不安を覚えるが妻は笑って二人を落ち着かせていた。
「それにマカリオス様は優しい御方だしキルケー様を大事にしてくれるだろうね。キルケー様も私みたいにいい人に巡り会えてよかったよ」
「うん、仲がいいのが一番だよな」
「とーちゃんとかーちゃんも仲よしだもんね!」
偉大な大先輩であるキルケーが幸せそうにしていたのを見た妻はあの二人なら上手くいくだろうと心配しておらず、自分のように幸福な生活が送れると確信していたのであった。
「おい聞いたか、ミュケナイの守護者が魔女を妻にしたって話」
「ああ、俺もさっき知ったよ」
ミュケナイの高名な勇士であるマカリオスが、あの有名な大魔女であるキルケーと結婚した……その情報は一瞬でギリシャ全土に広まる事になった。民衆は降って湧いた話に驚きつつも噂話に花を咲かせていた。
「あの山をも動かす半神様が結婚とはねぇ、まあ年齢的には結婚しても別におかしくはないんだが」
「浮ついた話とか一切聞かなかったのになぁ、でもミュケナイの連中は知ってたのか?」
「いや、どうやら奴等も寝耳に水だったらしいぞ。困惑してたけど魔女が怖くて何も言えなかったんだとよ」
今まで女性の陰がまったくなかったマカリオスがいきなり結婚するという急展開はミュケナイ市民だけでなく他国の民衆も困惑させていた。どうしてそうなったのかと好き勝手に想像しつつ民衆は引き続き噂話を続ける事にした。
「ウチの王様はどうなされるつもりなのだろうな?半神と魔女が結婚するとかバカな俺でもヤバいってわかるぞ」
「さぁな、王のお考えなど俺達にはわからんよ」
「……半神の他に名高き大魔女までもがミュケナイに仕える事になったとは」
民衆達が呑気に噂話に花を咲かせていた頃、周辺国家の王達はミュケナイが更に強化されると聞いて苦い表情を浮かべていた。
「仮にミュケナイと戦争になれば元奴隷が前に出て暴れ、それを大魔女が補佐してくるというのか。なんてことだ、まったく隙がないではないか」
ただえさえマカリオスだけでも脅威なのに大魔女まで加勢してくるとなれば、自分達の勝ち目は微塵もない事を理解した王は眉間に皺を寄せて考え込む。そして王が一番危機感を覚えていたのは二人が夫婦になった事であった。
「大神の血を引く半神と同じく神の血を引く大魔女が夫婦になった。二人から生まれてくる子供達は次代のミュケナイの守護者として我々の脅威となるだろう。そんな、時間が経てば経つほどミュケナイは更に強化されていくというのか!?」
最悪の場合を想像した王は思わず顔を青褪めさせてしまう。今の時点でも到底対抗できないというのにミュケナイは更に強くなるとなれば王が深刻な危機感を覚えるのは当然だろう。
「……これは、勝てんな。他の国と同盟を組んだ所でどうにもならん」
そして王は考え込んだ結果、自分や隣国達が手を組んでもミュケナイには勝てない事を冷静に受け入れていた。
「ミュケナイは今後更に繁栄していくだろうな。幸いにもミュケナイは大人しいし、こちらが干渉してこない限りは攻めてこないだろう。我が国はミュケナイと親しくして関係を強化するべきだな」
自国の為にミュケナイとは融和政策を取るべきだと王は決意する。そしてこの王だけでなく周辺国家全てが同じように融和政策を取る決断をしていたのであった。
「しかし大魔女まで臣下にするとは流石は大神に選ばれしエウリュステウス王だ……生まれながらの支配者とは彼の事なのだろうな」
半神と大魔女を臣下としたエウリュステウス王に思わず畏敬の念を抱く王であった。そんな感じで周辺国家から評価されているエウリュステウス王はというと……
―それでね、どうすればいいかわからないマカリオス君に私は優しく手ほどきをしてあげたのさ。いやーかわいかったなー!あんな初な反応見ちゃったら心と身体の下腹部がキュンキュンしちゃって、私もつい張り切っちゃったんだよねー!朝まで続ける事になるとは思わなかったよ!―
「ほう、そうか」
―まあ私としては一日中ヤッてもよかったんだけどね!でもマカリオス君ったら私の事を心配して止めてくれたし「君が作った麦粥が食べたいな」って言うんだよ!?いやー本当に優しい旦那様で惚れ直しちゃったよ!かーっつらいなー!幸せすぎてつらいなー!―
「ほう、そうか」
―あ、そうそう。王様が心配していた子作りについては特に問題なくできたよ。マカリオス君の子種を無事受け入れられる事は確認できたから王様は安心してほしいな―
「ほう!そうか!……それはそれとして貴様は本当にお喋りだな大魔女め」
―なんだよー、私とマカリオス君の愛の物語がつまらないのかよー?もっとじっくりねっとり記録映像つきで説明してやってもいいんだぞー?―
「おいよせやめろ、そんな物見せるな!?」
上機嫌な声で言葉の洪水を浴びせてくる大魔女に対してエウリュステウス王は疲れた表情を浮かべていた。ちなみにマカリオスは日課の鍛錬に出ており、アルケイデスはマカリオスの結婚式に参加した後次なる難行に向かっていたのであった。
「ああもう、何故初夜の報告を聞くだけでこんなに長々と聞く羽目になるのだ!?」
―私の話が聞きたくないのならマカリオス君に報告させればよかったんじゃないかな?―
「いや、あの阿呆の説明だと要領を得ないと思ったのだが……阿呆の方がマシだったと今は後悔しているぞ」
大魔女キルケーから報告を聞き終えたエウリュステウス王は真剣な表情を浮かべつつキルケーと話し込んでいた。
「ふむ、今はまだ子供を作るつもりはないのだな?」
―そうだねー、新婚ホヤホヤなのだしマカリオス君と五年くらいイチャつこうと思ってるんだよねー―
「五年も新婚生活を続けるつもりなのか……?ま、まあいい。貴様が乗り気ではないのならば別にいいし存分にイチャつくがいいさ。あ、でもできれば早いうちに頼むぞ」
―おや、意外だねぇ。王様なら「私の命令に従えないのか!」って言って強制してくるかと思ってたのに―
思ったよりも話がわかるエウリュステウス王にキルケーは少しだけ驚く。そんなキルケーに対してエウリュステウス王は鼻を鳴らしつつ答える。
「フン、今のミュケナイは私の統治とマカリオスのお陰で盤石だし、すぐに子供が必要というわけでもないのだ。それに……」
―それに?―
「マカリオスと違って貴様には命令できんからな。貴様はマカリオスに対する愛はあってもミュケナイや私への忠誠などないし、夫が私に仕えているから私に協力しているだけだろう?私が貴様にできるのは命令ではなくお願いだけだ」
―おお、よくわかったねぇ。ほんの少しだけ見直したよ。身の程を弁えてるのは評価できるね!―
ケラケラ笑う大魔女に対してエウリュステウス王はやはりこの魔女はろくでもない女だなと再確認しつつも、味方としては非常に頼もしいからいいかと考え直す。
「キルケーよ、マカリオスの事をよろしく頼むぞ。あれは化け物に対抗できるだけの強さはあるがそれ以外は話にならない男だからな。大魔女である貴様に管理されれば多少はマシになるだろう」
―任せてよ王様、私の旦那様に近付く悪い虫は私が排除するから安心してほしい。大丈夫、死ぬより酷い目にあわせて生まれてきた事を後悔させるつもりだから!―
「し、死ぬより酷い目って何をするつもりなのだ?」
―聞きたい?―
「……いや、遠慮しておこう」
物騒な事を言い始めたキルケーにドン引きしつつもエウリュステウス王はマカリオスの管理が楽になるのはいい事だと思う事にしたのであった。
「そんなに心配しなくてもいいと思うがな。奴は愚かで阿呆だが嘘はつかないし純情な男だ。それに貴様に隠れて浮気するような器量もないのは知っているだろうに。アレは筋金入りの阿呆だぞ?」
―それはわかっているけどね、念には念を入れておきたいのさ……でも私の素敵な旦那様を阿呆と連呼するのはちょっと気に入らないなぁ。ちょっと腹を下す呪いをかけちゃうぞ?―
「ヒィ、すみませんでしたっ!?」
―うん、よろしい。次から気をつけてね―
この作品のエウリュステウス王の外見イメージはロングヘアになった虚弱体質の間桐慎二です。
FGOでエウリュステウス王が何もいい事なく退場したので書きました。とある掲示板で建てたスレをもっと書きたかったのですがパートスレにするのも嫌なので、折角だし二次小説として書く事にしました。
ちなみにこのオリ主の実力はは0.9ヘラクレスを想定しています。本気になった時の足の速さは0.9アキレウスです。
正面からの殴り合いならアルケイデス相手でも僅かな優位がありますが、でも強いだけのバカで知力デバフが大きいので搦め手を使われると全然ダメな程度の強さです。
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