宮野姉妹の姉として転生したオリ主の話 作:アルトリア・ブラック(Main)
組織から抜け出して来た翌日、お姉ちゃんの…宮野明美が生きた足跡を知った。
自分と同じ幼児化した工藤新一の隣の阿笠博士の家で暮らし始めて、私は、私はもう一人の姉が生きているかそれだけでも知りたかった。
でも、生きているか分からない、私はたった一人逃げ出して来てしまった。
「どうした?灰原」
工藤くんとの帰り道、ふとそう聞かれる
「…別になんでもないわ」
サッカーボールを蹴りながら歩く工藤くん
組織の影はあれから全く見えなかった。
雪の降る中、雪絵姉と一緒に喫茶店に行った時のことを思い出す
雪絵姉は難しいことは考えないタイプだった。
常に明るく前向きに物事を考える人だった。
ああいうタイプだったから組織内での評判も良かった。
ふと顔を上げた時、目の前の車を見て息を呑む
ポルシェ356A
その車に息を呑む
「ん?どうした?灰原?この車がどうかしたか?」
そう言って工藤くんがその車を見ながら
「ドイツの雨蛙、今時いるんだな、こういうの乗ってるの」
「………ジンよ…ジンの乗ってる愛車もこれなの」
そう言うと工藤くんは息を呑み、その車に発信機を仕掛けようと近づいて行く
「だ、ダメよ!!下手に近づいたら」
工藤くんを止めに行こうとしたら…
後ろから彼らの気配がする。
その気配に心臓が止まりそうになる
恐る恐る振り返ると…
「……志保…?」
ハイライトの消えた姉が立っていた。
「灰原っ…」
雪絵お姉ちゃんは私を見て少し悲しげに微笑み
「坊や、その車に乗ってる人は車に直で触れられると怒るから触らない方がいいよ」
「…え、あうん…」
雪絵お姉ちゃんは路地の方を指さして
「子供はお家に帰る時間だよ、早く」
工藤くんに手を引っ張られ、路地に隠れる
その数分後、雪絵姉の背後に現れた男を見て息を呑む
ジンが現れ、運転席の方に回った
それを見た雪絵姉はこちらを振り返って来て口パクで何か話していた。
ゆっくりとだが読み取れた
《関わっちゃダメだよ》と
ジンに散々抱き潰されて、痛みは無いが声が全くと言って良いほど出なかった
現場任務に行く日で幸いにも痛覚遮断ドラックのおかげで痛みは無かった。
(…生コナンくんと…)
「お、ねえちゃん…」
絞り出すように言う志保
私に会えたという事に泣きそうになりながら喜ぶ志保
その志保の表情に胸が締め付けられる
貴女が大切に思っていたもう一人の姉を殺したのは私で、そんな嬉しそうな表情を向けるに相応しくない。
もし、志保が生きているとバレたら…
「!」
今回の仕事にジンもいた事を思い出し路地裏の方を指差す
ジンに見つかったら殺さないといけなくなるから
関わらないように念を押さないといけない
二人がいなくなったのを見送ると、しばらくしてジンがやって来る
「何してるんだ」
そう聞かれ『鍵持って無かったから待ってましたー』と適当に返す
ポルシェに乗り込み、後部座席に発信器が無いのを確認する。
志保が組織を抜け出してから数ヶ月、私はAPTX4869の研究を引き継ぎ、研究の合間、細胞再生薬の方に力を入れるように下された。
「…お久しぶりです。アブサン」
ラボからアジトに私用で行った時、バーボンと遭遇する
公安局の潜入捜査官『降谷零』この組織はスパイで出来てんのかとつっこみたくて仕方なくなる。
「お久しぶり」
バーボンの表情が何処となく寂しそうだった。
「貴女…そんなタバコ吸ってるんですか?」
吸ってたタバコを見ながら言われる
私が吸っているタバコはゴロワーズでジンと同じ銘柄だ。
ジンからパクったタバコをそのまま吸っているだけなのだが
「近くにあったから吸ってるんですよ、馬糞みたいな匂いしますけど、味は神が掛かってますし」
「他に美味しいタバコはあると思いますよ」
バーボンが隣を歩きながら話す。
何処まで着いて来んのかなぁ〜?
「何?」
「あぁいえ、前の任務で気になった事がありまして」
探って来てるなぁと思いつつ歩いていると
「前の任務って?この薬のこと?」
「!」
ポケットからケースを出して見せると分かりやすく驚く
「細胞再生薬って言ってるけど、簡単に言えば不死身薬に近いかな」
「…不死身薬、そんなモノを作れるなんて凄いですね、アブサン」
褒めてくれるが瞳の奥に見えるのはその効果の脅威を感じ取り警戒している目だった。
「すごい?」
「?何か」
苦笑いを浮かべながらバーボンを見つめ
「ボスはこの薬のこと夢の薬とか言ってるけど、私からしてみれば呪いの薬でしかないよ」
自嘲気味に笑いながら言う
あの時は新たなモノが出来るという思いで作り上げた
「核も原爆も爆弾も完成する前までは研究者にとっては夢のような薬、研究になると思った。でも完成してみれば悪魔のようなものが出来て酷く後悔したと思うんだよ」
原爆を使った人間は大量に人を殺したいから作った訳でもないだろう
原爆の父が本当に後悔したかは分からない。
でも、自分の作ったモノが大量殺人の道具に使われるなんて思わなかっただろう。
「後悔しているんですか?貴女は」
そう聞かれケースを見る
恐らく、この薬は原作の流れに大きな影響を与えてしまうだろう。
宮野姉妹の一人として生まれてしまった以上…
「……きっと原爆のような大災害を引き起こしてしまえばきっと後悔するでしょうけど…今のところはね」
「………」
バーボンは何か言いたそうにしていた。
ポルシェ356Aを見つけたが、何も仕掛けられず阿笠博士宅に帰って来た灰原とコナン
コナンは悔しげにしていたが、灰原は姉が無事でいたこと、そして、自分の正体を知っている事を姉は知っているということ
「お前のお姉さん、名前は?」
「…宮野雪絵、今年で21だったわ、組織の中では私と違って多くの幹部と付き合いがあったようよ」
「お姉さんから何か聞いたことは?」
事情聴取のような会話だが、もし、あのことを話したら工藤くんは姉をどうするつもりなのだろうか
「お姉ちゃんと違って雪絵お姉ちゃんは主にイギリスにいたから…そんなに会うことはなかったわ、前に説明した通り、お姉ちゃんはジンに監視されてたから滅多に会えなかったし…」
「ジンの他に関わりがある幹部がいるとか話してなかったか?」
『ベルモットとこの前出かけたの、ウォッカは面倒見が良くて』
「……ベルモットとウォッカ」
「ベルモット…とウォッカか」
その二人の名前はすでに知っているし、ベルモットに関しては自分の正体を知っているが、何故か組織に正体のことは報告していなかった。
「………」
姉はコードネームを持っていた。
姉の研究は私より先に成功した。
組織の人間はそれをこう評した『悪魔のような薬』だと
『お姉ちゃん、なんの薬を作ったの?』
『傷を再生する薬』
青と白のカプセルの錠剤を見せて来たのを思い出す
「…あー、灰原」
工藤くんが心配そうに、でもまだ聞きたいことがあるのか迷っているような表情をしていた。
「…貴方に、いくら警告したって彼らの存在が見え隠れすれば、きっと後を追いたくなる気持ちを止められないのは分かってはいるわ…でも」
明美お姉ちゃんが組織に関わったせいで殺されたように
雪絵お姉ちゃんがこれからも組織に関わって行く以上、いつ死んでしまうか分からない。
もう、家族を失いたくない
たった一人残った家族を死なせたくない。
「……雪絵お姉ちゃんを死なせないで」
そう絞り出すように言うと
「あたりめぇだろ、誰も死なせねぇ、もう、誰も死なせねぇよ」
宮野明美さんが命を懸けて守りたかった二人の妹は絶対にと誓ってくれる
人を一人殺したらその後の殺人も手段でしかなくなる
そう前世、警察官が言っていたのを思い出した。
(もう…戻れないんだろうな)
手に握った拳銃、目の前に倒れている男
「アブサン」
ジンがポルシェの前にいた
「疲れた…デスクワークの人に現場の仕事は向いてないですよ」
そう言って近くに行く
ジンにあの日抱かれてからなし崩しに抱かれることが増えた。
ジンが殺気立ってる時は無論、ジンに生殺与奪の権を握られているような感じだった。
まぁ、志保が逃げ出した以上、私に志保を殺させる気がした。
「良い顔してるぜ、アブサン」
「ん、ちょっと」
特に人を殺した後、ジンは一目憚らずキスしてくるようになった。
車の中にズルズルと引き摺り込まれる
側から見れば誘拐拉致強姦してるように見えるだろう。
まぁ恋も愛も分からないから実際はその通りなんだろうが
「見境なく盛らないでくれない?痛みは感じないけど、事後処理大変なんだから」
「別に良いだろ、どうせ帰っても風呂なんだからな」
「…まぁそうだけど」
一度アジトに戻ると言い出したので軽く睨んどく
(加虐趣味なんだジン…)
まぁ、私も名探偵コナンの世界じゃジン推しではあるけど、死なない限りいくらでも遊んでくれて構わないのだが
ジンが別室に行ったのを廊下で待っていると…
「…アブサン」
バーボンの声が聞こえ横を見ると、安室さんが悲壮な顔をしていた。
「…?仕事終わり?何かあった?」
そう聞くとバーボンが息を呑む
「…何かあったのは貴女の方でしょう…どうして」
バーボンの顔が降谷さんになってると思いながらも鏡を出して見てみる
「………」
降谷さんの顔は悲痛な表情をしていた。
「…犯罪組織の幹部の顔、してないよ」
自嘲気味に笑うと降谷さんはハッとなる
「おい」
「わっ」
ジンが部屋から現れる
「さっさと帰るぞ」
「…そんな強引に引っ張らなくても歩くよ」
腰に手を回されやや強引に引っ張られる
「………」
降谷さんは私のことを助けたいのだろうか
彼と会ったことがあるのは幼い頃の2回だけ、尚且つ自分はかなり小さかったこと、普通は覚えていない程の幼さだったから本来なら覚えていない。
「………」
(…珍し…)
ジンが私を抱き締めたまま眠っていた。
(…顔立ちは普通にイケメンなんだよなぁ…)
起きてる時のジンは凶悪面なのだが
(…普通に痛いんだよなぁ…下は)
痛覚遮断ドラックを流石に下半身に打ちたくはなかったので打ってはない。
だから突っ込まれればすっごい痛いし、ジンに関してはアレがデカいからなお痛い
(…何考えてんだ私…)
まぁ、体が壊れても細胞再生薬があるから治せば良いのだが、心臓や脳みそになんかにアレは使いたくない。
やり方を間違えれば永久不死になってしまうし
ボスからは完成させるようにと言われてはいるが、正直完成させるのは迷っている。
アレに関しては自分には打ちたくないとは思っている。
不死身になりたいなら勝手になれとは思っているし、一部の人間からしてみれば不死身になりたいと思うだろうが、仮に完成して不死の世界になったとしたら世界が終わる
人口増加に待ったを掛けないといけないし、何より、不死身ということは生き埋めになっても一人になっても生き続けないといけない。
親しい人間が死んで行く中、一人だけ生き続けることの地獄なんて味わいたくない。
ふとジンの方を見る
ジンは大人しく寝てれば美形だし、怖くはない。
ジンに悲しげな過去なんてあるのかなと思って、適当に漁って見れば過去は見つかったが、まぁ犯罪組織の幹部らしい過去だった。
『ベイカーストリートの亡霊』のジャック・ザ・リッパーみたいな過去だった。
「…目、ガン開いたままか」
「うわっビックリした」
いつのまにか起きていたのかジンがそう言ってくる
抱き締めていた手を退けて起き上がる
長い髪を結えて台所に向かうジン
「水飲め」
「ん」
水を飲みながら服を着替えるジンを見ていた。
初めはヤルだけやって放置するタイプかと思ったら、割と気遣ってくれるタイプだった。
とは言っても割と容赦なく突っ込むし、どちらかというといじめタイプだが、殺気やらなんやらが収まれば普通の人間になる。
「…遠慮なく突っ込むね…」
「テメェだって悦んでるじゃねぇか」
「そりゃ、女としての生態としてSEXすりゃそりゃあ気持ち良くなるもんなの」
お水を飲みながらテレビの前に移動すると珍しくジンも移動して隣に座ってくる
「なに?」
「テメェは他の女みてぇにやわじゃねぇ、愛人になろうと尻尾を振ってくることもねぇ」
「……唐突に褒めて何」
ジンの褒めほど、怖いものはない。
露骨に引くと嗤いながら
「三人の人間と話してるみてぇな感覚になる」
「……!」
「宮野明美を殺す前からテメェはイカれてたが、殺した後からテメェはもっと歪み始めた」
アブ・ジン・トニックを飲みながら話すジン
「殺人をしながら悦ぶテメェと殺人を嫌うテメェ、どっちがテメェなのか色々考えたが…」
ジンは悪魔のように嗤いながら
「人を殺すのが誰よりも好きだろう」
「……そんなこと…」
人を殺すのが好きなんてそんなイカれてない。
「人を殺すのが嫌な人間は大概外す、重症にも致命傷にもならねぇ場所をな、だがテメェは心臓の僅か数センチ横を撃つ癖がある」
「………」
普通なら脳天を撃つ、でも私は不思議と脳天は嫌だった。
「即死しねぇギリギリの場所をな、その時のテメェの顔、あんな悦んだ顔、SEXしている以上に愉快そうだがなァ?」
酒を置いてタバコを吸いながら話し始める
「…違う…そんな…人の死を…」
「いくら否定しようとテメェは俺そっくりだ」
「!!」
「テメェはオッペンハイマーじゃねぇ、人を苦しむのが好きなマッドサイエンティストだ、そうじゃなきゃ不死身薬なんか作ろうと思いやしねぇ」
ジンのこの上ないぐらい凶悪な笑みに息が詰まりそうになる。
バーボンこと降谷零は組織に潜入してから、宮野エレーナ先生の娘…次女の方と接触することが出来た。
天才科学者の姉妹の片割れ、組織から逃げ出したシェリーの代わりに研究をしている科学者
エレーナ先生に良く似た顔立ちに髪の色、彼女を通してエレーナ先生を思い出した。
そんな彼女と初めて会った時もいろんな意味で忘れられなかったが、彼女の瞳がどんどん澱んで行っているのを見て胸が張り裂けそうだった。
明美の死の後、シェリーの脱走の後、彼女は組織に一人残り、研究をしながらジンにいたぶられているのが目に見えて分かった。
ジンとの任務の後帰ってきた彼女の姿は酷いものだった。
強姦された被害者によく見られる目をしていた。
体のあちこちに傷跡が見れた。
「安室君?」
赤井に声をかけられてハッとなる
工藤家で暴れ回るという暴挙に出ておきながら別のことを考えてしまっていた。
部下達を本部に帰させ、自分はとりあえずアジトに戻ろうとしていた所だった。
「………お前は宮野明美のことが好きだったのか?」
そう言うと赤井のピクッと反応する
先ほどの笑みは無くなり、悔しそうな、悲しげな眼差しになる。
「赤井さん…」
コナン君が赤井を心配するような眼差しで見つめる
「アメリカに、FBIに何故保護しなかった?」
「………」
「お前が彼女を利用したせいで彼女も彼女の妹達も不幸になった」
「安室さん…!」
止めようとしてくるコナン君を制するこれだけは言いたかった。
組織を壊滅させるためとはいえ、日本国内で好き勝手するFBIが嫌いだった。
捜査申請を出さず好き勝手に暴れているFBI、日本国内で宮野明美を利用して潜入するという、日本国民を利用した挙句、利用した人間を助けられなかった無能なFBI
「お前の行動で不幸になっている人間がいるということを忘れるな!!」
赤井の胸ぐらを掴む
「…忘れたこともない。組織が壊滅した後、俺の後ろに積み重なる死体があるということも、知ってる」
「なら…」
「もう後戻りは出来ない所まで来ているんだ、安室くん、明美を死なせる理由を作った俺に取って出来るのは組織を壊滅させること、明美の妹を守ることしか出来ない。彼女からいくら恨まれても殺されても構わない、それだけしか俺には出来ないからな」
赤井の目には反省、後悔、罪悪感を感じた瞳をしていた。
「……明美さんにはもう一人妹がいる。宮野雪絵、コードネームはアブサン」
「!!」
「………」
アブサンは、雪絵さんはもう助けられない、そう思ってしまっている自分がいる。
いくら彼女が被害者であろうと、犯して来た罪は無くならない。
ジンにそうやれと命じられていたとしても、日本には実行犯の方が罪が重くなる場合がある。
「彼女はシェリーが抜け出した後の研究も任されている。それと同時に自身が作り出した毒薬もある」
「…毒薬って…?」
コナン君がそう聞いてくる
「彼女が作り出した毒は不死身薬」
「「!!」」
「不死身薬というのは、致命傷を負っても死なないということですか?」
今まで空気を読んで黙っていたであろう工藤優作さんがそう聞いてくる
「彼女はそう呼んでいるが、僕にはそうじゃない」
「そうじゃない?」
前見た時は1分しか保っていなかったが、死んだ人間が生き返ったのを見た
「死者蘇生」
「「「!!」」」
その場にいた人間が驚き、コナン君はあり得ないと呟くのが聞こえる
「初めて見た時はまだ1分しか持続していなかった。でも、今どれだけ進化したかは分からない。あんな薬が日本国内に出回ったらとんでもないことになる、それどころか…」
「世界中に広まれば最悪、彼女の研究を求めて戦争になりかねない」
工藤優作の言葉にコナン君も赤井も驚いた顔をしていた。
「だからこそ、僕は彼女を逮捕しないといけないし、この研究結果は破棄すべきだと思ってる。赤井」
「!」
「さっきお前は明美さんの妹を守ることしか出来ないと言ったが、彼女は少なくとも、助けてはならない存在なんだ」
「………」
「安室さん…もしかして…」
コナン君が言おうとしたことに『そんなことはしない』と先に言う
「俺やお前が守ろうとしても上は必ず彼女を抹殺しようとする。人類を危険に晒すような研究者が現れれば、原爆や爆弾のようなものを作り上げる前に消そうとする人間が現れたっておかしくない…それに」
彼女の澱んだ目を思い出す
「いくら助けようと手を差し伸べても彼女は絶対に手を伸ばさない」
「!!」
「…彼女に何かあったのか?」
「…ジン、それだけ言えば伝わるだろう?」
そう言うと工藤邸から去って行く
志保が灰原哀になって数ヶ月。
私は研究に勤しむ中、RAMからこんな命令が下る
「帝丹小学校の教師?」
『えぇ、まぁ教師と言いましても、保健室の教師ですが』
「……何か裏があるんですか?」
ジト目で言うと
『ジンに似てそんなに深く考えないでください。貴女にご褒美を上げようと思いまして』
「………」
胡散臭いと思いながら見つめていると
『貴女は組織に大いに貢献してくれています。そんな方にデスクワークばかりさせては申し訳ないので、息抜きに子供と触れ合ってはどうかとボスからも話がありましてね』
「……人を殺す毒薬ばかり作ってる私に小学校教師なんて普通は考えないと思いますけど…他に目的ありますよね…」
嫌な予感がした、帝丹小学校には志保がいる。
それ以前にコナンや近隣には毛利蘭達もいる。
確かRAMが潜入するのはもう少し先のはずだったが
『まぁ、ご褒美が大きくありますが、ついでに毛利探偵事務所の監視をお願いします』
そう言ってブツンと切れる
「………もっと詳しく話せやハゲ…」
罵倒しつつも偽装の写真を見るとそこには知らん人がいた。
要は変装しろと言うことなんだろうが…
(…ぜっったい殺人事件毎日あるやん…)
「養護教諭となりました。黒崎由基てす。よろしくお願いします」
職員室にてそう挨拶し、保健室で伸び伸びしていると…
適当に子供達に挨拶して行く中、少年探偵団に遭遇する
「僕たち少年探偵団をしています!円谷光彦です!」
「私吉田歩美!!」
「俺は元太だぜ」
元気な三人組に相反し…
「こっちは江戸川コナン君と灰原哀ちゃんですっ!」
警戒している二人も自己紹介する光彦君
「少年探偵団って事は依頼された仕事をしてるの?」
そう問いかけると
「勿論だぜ!」
「依頼された以外の事件なんかも我々が解決しているんですっ!」
普通の教師なら事件と言っても些細なことだろうと思うのだろうが、彼らは思いっきり殺人事件とかに絡んでしまっているのだろう。
「そう、無理はダメよ?」
そう言ってその場から去って行く
志保を怖がらせたく無いというのもある。
(…そういえば組織の気配ってなんだろ…殺気?それとも…)
人を殺した数でだろうか
(…ま、どうでもいっか)
自分と関わらないようにさせたい、志保には私とは関係ない所で幸せになって欲しかった。
〜お昼〜
(…教師よりも楽だから良いけど…なんか暇だな…)
殺人事件が起こっても欲しくないが、校舎の裏、喫煙所でタバコを吸いながら空を見上げていた。
いつも吸っているゴロワーズは臭すぎるから頭からファブリーズぶっかけた上で香水かけなきゃ消えない程の匂いである。
そして、今更だが、ベルモットに教わった変装術で男性の声以外は真似できるようになったので劣化版ベルモットみたいな感じで完璧に変装できるようになった。
(…コナン世界は地獄ではあるけど、覚えておくには損のない技術が多いんだよな)
前世の子供の頃、何が悲しくてコナン漫画からいろんなものを学んだか、漢字は勿論、毒の種類やら殺しの方法とか
(………漢字以外碌なもんねぇ…)
そう思いながらタバコを吸っていると…
「黒崎先生!!黒崎先生!!」
小林先生の声が聞こえてくる
喫煙所に小走りでやってきた小林先生は顔面真っ青だった。
「何かありました?」
「宮坂君が!!」
小林先生の後を着いて走ると、校庭で喉を押さえて息苦しそうにしている少年がいた
「救急車は?」
少年のそばに座り中度のアレルギー反応を引き起こしているのを確認する
「呼んでますっ!」
小林先生が不安そうに、心配そうに少年を見ていた。
医療用パックからアドレナリン注射を出して注意だけして打つ
落ち着いてきた少年を見つつ、辺りを見るとコナン君が少年の水筒を見ながら少し離れた場所にいる男女を見ていた。
(…事件かなコレ)
警察も到着し、目暮警部と高木刑事のコンビだった。
コナン特有の犯人候補はあの二人の男女のどちらかだろう。
(……アレルギー反応…この子のアレルギーって確か)
そう考えていると、コナン君はもう犯人が分かったのか推理を始める
(………はやっ…)
分かりやすく、子供らしさを出しながら女性の方に話をしていた。
被害者の母親らしいが、少年と母親はあまり似ていなかった
父親似なのかと思ったが、父親と言われる方はもっと似ていなかった。
コナンが推理で犯人を追い詰めて行く、最初は否定していた女もだんだんと罪を認め始めていた。
その推理を聞きながら一つ思い出した。
宮坂君は母親からあまり愛されていなかったと、保護者会にも授業参観にもくるのは父親で、母親は行きたくないと呟いていたのを思い出す。
「あの子を見ていたら私を捨てたあの男を思い出して吐き気すら覚えた、どうして私は過去にいつまでも足を引っ張られないといけないの、どうして、アイツそっくりなあの子は幸せそうにしているの?まるで分からない!!幸せそうにしていればいるほど殺したくてたまらないのよ!」
犯人の供述はなんというか、歪んでいるというか狂っていた。
要は宮坂君は前の旦那の息子、前の旦那は不倫して生まれたばかりの親子を捨てて居なくなったという。
「………」
発狂する女の犯行動機に刑事達も怒りを露わにしていた。
「…くだらない」
そう呟くように言うと犯人の女にも聞こえたのか、狂乱気味にこちらによってきて胸ぐらを掴んでくる。
刑事達が犯人を取り押さえにくる
「アンタなんかに何が分かるのよ!」
「…何も?そんなに宮坂君のことが気に入らないなら捨てれば良かったんじゃないですか?殺そうとする殺意はあるのに捨てる勇気はなかったと」
教師にあるまじき発言をしているのは理解しているが、あまりにもくだらない殺害理由にため息をつきたくなる。
「子供にとっては捨てる事の方がつらいというのに、今となっちゃ殺されそうになったと言うのも十分傷ですが」
私は、どんなことがあろうと子供は大切だ。
例え…望まないで生んだ子であろうと
「…子供は親を選べない。望んで生まれてくるわけでもない。アンタは前の旦那に逃げた腹いせをあの子にぶつけているだけ、そんなの前の旦那と…」
視界の端で灰原が怯えていた
「同類だよ」
そう言って視線を逸らす
事件が解決し、保健室に戻って帰る支度をしながら考え込んでいた。
あの犯人の女は前の旦那の子供を憎んでいた。
少年からしてみれば迷惑極まりないし、そんなの知らない事でしかない。
ギィと椅子に座る
「……偉そうな事言ったけどなぁ…」
私はあの犯人より罪は重い、それに、組織が半年後壊滅するなら私は身の振り方を考えないといけない。
お腹を見ながらそう思っていた。
ジンと体を重ねたのはもう片手では数えきれない数だった。
避妊も何もしない人だから出来たっておかしくないのだが
コナン世界に転生して、ジンが推しではあるが、実際間近でみれば恐怖のそれでしかないし、凶悪面ではあるがイケメンなのには変わりない。
ぶっちゃけ抱かれるのはヨシ!とは思ったが、あんな乱暴に抱かれるなんてのは思ってなかった。
最初は良かったものの、見境なく抱かれていては嫌気も指す。推しではあるが、そこまでの過激派でない。
「………どうしようかな」
大犯罪者同士の子供なんて将来、大変な事になるに決まっている。
でも…
(…子供、欲しいのもあるんだよな…)
生まれてくる命に罪はない。
なら、この子達だけでも助かる術を探さなければならない。
「………本当に卑怯なのは私かな…」
そう呟く