ドーナツに目を輝かせる彼女に、飲茶を勧めてみる先生だったが…
“結局、汁そばと炒飯でお腹いっぱいになっちゃったね。”
「はい……何だか勿体ないことをしてしまった気がします。」
「いえ、勿論そばも炒飯も美味しかったのですが。」
“ふふっ、ケイちゃんに気に入って貰えたなら良かったよ。”
「誰がケイちゃんですか。……と、ここまでで大丈夫です。」
“部室まで送るよ。日も暮れてきたし”
「1人で大丈夫です。子供扱いしないでくださ……ああもう、分かりましたよ。そんな悲しそうな顔しないでください。」
──────────
“到着!”
「……ってここ、ゲーム開発部の部室じゃないですか。私の所属は違います。」
「まさか先生、勘違いしてるんじゃ……」
“いやぁ、実はね……”
ガチャ
「あ、先生!遅かったじゃーん!ケイもほら、早く入って!」
「うわーん!ケイ、助けてください!モモイは役に立ちません!」
「ちょっ、酷くない!?」
「……先生?どういうことですか?」
視線が痛い。
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「……はあ。なるほど、3人プレイ用ゲームのテストプレイを手伝って欲しい、と」
「それならそうと、言ってくれればよかったんです。」
“ごめんね、嫌がるかなと思って…”
「?嫌がるわけないでしょう。私だってゲームはまぁ、その嫌いじゃない、ですし。」
「でも3人プレイなら、人数は足りてるはずでは?」
「それが…わたし、ユズ、アリスの3人でプレイしていたんだけど…」
「ユズが強すぎてテストプレイになりませんでした!アリスもモモイもボッコボコです!」
「このゲームは3人で協力するゲームなんだけど、プレイヤーの実力差がありすぎると上手くいかなくってさ…」
「ミドリにも声かけたんだけど、次のイラスト描いてて忙しそうだったし…」
「それで、先生とケイを呼んだってわけ!」
「まあ、確かに私、アリス、先生なら実力差はそんなにありませんね。」
「分かりました。少しなら手伝いましょう。それで、どんなゲームなんですか?」
「ありがとうございます、ケイ!」
「これは、3人で協力して数々のミッションをこなしていくゲームです。さらに、最後までクリアすると──」
「プレイヤー間の相性を出してくれます!」
───────────
「ちょっと待ってよ、ケイ!」
「離してください!私は帰ります!」
「なんで先生なんかと相性を測らなければならないんですか!」
“ひどい!”
「大体、私はアリスの従者です!アリスとの相性は100%で間違いありません!」
「測らなくても分かります!それでいいでしょう!?」
「いえ、それじゃダメなんです。ケイ!」
「パーティメンバーの不仲は、解散イベントのフラグです。アリスは勇者として、イベントの出現を阻止しなくてはなりません!」
「この機会に、2人には仲良くなって欲しいです!」
「い、いえアリス、別に仲が悪いわけでは…」
「…………」
「~~~!!分かりました、分かりましたよ!やればいいんでしょう!?」
“ありがとうケイちゃん!”
「誰がケイちゃんですか!?」
────────────
〈GAME CLEAR!〉
「やりました!ゲームクリアです!」
“手が痛い…”
「はぁ、はぁ…これ、難しすぎませんか?」
「大体なんで協力ゲームでボタン連打対決があるんですか…どういう意図なのか分かりません。」
「ほら、競い合えば友情が深まったりするじゃん?」
「だからって5分は長すぎます!」
「コントローラー壊さないように加減するの大変なんですからね、まったく…」
「……!相性結果が出ました!えーっと……」
「!!」
「パンパカパーン!ケイとアリスの相性は完璧!100%です!」
“すごい!!”
「当然です。私とアリスですから。」
「アリスと先生の相性は…90%!わあっ、すごく良い相性です!」
“当然。私とアリスだからね。”
「……それ、私のマネですか?似てないのでやめてください。」
「えへへ。アリスと先生はとても仲良しという事ですね!嬉しいです!」
「…あっ!ケイと先生の相性も出てます!えーと……」
「わあっ、凄いです!95%!とってもとっても仲良しですね!」
「!!!」
「ち、違います!これは…これは、何かの間違いです!」
「私は、別に、先生なんか…!」
“え~?私はケイちゃんと仲良しで嬉しいけど?”
「~~!!!」
「せ、先生を殺して私も死にますっ!!!!」
──────────
「いつの間にか外も暗くなっちゃったね…ケイ、今日は泊まっていきなよ~」
「えっ、でもそんな急に…」
“たまにはいいんじゃないかな。皆が夜更かししないよう、見てあげて。”
「そういう事でしたら……そうですね、今日は泊まるとしましょう。」
「先生は一緒に泊まらないんですか?アリス、先生ともっとお話したいです!」
「!?」
“ごめんね、私は帰って仕事があるから…”
「そうですか…残念です。」
「また今度、一緒にお泊まり会しましょうね!」
“もちろん!そのときはケイちゃんも一緒にね!”
「誰がケイちゃんですか!ほら、早く帰ってください!仕事があるんでしょう!?」
──────────
(先生が帰ってからも、アリスたちとゲームで遊んで、お喋りして……)
(……もう、皆寝てしまいましたね。)
(先ほどまで騒がしかったのが、嘘のよう。)
「ふあぁ……私もそろそろ寝ますか…」
ぐ~きゅるる。
「!?」
(そうだ…今日はミセドで中途半端に食べたせいで…)
(少しお行儀悪いですが…何か食べられそうなものは……)
(……?)
(これは…ドーナツ?あっ、メモに何か書いて──)
“おつかれさま。皆で食べてね。”
「………」
「……もう、この人は…」
「あーっ!ケイ何それ!?ドーナツ!?」
「!? モモイ!?」
「いつも私たちには夜中に食べちゃダメ、って言いながら自分だけ食べるの!?インチキ!!」
「ち、違いますこれは…」
「ドーナツ!?ドーナツがあるんですか!?」
「お姉ちゃん、うるさい……」
「うぅん…?どうしたの…?」
「ああっもう、皆起きちゃったじゃないですか!」
「まったくもう…今日だけ特別です。せっかくですし皆で食べましょうか。」
「やったー!私コレね!」
「あーっ!モモイ ズルいです!」
「じゃあ私はコレにしようかな。アリスちゃん、よかったら半分こしよう?」
「じゃあ私はコレ、かな。ふふっ、夜にドーナツなんて、何だか罪の味…」
「ケイ、牛乳出して!牛乳!」
「はいはい。仕方ないですね…」
「…えっ、牛乳ですか?モモイが牛乳なんて珍しいですね。」
「えーっ、ケイ知らないの?ドーナツと牛乳は相性抜群なんだよ!」
「はい!アリスも大好きな組み合わせです!」
「……好きなら、普段から飲んでください。余りまくってるんですから。」
「分かってないな~、ケイ。こういうのはペアリングと言って…」
はいはい、と聞き流しつつ、自分も席に着く。
(………相性抜群、ですか…)
かじったドーナツは確かに、少しだけ、罪の味がした。