嘘で日本がアメリカになる――誰も偽物と断言しなかった1944年の偽造暗号
作者:あまね みかん
オリジナル:歴史/戦記
タグ:R-15 残酷な描写 架空戦記 歴史改変 第二次世界大戦 仮想戦記 インテリジェンス 兵站 政治 経済 法律 アメリカ
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1943年。
太平洋の戦局が静かに、しかし確実に傾き始める中、
戦場の裏側ではもう一つの「戦争」が起きていた。
昭南島(シンガポール)で、主流派の犬として
軍内部の横領と腐敗を狩る特務将校・越智広重。
計算尺一つで兵站の矛盾を追求する
ロジスティック将校・真鍋勲。
そして、帝都・東京で防諜の網を冷徹に操る
情報将校・辻村要。
1944年1月。
満洲のハルビン特務機関が傍受した一通の暗号電文が、
帝国の運命を狂わせる。
示されていたのは、
『テヘラン会談におけるソ連対日参戦の密約』を
匂わせる内容だった。
中央から東部軍に出向していた辻村は、
それが極めて精巧に作られた偽物だと見抜く。
誰が、なんの目的で偽造したのか。
だが、参謀本部の専門家や暗号班は、
致命的な失点と責任を恐れるあまり、
「一定の蓋然性が認められる」とし、
誰一人としてそれを「偽物だ」と断言しなかった。
「誰も責任を取らない」という官僚組織の病理。
エリートたちの曖昧な忖度と保身が積み重なり、
いつしか「嘘」は既成事実へと変わり、
組織内の政治的空気は少しずつ変化していく。
やがて設定された「絶対国防圏」すらも、
マリアナ沖での大敗によって崩壊。
その責任を問われた東條内閣はついに退陣し、
後を継いだのは小磯ではなく「米内単独内閣」だった。
ソ連仲介を唱える者たちの勢いは弱まり、
水面下で米英との早期講和へ舵を切り始める。
国体が売り渡されると悟った陸軍の徹底抗戦派は、
ついに帝都・東京で一斉蜂起。
霞が関や皇居周辺を舞台にした、
血で血を洗う「内戦」が勃発する。
だが、憂国に駆られたその叛乱は、
事前に冷徹に敷かれた無慈悲な
「殺戮地帯(キルゾーン)」によって、
短時間で殲滅された。
急転直下の激動。
官僚たちが自らの責任から逃れるために転がした鉛筆が、
国家をアメリカの資本へ売り渡す
白紙委任状へのサインに変わる。
無傷のインフラを残したまま、
日本はヤルタ会談前の「早期降伏」を受け入れた。
列島における弾丸の戦争は終わり、
泥沼化する大陸内戦の兵站基地として、
資本と法が支配する狂乱の時代が幕を開ける。
のちに日本が、
米国大統領選の行方すら左右する
「八つのスイングステート(州)」へと分割される――
そのすべての発端を描く第一部
「偽造暗号編」。
発端は些細なものだ。
誰かが見たいものを見てしまったに過ぎない。
……だが、一度上がった情報は、
欲している者の手で『証拠』に変わる。
太平洋の戦局が静かに、しかし確実に傾き始める中、
戦場の裏側ではもう一つの「戦争」が起きていた。
昭南島(シンガポール)で、主流派の犬として
軍内部の横領と腐敗を狩る特務将校・越智広重。
計算尺一つで兵站の矛盾を追求する
ロジスティック将校・真鍋勲。
そして、帝都・東京で防諜の網を冷徹に操る
情報将校・辻村要。
1944年1月。
満洲のハルビン特務機関が傍受した一通の暗号電文が、
帝国の運命を狂わせる。
示されていたのは、
『テヘラン会談におけるソ連対日参戦の密約』を
匂わせる内容だった。
中央から東部軍に出向していた辻村は、
それが極めて精巧に作られた偽物だと見抜く。
誰が、なんの目的で偽造したのか。
だが、参謀本部の専門家や暗号班は、
致命的な失点と責任を恐れるあまり、
「一定の蓋然性が認められる」とし、
誰一人としてそれを「偽物だ」と断言しなかった。
「誰も責任を取らない」という官僚組織の病理。
エリートたちの曖昧な忖度と保身が積み重なり、
いつしか「嘘」は既成事実へと変わり、
組織内の政治的空気は少しずつ変化していく。
やがて設定された「絶対国防圏」すらも、
マリアナ沖での大敗によって崩壊。
その責任を問われた東條内閣はついに退陣し、
後を継いだのは小磯ではなく「米内単独内閣」だった。
ソ連仲介を唱える者たちの勢いは弱まり、
水面下で米英との早期講和へ舵を切り始める。
国体が売り渡されると悟った陸軍の徹底抗戦派は、
ついに帝都・東京で一斉蜂起。
霞が関や皇居周辺を舞台にした、
血で血を洗う「内戦」が勃発する。
だが、憂国に駆られたその叛乱は、
事前に冷徹に敷かれた無慈悲な
「殺戮地帯(キルゾーン)」によって、
短時間で殲滅された。
急転直下の激動。
官僚たちが自らの責任から逃れるために転がした鉛筆が、
国家をアメリカの資本へ売り渡す
白紙委任状へのサインに変わる。
無傷のインフラを残したまま、
日本はヤルタ会談前の「早期降伏」を受け入れた。
列島における弾丸の戦争は終わり、
泥沼化する大陸内戦の兵站基地として、
資本と法が支配する狂乱の時代が幕を開ける。
のちに日本が、
米国大統領選の行方すら左右する
「八つのスイングステート(州)」へと分割される――
そのすべての発端を描く第一部
「偽造暗号編」。
発端は些細なものだ。
誰かが見たいものを見てしまったに過ぎない。
……だが、一度上がった情報は、
欲している者の手で『証拠』に変わる。
| プロローグ――極東の鳥籠 | |
| 第1話 静かなる布石 | |
| 第2話 天網と蜘蛛の糸 | |
| 第3話 テヘランの幻影 | |
| 第4話 飴と金槌 | |
| 第5話 パブロフの犬とボルコフの影 | |
| 第6話 幻影の決裁 | |
| 第7話 疑心暗鬼の連鎖 | |
| 第8話 一段上の印影 | |
| 第9話 数える者 | |
| 第10話 澱む白亜 | |
| 第11話 蛇口の主 | |
| 第12話 八角の香る夜 | |
| 第13話話 第七倉庫の取引 | |
| 第14話 名誉ある病死 | |
| 第15話 死者たちの貯金箱 | |
| 第16話 差分の空白 | |
| 第17話 真空で動く機械 | |
| 第18話 三千トンの灰 | |
| 第19話 腐敗する記号(前編) | |
| 第20話 腐敗する記号(後編) | |
| 第21話 制度という重力 | |
| 第22話 誰も見ない数字 | |
| 第23話 摩擦の排除 | |
| 第24話 北への転進 | |
| 第25話 帝都の秋 | |
| 第26話 国都の風 | |
| 第27話 生け贄の数字 | |
| 第28話 凍てつく街の亡霊 |