黒鷺川の湿った匂いは、東へ進むにつれて少しずつ薄くなっていった。
ハイエースの窓の外で、麦畑の色が低い丘の色へ変わる。土は乾き、草の背は低くなり、轍はまっすぐではなく斜めに削れていた。水車町リーデンの近くでは泥を踏む重さがあったが、こちらの道は別の意味で車を揺らした。坂の途中で片輪だけが沈み、次の石に乗り上げるたび、荷室の奥で箱が小さく鳴る。
澪は助手席で膝に置いたノートを押さえ、前方の道を見た。
「地図、前より道の癖が見えます」
言ってから、自分で少し驚いた。
ただ線が見えるのではない。坂道の途中で荷車が傾きそうな場所、雨が降れば水が集まりそうな窪み、轍が斜めに切れて荷が横へ振られそうな曲がり角。そういうものが、地図の上に薄い引っかかりとして浮く。
真壁はハンドルを持ったまま、わずかに目を細めた。
「五になったからだろう。町と道を一つ越えた分、目が増えた」
「地図って、そういう増え方なんですね」
「道は線ではないからね。荷が通れば、癖が出る」
後席でエレナが身を乗り出しかけた。
「澪は道も見えるのか」
「全部じゃないです。でも、ここ、荷車だと揺れそうです」
「どこだ」
「姫様、窓から確認しようとしないでください」
オスカーの声が即座に飛んだ。
「まだしていない」
「する顔でした」
エレナは不満そうに窓から離れたが、目だけは外へ残っている。白っぽい丘が近づくにつれて、彼女の顔も少しずつ前に出た。オスカーがそのたびに、半歩だけ位置を変える。
真壁は坂の下で速度を落とした。前方の荷車道は、右へ大きく曲がりながら丘を上がっている。道脇には白い砂が薄く溜まり、ところどころに割れた陶片が混じっていた。
「白い皿は、窯の中だけでは決まらんな」
「どういうことですか」
澪が聞くと、真壁は道の先、坂の途中に深く残った轍を顎で示した。
「丘を下りる道で割れれば、皿ではなく破片だ」
「道の補修も、商品化なんですね」
「そういう札だね。品が客の手元へ届く理由を作る」
その言葉を聞いたエレナが、窓の外を見る目を少し変えた。
白い丘は、ただきれいなだけではなかった。皿が割れる場所でもあった。
陶工村は、丘の中腹に貼りつくようにあった。
低い小屋の前に、乾燥中の皿や壺が並んでいる。白っぽい土で形を作られたそれらは、まだ焼かれておらず、指で押せば跡が残りそうに見えた。少し離れたところでは、窯から薄い煙が上がっている。薪の匂いと湿った土の匂い、白砂を踏んだ時の乾いた音が混じった。
「白い」
エレナが言った瞬間、オスカーが動いた。
「姫様、窓から出ないでください」
「出ていない」
「白いものを見る顔でした」
「顔だけならよいではないか」
「顔の次は手です」
澪は笑いそうになりながら、荷物を確認した。サンプル袋、小瓶、鉱物図鑑、荷札用の紙。食品と衛生用品とは別に、鉱物サンプル用の区画を意識する。収納10の内側で、空の棚がいくつか静かに空いていた。
ハイエースが止まると、陶工小屋の奥から一人の男が出てきた。年配で、背は高くない。手は厚く、爪の間に白い土が残っている。服は簡素だが、腰に布を巻き、手拭いを肩に掛けていた。
彼は車を見て、エレナを見て、それから澪たちの足元と手元を見た。
「白皿丘の土を見ると聞いております」
声は低く、余計な飾りがない。
真壁は軽く一礼した。
「土と砂、そして道を見ます」
「道、ですか」
「皿が割れるのは、窯の中だけではありますまい」
陶工頭ベルトラム・ハイスの表情が変わった。驚きではなく、警戒が少しほどける顔だった。
「……道で割れた皿も、あります」
「でしょうな」
エレナが車を降りる。すぐに前へ出ようとして、オスカーに止められた。
「姫様、順番を」
「私は領を見る」
「足元からです」
「足元ばかりでは領は見えぬ」
「足元を見ないと転びます」
そのやり取りの横で、澪は村の入口を越えた。
白砂地と窯場が同時に見えた瞬間、視界の内側に薄い枠が開いた。地図ではない。敵反応でもない。けれど、澪はもうそれが何か知っていた。
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信託
白皿丘と玻璃砂原 巡見行商
白い土を分けよ。
白い砂の使い道を見よ。
焼く者の手と、運ぶ者の道を整えよ。
皿が割れる前に、道の割れを見よ。
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報酬
行商人レベルアップ
行商人系スキル成長
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澪はまばたきした。
「……項目は少ないのに、やることは多そうです」
真壁も同じものを見ている。彼は窯の煙と、道端の陶片と、白い丘を順に見て、口元をわずかに緩めた。
「土を品にするには、工程が多い」
「神さま、答えは出してくれないんですね」
「楽しまれているようだ」
エレナが眉を寄せる。
「また見えない予定か」
「はい。今回も見えない予定です」
「ずるい」
「姫様、まず足元です」
オスカーが言うと、エレナは白砂を踏む自分の靴を見た。
「足元ばかりでは領は見えぬ」
「足元を見ないと転びます」
信託の枠は、それ以上何も言わなかった。
答えは、現場にある。
澪はそう思い直して、白い丘を見た。
澪は、すぐに陶土置き場へ向かわなかった。
白皿丘は陶器の土地だ。ならば陶土、白砂、石英砂、長石を見る。それは間違っていない。けれど、黒鷺川で真壁が言った言葉が、まだ残っている。
黒砂は入口。
本命は、重い砂が何を連れているか。
白い土があるからといって、土だけを見ればよいわけではない。白砂の下、石英の筋、丘の割れ目、雨水が集まる低い場所。そこに、金属の反応がないとは限らない。
澪は足を止め、地図5を広げる感覚で白皿丘全体を見た。そこへ、鑑定9を重ねる。
陶土の層は、広く鈍く光った。白砂は薄い帯のように斜面を走る。石英砂は、硬い点の集まりとしてちらちらと返る。
その奥に、別の小さな反応があった。
金ではない。黒鷺川の小瓶に入れた自然金反応とは違う。けれど、石英の筋のそばに、重く冷たい粒がいくつか光っている。
「真壁さん。陶土とは別に、金属っぽい反応があります」
真壁は、澪の視線の先を追った。
「見落とさなかったか。悪くない」
「金ではなさそうです。銀、銅、鉛……そこまではまだ分かりません。あと、重い白い粒が少し」
「灰重石の候補かもしれん。タングステンの筋だね。確定ではない。だが、候補として札を付ける価値はある」
「白皿丘は陶器の町じゃないんですか」
「陶器の町だ。だが、陶器だけを見るとは言っていない。行商人は、荷になるものを見落とさぬ」
ベルトラムはそのやり取りを黙って聞いていた。外から来た商人が土だけでなく、白砂の下の重い粒を見ていることに、戸惑いがあるようだった。
澪は小さなスコップで白砂を掬い、光った筋の砂を小瓶へ分けた。粒は少ない。けれど、収納に入れると、区画の棚が静かに分かれた。金属反応混じりの粒、白色の重い粒、石英筋まわりの砂。それぞれに仮の札が浮かぶ。
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サンプル管理
番号:H-C01
採取地:白皿丘と玻璃砂原
位置:白皿丘南斜面/石英筋周辺
採取物:金属反応混じり重粒
見た目:白砂中に暗色粒少量
鑑定反応:銀・銅・鉛亜鉛系反応候補/量少
採取基準:地図5+鑑定9発光地点
図鑑照合:鉱石候補/要再鑑定
収納区画:鉱物サンプル/白皿丘/H-C01
扱い:押入商会内鑑定書作成対象
備考:現金化候補スクリーニング
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サンプル管理
番号:H-C02
採取地:白皿丘と玻璃砂原
位置:白砂原東側/白色重粒反応地点
採取物:白色重鉱物候補
見た目:白色粒/比重高め/石英粒と混在
鑑定反応:灰重石候補/タングステン系反応の可能性
採取基準:地図5+鑑定9発光地点
図鑑照合:灰重石候補
収納区画:鉱物サンプル/白皿丘/H-C02
扱い:押入商会内鑑定書作成対象
備考:量不明/鉱床確定ではない
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エレナが小瓶を覗き込む。
「たんぐすてんとは何だ」
真壁はエレナに向き直り、軽く頭を下げた。
「エレナ様。高い熱に強い金属の候補です。今ここで鉱山と決まったわけではありませんが、見落とすには惜しい反応です」
「なら、見る」
「姫様、石に近づきすぎです」
オスカーが半歩出る。
「見るだけだ」
「拾う顔でした」
「顔で何でも決めるな」
「姫様は、顔の次に手が出ます」
澪は小瓶に蓋をしながら、白皿丘の白さをもう一度見た。
白いから、陶器だけ。
そう決めてしまえば、見落とすものがある。
真壁の言う行商人の目は、品目表を先に作ってから歩くものではなかった。
ベルトラムは陶工小屋へ案内した。
中はひんやりとしている。壁際に粘土の塊が並び、床には白い粉が薄く落ちていた。奥の棚には、乾燥中の皿、口の細い瓶、小さな壺が置かれている。窓際には、割れた皿の欠片がまとめられていた。
エレナはその欠片を見た。
「失敗作か」
ベルトラムは少しだけ顔を曇らせた。
「焼きの失敗もあります。ですが、道で割れたものもあります」
「道で割れるのか」
真壁はエレナへ向き直った。
「エレナ様。割れるのは皿だけではありません。道が割れれば、商いも割れます」
エレナは返事をせず、欠片を見た。
澪もそれを見る。白い皿の欠片は、商品になる前に終わったものだった。店に並ぶ前に割れたもの。客の手に届く前に、価値を失ったもの。
ベルトラムは粘土置き場へ移動した。
「この丘の土は、同じように見えても焼くと違います。白く出るものもあれば、黄ばむもの、黒い点が出るもの、割れやすいものもある」
「職人の手で分けているのですか」
澪が聞くと、ベルトラムは頷いた。
「手触りと、焼いた後の覚えです。若い者に教えるのが難しい」
真壁は並んだ粘土を見た。
「素材はある。職人もいる。だが、飯と燃料と道が外にある」
「皿を焼けても、飯は焼けない」
澪が言うと、真壁は少しだけ笑った。
「その通りだ。皿を売り、粉を買う。そのためには、皿が割れずに道を下りねばならん」
白皿丘では麦は多く採れない。ベルトラムの話では、主食になる粉は水車町リーデンや周辺の農村から買う。菜園、山羊、鶏、豆、卵、木の実はあるが、それだけで村は回らない。皿を焼き、壺を売り、粉を買う。窯を焚く薪も必要になる。
エレナは窓の外の低い林を見た。
「木はある」
「あります。ですが、使いすぎれば痩せます」
ベルトラムの声は重い。
「窯を焚く回数を増やしたい。けれど、薪を増やせば丘の林が減る。遠くから運ぶにも、道が悪い」
澪はノートを開いた。
土。
砂。
燃料。
食料。
道。
商品情報の項目表より、もっと前にあるものだった。
ベルトラムは作業小屋の奥から、四つの浅い皿を持ってきた。
一つ目には、湿り気を含んだ白っぽい土。二つ目には、さらさらした白い砂。三つ目には、角のある硬い粒が混じる砂。四つ目には、白く濁った小石に近い粒。
どれも白い。
けれど、同じではない。澪は皿の縁に手を近づけ、鑑定をかけた。土の粘り、砂の粗さ、鉄分の少なさ、熱に対する反応。それらが薄い違いとして返ってくる。
ベルトラムが、一つ目の皿を指で押した。
「これは器に使う土です。水を含ませて練る。形は作れますが、層によって焼いた後の色と割れ方が変わります」
真壁は頷いた。
「陶土ですな。白皿丘の本体になる土だ。問題は、どの土を皿に使い、どの土を壺に回し、どの土を混ぜ物にするかです」
澪はノートに、陶土、と書いた。その横に、皿、壺、瓶、焼き色、割れ方、と小さく付ける。
エレナが皿を覗き込む。
「同じ白い土に見える」
「姫様、焼くと違いが出ます。見た目では近くとも、窯から出ると別物になります」
「では、焼くまで分からぬのか」
「職人は手触りである程度見ます。ですが、若い者には伝えにくい」
真壁は二つ目の白砂を指した。
「この白砂は、陶土に混ぜれば縮みや歪みを抑える助けになる。乾く時、焼く時、土だけでは動きすぎることがある。砂を混ぜれば落ち着く品もある」
ベルトラムが頷く。
「混ぜすぎれば、まとまりません」
「ええ。だから量を札にする。どの土に、どの白砂を、どれほど混ぜるか。職人の手だけでなく、次に作る者へ残すための札です」
澪は白砂の横に書いた。
縮みを抑える。
歪みを減らす。
敷き砂。
混ぜる量。
三つ目の皿には、透明に近い粒と白く濁った粒が混じっていた。澪の鑑定では、硬く、熱に強い反応が返ってくる。
「これは石英砂ですね」
澪が言うと、真壁が少しだけ目を細めた。
「見えるようになっているね」
「前より、粒の違いが分かります」
真壁は石英砂の皿を持ち上げた。
「石英砂は、焼き物に混ぜれば形を支える材料になる。釉薬にも使える。高い熱を扱えれば、ガラスの原料にもなる。透明度の高い粒は、標本や飾りにも回せる」
エレナがすぐに反応した。
「飾りになるのか」
真壁はエレナへ向き直る。
「姫君。透明な粒を分け、磨き、玉にし、札を付ければ、見る者は増えます。砂のままでは通り過ぎる者も、形になれば足を止めます」
澪は、水晶粒、標本、飾り、と書いた。
最後に、真壁は白く濁った粒の皿を見る。
「これは長石候補だね」
ベルトラムが首を傾げた。
「我々は、焼き締まりをよくする石と呼んでおります」
「その呼び方でよいでしょう。長石は、焼いた時に一部が溶けて、土や石英の粒をつなぎやすくする。釉薬にも向く。石英砂や陶土だけでは硬く残りすぎる時、これが入るとまとまり方が変わる」
澪は長石の横に、焼き締まり、釉薬、石英と土をつなぐ、量に注意、と書いた。
エレナは四つの皿を順に見た。
「白い土と白い砂だけではないのだな」
真壁はエレナに向き直って、軽く頭を下げた。
「姫君のおっしゃる通りです。白いもの、と一つに呼べば、それで終わります。ですが、皿に向く土、歪みを抑える砂、釉薬に使う砂、焼き締まりを助ける石と分ければ、作れる品も、売り方も変わります」
澪は自分のノートを見た。
「素材名だけじゃなくて、使い方まで札にするんですね」
真壁は澪へ視線を戻す。
「そういう札だね。白皿丘には、白い土と砂がある。それを客に見せるなら、何になるのかまで書いた方がよい」
ベルトラムが、乾燥中の小皿を見た。
「皿、壺、瓶、石鹸置き、薬瓶……用途ごとに札を分ける、ということですか」
「ええ。さらに、どの土を使い、どの砂を混ぜ、どの窯で焼いたか。そこまで残せば、次に同じ品を作りやすい」
澪は大学ゼミの項目表を思い出した。
店に入る前に、買う理由が見えるか。
ここでは、土を掘る前に、何になるかが見えるか。
次に見たのは、丘を下る荷車道だった。
陶工村から外へ向かう道は、白砂に覆われているところだけなら明るく見える。だが、坂の途中で轍が深くなり、雨水が走った跡が溝になっていた。小橋には段差があり、荷車の車輪が乗り上げれば、壺は大きく揺れるだろう。道脇には、割れた陶片がいくつか落ちていた。
「ここ、坂の途中で轍が深くなってます。荷車が傾きます」
澪が言うと、ベルトラムは驚いた顔をした。
「よく分かりますな」
「地図に、引っかかります」
真壁は坂の途中を見た。
「割れ物を運ぶ道としては、補修候補だね」
エレナが問う。
「道を直せば、皿は割れにくくなるのか」
「なります。ですが、どこから手を付けるかが」
ベルトラムの言葉には、諦めに似た重さがあった。
真壁は道端にしゃがみ、白砂を指で少し掬った。細かい砂はすぐに指の間から落ちる。
「道を直すとして、何が足りませんか」
ベルトラムは少し考えた。
「人手は、収穫の時期を外せば出せます。ですが、敷く石が足りません」
「石、ですか」
澪は顔を上げる。
「この辺りは白い砂と陶土はあります。ですが、荷車道に敷ける硬い石が少ない。雨の後、陶土が混じる場所はぬかるみます。白砂だけでは流れます」
「砕石、砂利、排水ですな」
真壁は立ち上がり、道の上から坂の下を見た。
澪はノートに書く。
硬い石。
砕石。
砂利。
水を逃がす溝。
小橋の段差直し。
荷車の待避所。
割れ物用の梱包材。
エレナが道を見た。
「白砂では駄目なのか」
真壁はエレナに向き直る。
「姫君。白砂は役に立ちます。ただ、道の芯にはなりにくい。雨で流れやすく、荷車の重みで沈みます。下に硬い石を入れ、水を逃がし、その上に砂や細かい石を敷く方がよろしいでしょう」
「では、足りないのは硬い石か」
ベルトラムが頷く。
「それと、水の逃げ道です。坂の途中で雨水が道を削ります」
「水が道を壊すんですね」
澪は、地図5の上に雨水の線を重ねる。坂の上から細く流れ、轍を深くし、小橋の手前で溜まり、陶土の混じる場所をぬかるませる。そこを荷車が通る。皿が揺れる。
「道は、石だけでは直りません。水をどこへ逃がすかを決めねば、また割れる」
オスカーが足元を見る。
「姫様、この轍は深いです」
「分かっている」
「踏む顔でした」
「今日は顔で止められてばかりだ」
エレナは唇を尖らせたが、足は止めた。
澪は道の補修候補を地図に記録する。坂道の深い轍、雨水が道を削る場所、荷車が傾く曲がり角、小橋の段差、砂が流れる場所、砕石を敷くべき場所、排水溝を切るべき場所、荷車の待避所候補。
地図5は、以前より広く、細かく受け止めてくれる。記録した点が、ただの印ではなく、荷の通り道として残る。
「白皿丘には土と砂がある。だが、道には硬い石が要る。これも候補地巡りの荷だね」
「次の場所で、道に使える石も探すんですか」
「探す。陶器のためだけではない。道のための石、窯のための燃料、宿のための衛生。領の荷はつながっている」
エレナは黙って道を見た。
「皿を売るには、皿だけでは足りぬのだな」
真壁は丁重に答えた。
「おっしゃる通りです、姫君。皿を焼く土、割らずに運ぶ道、運んだ先で使い方が分かる札。その三つがそろって、初めて白皿丘の品になります」
風が白砂を薄く動かした。
エレナはその白い流れを見ていた。さっきまで景色だったものが、少しずつ領の問題に変わっていく顔だった。
産業候補の分類に戻ると、澪の収納の中は小さな棚だらけになった。
陶土候補。白砂候補。石英砂候補。長石候補。透明な石英粒。金属反応混じりの重粒。灰重石候補。どれも同じ袋に入れてしまえば、ただの白い砂と土だ。けれど区画を分け、札を付けると、意味が変わる。
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サンプル管理
番号:H-I01
採取地:白皿丘と玻璃砂原
採取物:陶土候補
鑑定反応:白色焼成向き/鉄分少なめ/可塑性あり
用途候補:皿/壺/瓶/石鹸置き
扱い:産業候補
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----------------------------------
サンプル管理
番号:H-I02
採取地:白皿丘と玻璃砂原
採取物:白砂候補
鑑定反応:鉄分少なめ/陶土混和向き/敷き砂候補
用途候補:収縮調整/敷き砂/耐火補助
扱い:産業候補
----------------------------------
----------------------------------
サンプル管理
番号:H-I03
採取地:白皿丘と玻璃砂原
採取物:石英砂候補
鑑定反応:石英粒多め/熱に強い/透明粒混在
用途候補:陶磁器原料/釉薬/ガラス原料/標本石英
扱い:産業候補/装飾候補あり
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----------------------------------
サンプル管理
番号:H-I04
採取地:白皿丘と玻璃砂原
採取物:長石候補
鑑定反応:焼成時溶融補助/白色粒/釉薬候補
用途候補:焼き締まり補助/釉薬原料
扱い:産業候補
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サンプル管理
番号:H-I05
採取地:白皿丘と玻璃砂原
採取物:透明石英粒/水晶粒候補
鑑定反応:透明度高め/白雲状内包あり/針筋あり
用途候補:錬成水晶玉/標本/装飾品
扱い:高級見本品候補
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透明な石英粒だけを分けた小瓶を、澪は木箱の上に置いた。午後の光を受けると、粒は小さくきらめく。けれど、エレナとベルトラムの反応は、水晶玉を見る前ほど強くはなかった。
「これ、透明な粒だけ分けても、外の人には何に使うか分かりにくいですよね」
「その通りだ。砂は砂のままでは、客の足を止めにくい」
「じゃあ、見本が必要ですか」
「そういう札だね。品は、使った後の姿が見えると強い」
澪は小瓶の中身を見る。
小さな飾り玉。
標本。
帳場飾り。
それだけでも商品にはなる。だが、白皿丘の顔になるほどのものではない。
「透明な粒を集めて、飾り玉に加工したらどうでしょう。小さいものじゃなくて、見本として大きめに」
真壁の目が、わずかに面白がる色を帯びた。
「大玉を一つ、作ってみるか」
「大玉ですか」
「見本品だね。白皿丘の石英で、ここまでできると見せる」
澪は一度、息を整えた。
収納10の内側で、透明な粒だけを一つの区画に集める。鑑定で傷の深い粒を外す。濁りの強い粒を外す。鉄分の混じった粒を外す。残った粒をさらに見て、光の通り方をそろえる。
錬金5を使う。
粒が寄り合った。
砂がただ固まるのではない。角が消え、傷の向きが揃い、光を通す筋が残る。白い曇りが中心へ薄い雲のように沈んだ。外側が澄んでいく。小さな玉が、手のひらほどになり、茶碗ほどになり、両手で抱えるほどになる。
完全な透明ではない。
中心には白い雲があり、針のような筋がいくつもある。けれどそれは傷ではなく、白皿丘の石の顔として残った。
澪は、収納からそれを出した。
木箱の上に、重い音がした。
直径三十センチほどの水晶玉が、白皿丘の午後を抱え込んだ。玉の中で草の色が曲がり、エレナの袖が逆さまに揺れ、窯の煙が白い雲の奥へ沈んだように見えた。
エレナは言葉をなくした。
「……砂が」
「姫様、手を出さないでください」
オスカーが言う。
「出していない」
「出る顔でした」
「これは出るだろう」
「分かります。ですが順番を」
澪は少し笑い、それから水晶玉を見た。
「全部じゃありません。透明な石英粒だけを選んで、傷と濁りを分けて、錬金で丸くしました」
「砂が玉になるのか」
「砂というか、石英です」
「石英が玉になるのか」
「はい」
ベルトラムも黙っていた。職人の目が、土を見る目から、品を見る目に変わっている。
真壁は水晶玉を回し、白い雲の位置を見る。
「これは売れる」
「売れるんですか」
「売れる。だが、一個売って終わりでは惜しい」
真壁は、水晶玉の向こうに見える白皿丘を見た。
「大玉は町の顔になる。領主館に置いてもよい。商談室に置いてもよい。陶工村の入口に置いてもよい。見た者が、白皿丘を覚える」
「商品情報の見える化……」
「そうだ。砂の袋を見せても、客には届きにくい。だが、これなら足が止まる」
エレナが即座に言った。
「領主館に置く」
「姫様、購入判断はアルベルト様です」
「兄上に見せる」
「それは可能です」
「では持ち帰る」
「まだ可能ではありません」
真壁は楽しそうに目を細めた。
「まぁ良いでしょう。錬成代金はいただきます。これ以上の錬成はセルマ君たちに依頼されるとよろしいかと」
「セルマさんに?」
「ええ。これは押入商会がすべて作って売る品ではない。白皿丘の石英を、白皿丘の品として育てるための見本だ。追加の小玉、中玉、飾り玉は、セルマ君たち錬金術師たち、もしかしたら土魔法使いたち。とこちらの職人たちで試す方がよい」
「仕事を残すんですね」
「そういうことだね。見本を作り、値を付け、札を整え、あとは現地の手に渡す。商いとして、その方が品がある」
澪は商品札を書いた。字が少し震えたのは、水晶玉が思った以上に大きかったからだ。
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白皿丘産 錬成水晶玉
素材:白皿丘産石英粒
加工:押入商会錬成
直径:約三十センチ
特徴:白雲状内包/針筋/高透明度
用途:領主館展示/商談室飾り/貴族家向け贈答/高級受注品
等級:大玉・特等見本
販売方針:限定受注/要価格協議
備考:白皿丘の商品化象徴
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真壁は札を見て頷いた。
「小玉は土産。中玉は帳場飾り。大玉は領主館、商談室、神殿、貴族家向けの一点物。客層を分ければよい」
「砂のままだと見えないけど、玉になると分かる」
「その見方でよい。高く売れるからこそ、札を整える」
澪は、水晶玉の中に浮く白い雲を見た。ただ、白皿丘の品をどう見せるかを考えた。
砂のままでは、客は通り過ぎる。
玉になれば、足が止まる。
それだけだった。
陶工村では、手を洗う場所も見た。
陶土を練る手。白砂をふるう手。窯の灰を扱う手。手拭いで拭かれた指は荒れており、爪の間には白い土が残っていた。若い陶工の一人が、目をこすりかけてベルトラムに叱られる。
澪は収納から石鹸、タオル、手洗い用品を出した。食品とは別の区画から、陶工用の見本だけを取り出す。
「作業後に手を洗うものです。これは石鹸です。水で泡立てて、手の土や油を落とします。目に入れないでください。飲まないでください」
若い陶工が石鹸を見て、匂いを嗅いだ。
「皿も要るな」
ベルトラムがぽつりと言った。
真壁はすぐに拾った。
「石鹸を売るなら、石鹸を置く皿も要る。手を洗うなら、水場と布も要る。白皿丘の陶器は、衛生用品と相性がよい」
「商品がつながるんですね」
「そういう札だね。単品で売るより、使う場面を見せる」
ベルトラムは小皿を一枚持ち上げた。まだ焼く前の皿だ。
「これを、石鹸置きとして作る」
「穴を少し開けると水が切れます」
澪が言うと、ベルトラムは皿の底を見た。
「水が残ると、石鹸が溶けるのか」
「はい」
「では、底を少し上げる」
職人の顔になった。
澪はノートへ書く。
石鹸置き。
水切り穴。
小皿。
手洗い場。
タオル。
商品は、単品ではなく、使う場面でつながる。
そのあと、窯場へ移った。薪置き場の残りは多くない。林はあるが、近くで切り続ければいずれ痩せる。
「土はある。砂もある。職人もいる。だが、焼く火が足りぬ」
真壁が言った。
「薪を増やせば済む話ではないんですね」
「林を削って皿を焼けば、皿は残っても丘が痩せる。品が悪い」
「燃料も、荷なんですね」
「そういうことだ。次の湿地で、燃える土の筋も見ておこう」
「燃える土?」
エレナが反応する。
真壁は笑みを薄くした。
「姫君、土にも燃えるものがございます。使えるかどうかは、見てからです」
「土が燃えるのか」
「燃えるものもあります」
「なら、見る」
「姫様、今から湿地へ歩く顔でした」
オスカーが言うと、エレナは不満そうに足を止めた。
「顔で止めるな」
「足で止める前に済ませています」
日が傾き始めると、白皿丘の白さは昼よりも濃く見えた。
窯の煙が薄く伸び、遠くの林が低く影を作る。真壁は陶工村の外れにある少し高い草地を野営地に選んだ。風向き、水場との距離、地面の硬さ、ハイエースを停める角度、村から近すぎず遠すぎない位置。すべてを見てから、車を止める。
「ここで寝るのか」
エレナが目を輝かせた。
「食事と休憩はここです。寝るのは車の中です」
澪が答えると、エレナはハイエースを振り返った。
「あの中で寝るのか」
「はい。外は冷えますし、姫様を野外で寝かせるわけにはいきません」
「当然です」
オスカーが短く言った。
真壁が収納からキャンプ用品を出す。折りたたみ椅子、テーブル、ランタン、焚き火台、調理道具、水、食材、毛布。エレナは一つ出るたびに反応した。
「椅子が畳まれている」
「姫様、開く前に触らないでください」
「見るだけだ」
「指が挟まる顔でした」
澪は笑いながら椅子を広げた。白砂の上では足が沈むため、真壁が少し硬い地面を選ぶ。風上に食材、火の近くに水、ハイエースは逃げ道を塞がない角度。エレナは火が見えて、しかし近すぎない場所。オスカーは自然にその半歩後ろ。
「休暇のはずなのに、配置が軍事っぽいです」
澪が言うと、真壁はランタンを置きながら答えた。
「火と水と人の位置を整えれば、夜は品よく過ごせる」
「キャンプにも品があるんですね」
「雑に寝れば、朝に荷が乱れる」
夕食は、現代側の保存食品と陶工村でもらった野菜を合わせた。スープ、焼いたパン、缶詰を使った簡単な煮込み、茶、甘い菓子。エレナは缶詰をじっと見た。
「箱を食べるのか」
「中身です」
「姫様、箱は食べません」
「分かっている」
「少し迷いました」
「迷っていない」
澪は吹き出しそうになりながら、缶の中身を鍋へ移した。
食事の間も、エレナは水晶玉の話をしていた。
「兄上は驚く」
「驚かれるでしょう」
真壁は茶を飲みながら、丁寧に答える。
「領主館に置く」
「姫様、購入判断はアルベルト様です」
「兄上に買わせる」
「言い方を整えてください」
澪は膝の上で大学ノートを開き、短く一行だけ書いた。
商品は、店に並ぶ前に、道を通っている。
真壁がそれを見る。
「悪くない見方だ。割れ物なら、客は届くかどうかを見る。道が悪ければ、品の価値は途中で割れる」
「今日の話、ゼミにそのまま使えそうで怖いです」
「君の言葉に直せばよい」
澪はノートの端に、もう一つだけ書いた。
素材は、形と用途を得て、客の前に出る。
食事が終わり、白皿丘の風が少し冷えた頃、真壁が荷の中からギターケースを出した。
エレナの目が、すぐにそこへ向く。
「それが、ギターか」
「はい」
澪がケースを受け取ると、エレナは迷わず言った。
「澪が弾くのか」
「え」
「澪のものだろう」
澪は言葉に詰まった。確かに、自分のギターだ。けれど、侯爵家の姫、護衛、真壁、そして白皿丘の夜の前で弾くとなると、急に指先が重くなる。
「上手くはないです」
「音が出るならよい」
「その基準、かなり広いです」
真壁はランタンの位置を少し直し、澪の手元が見えるようにした。
「澪君。君の荷だ。まず君が音を出すとよい」
「荷なんですか、これも」
「旅に積んだ以上はね」
澪は観念して、折りたたみ椅子に座った。白皿丘の夜風が弦に触れる。遠くでは陶工村の窯火が赤く揺れている。収納の中には、昼間作った水晶玉が収まっているはずなのに、その白い光がまだ近くに残っている気がした。
澪はゆっくり弦を鳴らした。
最初の音は少し硬かった。けれど、二つ目、三つ目で指が思い出す。六畳間で一人で弾いた時より、音は広く散った。白い砂の丘に吸われ、ランタンの灯りに触れ、エレナの前で小さく震えた。
エレナは黙っていた。
あれほどすぐに言葉を挟む姫が、口を閉じて音を聞いている。オスカーも止めなかった。ただ、エレナが身を乗り出しすぎない位置に立っている。
短い曲が終わると、澪は息を吐いた。
「……こんな感じです」
エレナは、しばらくギターを見ていた。
「もう一度」
「姫様、就寝時間が近づいています」
「もう一度だけだ」
「二度目の顔です」
澪は笑ってしまった。
その時、真壁が静かに手を差し出した。
「少し、調弦を見よう」
「弾くんですか」
「音を整えるだけだ」
その言い方は、まったく信用できなかった。
真壁はギターを受け取ると、弦を一本ずつ鳴らした。澪の指では少し丸く響いていた音が、真壁の手に移ると、乾いた石を叩いたように輪郭を持った。
次の瞬間、白皿丘の夜に細かなリズムが走った。
ゆっくりではない。けれど急ぎすぎもしない。弦を弾く指が、砂の上に火花を散らすように動く。低い音が足元を打ち、高い音がランタンの灯りをかすめた。遠くの陶工村の窯火が、その音に合わせて赤く揺れたように見える。
エレナが目を見開いた。
「同じ道具なのか」
「同じギターです」
澪はそう答えながら、自分でも少し疑わしくなった。
六畳間で自分が抱えていた時のギターとは、違う楽器のようだった。白い砂の丘に、乾いた風と、どこか遠い国の夜が混じる。聞いたことのない曲なのに、火と土と石には妙に合っていた。
「これは、どこの曲だ」
エレナが聞いた。
真壁は弾く手を止めず、短く答えた。
「スペインの曲ですな。砂と夜には合う」
「すぺいん」
エレナは知らない言葉を、そのまま繰り返した。
オスカーは、珍しく何も言わなかった。ただ、エレナが音に釣られて火へ近づかないよう、半歩だけ位置を変えた。
澪は、少し悔しくなった。
自分のギターなのに、自分の知らない顔をしている。
けれど、それ以上に面白かった。
白皿丘の白砂も、ただの砂ではなかった。水晶玉になり、皿になり、瓶になり、町の顔になる。ギターも同じなのかもしれない。誰が持ち、どこで鳴らし、誰が聞くかで、見える顔が変わる。
真壁は最後に低い弦を一度鳴らし、音を静かに落とした。
「この辺りでよいでしょう」
「もう一度」
エレナが即座に言った。
「姫様、就寝時間です」
オスカーが戻ってきた。
「今のは短い」
「短くても一曲です」
「では、半分だけ」
「交渉になっていません」
澪は笑って、ギターを受け取った。
弦にはまだ、乾いた熱が残っている気がした。
その時、澪の視界の内側に、薄い枠が開いた。
今度は始まりではない。
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信託達成報告
白皿丘と玻璃砂原 巡見行商
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現在の信託達成
貴金属・高価鉱物候補のスクリーニング
陶土・白砂・石英砂・長石候補の採取
水晶粒/装飾石候補の確認
錬成水晶玉の作成
商品化見本作成
用途札・等級設計
押入商会鑑定書作成
陶工村の困りごと確認
窯燃料不足の確認
割れ物輸送路の確認
道補修に必要な不足資材の聞き取り
砕石・砂利・排水候補の確認
道の補修候補地点を地図記録
梱包・荷札・用途札の提案
石鹸・タオル・手洗い用品の行商
エレナの領内視察
初キャンプ実施
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取得
行商人レベルアップ
行商人系スキル成長
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澪は思わず水晶玉の入った収納区画を意識した。
「水晶玉、正解だったんですね」
真壁も表示を見ていた。火の明かりに照らされた横顔が、少し楽しそうに見える。
「正解を見て作ったのではない。白皿丘の品をどう見せるか考えた結果だ。そこを拾われたのだろう」
「後から採点されるの、ちょっと怖いです」
「楽しまれているようだ」
続けて、表示が切り替わった。
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篠原 澪
現在ジョブ:行商人 Lv7 → Lv8
状態:白皿丘巡見行商/陶土分類/白砂・石英砂採取/錬成水晶玉作成/道補修候補記録/初野営
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基礎能力値
体力:51 → 52
筋力:34 → 35
器用:74 → 76
知力:85 → 88
判断:83 → 87
精神:85 → 88
集中:79 → 83
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自動成長
地図:5 → 6
移動加速:未取得 → 1
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維持
収納:10
鑑定:9
防衛用収納展開:2
並行思考:芽あり/芽強化
錬金:5
雷:8
火:1
収納内時間停止:芽あり
技能:彫金
技能:手仕事
統率個体識別:1
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取得スキルポイント
確認済み保有SP:28
Lv8到達:+2
今回取得SP:+2
割振前SP:30
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SP割振
移動加速:未取得 → 1
消費SP:1
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現在反映
保有SP:29
地図:6
移動加速:1
収納:10
防衛用収納展開:2
並行思考:2
鑑定:9
錬金:5
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成長
白砂分類:1
陶土分類:1
石英砂照合:1
長石候補照合:1
錬成水晶玉作成:1
商品等級整理:1
道補修記録:1
割れ物輸送判断:1
行商野営:1
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澪は表示を何度も見た。
「移動加速、ひとつ付きました」
「今日は道を見た。皿を割らずに運ぶ道を、商品として見た。移動の意味を理解したのだろう」
「移動も、荷なんですね」
「そういう札だね。どれほど良い品でも、客の手元へ届かなければ商いにはならん」
「基礎能力値も、ちゃんと上がってます」
「行商人の仕事をしたのだ。土を見て、道を見て、品を作り、売った。体も頭も使っている」
真壁の視線の前にも、別の表示があった。
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真壁 久忠
現在ジョブ:行商人 Lv7 → Lv8
状態:白皿丘巡見行商/素材用途説明/錬成水晶玉商品化設計/道補修判断/野営配置
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基礎能力値
体力:82 → 83
筋力:68 → 69
器用:88 → 90
知力:92 → 94
判断:101 → 102
精神:100 → 101
集中:96 → 98
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自動成長
地図:5 → 6
移動加速:4 → 5
商才:4 → 5
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維持
収納:10
鑑定:9
交渉:8
指揮:8
軍略:7
錬金:7
体術:4
威圧:5
異界適応:4
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取得スキルポイント
確認済み保有SP:8
Lv8到達:+2
今回取得SP:+2
割振前SP:10
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SP割振
割振:なし
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現在反映
保有SP:10
地図:6
移動加速:5
商才:5
収納:10
鑑定:9
交渉:8
指揮:8
軍略:7
錬金:7
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成長
道補修判断:1
物流設計:1
商品等級設計:1
白皿丘産業化設計:1
錬成代金設定:1
野営配置:1
行商旅程管理:1
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真壁は静かに息を吐いた。
「こちらも地図六、移動加速五か。道は近づいている」
「転移ですか」
「まだ届かぬ。だが、手前の道は見えた」
澪は、自分の足元を見た。
移動加速一。
走るための力だけではない。
荷を運ぶ道を見る力。
品を届ける距離を縮める力。
白皿丘の坂道が、地図6の中で少しだけはっきりしていた。
就寝は外ではなかった。
澪はハイエースの後席を倒し、毛布を広げた。窓に薄い布を掛け、車内灯を弱くする。荷物は寝る場所と分け、水晶玉やサンプル箱は収納へ戻す。外からは、真壁がランタンの明かりを少し落としているのが見えた。
「今日は、あの中で寝るのか」
エレナは車内を覗き込んだ。
「はい」
「面白い」
「姫様、面白さより安全です」
「安全なら面白くてもよい」
「否定はしません」
オスカーは外から扉の位置を確認し、周囲を見た。半歩ではなく、ハイエース一台分の距離で姫を守る場所に立つ。真壁は火の残りと水の位置、荷の影、村へ戻る道を確認していた。
エレナは毛布にくるまりながら、まだ水晶玉の話をしていた。
「兄上は驚く」
「驚くと思います」
「領主館に置く」
外から、オスカーの声が飛ぶ。
「購入判断はアルベルト様です」
「聞こえていたのか」
「護衛です」
澪は小さく笑い、車内灯の下で大学ノートを開いた。さっき書いた一行の下に、もう一行足す。
砂は、形と用途を得て、客の前に出る。
エレナが横から覗こうとする。
「何を書いている」
「大学の課題です」
「領のことか」
「少しだけ、似ています」
エレナは満足したように頷いた。
「澪。明日も見るぞ」
「はい。明日も見ます」
外では、真壁の足音が砂を踏む。オスカーの低い声が一度だけ聞こえ、また静かになった。遠くに陶工村の窯火が赤く残っている。
白皿丘の夜は、白い砂の上に静かに降りてきた。
昼間、砂から生まれた水晶玉の光は、収納の中でまだ消えずに残っているように、澪には思えた。
そしてその光の下には、丘を下る道が一本、前よりはっきり見えていた。