押し入れの向こうは異世界でした   作:Brooks

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第128話 薬師ではなく相場師

 

 セルマの工房へ入ると、昨日まで作業台の端に寄せられていた小瓶が、いつの間にか窓際まで勢力を広げていた。

 

 午前の光を受けているのは、淡い褐色の抽出液だけではない。濃い茶色の液体が沈殿を抱えたまま残っている瓶もあれば、底へ薄い粉末をこびり付かせた瓶もある。細い紐で結び付けられた札には、使った柳皮の区分や煮出した時間、抽出した時に感じた違い、水へ戻した後の変化まで、セルマの少し癖のある文字で書き込まれていた。

 

 澪は、その隣へ椅子を寄せ、昨日から使っている紙へ鉛筆を走らせていた。

 

 柳皮から熱を和らげる機能分を取り出せる可能性は見えた。けれど、孤児院の棚へ置ける薬にするためには、まだ決めなければならないことが多い。軽い熱へ気軽に使わせず、高熱や痛みで眠れない子供、水分を取ることさえ難しくなった子供へ限って使う。誰へ、いつ、どれだけ飲ませたのかを残し、発疹や息苦しさが出れば直ちに止める。激しい嘔吐や意識障害が起きた場合には、司祭様へ知らせ、状態異常回復薬やポーションを使えるようにしておかなければならない。

 

 一枚目の余白がなくなり、澪は紙を裏返した。

 

 子供の手が届かない棚を用意し、状態異常回復薬も近くへ置く。司祭様とシスターへ渡す説明書には、文字だけではなく、読めない者にも分かる印を付けた方がよいかもしれない。柳皮を継続して集めるなら、採りすぎて木を枯らさないようにする必要もある。孤児院だけでなく、町の人々へ供給することまで考えるなら、価格や販売方法も決めなければならない。

 

 書けば書くほど、紙の裏面にも文字が増えていく。

 

「セルマさん」

 

「うん」

 

 返事はあった。

 

 けれど、セルマは澪の方を見ていなかった。窓際へ立ち、小瓶を光へ透かしている。僅かに傾けられた瓶の底では、沈殿が細い筋を描きながら、ゆっくりと崩れていた。

 

「この薬を孤児院へ置くまでに、まだ決めなければならないことが、かなりあります」

 

「そうだね」

 

「誰が管理するのか、どのような時に飲ませるのか、副作用が出た場合には何を使うのかも決めないといけません」

 

「そうだね」

 

「薬師ギルドとも、話をした方がいいと思います。今まで薬を扱ってきた人たちですから」

 

「そうだね」

 

 澪は、鉛筆を止めた。

 

 セルマの返事が、少しずつ軽くなっている。聞いているようにも見えるし、沈殿が動く速度しか見ていないようにも見える。

 

 試しに、紙へ視線を落としたまま続けた。

 

「あと、芋焼酎を樽ごと一気飲みする人が出た場合の対策も必要です」

 

「そうだね」

 

「セルマさん」

 

「今のは聞いてなかった」

 

 セルマは、ようやく小瓶から顔を上げた。

 

 少しは申し訳なさそうにするのかと思ったが、そうでもなかった。小瓶を作業台へ戻し、澪が裏返した紙を見る。

 

「澪。まだ増える?」

 

「増えると思います」

 

「薬を作るところまでは、私がやる」

 

 セルマは、当然のことを確認するように言った。

 

「抽出の仕方は、もう少し試したい。水へ戻した時に同じ効き目になるかも見たいし、蜜を入れた時に変わらないかも確かめたい。ポーションの方も、前より分けられるようになったから、もう一度やりたい」

 

 そこまで話した時の声は、先ほどまでとは違っていた。

 

 研究に関わる話だけは、実に分かりやすい。

 

 セルマは、澪が持っている紙へ視線を移した。

 

「でも、誰が飲ませていいとか、いくらで売るとか、薬師ギルドが怒るかもしれないとか、その辺は真壁に任せていい?」

 

「全部ですか」

 

「うん」

 

 即答だった。

 

 澪は、隣に立っていた真壁を見た。

 

 作業台の上へ積み上がった面倒事を、セルマは一息で丸ごと渡したのである。少しくらい困った顔をしてもよさそうだった。

 

 けれど、真壁は、むしろ僅かに目を細めた。

 

「結構。人の使い方を心得てきましたな」

 

 セルマが瞬きをする。

 

「褒められた?」

 

「ええ。適材適所というものです」

 

「分かった。じゃあ、お願い」

 

 セルマは満足そうに頷くと、もう一度、小瓶を持ち上げた。

 

 窓から入る光へ透かし、沈殿の動きを確かめ始める。

 

 澪は、文字で埋まりかけた紙とセルマを見比べた。

 

 セルマは、確かに成長している。

 

 ただし、その方向が本当に正しいのかは、少しだけ考える余地がありそうだった。

 

 

 

 

 

 工房を出た後、澪は、真壁が侯爵家へ向かうのだと思っていた。

 

 柳皮の薬を領内で扱うのであれば、アルベルトへ先に相談する必要がある。薬師ギルドとの調整も、侯爵家を通した方がよい。

 

 ところが、真壁は侯爵家へ続く道へ曲がらなかった。

 

 乾燥薬草を軒先へ吊るした店が並ぶ、町の中心へ向かって歩いていく。

 

「真壁さん」

 

「何かな」

 

「アルベルト様へ相談するのではないんですか」

 

「相談はします」

 

 真壁は、軒先で揺れる薬草の束を眺めながら答えた。

 

「ですが、その前に、相談する内容を知らなければなりません」

 

「薬師ギルドについて、ですか」

 

「ええ」

 

 乾いた風が吹き、紐で束ねられた葉が擦れ合った。

 

 市場では、野菜を売る声と、布の値段を交渉する声が重なっている。その間を、荷車の車輪が石畳を擦る音が抜けていく。人の声が絶えない通りの中で、真壁の声だけが、不思議なくらい静かに聞こえた。

 

「どのような組織なのか。誰が決めているのか。何を守ろうとしているのか。何を失うことを恐れているのか」

 

 真壁は、店先へ吊るされた値札へ視線を落とした。

 

「それが分からないまま相手のところへ行くのは、交渉ではありません」

 

 少しだけ間を置く。

 

「お願いですな」

 

 澪は、真壁の横顔を見た。

 

 真壁は、薬を売らせてくださいと頼みに行くつもりではない。

 

 相手が何を考え、どこまでなら譲れるのかを見極めてから、話を始めるつもりだった。

 

 最初に入ったのは、市場の端にある小さな薬草店だった。

 

 店内には、乾燥させた葉や根を詰めた袋が並び、奥では、店主らしい年配の男が秤へ薬草を載せていた。澪たちが近づくと、男は手を止め、少し警戒するように目を細める。

 

 真壁は、柳皮の話から始めなかった。

 

 昨年の冬、流感が広がった時に、熱を和らげる薬がどの程度の値段だったのかを尋ねた。

 

「ギルド長の悪い噂でも探しているのかい」

 

 男は、秤の皿へ残った薬草を袋へ戻しながら言った。

 

「そんなもの、俺は知らんよ。薬が高いのは、薬草が足りなかったからだろう。病人が増えれば、値も上がる。珍しい話でもない」

 

「なるほど」

 

 真壁は、それ以上、追及しなかった。

 

 男が話したことを、小さな帳面へ短く書き留める。

 

 澪は、少し意外に思った。

 

 店主の言葉には、嘘をついている様子がなかった。本当に、薬草が足りなかったのだと思っているらしい。

 

 店を出た後も、真壁は結論を口にしなかった。

 

 次に話を聞いたのは、薬草を山から運んできた男だった。

 

 肩幅が広く、日に焼けた手には、枝で擦ったような細かな傷が残っている。背負籠を下ろしたばかりらしく、額には薄く汗が浮かんでいた。

 

「去年ですか」

 

 男は、真壁の質問を聞いて首を傾げた。

 

「特別、少なかった覚えはないな。冬前だから、集める種類は増えたけど、納めた量は例年と大きく変わらなかったと思う」

 

「どちらへ納めましたかな」

 

「薬師ギルドだよ。勝手に売ると面倒だからな」

 

 真壁の帳面へ、また一行が増えた。

 

 その後も、真壁は、同じことを相手を変えて尋ねた。

 

 市場で薬草を扱う別の店では、流感が広がった後、仕入れ値が急に上がったと聞いた。昨年、家族のために薬を買ったという女性は、店先で財布の中身を数えた末に、必要な量の半分しか買えなかったと話した。薬師へ素材を運ぶ商人は、例年と同じように荷を運んだはずなのに、町では薬が足りないと言われていたと首を傾げた。

 

 真壁は、一人の言葉だけを信じることも、疑うこともしなかった。

 

 短い話を聞くたび、帳面へ日付と要点を書き留める。

 

 澪は、その横で増えていく文字を見ながら、少しずつ違和感を覚えた。

 

 薬が値上がりし、買えない者が出たことは、どこで尋ねても変わらなかった。孤児院へ回せる量が足りなかったことも、これまで聞いた話から分かる。けれど、山へ入る者たちは、薬草を採れなかったとは言っていない。例年と大きく変わらない量を運び、それを薬師ギルドへ納めている。

 

 それなら、薬草は、どこへ消えたのだろう。

 

 

 

 

 

 教会へ入ると、外の市場とは違う静けさがあった。

 

 窓から差し込む光が、古い木製の長椅子へ落ちている。奥では、小さな子供が一人、シスターから渡された布を畳んでいた。

 

 司祭様は、澪と真壁を見ると、すぐに事情を察したようだった。

 

「薬のことですか」

 

「ええ。昨年、流感が広がった折について、少し教えていただきたい」

 

 真壁が答えると、司祭様は、棚から古い帳面を取り出した。

 

 革の表紙は擦れ、角が丸くなっている。

 

 昨日、澪が見た帳面とは別のものだった。

 

 頁を開くと、薬を買った日と、支払った金額が書かれている。最初の方は何とか読める程度に整っていた文字が、流感が広がった頃から少しずつ乱れていた。

 

 司祭様の指が、ある頁で止まる。

 

「この頃から、急に高くなりました」

 

 澪は、差し出された帳面を覗き込んだ。

 

 金額が上がっていく一方で、買えた量は減っている。最後の方では、薬ではなく、身体を温めるための薪や、薄い粥へ使う穀物の記録が増えていた。

 

「薬は、買えなかったんですか」

 

 澪が尋ねると、シスターは、畳んでいた布へ視線を落とした。

 

「買えるだけは、買いました」

 

 声は静かだった。

 

「でも、幼い子たち全員へ行き渡るほどは……」

 

 その先を、シスターは言わなかった。

 

 言わなくても、澪には分かった。

 

 司祭様は、別の頁を開いた。

 

「ゲオルク先生が、手元に残っていた薬を分けてくださいました」

 

「ゲオルク先生?」

 

「薬師ギルドの古参です」

 

 司祭様は、少しだけ表情を和らげた。

 

「代金は後でよいと言ってくださった。あの方がいなければ、もっと多くの者が神に召されていたでしょう」

 

 真壁が、帳面へ名前を書き留める。

 

「ほかの薬師は、どうしていたのでしょう」

 

「助けようとしてくださった方は、ほかにもいました」

 

 司祭様は答えた後、視線を帳面へ戻した。

 

「ただ、途中から、薬草が回ってこなくなったと聞いています」

 

「ギルド長の意向ですかな」

 

 真壁が尋ねる。

 

 司祭様は、すぐには答えなかった。

 

 教会の中へ、頁をめくる音だけが小さく響く。

 

「そう聞いております」

 

 シスターも、静かに頷いた。

 

「孤児院へ安く渡すなら、次から素材は回さないと」

 

 澪は、帳面へ残る数字を見た。

 

 紙の上にあるのは、ただの金額ではない。

 

 薬を買えなかった日と、熱に苦しむ子供へ渡せなかった物が、そのまま残されている。

 

 真壁は、帳面の内容を書き写した後、司祭様へ深く頭を下げた。

 

「ありがとうございます」

 

「何か、分かりそうですか」

 

「まだ、分かりません」

 

 真壁は、いつも通りの静かな声で答えた。

 

「ですが、分からないままにはしません」

 

 

 

 

 

 教会を出た後、真壁は、町の外れに近い場所へ向かった。

 

 大通りから少し離れると、人通りは減る。石畳の隙間には細い草が生え、建物の壁には雨の跡が黒く残っていた。

 

 真壁が足を止めたのは、小さな薬師の店の前だった。

 

 窓は閉じられていたが、店内には灯りがある。

 

 扉を叩くと、少し間があってから、若い男が顔を出した。

 

 まだ三十歳にも届いていないように見える。袖をまくった腕には、薬草を刻んだ時に付いたらしい細かな汚れが残っていた。

 

 真壁が、昨年の流感について尋ねると、男の顔が僅かに強張った。

 

「私は、何も知りません」

 

 答えは早かった。

 

 真壁は、それ以上、すぐには尋ねなかった。

 

 店の中へ無理に入ろうともせず、扉の外で静かに立っている。

 

「そうですか」

 

 それだけを言った。

 

 若い薬師は、扉を閉めかけた。

 

 けれど、完全には閉めなかった。

 

 真壁は、少しだけ声を落とした。

 

「孤児院で、昨年、何人かの子供が亡くなりました」

 

 若い薬師の指が止まる。

 

「薬師を潰すつもりはありません」

 

 真壁は続けた。

 

「薬師の知識も、技術も必要です。薬草を集める者も、調合する者も、患者へ渡す者も必要だ」

 

「では、何をしに来たんです」

 

 若い薬師は、周囲へ視線を向けた。

 

 通りに人影がないことを確かめてから、少しだけ扉を開く。

 

「薬が届かなかった理由を知りたいのです」

 

 真壁の声は変わらなかった。

 

「薬がなかったのか。それとも、別の理由があったのか」

 

 若い薬師は、しばらく黙っていた。

 

 やがて、扉を開けたまま、声を落とす。

 

「ゲオルク先生は、教会へ薬を渡しました」

 

「伺いました」

 

「私も、少しだけ渡しました」

 

 若い薬師は、悔しそうに唇を噛んだ。

 

「でも、その後、調合に使う素材を回してもらえなくなった。ギルド長へ逆らえば、薬師として仕事が出来ない」

 

 澪は、何も言えなかった。

 

「倉庫には、薬があったんですか」

 

 ようやく尋ねると、若い薬師は、澪を見た。

 

「少なくとも、全部なくなったわけじゃない」

 

 その声は小さかった。

 

「でも、俺たちには、出すなと言われた」

 

「誰にですかな」

 

 真壁が尋ねる。

 

 若い薬師は、もう一度、周囲を確かめた。

 

「ギルド長です」

 

 真壁は、帳面へ短く書き留める。

 

 その後、少しだけ考え、別の頁へ名前を書いた。

 

 ゲオルク・ハルトマン。

 

 その文字だけが、ほかの記録から少し離れた場所にある。

 

 澪は、それに気づいた。

 

「真壁さん」

 

 店を離れた後、澪は小声で尋ねた。

 

「ゲオルクさんと、話をするんですか」

 

「いずれは」

 

「薬師ギルド全体が、悪いわけではないんですね」

 

「そうでしょうな」

 

 真壁は、帳面を閉じた。

 

「組織と、そこにいる者を、一つにして考えるべきではありません」

 

 

 

 

 

 六畳間へ戻ったのは、日が傾き始めた頃だった。

 

 澪は、真壁が集めた話を整理し、すぐに侯爵家へ向かうのだと思っていた。

 

 けれど、真壁は、机の上へ小さな機材を並べ始めた。

 

 見覚えのある小型ドローンと、記録用の端末。それから、画面を映すための機材が、六畳間の低い机へ静かに置かれていく。

 

「真壁さん」

 

「何かな」

 

「まだ、調べるんですか」

 

「評判は、入口にすぎません」

 

 真壁は、機材を確認しながら答えた。

 

「必要なのは、言い逃れ出来ない証拠です」

 

 夜になると、六畳間の明かりは少し落とされた。

 

 机の上へ置かれた画面に、暗い倉庫の裏手が映っている。

 

 壁際には、積み重ねられた木箱の影が見えた。月の光は弱く、遠くからでは、細かな文字までは読めない。

 

 それでも、倉庫の裏手へ荷馬車が止まったことは分かった。

 

 人影が動き、倉庫の扉が開く。

 

 木箱が、いくつも運び出される。

 

 澪は、画面から目を逸らせなかった。

 

 昼間に話を聞いた者たちは、薬草が足りなかったと信じていた。司祭様の帳面には、値段が上がり、買える量が減っていった記録が残っていた。孤児院では、必要な薬を幼い子供たちへ行き渡らせることが出来なかった。

 

 それなのに、夜の倉庫からは、木箱が次々と運び出されている。

 

 画面の端へ、恰幅のよい男が映った。

 

 上質な外套を羽織り、灰色の髭を丁寧に整えている。荷馬車の側へ立つ商人らしい男と、何かを話していた。

 

 端末から、少しだけ雑音の混じった声が聞こえる。

 

「今は、値を崩す時ではない」

 

 男は、落ち着いた声で言った。

 

「流感が広がれば、さらに上がる。貧民へ安く売ったところで、利益にはならん」

 

 商人が、何かを尋ねる。

 

 男は、木箱を見ながら答えた。

 

「薬を持っている者が、値を決める」

 

 澪の指先が、冷たくなった。

 

 司祭様の帳面へ並んでいた、幼い子供たちの名前が浮かぶ。高い熱が下がらず、最後には、水を飲むことさえ出来なくなった子供たちだった。

 

 薬がなかったのだと思っていた。

 

 違う。

 

 薬は、あった。

 

 値段が上がるのを待つために、倉庫から出されなかった。

 

「澪君」

 

 真壁の声が聞こえた。

 

 澪は、ようやく画面から顔を上げた。

 

「大丈夫ですか」

 

「はい」

 

 答えた声は、自分で思っていたよりも小さかった。

 

 真壁は、無理に何かを言わせようとはしなかった。

 

 画面へ映る荷馬車の印と時刻を記録し、人影が倉庫から離れるまで、静かに見届けていた。

 

 

 

 

 

 翌日、澪は真壁と一緒に、町の門に近い荷の検め場へ向かった。

 

 夜に見た荷馬車は、遠方へ出る前に、ほかの荷と一緒に止められていた。

 

 真壁は、門番へ昨夜の記録を見せ、確認を求めた。門番は、荷馬車の印を見比べた後、近くにいた上役を呼ぶ。短い相談の後で、荷は検め場へ残され、積み替えのために外へ出されていた木箱を確認することになった。

 

 側面には、薬師ギルドの印がある。

 

 さらに、その下には、別の印も残っていた。

 

 澪は、息を整え、《鑑定:10》を使う。

 

《薬師ギルド管理木箱》

《内容物:熱を和らげる調合薬、咳を和らげる薬草、滋養薬、ポーション》

《一部素材:侯爵家救済用支給品》

《搬出記録:照合を要する》

 

 表示を見た瞬間、澪は、言葉が出なかった。

 

 箱の中へ残されていたのは、どれも昨年の孤児院に必要だった物ばかりだった。熱を和らげ、咳を抑え、弱った身体を支えるための薬だけでなく、ポーションまで入っている。

 

 それだけではない。

 

 侯爵家が、領民救済のために回した素材まで混じっている。

 

「真壁さん」

 

 ようやく声を出す。

 

「侯爵家から支給された物も、入っています」

 

「確認出来ますかな」

 

「はい」

 

 澪は、もう一度、表示を確かめた。

 

「間違いありません」

 

 真壁は、木箱の印と、積み替えられる前の位置を記録した。

 

 六畳間へ戻ると、真壁は、集めた資料を机の上へ並べた。

 

 市場で聞いた薬価を記した紙の横へ、教会の帳面から写した数字が置かれる。薬草を納めた者の話と、若い薬師の言葉を記した頁を重ねた後、真壁は、夜の画面へ映った荷馬車の記録と、澪が《鑑定:10》で確認した木箱の内容を添えた。

 

 ばらばらに見えていた話が、机の上で一つにつながっていく。

 

 少し離れた場所には、別の紙が置かれていた。

 

 ゲオルク・ハルトマン。

 

 その名前だけが、ほかの記録から分けられている。

 

「真壁さん」

 

「何かな」

 

「薬師ギルドは、どうなるんですか」

 

 真壁は、紙から顔を上げた。

 

「潰す必要はありませんな」

 

「でも、ギルド長は……」

 

「ギルド長と、薬師ギルドは同じものではありません」

 

 真壁は、ゲオルクの名前へ指を置いた。

 

「薬師の知識は必要です。薬草を集める者も、調合する者も、患者へ渡す者も必要だ。流通網まで壊してしまえば、薬が届かなくなる」

 

 穏やかな声だった。

 

「腐った部分だけを切ればよいでしょう」

 

 澪は、机へ並ぶ資料を見た。

 

 昼間、市場で帳面へ数字を書き留めていた真壁の指先と、今、証拠を並べている指先は、同じように落ち着いていた。

 

 町を歩いている間、真壁は、誰か一人の言葉へ飛びつかなかった。夜の画面へ映った声を聞いた後も、怒りに任せて動かなかった。

 

 必要なものを揃えた後で、ようやく立ち上がる。

 

「では、アルベルト様へ相談しましょう」

 

 

 

 

 

 侯爵家の応接室は、静かだった。

 

 大きな窓から差し込む光が、磨かれた机の上へ落ちている。壁際には領内の地図が掛けられ、扉の近くには、控えの者が一人立っていた。

 

 アルベルト・ヴァルディスは、真壁の説明を遮らなかった。

 

 最初に聞いたのは、柳皮薬についてだった。

 

 孤児院の子供たちへ、安価に常備出来る熱冷ましを置きたいこと。軽い発熱へ気軽に使わせる薬ではなく、服用した場合には、誰へ、いつ、どれだけ使ったかを記録すること。異常が出た時には、状態異常回復薬やヒール、ポーションへつなぐこと。セルマが、柳皮から熱を和らげる機能分を抽出し、固形化する試作へ成功したこと。

 

 アルベルトは、机の上へ置かれた小瓶を見た。

 

「孤児院だけの話ではないな」

 

「ええ」

 

 真壁が頷く。

 

「領内へ広げることも出来ると考えております」

 

「そうなれば、薬師ギルドとの調整は避けられない」

 

 アルベルトは、小瓶から真壁へ視線を移した。

 

「無断で売り出せば、必ず揉める」

 

「ごもっともです」

 

 真壁は、静かに答えた。

 

「そのために、薬師ギルドについて調べてまいりました」

 

 机の上へ、資料が並べられる。

 

 教会の帳面と、町で確認した薬価。薬草を納めた者の話。夜の倉庫を映した記録。荷馬車へ積まれた木箱と、澪が《鑑定:10》で確かめた内容。

 

 アルベルトは、すぐには何も言わなかった。

 

 一枚ずつ紙を読み、画面へ視線を向ける。

 

 暗い倉庫の裏手へ荷馬車が止まり、木箱が運び出される。灰色の髭を整えた男の姿が映り、雑音の向こうから、声が聞こえた。

 

「貧民へ安く売ったところで、利益にはならん」

 

 アルベルトの指が、机の上で止まった。

 

「流感が広がれば、さらに上がる。薬を持っている者が、値を決める」

 

 音声が終わった後、室内は静かになった。

 

 澪は、机の上へ視線を落としたまま、息をすることさえ少し難しく感じた。

 

 アルベルトは、すぐに怒鳴らなかった。

 

 しばらく黙った後、澪を見る。

 

「昨年、孤児院でも子供が亡くなったと聞いている」

 

「はい」

 

 澪は答えた。

 

 声が震えないようにするだけで精一杯だった。

 

 真壁が、静かに続ける。

 

「薬がなかったのではありません」

 

 僅かに間を置いた。

 

「届かなかったのです」

 

 アルベルトは、机の上へ並べられた資料を見た。

 

 表情は大きく変わっていない。

 

 けれど、声だけが少し低くなった。

 

「ギルド長を呼べ」

 

 扉の近くに控えていた者が、一礼して部屋を出ていく。

 

 閉じた扉の向こうから、廊下を遠ざかる足音が聞こえた。

 

 アルベルトは、その間も机の上から視線を上げなかった。

 

 

 

 

 

 薬師ギルド長のバルタザール・ケラーは、呼び出されてから、それほど時間を置かずに現れた。

 

 部屋へ入ってきた男は、恰幅のよい体格を上質な外套へ包み、丁寧に整えた灰色の髭へ指を添えながら、机の上の小瓶を一瞥した。近づくにつれ、乾燥薬草へ香油を混ぜたような匂いが、澪のところまで届いた。

 

 足取りに迷いはない。

 

 侯爵家へ呼ばれた理由を、柳皮薬についての相談だと考えているらしい。

 

「薬の知識を持たない者が、柳の皮から内服薬を作ろうとしていると聞きました」

 

 バルタザールは、澪と真壁を順に見た。

 

「危険なことです。薬は家具とは違います。安価であればよいという物ではありません。知識のない者が扱えば、救える命まで失います」

 

 声は穏やかだった。

 

 けれど、相手へ教え諭すような響きがある。

 

 澪は、何も言わなかった。

 

 腹が立たなかったわけではない。

 

 けれど、その言葉には、正しい部分もある。

 

 薬は、安ければよいわけではない。

 

 柳皮薬にも、使い方を誤れば危険がある。

 

 真壁も、反論しなかった。

 

「ご懸念は、もっともです」

 

 いつも通りの穏やかな声だった。

 

「柳皮薬を、軽い熱へ気軽に使わせるつもりはありません。服用した者と量を記録し、異常があれば直ちに使用を止める。必要であれば、状態異常回復薬、ヒール、ポーションへつなぐ体制も整える予定です」

 

 バルタザールは、短く息を吐いた。

 

「それでも、薬師ギルドを通さずに薬を扱うことなど、許されるはずがない」

 

「では、一つ伺ってもよろしいかな」

 

 真壁の声は変わらなかった。

 

「昨年、流感が広がった折、薬師ギルドには、熱冷ましの在庫がなかったのですかな」

 

 バルタザールの表情に、大きな変化はなかった。

 

「不足していた。薬草が入らなかったのだ」

 

「なるほど」

 

 真壁は、それ以上、すぐには尋ねなかった。

 

 机の上へ置かれた端末を操作し、画面をバルタザールへ向ける。

 

 暗い倉庫の裏手へ荷馬車が止まり、扉から運び出された木箱が、荷台へ次々と積まれていく。

 

 バルタザールは、画面を見ても、まだ顔色を変えなかった。

 

「遠方で、より必要としている者へ融通しただけだ」

 

「記録が見当たりませんが」

 

 真壁は、帳面の写しを机へ置いた。

 

「搬出の記載がない。売却価格についても、通常時とはかなり異なるようですな」

 

「帳面の誤りだろう」

 

 バルタザールは、少しだけ眉を寄せた。

 

「下の者が、書き忘れたのだ」

 

「そうでしたか」

 

 真壁は、淡々と答えた。

 

 夜の倉庫を映した画面の横へ、帳面の写しを置く。その上へ、澪が《鑑定:10》で確認した木箱の記録を重ねた。

 

「こちらには、侯爵家が領民救済用として回した素材も含まれていたようですが」

 

 バルタザールの視線が、僅かに動いた。

 

「管理の都合で、まとめて保管していたのだろう」

 

「それを、帳面へ載せずに遠方へ運ぶ理由は?」

 

「必要な場所へ回しただけだ」

 

 言葉は、まだ崩れていない。

 

 けれど、最初に部屋へ入った時より、声が少しだけ硬くなっていた。

 

 窓から差し込む光は、机の端まで移動している。扉の近くに控える兵は動かず、誰もバルタザールの言葉を遮らなかった。

 

 真壁は、急がなかった。

 

 相手へ話させる。

 

 言葉を重ねさせる。

 

 言い逃れの形を、自分で作らせる。

 

 その後で、最後の記録を再生した。

 

 雑音の向こうから、バルタザール自身の声が聞こえる。

 

「今は、値を崩す時ではない」

 

 バルタザールの顔から、初めて余裕が消えた。

 

「流感が広がれば、さらに上がる。貧民へ安く売ったところで、利益にはならん」

 

 誰も口を挟まない。

 

「薬を持っている者が、値を決める」

 

 音声が終わった。

 

 室内に、長い沈黙が落ちる。

 

 バルタザールは、何かを言おうとした。

 

 けれど、すぐには声が出なかった。

 

 夜の倉庫を映した画面の横には、帳面の写しと、木箱の記録が置かれている。バルタザールが一つの説明へ逃げるたび、その先へ回り込むように別の証拠が差し出され、机の上から少しずつ余白が消えていた。

 

 何より、自分自身の声が残っている。

 

 アルベルトが、短く命じた。

 

「拘束しろ」

 

 扉の側に控えていた兵が動く。

 

 バルタザールの両脇へ立ち、腕を取る。

 

「待て」

 

 ようやく、バルタザールが声を上げた。

 

「薬師ギルドを敵に回すつもりか。薬がなくなれば、困るのは領民だぞ」

 

 真壁は、連行されるギルド長を見た。

 

 声を荒らげなかった。

 

 勝ち誇るような表情も見せない。

 

「患者を見ず、値札だけを見る者を、薬師とは呼びません」

 

 僅かに間を置く。

 

「相場師ですな」

 

 バルタザールは、何も言い返せなかった。

 

 上質な外套の裾が揺れ、薬草と香油の匂いを残して、部屋の外へ連れて行かれる。

 

 その後、侯爵家による調査は、バルタザール本人だけではなく、一族が管理していた倉庫や帳面にまで及んだ。

 

 領民救済のために回された薬草を隠し、流感で薬価が上がるのを待って横流しする。その利益を一族で受け取っていたことも明らかになった。

 

 バルタザール一族の財産は没収され、一族は領外へ追放された。

 

 少なくとも、この領地で、患者の苦しみを値札へ変える者が、再び薬の流通を握ることはない。

 

 

 

 

 ゲオルク・ハルトマンが侯爵家へ呼ばれたのは、その後だった。

 

 部屋へ入ってきた年配の男は、痩せた体格を上等とは言えない外套へ包み、使い込まれた革鞄を抱えていた。白髪交じりの髪は短く整えられている。外套の端には何度か繕った跡があり、鞄の角と持ち手には、長く使い続けた時間が残っていた。

 

 ゲオルクは、アルベルトの前まで進むと、深く頭を下げた。

 

「私が、もっと早く声を上げるべきでした」

 

 疲れの滲んだ声だった。

 

「申し訳ございません」

 

 アルベルトは、すぐには責めなかった。

 

「責任の話は、後で聞く」

 

 机の上へ残っていた資料へ視線を落とす。

 

「今は、薬を止めないことが先だ」

 

 ゲオルクは、少しだけ顔を上げた。

 

 真壁が、柳皮薬の試作品を示す。

 

「錬金術師が、柳皮から熱を和らげる機能分を抽出し、保存しやすい形へ整えるところまでは出来るようになりました」

 

 ゲオルクは、小瓶へ目を向けた。

 

「錬金術師が?」

 

「ええ。ただし、薬として領民へ渡すところまで、錬金術師だけで行うつもりはありません」

 

 真壁は、机の上へ置かれた小瓶を、ゲオルクの方へ少しだけ寄せた。

 

「抽出物の質を確かめ、どのような症状の者へ使うのかを整理する。渡す時には注意を伝え、服用後の記録を残す。異常があれば、状態異常回復薬や、聖職者のヒール、ポーションへつなぐ」

 

 ゲオルクは、真壁の顔を見た。

 

「それを、薬師ギルドへ任せると?」

 

「薬師殿には、薬師の仕事をしていただきたい」

 

 真壁は答えた。

 

「患者を診る。薬を確かめる。必要な者へ渡す。それで利益を得ることに、何の問題もありません」

 

 ゲオルクは、すぐには頷かなかった。

 

 小瓶を手に取り、光へ透かす。

 

 中へ残る固形抽出物を確かめた後、慎重に口を開く。

 

「安くするだけでは、続きません」

 

 澪は、少しだけ身構えた。

 

 けれど、ゲオルクの声には、自分たちの利益だけを守ろうとする響きはなかった。

 

「薬草を採る者にも、生活がある。品質を確かめる者にも、患者へ説明する者にも、手間が掛かる。記録を残し、異常が起きた時に対応するなら、なおさらです」

 

 ゲオルクは、小瓶を机へ戻した。

 

「安ければよいと決めてしまえば、来年には、誰も作れなくなる」

 

「ええ」

 

 真壁は、静かに頷いた。

 

「適正な利益は必要でしょう。続かなければ、来年には薬がなくなる」

 

 ゲオルクの目が、僅かに見開かれる。

 

 真壁は、話を続けた。

 

「孤児院と教会へ置く分については、価格を抑えたい。庶民へ売る分にも、上限は設けるべきでしょう」

 

「それでは、薬師たちが納得しない可能性があります」

 

「検査、管理、販売には、それぞれ手数料を残します。薬師の生活を奪うつもりはありません」

 

 真壁は、机へ置かれた資料へ一度だけ視線を落とした。

 

「ただし、薬を抱え込み、病人が増えるのを待つ商売は認めない」

 

 ゲオルクは、しばらく黙っていた。

 

 疲れの残る顔から、視線だけは逸らさなかった。

 

「若い薬師たちにも、話をさせてください」

 

「もちろんです」

 

「薬草を採る者とも、相談します」

 

「必要でしょうな」

 

「それから、柳皮の抽出物を見せてください。どの程度、濃さを揃えられるのかも確認したい」

 

 真壁は、僅かに目を細めた。

 

「セルマ君が、喜ぶでしょう」

 

 澪は、少しだけ想像した。

 

 作業台へ小瓶を並べ、抽出条件を一つずつ試しているところへ、古参の薬師が確認に来る。

 

 最初の十分ほどは、セルマも楽しそうに話すだろう。

 

 けれど、記録の形式や供給体制の話が始まった瞬間、かなり高い確率で真壁へ視線を向ける。

 

 ゲオルクは、アルベルトへ深く頭を下げた。

 

「患者の顔を見る薬師へ、戻します」

 

 アルベルトは、静かに頷く。

 

「暫定的に、ギルドの立て直しを任せる」

 

 ゲオルクは、使い込まれた革鞄を握り直した。

 

「承知しました」

 

「では、話は早い」

 

 真壁の声は、いつも通り穏やかだった。

 

 

 

 

 

 侯爵家を出た後、澪は、真壁の隣を歩いた。

 

 町の通りには、昼下がりの光が落ちている。市場の方からは、荷車の音と、人々の話し声が聞こえていた。

 

 昨日までと同じ町に見える。

 

 けれど、澪には、少しだけ違って見えた。

 

 薬師ギルド長が拘束されたからではない。

 

 昨年、孤児院へ薬が届かなかった理由を知ってしまったからだった。

 

「真壁さん」

 

「何かな」

 

「最初から、ゲオルクさんと話をするつもりだったんですか」

 

「ええ」

 

 真壁は、歩く速さを変えずに答えた。

 

「薬師ギルドを潰してしまえば、薬を作れる者まで失いますからな」

 

「バルタザールさんが、言い逃れ出来る可能性は」

 

「残しておく理由がありません」

 

 声は静かだった。

 

 澪は、真壁の横顔を見る。

 

 市場で話を聞いた時も、教会の帳面を写した時も、夜の画面へ映る荷馬車を見た時も、真壁の指先は落ち着いていた。

 

 侯爵家の机へ証拠を並べた時も同じだった。

 

 怒りに任せて、誰かを悪人だと決めつけたわけではない。

 

 残すべき人と、切り離すべき人を見極め、そのために必要なものを揃えた。

 

 真壁が元軍人だということを、澪は知っている。

 

 戦う方法は、武器を使うことだけではないらしい。

 

 

 

 

 

 セルマの工房へ戻ると、窓から入る光の向きが変わっていた。

 

 作業台の上に並ぶ小瓶へ、夕方に近い柔らかな光が差している。

 

 セルマは、朝とほとんど同じ姿勢で、そのうちの一本を透かしていた。

 

 澪と真壁が入ると、ようやく顔を上げる。

 

「終わった?」

 

「終わりました」

 

 澪は答えた。

 

 侯爵家で交わされた話を、最初から順番に説明するなら、かなりの時間が掛かるだろう。薬師ギルド長が拘束され、ゲオルクが暫定的に立て直しを任され、柳皮薬を領内へ広げる道まで出来た。

 

 話したいことは、いくつもあった。

 

 けれど、セルマは、澪へ小瓶を差し出した。

 

「じゃあ、次の試作を見て」

 

 澪は、一瞬だけ言葉を失った。

 

 セルマにとっては、面倒な話が予定通り片付いただけらしい。

 

 真壁だけが、僅かに目を細める。

 

「結構。実に効率的ですな」

 

 セルマが瞬きをする。

 

「褒められた?」

 

「ええ。人の使い方が、ますます上手くなりました」

 

 セルマは、満足そうに頷いた。

 

 澪は、本当にこれでよいのだろうかと思いながら、差し出された小瓶を受け取る。

 

 窓から入る光の中で、淡い褐色の液体が揺れた。

 

 澪は、小瓶へ《鑑定:10》を使った。

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