押し入れの向こうは異世界でした   作:Brooks

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第257話 神様が見た異世界

 

「じゃあ行きますよ。シロガネ、キャリーに入ってくださ――」

 

 白猫が消えた。

 

「きゃっ」

 

 澪は開けたばかりのキャリーを抱えたまま、六畳間を見回した。

 

 いない。

 

 さっきまで座布団の上にいた白い姿が、影も形もない。

 

『シロガネ?』

 

『何だ』

 

 返事が、自分の中から来た。

 

 澪はキャリーを持ったまま収納へ意識を向ける。

 

「……いる」

 

 食料や道具を置いているところから少し離れた場所に、昨日まではなかった空間が出来ていた。

 

 部屋というには小さい。

 

 けれど、白猫が身体を伸ばして寝るには十分な広さがあり、その真ん中でシロガネが尻尾を鼻先へ巻きつけて丸くなっている。

 

『何してるんですか』

 

『待っておる』

 

『私の収納の中で?』

 

『うむ』

 

 澪は手元のキャリーへ目を落とした。

 

 昨日、猫用品売り場で大きさまで考えて選んだものだ。

 

『入れたんですね』

 

『入った』

 

『生き物は入らないんですけど』

 

『我は猫ではない』

 

『猫ですよね?』

 

『猫の形を取っておる』

 

 昨日のうちに聞いておきたかった。

 

『じゃあ、ご飯とかお水は?』

 

『なくとも困らぬ』

 

『トイレも?』

 

『要らぬ』

 

 澪はしばらく黙った。

 

『先に言ってくださいよ』

 

 シロガネは目を閉じた。

 

『行くがよい』

 

「……何で私が許可をもらう側なんですか」

 

 返事はなかった。

 

 澪は使わなくなったキャリーを部屋の隅へ戻し、押し入れの襖を開けた。

 

 

 

 異世界側へ抜けると、六畳間とは空気の冷たさが違った。

 

 石床から冷気が上がり、外から入る風には木を燃やす匂いが混じっている。遠くで荷車の車輪が鳴り、その向こうから木槌を打つ乾いた音が続いていた。

 

 澪は押し入れを閉め、収納へ意識を向ける。

 

『着きましたよ』

 

『うむ』

 

『出ますか?』

 

 返事より先に、収納の中から白い姿が消えた。

 

 ほとんど同時に、右肩へ軽い感触が乗る。

 

「わっ」

 

 顔を向けると、シロガネが肩の上にちょこんと立っていた。

 

 前足を揃え、尻尾を立てたまま、澪の頭越しに周囲を眺めている。

 

『そこなんですか?』

 

『見晴らしがよい』

 

『落ちません?』

 

『落ちぬ』

 

 一歩歩いてみる。

 

 シロガネは揺れない。

 

 もう一歩進んでも同じだった。

 

『便利ですね』

 

『何がだ』

 

『いえ』

 

 外へ出る。

 

 荷車から木箱を降ろしている男たちの息が白い。店先では厚手の上着を着た女が根菜を選び、通りの向こうから焼いた肉の匂いが風に乗ってくる。建設中の家では、足場の上から職人の声が飛んでいた。

 

 シロガネの顔がゆっくり動く。

 

 行き交う人を見て、荷車を見て、建物へ目を移す。

 

 昨日あれだけ異世界を見たがっていたので、もっと何でも聞かれると思っていた。

 

『どうですか』

 

『まだ見ておる』

 

『そうですか』

 

 急かすこともない。

 

 澪はそのままヴァルトの教室へ向かった。

 

 扉を開けると、机に向かっていた子どもたちの顔が一斉に上がった。

 

「ただいま戻りました」

 

「澪さん。お帰りなさい」

 

 前に立っていたヴァルトが手を止める。

 

 板には文字と計算式が残り、机の上には途中まで書かれた紙が広がっていた。

 

「澪姉ちゃんだ」

 

 その声のすぐあとだった。

 

「猫だ」

 

「白い」

 

「肩にいる」

 

 何人かが身を乗り出す。

 

「皆さん、まだ授業中でしょう」

 

 口にしてから、澪は自分の右肩を見た。

 

 白猫を肩へ載せて入ってきた側が言っても、あまり説得力はなさそうだった。

 

 ヴァルトもシロガネを見ている。

 

「澪さん。そちらは?」

 

「帰省中に、ちょっと事情がありまして」

 

「事情、ですか」

 

 ヴァルトの視線がシロガネへ戻る。

 

 白猫だけなら、澪がわざわざ異世界まで連れてくる理由がない。

 

 その目が細くなった。

 

【鑑定】

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

対象:シロガネ

種別:霊体

依り代:白猫

宿神:建御名方神

状態:御分霊

確認:おぬしは秋津島の和魂ではないか? なぜ、この異界におる。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「……秋津島」

 

 ヴァルトの声が小さく落ちた。

 

「見えました?」

 

「はい。ただ……こちらへ問いが返ってきました」

 

「ああ」

 

 澪はそれだけで分かった。

 

 古い燭台の神様と同じなのだ。

 

 ヴァルトはシロガネから目を離さない。

 

 やがて、何かを読み取るように数秒黙ったあと、今度は自分から鑑定へ意識を向けた。

 

【鑑定】

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

返答:前世では秋津島に生きておりました。

   この地へ転生し、今はここで暮らしております。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 シロガネの耳が動く。

 

【鑑定】

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

確認:転生か。

   なるほど。魂の形が異なるはずだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 子どもたちには何も見えていない。

 

 先生が白猫を見たまま黙り込み、ときどき妙な言葉を口にしているだけだ。

 

「先生」

 

 一人の少年が手を上げた。

 

「何でしょう」

 

「その猫と話してるんですか?」

 

 ヴァルトが止まった。

 

 澪は口元に力を入れる。

 

「……少々、説明の難しいお客様なのです」

 

「猫なのに?」

 

「今は猫だと思っていてください」

 

「今は?」

 

「授業へ戻りましょう」

 

 ヴァルトが板へ向き直る。

 

 まだ納得していない顔がいくつも並んでいたが、先生が筆記具を持つと、子どもたちは渋々机へ戻った。

 

『面白い者がおる』

 

『ヴァルトさんですか』

 

『秋津島の者が、こちらで師をしておるか』

 

『いろいろありまして』

 

『そなたの周りは、それが多いな』

 

『否定しづらいです』

 

 澪は教室の後ろへ移り、授業が終わるまで空いている椅子へ腰を下ろした。

 

 シロガネは肩から降りようとしなかった。

 

 しばらくしてヴァルトが課題を出し、子どもたちが席を離れ始める。

 

「ヴァルトさん」

 

「はい」

 

「帰省のお土産があります」

 

「それはありがとうございます」

 

 澪は収納から重箱を出した。

 

 机へ置き、蓋を開ける。

 

 祖母と母の横で味を見ながら詰めた正月料理が、そのまま収まっていた。

 

 ヴァルトの手が止まる。

 

「……お節ですか」

 

「はい。祖母と母と一緒に作りました」

 

「澪さんも?」

 

「一応。途中から、どっちの味付けを聞けばいいのか分からなくなりましたけど」

 

 ヴァルトが重箱へ顔を寄せる。

 

 すぐには手を伸ばさず、中をゆっくり見ていた。

 

「ご家族で作られたものを、私がいただいてよろしいのでしょうか」

 

「真壁さんとヴァルトさんの分は取ってあります」

 

「そうでしたか」

 

 声が普段より柔らかい。

 

「ありがとうございます。いただくのが楽しみです」

 

「はい」

 

 次に餅を出す。

 

「こちらも?」

 

「友達の家でもらいました」

 

 白菜、大根、青物も並べる。

 

 ヴァルトが野菜と餅を見比べた。

 

「ずいぶんいただいたのですね」

 

「お米を買いに寄ったら、こうなりました」

 

「なるほど」

 

『そなたは物を集める性質なのではないか』

 

『違います』

 

 即答したところで、祖父の小屋から持ち帰った道具が頭をよぎった。

 

『……多分』

 

『どちらだ』

 

『そこは今はいいです』

 

 澪は次の荷へ意識を向けた。

 

「それと、ヴァルトさんにはこれを」

 

 床へ30kgの玄米袋を出した。

 

 どさり、と鈍い音がする。

 

 ヴァルトの目が袋へ落ちた。

 

「これは……」

 

「玄米です」

 

 ヴァルトが一歩近づく。

 

 澪は2袋目を出した。

 

 ヴァルトが顔を上げた。

 

 3袋目。

 

「澪さん?」

 

「まだあります」

 

 4袋目。

 

 5袋目。

 

 6袋目。

 

 床に同じ袋が並んだところで止める。

 

 ヴァルトは何も言わない。

 

 左端から右端まで視線が動き、また戻る。

 

「……6袋」

 

「はい」

 

「これは全部、私に?」

 

「はい」

 

「全部ですか?」

 

「30kgが6袋なので、180kgです」

 

「180kg……」

 

 ヴァルトはもう一度袋を見る。

 

 最初の1袋へ手を置き、口元から見える米粒を確かめた。

 

「玄米ですね……」

 

「はい」

 

「精米は?」

 

「収納で出来ますよ。帰省中に1袋やりました」

 

「ああ、そうでしたか。では、食べる分だけそうします」

 

 それだけで話は終わった。

 

 2人とも収納内で分離することには慣れている。

 

 ヴァルトの手が隣の袋へ移る。

 

 そこで教室に残っていた子どもの一人が口を挟んだ。

 

「先生、それそんなにすごいの?」

 

「すごいのです」

 

 返事が早かった。

 

 子どもが目を丸くする。

 

「麦じゃないの?」

 

「米です」

 

「何が違うの?」

 

 ヴァルトが口を開き、そのまま止まった。

 

「……説明すると長くなります」

 

「おいしい?」

 

「非常に」

 

 今度は迷わなかった。

 

 澪は口元を押さえた。

 

「そんなに喜んでもらえるとは思いませんでした」

 

「喜ぶに決まっているでしょう」

 

 また返事が早い。

 

 ヴァルト自身も気づいたらしく、一度咳払いした。

 

「本当に、私がいただいてよろしいのですか」

 

「私の分は1袋残してありますから大丈夫です」

 

「では、ありがたく」

 

 ヴァルトが収納へ意識を向ける。

 

 ところが米袋は消えない。

 

「どうしました?」

 

「少し待ってください」

 

「何をしてるんですか」

 

「場所を空けています」

 

 澪はヴァルトを見る。

 

「……米専用ですか?」

 

 ほんの一拍あった。

 

「はい」

 

 1袋目が消える。

 

 続いて2袋目。

 

 6袋全部を収め終えるまで、ヴァルトの顔は妙に真剣だった。

 

『この者、先ほどより乱れておるぞ』

 

『米なので』

 

『米とは、それほどのものか』

 

『ヴァルトさんには、かなり』

 

 シロガネはしばらくヴァルトを見ていた。

 

 澪は次に小豆を出した。

 

 砂糖。

 

 餅。

 

 3つが机へ揃った途端、ヴァルトが言う。

 

「お汁粉ですね」

 

「分かりました?」

 

「分からないはずがありません」

 

『汁粉とは何だ』

 

『小豆を甘く煮て、お餅を入れるんです』

 

『豆を甘くするのか』

 

『はい』

 

『珍妙だな』

 

『たぶん、初めて聞いた人はそう思います』

 

 澪は教室に残っている子どもたちを見た。

 

「地下1階を少し借りてもいいですか」

 

「もちろんです」

 

「せっかくなので、皆さんにも食べてもらおうかと思って」

 

 聞き耳を立てていた子どもたちの顔が一斉に上がる。

 

「甘いの?」

 

「甘いですよ」

 

「食べていいの?」

 

「そのつもりです」

 

 席から立つ子までいる。

 

「まだですよ。セルマさんのところの子たちも呼びましょう」

 

 ヴァルトが頷いた。

 

「それがよいでしょう。人数は増えますが」

 

「大丈夫です」

 

 澪が小豆の袋を持ち上げると、ヴァルトはそれ以上聞かなかった。

 

 

 

「豆に砂糖を入れるの?」

 

 大鍋を覗き込んだセルマが、眉を寄せた。

 

「はい」

 

「これだけ?」

 

「もう少しです」

 

「まだ入れるの?」

 

 澪が砂糖を足すと、セルマはヴァルトへ顔を向けた。

 

「本当にこれでいいの?」

 

「よいのです」

 

「ずいぶん自信あるじゃない」

 

「これは知っていますので」

 

「ああ、そうだったわね」

 

 セルマはもう一度鍋を覗いた。

 

 地下1階のフードコートには、普段より高い声が多かった。ヴァルトの教室から来た子どもたちに、セルマのところの子どもたちも加わり、空いていた長卓が次々と埋まっている。

 

 小豆の匂いに砂糖の甘さが混じり始めると、遠巻きにしていた子まで鍋を気にし始めた。

 

「澪さん。餅はこちらで?」

 

 ヴァルトが切り分けた餅を見せる。

 

 澪は一つ取り、さらに小さく分けた。

 

「このくらいでお願いします」

 

「ずいぶん小さくしますね」

 

「子どもが食べますから」

 

 セルマが手元を見る。

 

「そんなに気をつけるものなの?」

 

「大きいまま飲み込むと危ないので」

 

「なら最初から小さい方がいいわね」

 

 セルマはすぐ子どもたちへ振り向いた。

 

「聞いた? 餅は急いで食べない。ちゃんと噛みなさい」

 

「はーい」

 

「返事だけじゃ駄目よ」

 

 何人かが顔を見合わせる。

 

 澪は椀へお汁粉をよそい、小さくした餅を入れた。

 

「熱いので、最初はゆっくりですよ」

 

 最初の一椀を受け取った少年が、中を覗く。

 

 匙ですくった小豆を見て、また鍋を見る。

 

「豆なんだよね」

 

「豆です」

 

「甘いんだよね」

 

「食べれば分かります」

 

 恐る恐る口へ入れる。

 

 少年の眉が上がった。

 

「甘い」

 

 隣の子が椀へ顔を寄せる。

 

「おいしい?」

 

 少年は返事をせず、二口目を食べた。

 

 セルマがそれを見て口元を曲げる。

 

「答える気はなさそうね」

 

「私も」

 

「オレも食べる」

 

「順番ですよ」

 

 椀を渡していくうちに、鍋を警戒していた子まで列へ加わった。

 

「これ伸びる」

 

「ゆっくり噛んでくださいね」

 

「豆なのに甘い」

 

「砂糖を入れましたから」

 

「もう一杯いい?」

 

 最初のおかわりが戻ってくる。

 

「いいですよ」

 

 椀を受け取ったところへ、横からもう一つ出た。

 

「私も」

 

「オレも」

 

「ちょっと待ってください」

 

「こちらは私がやりましょう」

 

 ヴァルトが杓子を取る。

 

 反対側ではセルマが空の椀を受け取った。

 

「あなた、餅いくつ食べた?」

 

「2つ」

 

「本当に?」

 

「……3つ」

 

「今日はもう2つでいいわ」

 

「減った」

 

「自分で増やしたでしょう」

 

 子どもが不満そうに椀を差し出す。

 

 澪は笑いながら次の分をよそった。

 

 セルマもようやく自分の椀を持つ。

 

「私も食べてみるわ」

 

 一口。

 

 すぐには何も言わない。

 

 もう一口食べる。

 

「どうですか」

 

「……豆なのよね」

 

「豆です」

 

「変じゃないわね」

 

「良かったです」

 

「甘いけど、温かいし、腹には溜まりそう。冬にはいいわ」

 

 そう言って、今度は餅を食べた。

 

 肩のシロガネは、鍋と子どもたちを交互に見ている。

 

 澪は小さな器へ少量のお汁粉を取り分けた。

 

『これは我にか』

 

『お供えです』

 

『我は食わぬぞ』

 

『分かっています。神様へのお供えですから』

 

 シロガネが器を見る。

 

『受けよう』

 

 澪は長卓の端へ小皿を置いた。

 

 おかわりの列がようやく短くなった頃、ヴァルトも自分の椀を手にした。

 

 すぐには口へ運ばない。

 

 湯気の向こうにある小豆と餅を眺めてから、匙を入れた。

 

 一口。

 

 手が止まる。

 

 ほんの数秒だった。

 

「先生」

 

 横から椀が差し出された。

 

「餅、もう1個いい?」

 

 ヴァルトが顔を上げる。

 

「先ほども入っていたでしょう」

 

「食べた」

 

「それは分かります」

 

「じゃあ、もう1個」

 

 ヴァルトは椀の中を見る。

 

「1つだけですよ。よく噛みなさい」

 

「うん」

 

 餅を入れて返すと、今度は隣から別の椀が出た。

 

「先生、オレも」

 

「あなたは先ほど2つ食べました」

 

「見てたの?」

 

「見ています」

 

 少年が椀を抱えて戻っていく。

 

 ヴァルトはそれを見送ってから、自分のお汁粉へ戻った。

 

 もう一口。

 

 今度は口元が緩んだ。

 

「澪さん」

 

「はい」

 

「ありがとうございます」

 

「どういたしまして」

 

 澪はそれ以上聞かなかった。

 

 子どもたちが空いた椀を返し始める。

 

 セルマは自分のところの人数を数えながら、食べ過ぎた子へ水を渡していた。ヴァルトは残った餅を見て、明日へ回す分を分けている。

 

 澪は肩のシロガネへ意識を向けた。

 

『どうですか、異世界』

 

 シロガネはすぐには答えなかった。

 

 子どもたちの方へ顔を向け、次にヴァルトとセルマを見る。

 

『想定とは違う』

 

 澪は口元を緩めた。

 

『やっぱり、もっと派手なのを想像してました?』

 

『多少は』

 

『勇者とか』

 

『うむ』

 

『魔王とか』

 

『おるのであろう』

 

『いるとは言ってません』

 

 古い燭台の神様から、どこまで聞いたのだろう。

 

『だが、こちらの方が興味深い』

 

『そうですか』

 

 澪は肩の力を抜いた。

 

 そこで、真壁が戻ってきた後のことが頭に浮かんだ。

 

 飛行船を造り、山を掘って地下ドックを造り、必要になれば機動兵器まで持ち出す人である。

 

『……多分、真壁さんが戻ってきたら、そうではなくなるんだろうな』

 

『何がだ』

 

『いえ。こっちの話です』

 

 シロガネが横から澪を見る。

 

『今のうちに、普通の異世界を見ておいてください』

 

『意味が分からぬ』

 

『そのうち分かります』

 

 

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