窓の外はもう夕方の色になっていた。
ミニテーブルには、理央が作ったアクセサリーと使い終えた彫金道具がまだ残っている。通販へ出した☆4とは別に、比較用として残した☆5が、暖房の風を受けない机の端に置かれていた。
理央はスマホから顔を上げると、澪が以前書いてくれた技能の一覧へ目を落とした。
未使用SPは4。
並んでいる「芽あり」の中には、まだ取っていないものがいくつもある。
「澪さん」
「はい?」
「地図って、普通の地図ですか?」
澪は片づけかけていた箱から手を離した。
「少し違いますね。自分が行った場所を覚えていく感じです」
「現在地も分かる?」
「分かりますよ」
「通った道も?」
「残ります。曲がり角とか目印も分かりますし、戻る方向も見られます」
理央は机の上のスマホをちらりと見た。
「スマホの地図みたいに、最初から全部見えるんですか?」
「それは無理です。自分で行ったことのないところは登録されません」
「近所でも?」
「通ってなければ白いですね」
「へえ……」
軽い興味で聞いていたはずなのに、そこで理央の指が止まった。
石造りの町で、どちらへ戻ればいいのかも分からないまま、迷子の子どもを連れて歩いた時間が頭に戻ってくる。
あの時は、目の前にある道を一つずつ選ぶしかなかった。
「……これあったら、迷いませんでした」
澪もすぐに何のことか分かったらしい。
「そうですね」
理央は一覧へ視線を戻した。
さっきまで「地図」は、ゲームにありそうな便利機能の一つだった。それが急に、自分に必要なものへ変わった。
「取ります」
「早いですね」
「だって、また迷いたくないです」
理央は「地図:芽あり(+)」へ意識を向けた。
触れるものがあるわけではない。ただ、ここへ1SPを使うと決める。
視界へ短い表示が重なった。
〖SPを1消費しました〗
〖地図 Lv1〗
「取れた」
「残り3ですね」
「急に減った気がする」
「使いましたからね」
「正論なんですけど」
理央は座布団に座ったまま、今度は地図を意識した。
頭の中では、今いる六畳間から、これまで自分が歩いた江古田の道までがつながっている。そのすぐ隣でも、覚えのない道は白いままだった。
「ほんとに行ったとこだけだ」
「でしょう?」
「これ、埋めたくなりますね」
「目的が変わってません?」
「だって白いところ気になるじゃないですか」
澪が何とも言えない顔になる。
理央はもう一度地図へ意識を向けた。知らない場所が見えないことより、自分が歩いた場所だけが残っていることの方が今は面白い。
迷わないために取ったはずなのに、まだ帰宅もしていないうちから、別の遊び方を見つけかけていた。
翌日、最寄り駅を出てから、理央は何度目か分からないくらい地図へ意識を向けていた。
冬の住宅街を、自転車が追い越していく。買い物袋を下げた人が交差点を渡り、少し離れた家から掃除機の音が聞こえた。
いつも使う道は、きちんとつながっている。
駅から曲がった角も、何度も通った交差点も、目印にしている建物も分かる。帰る方向を考える必要すらない。
「便利だなあ」
歩きながら、一本横の道へ意識を向けてみる。
そこだけ白い。
家から遠いわけではない。単に理央が一度も通ったことがないだけだ。
「ほんとに近所でも駄目なんだ」
スマホなら、知らない道でも最初から載っている。
地図スキルは逆だった。自分が歩いたところだけが増えていく。
その違いを面白がっていると、今度は人の反応が気になった。
前から歩いてくる人は「普通」。横断歩道の向こうにいる人も、自転車で通り過ぎた人も同じだった。
「普通、普通……」
つい口に出してしまい、理央は周囲を見回した。
誰もこちらを気にしていない。
そのまま歩いて自宅が見えてくると、理央の足が止まった。
家の中に「身内」の反応が2つある。
「身内が2人」
門の前で数秒考える。
「……お父さんとお母さん?」
まだ玄関を開けていないのに、中に人がいることだけは分かる。
理央は後ろを振り返った。
通りを歩いている人は、やっぱり普通。
「ゲンダイで敵対とか出たら嫌なんだけど」
考えた途端、知らない反応を試したい気持ちが少しだけしぼんだ。
玄関を開ける。
「ただいま」
「おかえり」
奥から妙子の声が返った。
地図上の身内反応の一つが、その声の方向にある。
靴を脱いで廊下へ上がると、もう一つの身内反応が動き、修一郎が部屋から顔を出した。
「おかえり」
「ただいま」
妙子と修一郎の位置を地図と重ねる。
間違いない。2人とも「身内」だった。
名前が書いてあるわけでもない。父とも母とも出ない。
それでも、位置と実際の2人を重ねれば間違えようがなかった。
「何?」
妙子に聞かれ、理央は慌てて首を振る。
「なんでもない」
家の中は昨日までと何も変わっていない。
変わったのは、自分の方だった。
自室へ戻ると、理央は上着を脱ぎ、PCを開いた。
机には読みかけの資料本とノート、少し残った飲み物がある。キーボードへ指を置けば、ここから先はいつもの時間だった。
原稿を数行進めたところで、理央は昨日の訓練を思い出した。
「並行思考……」
アクセサリーを2個、3個と扱った時は、別々の制作途中品を頭から落とさないように使った。
なら、原稿でも同じことができる。
今書いている場面を残したまま、次に誰を動かすかを考える。あとで確かめたい設定も忘れないように置いておく。
試してみると、思ったよりすんなり続いた。
資料本を開いてページを探している間も、書きかけの文章は頭から消えない。
必要なところを読んで画面へ戻ると、いつもなら一度読み返していた数行を飛ばして、そのまま続きを打てた。
キーボードの音が少し速くなる。
「……これ、原稿には便利すぎる」
訓練でアクセサリーを作っていた時より、効果がずっと分かりやすい。
理央にとって文章を書くことは、昨日今日始めた作業ではない。だから、切り替えにかかっていた時間が減ったことにもすぐ気づいた。
次に使いそうな本へ手を伸ばしかけて、収納の存在を思い出す。
「本も収納に入れとけば、探さなくていいんだ」
使う資料だけ分けて入れておけば、机の脇へ何冊も積む必要がない。
理央が収納へ意識を向けたところで、地図にある身内の反応が動いた。
廊下をこちらへ近づいてくる。
「来る」
収納操作を止めた直後、ドアが軽く叩かれた。
「理央、飲み物いる?」
やはり妙子だった。
「まだあるから大丈夫」
「そう? じゃあ邪魔しないようにするね」
「うん」
ドアが閉まり、足音が遠ざかる。
理央はしばらく地図上の反応を追ってから、机へ視線を戻した。
「ノックされる前に分かるのも便利だなあ」
そこで、自分の発言に少し引っ掛かった。
家族が来るのを避けるために地図を使っているわけではない。
収納を見られないためである。
昨日までは、廊下の音を気にしながら使うしかなかった。それが今は、誰が近くにいるかを先に確かめられる。
妙子が離れたところで、理央は必要な資料を収納から出した。
靄が机の端へ薄く広がり、本が一冊現れる。
地図へ意識を向けても、原稿の現在位置も次の場面も頭から消えていない。
「これ、作家用のスキルじゃないの?」
作家専用ではないはずだが、理央にはかなりそう見え始めていた。
原稿が思ったより進んだので、理央は休憩することにした。
飲み物へ手を伸ばし、PCでアニメを再生する。
最初は本当に休憩するつもりだった。
画面に映像が出たところで、理央は昨日覚えた並行思考を思い出した。
今はLv2だ。
これなら、アニメを見ながら原稿も進められるのではないか。
「これ、いけるんじゃない?」
理央は原稿画面も開いたままにした。
アニメを見ながら、続きを一文打つ。
台詞は聞こえている。映像も追える。原稿の中で次に何を書くかも残っていた。
さらに数行進む。
「ほら、できる」
口元が緩む。
好きな作品を見ながら原稿まで進むなら、かなり便利だ。
ところが、好きな登場人物が出てきたところでキーボードを打つ指が止まった。そのまま次の台詞、次の場面へと意識を持っていかれ、いつの間にか机からキーを叩く音が消えている。
話が一区切りしたところで、理央は息を吐いた。
「よかった……」
そのまま次の場面へ進みかけて、ふと原稿画面を見る。
カーソルが点滅している。
位置は、ずいぶん前からほとんど動いていなかった。
「……普通に見てた」
原稿の内容を忘れたわけではなく、次に何を書くかも分かっている。
ただ、頭に残っていることと、実際に手を動かして書くことは別だった。
理央は少しだけ考え、アニメを一時停止した。
「まあ、そうなるか」
並行思考があれば何でも同時に終わるわけではない。
考えてみれば当然なのだが、試す前は出来る気がしていた。
原稿へ戻る。
止まっていたところから続きを打ち始めると、文章自体はすぐにつながった。
そこだけは確かに便利だった。
数行進めたあと、理央は一時停止したアニメ画面へ目をやった。
続きも気になる。
原稿も進めたい。
「……休憩は休憩で見た方がいいのかな」
言いながら、まだ再生ボタンには触らなかった。
自分で言ったことくらいは、しばらく守るつもりだった。
別の日、理央はいつもの彫金教室へ向かった。
何度も通った道は、地図の中でも途切れずにつながっている。
教室へ入ると、他の受講者たちは「普通」。その中に一つだけ「身内」があり、作業机の向こうにいる修一郎の位置と重なっていた。
家で見ても、ここで見ても、お父さんは身内らしい。
理央は少しだけ口元を緩めてから席へ着いた。
銀線や金属板、小さな石は、どれも以前から扱ってきたものだ。
けれど鑑定Lv7になった今は、表面の状態や細かな傷、加工途中の形のずれまで、以前より早く拾える。
「前より分かる」
声に出さないよう、口の中だけで呟いた。
修一郎の説明を聞きながら、工具を当てる。
次にどこを触るかも頭に残しておく。
並行思考のおかげで、説明を聞いた直後に自分の作業へ戻っても、次の工程が抜けにくい。
かなり楽だった。
そう思った直後、手元の金属が予定より少しだけ削れた。
「あ」
理央が工具を止めると、修一郎が横から手元を覗いた。
「そこ、もう削りすぎない方がいいな」
「はい」
「形が分かってても、手が同じように動くとは限らないからな」
理央は一瞬だけ父を見た。
鑑定のことなど知らないはずなのに、今考えていたことをそのまま言われた気がした。
「……ですよね」
修一郎に直せる範囲を教わり、今度は力を少し抜いて工具を当てる。
鑑定なら、さっきより形が整っていることはすぐ分かる。
けれど実際に整えたのは鑑定ではなく、自分の手だった。
「分かるのと作れるのは別か……」
今度は本当に小声で漏れた。
収納を使えば道具を一瞬で片づけられる。
錬金を使えば細かな形を直せる。
けれど、ここでそれをやったら練習にならない。それ以前に、人前で見せるわけにもいかない。
理央は普通にヤスリを持ち替えた。
修一郎の説明を頭へ残し、今の加工へ意識を向け、次に使う工具も忘れないようにする。
能力が増えても、教室でやることそのものは以前と変わらない。
ただ、失敗へ気づくのは早くなり、次へ移る時の迷いも減っていた。
それなら十分だった。
理央は削った面を光へ傾け、もう一度工具を握り直した。
さらに別の日、理央は妙子と一緒に祖母の家へ来ていた。
玄関を入った途端、長く使われてきた木の家具と乾いた布、それに掃除のため開けた窓から入る冬の空気が混じった懐かしい匂いがする。
居間の隣には、昔から変わらない仏壇があった。
そこには母方の祖父と、妙子の兄である叔父の写真が並んでいる。
理央は叔父本人には会ったことがない。それでも写真の顔だけは、子どもの頃から何度も見ていた。
地図へ意識を向けると、玄関から廊下、居間、その奥まで、昔から歩いてきた範囲が白くならずに残っている。
「へえ……」
祖母の反応へ意識を向ける。
「おばあちゃんも身内」
「何か言った?」
妙子が振り返った。
「なんでもない」
父と母だけでなく、祖母もちゃんと「身内」だった。
祖母が掃除道具を出しながら理央を見た。
「理央、学校はいかないの?」
理央は一瞬だけ目をそらす。
「どうもすいません。行きたくなったらいきまーす」
「そう」
祖母はそれ以上追及せず、雑巾を一枚渡した。
「理央、奥の部屋お願いしていい?」
「うん。じゃあ、あっちやる」
廊下の奥には、妙子の兄が使っていた部屋がある。
本人には会ったことがなくても、理央は子どもの頃から何度もそこへ入っていた。本棚にはマンガが並び、ゲームも置かれていて、祖母の家へ来るたびに覗きたくなる部屋だった。
叔父の部屋も、地図の中では白くない。
理央は雑巾を持ってドアを開け、袖をまくった。
最初のうちは普通に掃除していた。
机を拭き、本棚の手前を拭き、床へ落ちている小さな紙くずを拾う。
ところが家具の下へ目を向けると、薄い埃が奥まで入り込んでいた。髪の毛や細かな紙くずもあり、雑巾を差し込んでも一度では取れそうにない。
「うわ」
理央はしゃがみ込んだ。
掃除機を持ってくるか、家具を少し動かすか。
どちらも面倒だ。
暗い隙間を眺めているうちに、理央の頭の中で収納と目の前の埃がつながった。
「……待って」
収納なら、入れるものを選べる。
床や家具まで取る必要はない。欲しいのは、隙間へ入り込んだ埃と髪の毛、それに細かな紙くずだけだ。
理央は一度、地図へ意識を向けた。
祖母は居間にいて、妙子も別の部屋にいる。どちらもこちらへ近づいていない。
「ゴミだけ……収納」
床際へ薄い靄が広がり、すぐに消える。
家具の下を覗き込むと、床も家具もそのままなのに、埃と細かなゴミだけがなくなっていた。
「え」
別の隙間でも試してみる。
今度も成功した。
澪から教わったわけでも、真壁から説明されたわけでもない。自分で思いついた使い方だ。
理央の口元が上がる。
「あたしって天才じゃない?」
しばらく、その気分のまま掃除が進んだ。
ただし収納で何でも消せるわけではない。
床へこびりついた汚れは残ったし、家具についた古い染みも消えない。
「そこは駄目か」
理央は素直に雑巾を取った。
拭きながら地図を見る。
次に掃除する場所を考え、祖母や妙子が近づいていないかも気にし、収納するものと残すものを頭の中で分ける。
作っていたアクセサリーを3個並べた時とは違う。
今は全部、種類の違うことだ。
それでも、どれか一つへ意識を向けた途端に他が消えることはなかった。
理央は雑巾を絞り直し、本棚へ目を向ける。
棚板にも埃がある。
問題は、その前に大量の本が並んでいることだった。
「……これも、いけるんじゃない?」
さっきまで掃除が面倒だった顔は、もう残っていなかった。
本棚の前に立った理央は、一段分のマンガを眺めた。
一冊ずつ床へ移せば掃除できるが、この量を積み上げれば今度は本の山が邪魔になる。
地図では祖母と妙子のどちらも別の部屋にいる。
「本も収納すればいいんだ」
今度は迷わなかった。
一段分だけを対象にする。
薄い靄が本棚の前へ広がり、並んでいたマンガがまとめて消えた。
「おお」
空いた棚板が一気に現れる。
理央はそこを拭き、乾いたところで収納へ意識を戻した。
どの本がどの段にあったかは崩さない。
収納の中でも、出した棚ごとに分けておけば戻す時に迷わない。
「やっぱり天才では?」
誰も答えないので、自分で納得して次の段へ進んだ。
古いゲーム機やソフト、攻略本、アニメ関係の映像ソフトも残っている。
叔父の顔は、さっき仏壇で見た写真を含めて昔から知っている。
けれど声は知らない。どんなふうに笑ったのかも知らない。
理央が知っているのは、家族から聞いた話と、この部屋に残された物ばかりだった。
それでも、この部屋に来れば、叔父がマンガやゲームを相当好きだったことだけは分かる。
そして理央自身も、子どもの頃からここでそれを読んできた。
本棚を一段ずつ空け、棚を拭き、収納していた本を元の順番へ戻していく。
次に手をつける棚、祖母と妙子の位置、戻す本の順番、あとで読み返したい巻。それぞれ別のことなのに、頭の中から落ちにくくなっていた。
理央はその変化を深く考えないまま、次の本へ手を伸ばした。
全部の棚が片づいた頃、祖母が入口から顔を出した。
「ずいぶんきれいになったね」
「うん。結構大変だった」
収納を使ったことはもちろん言わない。
祖母は本棚を見回し、少し笑った。
「昔からその部屋好きだったね」
「だってマンガもゲームもいっぱいあったし」
理央は本棚を見回した。
「私がこうなったの、だいたい叔父さんのせいじゃない?」
「それは叔父さんも困るんじゃない?」
「でも、かなり影響受けてると思う」
軽い調子で言ってから、理央は昔好きだったシリーズへもう一度視線を向けた。
掃除は終わった。
ところが、今度は読みたい本が増えていた。
帰る前に、理央は本棚から数冊だけ抜いた。
「おばあちゃん、叔父さんのマンガ、何冊か借りていい?」
「いいよ。読み終わったら戻してね」
「うん」
許可をもらってから、理央は選んだ本をまとめた。
祖母と妙子の目がこちらへ向いていない時に収納へ入れると、靄はすぐに消えた。
自宅へ戻った頃には外は暗くなっていた。
理央は自室へ入り、地図へ意識を向ける。父母の反応はどちらも別の場所にある。
ドアを閉め、収納から借りてきたマンガを出した。
「懐かしい……」
表紙だけで、子どもの頃に読んだ場面がいくつか戻ってくる。
そのまま読み始めかけて、机のPCが視界に入った。
原稿もある。
理央は少し考えた。
「並行思考あるし」
PCを開いて原稿の続きを表示し、その横にマンガを置く。
数ページ読んでは原稿へ戻って続きを打ち、またマンガへ視線を移す。
以前アニメで試した時より、切り替えが楽だった。マンガを読んでも原稿の現在位置や次に書きたい内容が頭から落ちない。
「今日、なんかやりやすい?」
理央は首を傾げたが、理由までは分からなかった。
そのまま数行書き、またマンガへ戻る。
最初のうちは両方進んだ。
問題は、そのシリーズが昔と同じように面白かったことだった。
少しだけ読むつもりだったページが進む。
あと数ページ。
ここまで来たら区切りまで。
もう少し。
気がつけば、キーボードの音はまた止まっていた。
一冊読み終え、満足して本を閉じる。
「やっぱり面白い」
PCへ視線を戻すと、原稿は進んでいるものの、期待したほどではなかった。
そして収納の中には、続きの巻がある。
理央はPCと収納を交互に意識して、数秒だけ迷った。
「……あと1冊だけ」
薄い靄とともに、次の巻が机へ現れた。