共同商館の食堂には、煮込み料理の湯気が上がっていた。
パンをちぎる音と食器の触れる音が混じり、少し離れた席ではラウたちが普通に昼食を取っている。
澪たちも同じだった。
少なくとも、食べ始めた時までは。
「昨日の800万個って、もう作ってるんですか?」
理央がスプーンを止めて、真壁を見た。
「始めている」
真壁は煮込みを一口食べてから答えた。
「手持ちの特殊蛍石は、もう加工工程へ回した。3月分はそちらで進める」
「じゃあ、今日探す分が見つかるまで待つわけじゃないんですね」
「待つ理由がないだろう。作れる分は作る。その間に次を探す」
真壁らしい答えだった。
澪はパンをちぎりながら、昨日の商談を思い出す。
年間の数字は大きすぎた。
ところが一晩たつと、やることは「次の石を探す」に戻っている。
押入商会では、億単位の話が続いた翌日に石探しを始めても、それほど不思議に感じなくなってきた。
慣れていいのかは分からない。
「今日は、その蛍石を探すんですか?」
「そうしよう」
真壁は食事の途中で収納へ手を入れた。
靄が薄く揺れ、小さな鉱石片が卓上へ出る。
淡い色を帯びた、特殊蛍石。
昨日まで世界規模の需要だ、年間64億円だと話していた部品の元が、昼食の皿の横ではただの石に見えた。
理央は皿の横の石をしばらく見ていた。
「……これなんですよね」
「何がだい?」
リュシアがパンを持ったまま聞く。
「ゲンダイで足りないって言ってた材料です。これを加工して、すごく小さい部品にするんです」
「へえ」
リュシアは石を見て、それから理央を見る。
「で、足りないから探すんだね」
「そうです」
「なら、先に探した方がいいね」
光通信もSFPも分からないリュシアには、必要な材料が足りないという部分だけで話が通じていた。
「昼飯の途中でやるのかい?」
リュシアが今度は真壁を見る。
「食べ終わるまで待っても結果は変わらない」
「そういうところは相変わらずだね」
呆れたというより、もう慣れている声だった。
ヴァルトは黙って鉱石を見ている。
「以前使った原石検索を使う」
真壁は特殊蛍石を指先で少し動かした。
「今回は名前だけではなく、実際に使っているこれを試料にする。同じ性質に近い原石がある場所を拾う」
「その方が絞れそうですね」
澪が言う。
「そうだな」
真壁はすぐに検索を始めた。
何か新しい能力を作ったわけではない。
前に鉱石を探した時と同じやり方で、基準にする石だけを変える。
しばらくして、候補が一つではなく複数出た。
「いっぱいありますね」
理央の声が少し明るくなる。
澪も最初はそう思った。
不足しているなら、見つからない方が困る。
候補が多いなら、どこか一つくらい使えるはずだ。
真壁は自分にだけ見えている地図を確認すると、収納内に置いてある紙と鉛筆へ意識を向けた。
候補地の位置と周囲の地形を書き写し、その紙を卓上へ出す。
ヴァルトが身を乗り出す。
「……魔素の濃い場所が多いですね」
「やはりそう見えるか」
「はい。ただ、これだけで魔素が特殊蛍石を生んでいるとは言えません」
ヴァルトの言い方は慎重だった。
「少なくとも、存在する場所と高魔素地域に偏りがあるようには見えます」
「相関はありそうだな」
真壁もそこで止めた。
それ以上は決めつけず、澪は真壁が書き写した紙へ目を落とす。
候補地には、見覚えのある危険そうな名前が混じり始めていた。
普通の鉱山を探して終わる話ではないらしい。
横では子どもたちが、変わらず昼ごはんを食べていた。
地図の上には、反応がいくつも残っていた。
「これだけあれば、どこかで採れそうですね」
理央は少し安心したように言った。
「あることと、採っていいことは別だ」
真壁は最初の地点へ指を置く。
ヴァルディス侯爵領の川上流。
「ここは外す」
「反応あるのにですか?」
「侯爵領内の地下資源だ。まず権利の話がある」
リュシアが頷く。
「そりゃそうだよ。領地の中の石を、必要だからって勝手に持っていくわけにはいかないさ」
「それだけではない」
真壁は地図の川筋を指で追った。
「本格的に掘れば、植生も土も動く。上流で水の流れを変えると、下へ影響が出る」
澪も川の先を見る。
「下流に人がいるなら、やめた方がいいですね」
「ああ。短時間で掘れるからこそ、余計にな」
真壁の土木能力なら、採るだけなら早い。
早いから問題が小さいとは限らない。
山肌を広く削れば、雨の流れも土砂の動きも変わる。
必要な量だけ持って帰るつもりでも、押入商会の「必要な量」はもう小袋で済む話ではなかった。
真壁は次へ移った。
「マールヴェインは触らない」
今度は判断が早かった。
理央が地図を見る。
「ここも反応ありますよね」
「ある」
「魔物が多いからですか?」
「それだけなら候補からは外さない」
真壁の指が止まる。
「蛍石のために、あそこを掘って確かめる必要はない」
ヴァルトも地名を見たまま、少し間を置いた。
「私も、その方がよいと思います」
「何かあるんですか?」
理央が聞く。
ヴァルトはすぐには答えなかった。
「まだ、何があるとは言えません。ただ、わざわざ刺激する場所ではないでしょう」
それ以上は誰も掘り下げなかった。
澪も、そこだけは理由を全部知ろうと思わなかった。
分からないから触らない。
そういう判断が必要な場所もある。
次に真壁が示したのは、ヴァルディス侯爵領の東に広がる大森林だった。
「ここは資源だけなら悪くない」
「前に天然ガスとかヘリウムも見つかってましたよね」
澪が言う。
「そうだ。ただし、その先に別の国がある」
新型エアカーで何度も入り、地面を掘り、大量の鉱石を持ち帰る。
こちらにはただの資源調査でも、向こうから同じように見えるとは限らない。
「大森林の開発を始めたって思われるかもしれないんですね」
理央が言う。
「蛍石のために他国を刺激する必要はない」
真壁はそこも外した。
理央のスプーンが、皿の上で止まる。
「さっきから、あるのに減っていきますね」
「採れる場所を探しているわけじゃないからな」
「採っても面倒にならない場所、ですか」
「そういうことだ」
4つ目はベラクルス侯爵領の北方だった。
反応はある。
だが、人の活動圏に近い。
領兵や冒険者、猟師、採取人、移動する商人が通る可能性がある。
「エアカーを降ろして、石がどんどん消えていくところを見られるのは嫌ですね」
澪が言う。
「説明が面倒どころではないね」
リュシアも顔をしかめた。
「大量に採るなら、人目は避けた方がいいさ」
「ここも外そう」
真壁の指が最後の地点へ移る。
南。
火山地域。
ヴァルトの視線もそこへ落ちた。
「反応は強いですね」
「魔素も濃い」
「魔物も多いです」
理央の声から、さっきまでの安心が消えた。
人がほとんど近づかない。
領内住民の暮らす川筋へ影響を出しにくい。
国境を挟んだ相手を刺激する心配も少ない。
そして、大量に採っても見られにくい。
条件だけを並べると、確かに残る。
「……一番危なそうなところが残りましたね」
理央が言った。
「人間相手の面倒は一番少ない」
真壁は平然としている。
「魔物はいるんですよね」
「いるな」
「そこは面倒じゃないんですか?」
「対処出来る」
理央が一度、澪を見た。
澪も同じことを考えていた。
権利、治水、外交、人目。
全部避けたら、最後に魔物だらけの火山が一番都合よく残った。
「普通の場所、残りませんでしたね」
「普通の場所には人がいるからな」
真壁の返事は、妙に納得出来てしまった。
昼食の皿は、もうほとんど空になっていた。
採掘場所が決まると、真壁は南の火山地域の状況を確認し始めた。
「前に数を減らしたとはいえ、まだ魔物は残っている」
理央が嫌そうな顔をする。
「どのくらいですか?」
「少なくはない。ビッグマンティスもいる」
「マンティス……」
理央の手が止まった。
澪もあの人間ほどの大きさの魔物を思い出す。
地上を走るだけなら、エアカーから距離を取ればいい。
けれど、あれには羽がある。
「飛んできますよね」
「ああ。新型エアカーへ近づいてくる可能性はある」
真壁はそれを、行かない理由にはしなかった。
「採掘地点の周囲は先に間引いておこう」
「討伐もするんですか?」
理央の声が上ずる。
「採掘の邪魔になるなら減らした方がいい。それと――」
真壁が理央を見る。
「理央君の訓練にも使える」
「え」
理央が完全に止まった。
「私も撃つんですか?」
「そのつもりだ」
怖そうなのに、視線はビームマシンガンの話へ引かれていた。
ビームマシンガンそのものには興味があるらしい。
「澪君もだ」
「私もですか?」
「採掘中、私が全部の方向を見続けるより、周囲を見られる者がいた方がいい」
話が自分にも来た。
澪の背筋が伸びる。
射撃スキルはある。
ビームマシンガンも見たことがある。
だからといって、火山の上空で飛んでくる魔物を撃つのは別の話だ。
「いきなり現地で撃つわけではないですよね」
「もちろんだ。先に試射する」
その返事で、澪の肩の力が抜けた。
ヴァルトはここまで黙って聞いていたが、そこで口を開いた。
「真壁さんなら、安全を見ずに連れて行くとは思っていません」
真壁を見る。
「ただ、南の火山で澪さんと理央さんに実戦をさせるのでしたら、私も同行します」
「ヴァルトさんも?」
理央の表情が緩んだ。
「ええ。魔素の確認や結界、周囲の警戒ならお手伝い出来ます」
「助かる」
真壁は止めなかった。
「私が採掘へ入っている間、魔術側から周囲を見てもらえるなら都合がいい」
ヴァルトが頷く。
リュシアは空いた皿を前に、5人を順番に見た。
「昼飯の最初は、石を探す話だったよね?」
「そうですね」
澪が答える。
「今は火山へ行って、魔物を減らして、射撃の訓練もする話になってるよ」
「……そうですね」
言われると、増え方がおかしい。
理央も同じことに気づいたらしい。
「ほんとに今日行くんですか?」
澪もそこが気になっていた。
「今すぐ行くんですか?」
「夏場は暑くなるからな。今のうちに獲りに行きたい」
真壁は普通の顔で答えた。
理屈は分かる。
火山へ行くなら、真夏より今の方が身体は楽だ。
今はまだ冬の終わりから春先。
同じ危険地帯へ入るなら、暑さまで相手にする必要はない。
分かるのだが。
澪は食堂を見回した。
生徒たちはまだ普通に昼食を食べている。
ついさっきまで自分たちも同じだった。
「昼ごはん食べてただけなんですけどね」
「準備が出来れば出られる」
真壁はもう次へ進んでいる。
「その前に秘密基地だ。2人とも、射撃はLv1だったな」
「はい」
澪が答える。
理央も一拍遅れて頷いた。
「Lv2まで上げてから行こう」
「今からですか?」
「今からだ」
理央は口を開きかけて、閉じた。
澪には、その気持ちがよく分かった。
昼食の予定だった午後が、いつの間にか射撃訓練を経由して火山へ向かう予定に変わっていた。
秘密基地へ移ると、空気が変わった。
共同商館の食堂にあった湯気も、子どもたちの話し声もない。
硬い床。
広く取った射撃方向。
その先に固定標的。
真壁は収納からビームマシンガンを2丁出した。
澪と理央が手を伸ばしかける。
「まず撃たない」
2人の手が止まった。
理央が真壁を見る。
「試射ですよね?」
「そうだ」
「撃たないんですか?」
「まず扱い方だ」
真壁の声は、共同商館にいた時とほとんど変わらなかった。
怒鳴らない。
怖い顔もしない。
ただ、言葉が急に短くなった。
澪はそこで、これはいつもの作業説明とは違うと気づいた。
真壁は1丁を持ち上げる。
「見る」
銃口の向き。
手の位置。
発射操作へ触れない指。
射線。
標的。
順番に見せる。
「構える」
肩と腕で安定させる。
無駄に振らない。
「目標」
標的を見る。
その先まで確認する。
「1発」
白い光が走った。
固定標的の表面に焦げた跡が付く。
「停止」
そこで止める。
「確認」
真壁は銃口を落ち着かせたまま、左右と射線の先を見る。
説明はそれだけだった。
「澪君から」
「はい」
渡されたビームマシンガンは、見ていた時より重く感じた。
グリップへ手を掛ける。
「指」
真壁の声が飛ぶ。
澪はすぐに発射操作から指を外した。
「すみません」
「今直せばいい。準備」
余計な叱責はない。
その方が、かえって気が抜けなかった。
「構え」
澪は標的へ向ける。
「まだ撃たない」
「はい」
「射線」
標的だけではなく、その奥を見る。
「目標」
狙いを定める。
「1発」
白い光。
標的へ当たる。
「停止」
澪はすぐ止めた。
「確認」
撃った場所だけを見続けず、周囲へ視線を移す。
真壁が頷いた。
「もう一度」
「はい」
褒めて終わりではないらしい。
澪はすぐ分かった。
一度出来たから次へ進むのではなく、同じことをもう一度出来るかを見る。
何度か繰り返したあと、真壁が理央を呼んだ。
「理央君」
「はい」
理央は楽しそうにビームマシンガンを受け取った。
さっきまで火山へ行くことには緊張していたはずなのに、武器を持つと視線が銃身へ吸い寄せられた。
「まず撃たない」
「はい」
今度は素直だった。
「指」
理央はすぐ外す。
「射線」
標的の先を見る。
「構え」
肩に力が入りすぎている。
「力を抜こう」
「これくらいですか?」
「もう少し」
理央が息を吐く。
「そうだ。目標」
標的へ向ける。
「1発」
白い光が走った。
中心は外れたが、標的には当たった。
「あ、当たった」
嬉しさが先に出た。
「停止」
「あっ」
理央はすぐに発射を止める。
「確認」
言われてから周囲を見る。
真壁は命中した場所をほとんど見ていなかった。
「当たりましたよね?」
「当たったな」
理央の顔が明るくなる。
「じゃあ――」
「もう一度」
「なんでですか?」
「出来たからだ」
理央が真壁を見る。
本気で意味が分からない顔だった。
澪はもう分かっていたので、何も言わなかった。
「一度出来た。次も同じように出来るか見る」
「ああ……」
理央は納得したような、していないような返事をした。
もう一度構える。
今度は撃つ前に自分から射線を見る。
「目標」
「はい」
「1発」
白光。
「停止」
止まる。
「確認」
周囲を見る。
「もう一度」
理央が眉を寄せた。
3回目。
4回目。
5回目。
真壁の声は同じだった。
出来なければ止める。
出来ても続ける。
怒鳴らない代わりに、終わる条件が見えない。
「真壁さん、怒ってます?」
何度目かで理央がとうとう聞いた。
「怒っていない」
「ほんとですか?」
「ああ。出来るまでやるだけだ」
「そっちの方がちょっと怖いです」
理央の本音だった。
離れたところで見ていたヴァルトが、わずかに口元を緩める。
「ですが、現地へ行く前にここで直しておく方が安心です」
「ヴァルトさんまで真壁さん側ですか」
「安全については、そうですね」
理央が小さく息を吐いた。
澪はビームマシンガンを持ち直す。
腕が重くなってきた。
それでも、火山で飛んでくるものを相手にする前だと思えば、文句はなかった。
「澪君」
「はい」
「もう一度」
「はい」
真壁の短い号令が、広い区画へ繰り返し響いた。
単発射撃が安定してくると、真壁は標的の設定を変えた。
「次は短く連射する」
理央の顔が明るくなる。
「やっとマシンガンっぽいですね」
「短く、だ」
「はい」
真壁はそこだけ念を押した。
狙った範囲から外れ始めたら止める。
停止の指示が出たら、即座に止める。
澪も理央も、今度はもう説明を待たずに射線を確認した。
「準備」
2人が構える。
「目標」
固定標的。
「短く」
白い光が連続して走った。
澪は銃口が流れないように押さえ、数発で止める。
「停止」
すぐに指を外す。
「確認」
周囲を見る。
真壁は標的の焦げ跡より、2人の手と視線を見ていた。
「もう一度」
今度は理央。
短い白光が標的へ続く。
最初の数発はまとまっていた。
途中で横へ流れる。
「停止」
理央はすぐ止めた。
「今の、ちょっと楽しかったです」
「楽しいと思った時ほど雑になる」
「……はい」
理央がむくれた。
でも言い返さない。
自分でも最後に狙いが流れたのが分かったらしい。
もう一度。
さらにもう一度。
短い連射が安定してから、真壁は固定標的を下げた。
次に出てきたのは、左右へ動く標的だった。
「動くんですか」
「現地では止まって待ってくれない」
「それはそうですけど」
理央は標的の動きを目で追う。
澪も銃口を必要以上に振らないように合わせた。
「構え」
真壁の声。
「目標」
動く標的。
「1発」
澪が撃つ。
白光が後ろへ外れた。
「停止。もう一度」
今度は標的の動きを先まで追う。
当たる。
「確認」
撃ったあとも標的だけを追わず、周囲を見る。
真壁が頷く。
「理央君」
「はい」
理央も構える。
最初は外した。
2回目は端に当たる。
3回目は中央へ寄った。
「今のは出来ましたよね」
「出来た」
理央の顔がほっとする。
「じゃあ終わりですか?」
「もう一度」
「やっぱり」
今度は驚かなかった。
澪は笑いそうになったが、自分の番がすぐ来るのでやめた。
何度か繰り返すうちに、2人とも構えから停止、確認までの流れが崩れにくくなった。
真壁が一度手を上げた。
「止めよう」
澪はビームマシンガンを下げる。
腕が重い。
理央も肩を回していた。
「鑑定してみます」
澪は自分の射撃スキルを確認する。
射撃はLv2へ上がっていた。
続けて理央を見る。
「理央さんもLv2です」
「ほんとですか?」
理央の顔が一気に明るくなる。
「上がってます」
「じゃあ、終わりですか?」
理央が真壁を見る。
真壁は2人の構え方と、置いたビームマシンガンを一度見てから頷いた。
「よし。これなら行ける」
そこで初めて、訓練終了だった。
理央が肩の力を抜く。
「本当にレベルが上がるまで行かないつもりだったんですか?」
「訓練で上げられるものを、現地で上げる必要はないだろう」
「……正しいですけど」
理央は反論を諦めた。
澪も何も言えない。
火山の上空で初めて扱い方を覚えるより、ここで出来ることを済ませておく方がいい。
ヴァルトもすでに自分の準備を終えていた。
「こちらも大丈夫です」
結界と境界。
魔素の確認。
周囲の警戒。
真壁が採掘へ入る間、ヴァルトはそちらを見る。
澪と理央は飛翔する魔物の警戒と迎撃。
倒した魔物は放置せず、収納へ回収する。
「最初は自由に撃たないこと」
真壁が2人へ言う。
「私かヴァルト君と状況を合わせてからだ」
「分かりました」
澪が答える。
理央も頷いた。
「はい」
新型エアカーを出す。
6人乗りの新型エアカーへ、真壁、澪、理央、ヴァルトの4人が乗り込んだ。
理央は座席に収まってから、窓の外を見た。
「昼ごはん食べてた時、ここまで来ると思ってませんでした」
「私もです」
澪はシートベルトを確かめる。
「石を探すだけだったはずなんですけどね」
「採る場所に魔物がいるなら、先に準備した方が早い」
真壁はもう操縦側を見ている。
「真壁さんの中では、全部つながってるんですね」
「同じ仕事だからな」
理央が小さく息を吐いた。
新型エアカーが浮き上がる。
秘密基地の地面が離れていく。
南へ機首が向いた。
火山はまだ見えない。
澪は膝の近くに固定したビームマシンガンへ一度だけ目を落とし、そのまま前を見た。
エアカーは南の火山へ向けて飛び始めた。