7月のホームセンターは、入口からもう夏だった。
店の自動ドアが開いた瞬間、澪の顔に冷房の風が当たり、同時に、棚いっぱいに並んだ青い冷感タオル、白い小型扇風機、蚊取り線香の緑の箱、竹のすだれ、うちわ、首に巻く冷却リングが視界へ飛び込んできた。
澪はカートの取っ手を握ったまま、しばらく立ち止まった。
「ネッククーラーというのがあるんだけど……」
独り言だった。
棚には、冷蔵庫で冷やすタイプ、水につけるタイプ、電気を使うタイプ、首にかけるだけのリングタイプが並んでいる。値段は思ったより幅があり、安いものは試しやすく、高いものは見るからに富裕層向けの商品顔をしていた。
澪はスマホでレビューを確認し、首冷却リングを手に取り、冷感タオルもカートへ入れた。
「買う〜」
言ってから、カートの中を見た。
ネッククーラー、冷感タオル、うちわ、蚊取り線香、蚊取り線香立て、すのこ、小型扇風機、延長コード、虫よけ用品、保冷材。
そして、スーパーで買う予定のスイカ。
家具事業で現代円が入った。だからと言って、買い物が怖くなくなったわけではない。むしろ、押入商会代表として買う物の種類が増えたせいで、買い物の意味が重くなっている。
ただ、今回は必要だ。
異世界側は7月に入り、かなり暑くなっているはずだった。補水飲料は続いているはずだが、あれだけで夏の全部を押し返せるわけではない。暑さは、休ませないと人を削る。澪は前に自分が倒れかけたことも、教会の子どもたちが腹を壊したことも思い出していた。
家電売り場で扇風機を2台選んだ。セルマ工房と家具工房には太陽電池発電とポータブル電源がある。電気がある場所だけなら使える。万能冷房ではないが、熱気を動かせるだけでも違う。
風鈴も買った。
涼しくなるわけではない。けれど、音で涼しく感じるというのは、日本の夏の強引な知恵である。
スイカは丸ごと2玉にした。冷えたスイカを持っていくなら、収納の出番だ。生ビールは売り場で一度足を止めたが、澪は自分で飲まない。飲まないが、夏の景色として必要な気がして、小型の樽ではなく、扱いやすい冷たい麦酒風の飲み物を少量だけ買った。
子どもには出さない。
自分も飲まない。
澪は心の中で2回確認した。
レジで会計を済ませる頃には、カートは完全に夏の避難所みたいになっていた。
六畳間に戻った澪は、買ってきた品を床に並べ、収納へ入れるもの、冷やしておくもの、異世界側で最初に出すものを分けた。
スイカには、保冷材を抱かせるようにして収納へ入れる。
「夏の幸せ、冷えたままお願いします」
収納に頼むように呟いてから、澪は首冷却リングの箱を見た。
リュシアがどう見るか。
たぶん、買う。
それも、全部買う顔をする。
澪はその予感を、少し怖いと思った。
異世界側の市場は、予想以上に暑かった。
石畳から熱が返り、屋台の布屋根の下にも、逃げ場のない空気が溜まっている。香辛料の匂い、焼いた肉の匂い、果物の匂い、汗の匂いが混じり、通りを歩く人の声も少し重い。
リュシアの屋台の裏では、子どもたちが日陰に座っていた。手元には、ペットボトルがある。澪が前に持ち込んだ再利用ボトルだ。中には、甘くて少し塩の入った補水飲料が入っている。
ひとりの子が、両手でペットボトルを持ち、ちびちび飲んでいた。飲み終わると、フタをしっかり閉め、木箱の横へ戻す。
それが、当たり前の動きになっていた。
澪は胸の奥が少し軽くなった。
「誰もその後倒れていないのね。よかった……」
リュシアは汗を拭きながら、屋台の奥から顔を出した。
「あのフタつき水筒と、塩の入った甘い飲み物が効いてるよ。暑い日は、あれを持ってない子の方が珍しくなってきた」
「よかった。水分補給、大事……」
「ただ、暑いのは暑い。倒れないのと、楽なのは別だからね」
「それです」
澪は収納から、うちわと冷感タオルを出した。子どもたちが目を丸くする。うちわを扇いでやると、1人がすぐに真似をした。冷感タオルは水で濡らして絞り、首に当てる。子どもが「あ」と声を上げた。
「冷たい!」
「水で濡らして、首に当てます。ずっと冷たいわけじゃないけど、暑い時は楽になります」
リュシアはそれを見ながら、もう商人の顔になっていた。
「これは安く売れるね。屋台の手伝い、荷運び、日向の仕事向け」
「冷感タオルはその辺りですね」
「で、澪。さっきから箱を抱えている方は?」
見られていた。
澪は収納から首冷却リングの箱を出した。
「これ、首を冷やす道具です。暑さ対策です」
リュシアは箱を手に取り、重さを見て、形を見て、首に当てた。
目が変わった。
「市場の子に配る値段じゃないね」
「ですよね」
「持ってきた分、全部買うよ」
「全部ですか?」
「暑さで金持ちが弱ってる時期だ。首を冷やせる道具なら、高く売れる」
リュシアは箱を1つずつ積み上げていく。
「商家の旦那、貴族の奥方、工房主。暑いから仕事にならないって顔をしている連中が、いくらでもいる。これは庶民向けじゃない。高い金を出してでも涼みたい連中向けだ」
澪は、補水飲料のペットボトルを見て、それから首冷却リングの箱を見た。
「補水飲料は庶民向け、ネッククーラーは富裕層向け……」
「そういうこと。夏は暑い。暑いなら、金持ちも財布を開ける」
澪は在庫を抱えなくて済む安心と、リュシアの判断の早さへの軽い恐怖を同時に味わった。
リュシアはもう、売る先を頭の中で並べている顔だった。
澪は市場の屋台裏の日陰に、冷えたスイカを取り出した。
丸い緑の皮を見た子どもたちが集まってくる。リュシアが包丁を用意した。澪は半分に割る前に、少しだけ間を置いた。
包丁が入る。
赤い果肉が現れた瞬間、子どもたちが一斉に声を上げた。
「赤い!」
「中が赤い!」
「水の果物?」
「だいたい合ってます」
澪は三角に切り分け、子どもたちへ渡した。冷えた果肉を受け取った子が、まず恐る恐るかじる。
次の瞬間、目が見開かれた。
「冷たい! 甘い! 水みたい!」
別の子が、口いっぱいに頬張りながら、種を見せた。
「種も食べるの?」
「種は出してください。皮も基本は食べません」
「皮、硬い」
「食べなくていいです」
赤い果汁が手につき、子どもたちが笑う。補水飲料を飲み、スイカを食べ、日陰でうちわを動かす。ほんの少しだけ、屋台裏の空気が明るくなった。
リュシアはスイカを一口食べ、しばらく黙った。
「これは……売れるね」
「今日は売り物じゃないです。差し入れです」
「今日だけだろう?」
「今日は差し入れです」
「今日だけだね」
「リュシアさん」
リュシアは笑って、子どもたちへ追加の一切れを配った。
暑さは、日陰とうちわとスイカで少し和らいだ。
それでも、屋台の裏に溜まる熱気は重い。子どもたちの額にはまだ汗が浮いている。補水飲料はある。だが、空気そのものが熱い。
澪は、収納の中の清潔な水を意識した。
水を出す。
ただ出すのではなく、細かく。
霧みたいに。
ミナに水分離を教えた時のことを思い出す。泥水の上澄みを分けるように、状態を分ける。粒を細かくする。まとまりではなく、薄く広げる。
澪は手を前へ出した。
細かな水の粒が、ふわりと日陰の空気へ散った。
子どもたちが顔を上げる。うちわの風に乗って、霧が肌へ触れた。冷たいというほどではない。けれど、汗をまとった肌に、ふっと軽い涼しさが生まれる。
「わ、雨?」
「雨じゃないです。細かい水です」
澪はもう一度、少量だけミストを出した。
万能な冷房ではない。使える水の量も限られる。けれど、日陰、風通し、うちわと合わせれば、体感は明らかに変わる。
リュシアは目を細めた。
「これ、収納持ちがいれば市場で使えるね」
「え、商品じゃなくて人材の方ですか」
「水を運べて、細かく出せるなら、暑い日の屋台も荷運びも助かるよ。井戸から水を運ぶのも、休憩所へ霧を出すのも、収納持ちがいれば楽になる」
「収納持ちって、そんなにいます?」
「探すんだよ」
リュシアは、もう周囲を見ていた。屋台を手伝う子、荷運びの若者、水場へ向かう女たち。誰が収納を持っているか。誰なら教えられるか。商売の目と、人材を拾う目が同時に動いている。
澪は自分の手元の水の霧を見た。
暑さ対策品のつもりで来たのに、人材発掘の話になっている。
異世界の夏は、油断するとすぐ事業になる。
セルマ工房は、扉を開けた瞬間に薬液と熱気が来た。
火を使い、薬草を乾かし、瓶を並べ、調合をする工房である。暑くならないはずがない。セルマは髪をまとめ、袖をまくっていたが、いつもより少し眉間に皺が寄っていた。
「今日は、工房が煮えるわ」
「煮えないでください」
澪は扇風機を取り出した。
セルマは、羽根のついたそれを見て、すぐに興味を示した。
「この羽根が風を作るのね」
「はい。光でためた力を使います」
ポータブル電源につなぎ、スイッチを入れる。羽根が回り、工房の空気が動いた。棚の上の紙が少し揺れ、乾かしていた薬草の端が浮く。
セルマはすぐに扇風機の向きを変えた。
「薬液の匂いも少し逃がせる。でも、粉の近くでは駄目ね」
「風向き、大事です」
「風を作る道具は便利だけれど、雑に置くと材料が飛ぶわ」
「扇風機も錬金術師に怒られるんですね」
「道具はみんな怒られるものよ」
澪は風鈴も取り出し、工房の窓辺に吊るした。ちりん、と細い音が鳴る。
セルマが振り返った。
「これは?」
「風鈴です。音で涼しく感じます」
「音で……?」
「気分です」
セルマはしばらく風鈴を見上げ、次に工房の熱気の中で鳴る小さな音を聞いた。
「気分も薬の一部みたいなものね」
「セルマさんが言うと、急に説得力が出ます」
蚊取り線香を出すと、セルマは匂いに眉を動かした。
「虫除け?」
「はい。ただし火を使うので、置き場所と灰に注意です。薬草粉や紙の近くは駄目です」
「小さな火ほど、置き場を決めないと危ないわね」
セルマは線香立てを石皿の上に置き、周囲から紙を遠ざけた。
工房には、風鈴の音、扇風機の低い音、蚊取り線香の煙が加わった。
涼しい、と言い切るには足りない。
でも、少し働きやすくなった。
セルマは冷えたスイカを一切れ食べて、目を丸くした。
「暑い日に食べる薬みたいね」
「薬じゃないです。夏の幸せです」
「幸せも、少量なら薬になるわ」
澪は、セルマが薬に寄せて理解するのを、もう止めなかった。
押入家具商会の家具工房は、木の匂いと汗の匂いが混じっていた。
扇風機を出した瞬間、家具職人たちは一斉に寄ってきた。太陽電池発電とポータブル電源はすでに工房にある。電動工具の充電にも使っているので、電気そのものへの驚きは少し減っている。
それでも、風が出る道具は別だった。
澪が扇風機を回すと、職人たちの顔に風が当たった。
「おお」
脚物職人が声を漏らす。
次の瞬間、作業台の上の細かい木屑がふわりと舞った。
「風はいい。だが木屑が飛ぶ」
棟梁がすぐに言った。
「作業中に直接当てるのは駄目ですね。休憩場所と換気用にします」
澪は扇風機の向きを変え、工房の奥から入口へ空気を流すように調整した。仕上げ職人が顔をしかめる。
「粉の前に置くな。艶を出す前に全部つく」
「すみません」
「休憩場所ならいい。削っている最中は駄目だ」
「はい。扇風機も職人技が要ります」
リュシアが横で笑った。
「そこまで職人技にするのかい」
棟梁は真面目に頷いた。
「道具は便利だが、使いどころを間違えると仕事を増やす」
まったくその通りだった。
仕事の後、澪は冷えたスイカを出した。工房の隅の日陰に職人たちを集め、手を洗ってもらい、一切れずつ渡す。
汗だくの職人たちは、無言で食べた。
「……冷たい」
金具職人が言った。
「甘い」
脚物職人が続けた。
仕上げ職人は、赤い果肉を見ながら呟いた。
「水を食っているようだ」
「夏の果物です」
澪が言うと、棟梁は皮のぎりぎりまで食べてから、真面目な顔で聞いた。
「この皮は何かに使うのか」
「漬物にすることもありますけど、今日は捨てます」
「漬けるのか」
「そこに食いつきます?」
家具職人は、木だけでなく、皮も無駄にしたくないらしい。
教会へ着いた時、澪はすぐに空気の重さに気づいた。
礼拝堂の石壁は外よりましなはずなのに、昼の熱気がこもっている。孤児院側の部屋では、子どもたちが床に敷いた布の上で横になったり、壁にもたれたりしていた。うちわを動かしている子もいるが、手つきは弱い。
ペットボトルの補水飲料は、木箱に並んでいる。シスターがひとりずつ飲ませ、飲んだ子の顔を確かめていた。
ミナも、隅の椅子に座っていた。膝に手を置き、ぼんやりしている。顔色が悪いわけではないが、疲れていた。
シスターは濡らした布を子どもの首に当てながら、澪へ頭を下げた。
「飲み物は続けています。ただ、この暑さですから、昼はどうしても消耗してしまいます」
「ミナも?」
澪が聞くと、ミナは慌てて背筋を伸ばそうとした。
「大丈夫です」
「大丈夫そうに見えない大丈夫は、だいたい大丈夫じゃないです」
ミナは黙った。
澪は収納から冷えたスイカを取り出した。
子どもたちの目が、少しだけ開いた。
「今日は、冷たい果物を持ってきました」
赤い果肉を切り分けると、部屋の空気が少し変わった。子どもたちは最初、見たことのない赤い果物に戸惑ったが、最初のひと口で顔が戻った。
「冷たい」
「甘い」
「水みたい」
市場の子どもたちと、まったく同じ反応だった。
ミナも小さくかじり、口元を押さえた。
「冷たいです」
「暑い時に食べると、すごくおいしいんです」
澪は子どもたちが少し落ち着いたのを見て、次に日陰の端へ立った。
「今から少しだけ、水を細かく出します。たくさんはできません。濡れすぎないようにします」
司祭様もシスターも、不思議そうに見ている。
澪は収納の中の清潔な水を意識した。
市場でやったように、まとまりではなく、細かな粒へ。
ふわり、と日陰に霧が出た。
子どもが手を伸ばす。
「雨?」
「雨じゃなくて、細かい水です」
シスターが息を呑んだ。
「こんなに細かく出せるのですか」
「収納で水を分けて、霧みたいに出してます。たくさんはできません」
涼しさは、わずかだった。けれど、部屋の熱気が少しだけほどける。肌に触れる霧と、うちわの風が合わさり、子どもたちの表情が楽になる。
ミナが、じっと澪の手元を見ていた。
「お水を、細かくして、ふわって出すんですよね?」
澪は嫌な予感と期待を同時に覚えた。
「はい。そうですけど……」
ミナは、自分の前に置かれた小さな器の水へ手をかざした。
最初は、水滴がぽたぽた落ちただけだった。子どもたちが「あ」と声を上げる。ミナは少し眉を寄せ、もう一度、手元の水を見る。
水を分ける。
細かくする。
聖水を作る時の、静かな感覚。
それを、ふわりと広げる。
次の瞬間、大粒の飛沫が、少しだけ細かくなった。
ほんのわずかだが、霧に近い水が、ミナの手元から広がった。
「え、今ので覚えたの?」
澪は思わず声を上げた。
ミナは、驚いた顔で自分の手を見た。
「お水を、細かくして、ふわって出すんですよね?」
「説明が合ってる……」
シスターがすぐにミナの肩へ手を置いた。
「ミナ、無理をしてはいけません」
「少しだけです。暑い子に、少しだけ」
澪は鑑定をかけた。
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ミナ
水分離:成長中
聖水:微弱
新規応用:ミスト化
効果:少量の清潔な水を細かく散らす
用途:暑さ対策、休息補助
注意:大量使用不可
注意:清潔な水を使うこと
注意:疲労時の連続使用非推奨
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澪は表示を見て、深く息を吐いた。
「ミナ、覚えるの早すぎます」
ミナは、少しだけ誇らしそうに、でもすぐに疲れた顔になった。
シスターがその顔を見て、きっぱり言った。
「今日はもう休みです」
「はい」
ミナは素直に頷いた。
澪は、ミスト化が万能な冷房ではないことを、司祭様とシスターに説明した。使う水は清潔なものにすること。暑い子に少しだけ使うこと。疲れている時に連続して使わせないこと。補水飲料と日陰と休憩を続けること。
司祭様は静かに頷いた。
「水を飲ませ、休ませ、それでもつらい時に、少し助けるのですね」
「はい。魔法の冷房ではなく、暑さを少し逃がす手段です」
ミナはその言葉を聞きながら、スイカをもう一口食べていた。
夕方、リュシアの屋台裏で、澪は大人向けの冷たい麦酒風の飲み物を少量だけ出した。
子どもたちはもう帰らせている。残っているのは、リュシアと、屋台周りの大人たちだけだ。
「これは大人用です。子どもには出しません。あと、あたしも飲みません」
澪が最初に言うと、リュシアは瓶を見て笑った。
「なんで持ってきたんだい」
「夏の景色として、必要な気がして……」
「売れるね」
「すぐ商売にしないでください」
「泡が立って、冷えていて、大人用。暑い日に売れないわけがないだろう」
「管理が必要です。飲みすぎる人も出ます。今日は試しです」
リュシアは少量を口にし、目を細めた。
「冷たい酒は、危ないね」
「分かってくれました?」
「売れる意味で危ない」
「そっちですか」
澪は、これは後回し、と心に決めた。
夏用品だけで、もう話が増えすぎている。
六畳間へ戻った澪は、畳の上に座り込み、今日の反応をノートにまとめた。
補水飲料は定着済み。倒れる者なし。
ネッククーラーはリュシア全量買い取り。富裕層向け。
うちわは市場・教会・工房で実用。
冷感タオルは屋台と工房で好評。
扇風機は電気がある場所限定。風向き注意。
蚊取り線香は火の管理必須。
風鈴は気分の涼しさ。意外に評判。
すのこは床の熱と湿気対策。
スイカは全員に強い。特に子どもと職人。
ミストは市場で収納持ち探索へ。教会でミナが習得。
澪はペンを止めた。
夏対策は商品だけではなかった。
水分補給、日陰、風、冷たいもの、人材、スキル応用。全部がつながる。リュシアは収納持ちを探し始めた。ミナはミストを覚えた。暑さは危険だけれど、対策は商売にも生活改善にもなる。
澪はメモの最後に書いた。
日本の夏用品、異世界でもだいたい効く。
ただし、売るものと配るものを分ける。
冷やすものは強い。
水はもっと強い。
ミナは、覚えるのが早すぎる。
スマホの画面には、追加のネッククーラー注文ページが開いていた。
澪はしばらく画面を見つめた。
「……買う〜」
ただし、次に買った分も、たぶんリュシアが全部買う。