押し入れの向こうは異世界でした   作:Brooks

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こういう切り口の異世界物ってなかったと思う。


第58話 レベルアップが止まらない

 

 七月も中盤に入ると、大学の空気は一気に軽くなった。

 

 講義棟の掲示板には夏季休業中の事務連絡が貼られ、大学ポータルには図書館の短縮開館時間が表示され、学生たちは廊下の端で帰省だの、バイトだの、サークル合宿だのと話している。

 

 澪も本来なら、冷房の効いた部屋で昼まで寝て、アイスを食べ、夕方になってからようやく動き出すような夏休みを過ごしてもよかった。

 

 よかったはずだった。

 

 だが、合同会社押入商会の代表取締役社長に、夏休みという言葉はあまり優しくなかった。

 

 白金の換金記録、異世界側への持ち込み品、冷風箱の説明書、バレッタの扱い、リュシアからの相談、セルマ工房の試作品。

 

 そういうものが、澪の机と手帳と頭の中に、少しずつ居座っている。

 

 そして、もう一つ。

 

 澪はこの夏、原付免許を取っていた。

 

 最初は、現代側の買い出し用だった。ホームセンターやスーパーへ行くたびに、荷物を抱えて歩くのがつらくなってきたからだ。冷風箱だの、保冷用品だの、金具だの、石だの、法人用の書類だの、大学生の夏休みとは思えないものばかり買いに行くようになった結果、徒歩と電車では限界があった。

 

 中古の白い原付を見つけ、悩みに悩んで買った。

 

 そこまでは、まだ大学生らしいと言えなくもない。

 

 問題は、その原付を収納へ入れたことである。

 

 駐輪場で周囲に人がいないことを何度も確認し、澪は原付のハンドルに触れた。収納を意識すると、白い車体がすっと消えた。

 

 あまりにも自然に消えた。

 

 澪はしばらく、何もなくなった駐輪スペースを見ていた。

 

「普通、原付って収納するものじゃないですよね」

 

 自分で言って、自分で少し遠い目になった。

 

 収納は返事をしない。

 

 ただ、原付はそこにある、という感覚だけが澪の中に残っていた。燃料の残りも分かる。ヘルメットも一緒に入れてある。買い物袋を引っかけるフックの位置まで、妙に把握できる。

 

 便利だった。

 

 便利すぎた。

 

 そして、便利なものはたいてい、仕事を増やす。

 

 澪は今日、その原付を異世界側で初めて本格的に使うつもりでいた。

 

 リュシアから、大豆と芋の農場を見に行きたいと言われていたからだ。

 

 徒歩で行けない距離ではない。

 

 馬車を出せない距離でもない。

 

 けれど、夏の日差しと今後の移動量を考えると、澪の中で白い原付がじわじわと存在感を増していた。

 

「……異世界で原付」

 

 口に出すと、だいぶひどい。

 

 だが、押し入れの向こうが異世界で、白金が現代で法人名義のお金になり、冷風箱が泡石で作られ、バレッタに加護がつく世界である。

 

 いまさら原付くらいで遠慮する段階は、たぶん過ぎていた。

 

 澪は収納の中の原付を確認し、ヘルメットを二つ入れたことをもう一度確かめた。

 

 その時点で、すでに嫌な予感はあった。

 

 リュシアが、後ろに乗る気満々になる予感である。

 

 

 

 

 

 押し入れを抜けた先の空気は、現代側より乾いていた。

 

 日差しは強いが、街路を抜ける風に土と石の匂いが混ざっている。夏の市場はすでに人が多く、日よけ布の下では商人たちが汗を拭きながら品物を並べていた。

 

 リュシアは、いつものように涼しい顔で待っていた。

 

 ただし、顔が涼しいだけで、額にはちゃんと汗がにじんでいる。商人は暑さに強いのではなく、暑さで顔を崩さない訓練をしているだけだと澪は思っている。

 

「遅くはないね」

 

「ちゃんと来ました」

 

「今日は農場だ。大豆と芋の様子を見て、今年どれくらい使えるか確認するよ」

 

「はい」

 

 澪はうなずきながら、周囲を見た。

 

 市場から農場までは、それなりに距離がある。歩けば汗だくになる。馬車を頼むほどではないが、何度も往復したい距離ではない。

 

 リュシアは歩き出そうとしていた。

 

 澪は少し迷った。

 

 そして、収納へ手を入れるような感覚で、白い原付を取り出した。

 

 畑道へ向かう道の手前に、ぽん、と白い原付バイクが現れる。

 

 リュシアが足を止めた。

 

 周囲にいた通行人も、数人が足を止めた。

 

 澪はヘルメットを持ったまま、できるだけ普通の顔をした。

 

「……また、あんたの国の道具かい」

 

「移動用です」

 

「走るのかい」

 

「走ります」

 

「二人で?」

 

 リュシアの目が、原付の前から後ろへ動く。

 

 澪も後ろの席を見た。

 

 現代の感覚では、いろいろ気になる。免許を取ったばかりで、二人乗りという言葉は心臓に悪い。だが、ここは異世界で、道路交通法の標識も白線もない。

 

 もちろん、法律がないから何をしてもいい、という話ではない。

 

 問題は、安全と運転技術と道の状態である。

 

「ゆっくりなら、たぶん」

 

「なら、落とさないでおくれよ」

 

「そこは、リュシアさんもしっかり掴まってください」

 

「商売道具に乗せてもらうんだ。そこは心得てるよ」

 

「商売道具扱いなんですね」

 

「速く移動できるなら、立派な商売道具だ」

 

 リュシアは、怖がるより先に損得を見た。

 

 それがリュシアらしい。

 

 澪はヘルメットを渡し、自分もかぶる。リュシアはヘルメットを少し不思議そうに叩いてから頭にかぶった。

 

「頭を守るものかい」

 

「はい。転んだ時に大事です」

 

「転ぶ前提なのは嫌だね」

 

「転ばないためにゆっくり行きます」

 

 リュシアが後ろに乗る。

 

 澪はスタンドを払い、深呼吸してエンジンをかけた。

 

 ぶる、と小さな振動が手元から伝わる。

 

 異世界の道に、現代の原付の音が響いた。

 

 近くの鳥が驚いて飛ぶ。

 

 通りすがりの男が口を開ける。

 

 リュシアが後ろから言った。

 

「これは目立つね」

 

「目立つので、町中では使いにくいです」

 

「農場までなら十分だ」

 

 澪はゆっくり発進した。

 

 石畳を抜け、土道に入る。途端に、原付が小さく跳ねた。

 

「ひゃっ」

 

「今の声、澪かい」

 

「澪です」

 

「運転手が驚くんじゃないよ」

 

「道が驚かせてくるんです」

 

 土道は、現代の舗装道路とは違う。固いところ、柔らかいところ、小石の浮いたところ、車輪の跡でくぼんだところが混ざっている。

 

 澪は速度を落とし、ハンドルを慎重に握った。

 

 リュシアは途中で揺れに文句を言いながらも、降りようとはしない。

 

「速いけど、尻にくるね」

 

「そこはでこぼこ道のせいなので」

 

「道のせいにしたね」

 

「舗装道路は偉大です」

 

 リュシアが後ろで笑った。

 

 澪は笑う余裕があまりなかった。

 

 現代ならただの原付移動でも、異世界の畑道では小さな冒険だった。

 

 ただ、それでも速い。

 

 徒歩なら汗だくになる距離を、風を切って進める。

 

 エンジン音と土の匂いと夏の光が、妙にちぐはぐで、妙にしっくり来てしまう。

 

 澪は、それが少し怖かった。

 

 便利なものは、すぐ日常になる。

 

 そして日常になった便利は、たいてい仕事を増やす。

 

 

 

 

 

 農場の手前で原付を止めると、リュシアはまず自分の足で地面を確かめ、それからヘルメットを外した。

 

「なるほど。尻以外は悪くない」

 

「評価基準がそこなんですね」

 

「商人は実感を大事にするんだよ」

 

 澪は原付に手を触れ、収納へ戻した。

 

 白い車体がすっと消える。

 

 農場主と作業員が、そろって固まった。

 

 作業員の一人は、持っていた鍬を少し落としかけている。

 

 リュシアは、何事もなかったように歩き出した。

 

「気にしなくていいよ。澪の道具は、だいたい変だから」

 

「だいたい変って言い方」

 

「全部変と言わなかっただけ優しいだろう」

 

「優しさの方向が雑です」

 

 澪が小声で抗議している間に、農場主は慌てて姿勢を正した。

 

 畑は一見すると穏やかだった。

 

 芋の葉が濃い緑色に広がり、大豆の苗が畝に沿って並んでいる。湿った土の匂いが鼻に届き、遠くで水路の水がかすかに音を立てていた。風が吹くと、葉の表が光り、裏が少し白く見えた。

 

 リュシアは、その景色を商人の目で見ていた。

 

 収穫量。

 

 価格。

 

 加工に回せる量。

 

 保存できる分。

 

 屋台で出すならどれくらい必要か。

 

 そういう数字が、表情の奥で動いているのが分かる。

 

 澪も、大豆から味噌や醤油に行けるか、豆料理として屋台で使えるか、芋を冷製スープや軽食にできるか、ぼんやり考えていた。

 

 けれど、農場主の顔は明るくなかった。

 

 リュシアがすぐに気づいた。

 

「何かあるね」

 

 農場主は、言いかけて一度口を閉じた。

 

 それから、畑の端へ視線を向ける。

 

「見ていただきたい場所があります」

 

 その声だけで、順調ではないことが分かった。

 

 

 

 

 

 畑の端は、遠目には少し土が乱れているだけに見えた。

 

 近づくと、違った。

 

 芋の周囲が掘り返され、若い芋の一部にかじられた跡がある。大豆の苗も何本か倒れ、根元の土が荒れていた。草の間には、小さな黒い粒が落ちている。

 

 澪はしゃがみ込んだ。

 

 土が膝の近くで乾いて崩れる。

 

 指先で土を軽く払うと、かじられた跡がはっきり見えた。

 

 鑑定を意識する。

 

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芋畑の食害跡

 分類:農作物被害

 対象:芋畑外縁

 状態:若い芋の一部に食害あり

 痕跡:歯形、掘り返し跡、糞

 推定:夜間に複数体が侵入

 原因候補:ラージラット

 推奨:周辺の通り道を確認

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 表示を見た瞬間、ただの土の乱れだったものが、少し違って見えた。

 

 歯形。

 

 糞。

 

 草の倒れ方。

 

 掘り返された土の向き。

 

 澪はゆっくり視線を動かした。

 

「分かるのかい」

 

 リュシアが横から聞く。

 

 澪は土を見たまま答えた。

 

「かじられた跡と、糞と……たぶん、通り道があります」

 

 農場主が息を呑む。

 

「そこまで分かるんですか」

 

「見えるというか、見えてしまうというか」

 

 説明しようとすると難しい。

 

 澪には、鑑定表示が見えている。

 

 だが、農場主には見えない。

 

 リュシアにも見えない。

 

 見えないものを前提に話すのは、いつも少し困る。

 

 農場主は、畑の端を見ながら説明した。

 

 最初は芋畑の端だけだったという。

 

 それが数日で、大豆の苗にも被害が出た。

 

 貯蔵小屋の裏にも糞が落ちていた。

 

 毎年多少はラージラットが出るが、今年は増え方が早い。

 

「ラージラットは、普通のネズミより大きいのです。夜に動いて、畑の端や草むらを通ります。追い払っても、また別の穴から来ることがありまして」

 

 農場主の声には疲れが混じっていた。

 

 作物を育てる人の疲れだ。

 

 リュシアは顔をしかめる。

 

「芋だけならまだしも、大豆までやられるのは困るね」

 

 澪は畑を見た。

 

 これは戦う話ではない。

 

 剣も魔法もいらない。

 

 必要なのは、農作物を守ること。

 

 澪は立ち上がった。

 

「一度、あたしの国で対策品を買ってきます」

 

 リュシアが即答する。

 

「急げるかい」

 

「急ぎます」

 

 農場主は、あたしの国、という言い方に一瞬だけ目を瞬かせた。

 

 けれど、リュシアが何も言わないので、何も聞かなかった。

 

 聞かない判断も、現地で生きる知恵なのだろう。

 

 

 

 

 

 押し入れを抜けて自室に戻ると、現代側の空気はむっとしていた。

 

 澪は財布と鍵を手に取り、スマホでホームセンターの営業時間を確認した。画面の白い光が、現代に戻ってきたことを妙に強く感じさせる。

 

 収納から原付を出す。

 

 結局、現代側でも原付で移動する。

 

 玄関を出た瞬間、七月の熱気が顔に張りついた。アスファルトの照り返しが強い。異世界の土道とは違う、現代の夏の熱だった。

 

 ヘルメットをかぶり、エンジンをかける。

 

「大学生の夏休みに、原付で殺鼠剤を買いに行く予定はなかったんですけど」

 

 誰に聞かせるでもなく、澪はつぶやいた。

 

 ホームセンターの害獣対策コーナーには、現代らしい整然とした棚が並んでいた。パッケージにはネズミ対策用の文字やイラストがあり、近くには捕獲器や忌避用品も置かれている。

 

 相手は普通のネズミではない。

 

 ラージラット。

 

 モンスターの一種。

 

 効く保証はない。

 

 けれど、芋や豆を食べるなら、食いつく可能性はある。澪は説明書きを読み、少し悩み、いくつかを選んだ。

 

 レジで会計を済ませ、袋を原付の前カゴに入れる。

 

 信号待ちの間、澪は前カゴの袋が傾いていないかだけ確認した。

 

 青信号になる。

 

 澪は袋が跳ねないように速度を落とし、ホームセンターの駐車場を出た。

 

 現代の舗装道路は、やはり偉大だった。

 

 

 

 

 

 農場へ戻ると、リュシアと農場主は畑の端で待っていた。

 

 澪は収納から殺鼠剤の袋を出す。

 

 農場主は見慣れない包装を見て、少し身を乗り出した。だが、リュシアが目で止める。余計な質問は後だという顔だった。

 

「ラージラットに食べさせる対策品です。置く場所を間違えると効きにくいので、まず通り道を見ます」

 

 澪は畑の端へ戻った。

 

 もう一度、鑑定を意識する。

 

 草の倒れた筋、糞のそば、土の削れた場所。

 

 そのいくつかが、淡く光った。

 

 最初は日差しの反射かと思った。

 

 違う。

 

 光は、澪の視界の中でだけ、そこにある。

 

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ラージラットの通り道

 分類:害獣経路

 状態:使用中

 痕跡:糞、足跡、草の倒れ

 方向:芋畑外縁から貯蔵小屋側

 推奨:殺鼠剤設置

 設置適性:高

 表示:設置推奨地点を強調中

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「……光ってます」

 

 澪がつぶやくと、リュシアが聞き返した。

 

「何が?」

 

「置くところです」

 

 澪は、光っている地点へ近づいた。

 

 まず畑の外縁。

 

 次に、草が倒れている筋の横。

 

 さらに、貯蔵小屋へ向かう陰。

 

 置くたびに、鑑定表示の光が少し弱くなる。必要な場所に置けた、ということなのだろう。

 

 数分後。

 

 風が一度、畑を抜けた。

 

 芋の葉が揺れる。

 

 その時、澪の頭の奥で、澄んだ音がした。

 

 レベルアップします。

 

 澪の手が止まった。

 

「……今、何か言いました?」

 

 リュシアは首をかしげる。

 

「私は何も言ってないよ」

 

 農場主も作業員も首を振った。

 

 澪は、畑の中で固まった。

 

 今のは聞き間違いではない。

 

 聞こえた。

 

 かなりはっきり聞こえた。

 

 澪は恐る恐る、自分を鑑定した。

 

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篠原澪

 分類:人間/異世界渡航者

 現在ジョブ:商人

 レベル:3 → 4

 状態:農場作業中/困惑

 経験:ラージラット対策

 ステータス上昇:判断微増

 ステータス上昇:器用微増

 技能反応:鑑定、収納、並行思考

 備考:害獣型モンスター対策経験を取得

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 表示を読んで、澪はさらに固まった。

 

「レベルが上がってます」

 

 リュシアが聞く。

 

「何のレベルだい」

 

「私が聞きたいです」

 

 農場の端で、妙な沈黙が落ちた。

 

 だが、畑の被害は現実だった。

 

 光る場所も、まだ残っている。

 

 リュシアは表示を見られない。けれど、澪の顔と畑の様子は見ている。

 

「驚くのは後だ。まだ置く場所があるんだろう?」

 

 澪は、ゆっくりうなずいた。

 

「あります」

 

「なら続けな。今、あんたの目が一番役に立つ」

 

 リュシアの声は、現実的だった。

 

 そういうところが、いつも助かる。

 

 そして、逃げ道をなくす。

 

 

 

 

 

 澪は農場を歩いた。

 

 最初は光る地点だけを頼りにしていた。

 

 けれど、少しずつ、光る前から分かるようになってくる。

 

 草の倒れ方。

 

 土の削れ方。

 

 糞の位置。

 

 畑の端から貯蔵小屋へ向かう細い線。

 

 ラージラットの通り道が、畑の上に薄く重なって見える。

 

 澪が置く。

 

 数分後。

 

 また、頭の中で音がした。

 

 レベルアップします。

 

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篠原澪

 分類:人間/異世界渡航者

 現在ジョブ:商人

 レベル:4 → 5

 状態:農場作業中/集中

 経験:害獣経路把握

 ステータス上昇:判断上昇

 ステータス上昇:集中微増

 備考:通り道の判断精度が上昇

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「またかい」

 

「またです」

 

 リュシアは呆れ半分、真剣半分で澪を見る。

 

 澪は、笑う余裕がなかった。

 

 次の光が見えている。

 

 置く。

 

 待つ。

 

 また音がする。

 

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篠原澪

 分類:人間/異世界渡航者

 現在ジョブ:商人

 レベル:5 → 6

 経験:設置地点修正

 ステータス上昇:器用上昇

 備考:設置位置の適性判断が向上

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 畑の外縁。

 

 小屋の裏。

 

 石垣の陰。

 

 畝の間。

 

 草が寝ている場所。

 

 澪は、殺鼠剤を置くたびに、何かが少しずつ体の中で整っていく感覚を覚えた。

 

 喜ぶより先に、怖い。

 

 何かの線路に乗せられている感じがする。

 

 けれど、作業自体は止められない。

 

 そこに被害がある。

 

 置くべき場所が見える。

 

 リュシアも農場主も、黙って見ている。

 

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篠原澪

 分類:人間/異世界渡航者

 現在ジョブ:商人

 レベル:6 → 7

 経験:貯蔵小屋周辺の経路確認

 ステータス上昇:判断上昇

 備考:貯蔵物周辺の危険箇所を把握

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 貯蔵小屋の裏は、空気が少し湿っていた。

 

 壁際に積まれた木箱の下に、土のこぼれた跡がある。

 

 澪はそこへ近づき、光った地点を確認する。

 

 置く。

 

 戻る。

 

 また音。

 

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篠原澪

 分類:人間/異世界渡航者

 現在ジョブ:商人

 レベル:7 → 8

 経験:複数経路の同時把握

 ステータス上昇:精神微増

 技能反応:並行思考:1

 備考:複数の通り道を同時に意識可能

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 リュシアも農場主も、だんだん黙っていった。

 

 作業員たちも、澪が指した場所に近づいては、確かにそこに糞や土の乱れがあることを確認する。

 

 偶然ではない。

 

 その空気が、畑の中に広がっていく。

 

 澪だけが、光る地点を追いながら歩いていた。

 

「……レベルアップが止まらないんですけど」

 

 澪がつぶやくと、リュシアが即答した。

 

「止まらないなら、今日のうちに置けるだけ置きな」

 

「合理的ですけど、言い方が商人です」

 

「商人だよ」

 

 リュシアは当然の顔をしていた。

 

 澪は少しだけ笑った。

 

 笑って、また次の光へ向かった。

 

 

 

 

 

 最後に、貯蔵小屋の裏手で強く光る地点を見つけた。

 

 そこだけは、他より光がはっきりしていた。

 

 草の倒れ方も、土の削れ方も、糞の量も違う。

 

 ラージラットが貯蔵小屋へ向かう主要経路。

 

 澪はそう判断した。

 

 慎重に殺鼠剤を置く。

 

 それから、少し離れて待った。

 

 風が畑を通る。

 

 芋の葉が揺れる。

 

 大豆の葉も揺れる。

 

 リュシアが腕を組み、農場主が固唾を呑む。

 

 その静けさの中で、澪の頭の奥に、これまでよりはっきりした音が響いた。

 

 レベルアップします。

 

 レベルが10に到達しました。

 

 澪は動きを止めた。

 

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篠原澪

 分類:人間/異世界渡航者

 現在ジョブ:商人

 レベル:9 → 10

 状態:農場作業中/困惑

 疲労度:78%

 体力:64

 筋力:42

 器用:88

 知力:70

 判断:96

 精神:66

 集中:83

 既得スキル:鑑定:7

 既得スキル:収納:8

 既得スキル:錬金:4

 既得スキル:薬学:1

 既得スキル:安息:1

 既得スキル:手仕事:6

 既得スキル:彫金:3

 既得スキル:商才:5

 既得スキル:並行思考:1

 開放:ジョブツリー表示

 開放:スキルツリー表示

 開放:スキルポイント表示

 注意:疲労度80%以上で作業精度低下

 神様メッセージ:条件を満たしました。成長先を確認できます

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 澪は読んだ。

 

 一度読んだ。

 

 二度読んだ。

 

 三度目で、ようやく口が動いた。

 

「……ゲーム画面?」

 

 リュシアが聞く。

 

「何が出たんだい」

 

「レベル、ジョブ、スキル、ポイントです」

 

「分かるようで、まったく分からないね」

 

「私もです」

 

 澪は額に手を当てた。

 

 疲労度七十八パーセント。

 

 そんな数値まで出ている。

 

 しかも、体力や筋力や器用さまで数字になっている。

 

 これは、いつもの鑑定とは違う。

 

 完全に、ゲームの画面だった。

 

 そして、画面はまだ終わらなかった。

 

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スキルポイント

 現在ポイント:24

 取得方式:レベル到達報酬

 蓄積:スキルツリー未開放中の取得分を一括表示

 内訳:レベル2到達:1

 内訳:レベル3到達:1

 内訳:レベル4到達:1

 内訳:レベル5到達:3

 内訳:レベル6到達:2

 内訳:レベル7到達:2

 内訳:レベル8到達:2

 内訳:レベル9到達:2

 内訳:レベル10到達:5

 内訳:初回スキルツリー解放ボーナス:5

 注意:ポイントだけでは条件未達の技能は取得不可

 注意:既得スキルは実践でも成長します

 神様メッセージ:初回解放です。少し色をつけました

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「少し色をつけました、じゃないんですよ」

 

 澪は畑の端で固まった。

 

 三ポイントなら地味だった。

 

 十ポイントなら、節目だからと納得できたかもしれない。

 

 二十四ポイントは違う。

 

 これは明らかに、盛っている。

 

「神様、これ、初回特典ですよね」

 

 リュシアは分からない顔をする。

 

「何の初回だい」

 

「こちらの神様の趣味です」

 

「神様の趣味で畑に立たされてるのかい」

 

「私もそう思いたくはないです」

 

 澪は空を見上げた。

 

 青い空は、何も返さない。

 

 だが、どこかで神様が異世界小説を読みながら楽しんでいる気がした。

 

 かなり強くした。

 

 

 

 

 

 次に出た表示を見て、澪はさらに嫌な予感を覚えた。

 

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ジョブツリー表示

 現在ジョブ:商人

 選択可能:行商人

 選択可能:鑑定士

 選択可能:道具使い

 選択可能:細工師

 選択可能:工匠見習い

 選択可能:錬金術師見習い

 選択可能:調合師見習い

 選択可能:空間術士見習い

 選択可能:支援術士

 選択可能:探索者見習い

 未開放系統:あり

 注意:ジョブ変更はこの場ではできません

 変更場所:神殿/司祭の認証が必要

 神様メッセージ:職の枝が開きました。選択は慎重に

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 澪は少しだけほっとした。

 

 畑の真ん中で、うっかり職業が変わるのは怖い。

 

 かなり怖い。

 

 けれど、次の行を見て、ほっとした分だけ嫌な予感が増えた。

 

「司祭様のところ……」

 

 リュシアが澪の顔を見る。

 

「また面倒な顔をしてるね」

 

「たぶん、司祭様が一番面倒な目に遭います」

 

「それは、先に謝っておいた方がよさそうだね」

 

「はい」

 

 司祭様の顔が脳裏に浮かんだ。

 

 穏やかで、真面目で、神様関係の話をきちんと受け止めてしまう人。

 

 その人のところへ、ジョブ変更だのスキルツリーだの世界改変だのを持って行く。

 

 澪は、まだ行ってもいないのに胃が重くなった。

 

 さらに表示が続く。

 

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スキルツリー表示

 現在ジョブ:商人

 レベル:10

 スキルポイント:24

 表示形式:ジョブ系統別

 商人系スキル +

 錬金術師系スキル +

 職人系スキル +

 特殊スキル +

 注意:系統名の+で詳細を開けます

 注意:スキル名の+で強化または取得できます

 注意:表示される取得可能スキルは、現在取得条件を満たしているものだけです

 注意:未達スキルと未開放スキルの詳細は表示されません

 注意:強化できるのは既得スキルのみです

 注意:ジョブ変更は神殿/司祭の認証が必要です

 注意:スキルアップはその場で可能です

 神様メッセージ:枝は職ごとに分かれます。混ぜると迷子になります

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「折りたたみ式……」

 

 澪は声に出した。

 

 表示が親切すぎる。

 

 親切すぎて怖い。

 

 商人系スキル、の横にある「+」を意識する。

 

 すると、そこだけが開いた。

 

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商人系スキル

 商人系既得スキル:商才:5 +

 商人系既得スキル:鑑定:7 +

 商人系既得スキル:収納:8 +

 取得可能

 値切り 必要SP:3 +

 高値売却 必要SP:3 +

 会計術 必要SP:2 +

 損切り 必要SP:4 +

 未開放系統:あり

 注意:強化できるのは既得スキルのみです

 注意:表示されている取得可能スキルは、現在取得条件を満たしているものだけです

 注意:未達スキルと未開放スキルの詳細は表示されません

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 澪は「損切り」で止まった。

 

 商売スキルとしては分かる。

 

 分かるが、自分に一番必要な気がする。

 

「……私に一番必要なの、これでは?」

 

 リュシアが不思議そうにする。

 

「何が見えてるんだい」

 

「やめ時を教えてくれそうなものです」

 

「それは早く取りな」

 

「リュシアさんまで」

 

「取れるなら取るべきものは取る。それが商人だよ」

 

「言い方が強いです」

 

「弱く言っても取るだろう?」

 

 澪は答えられなかった。

 

 次に、錬金術師系スキルを意識する。

 

 表示が切り替わる。

 

----------------------------------

錬金術師系スキル

 錬金術師系既得スキル:錬金:4 +

 錬金術師系既得スキル:薬学:1 +

 取得可能

 アイテム調合 必要SP:3 +

 等価交換 必要SP:4 +

 触媒活性化 必要SP:4 +

 素材目利き 必要SP:3 +

 ポーションマスター 必要SP:4 +

 未開放系統:あり

 注意:強化できるのは既得スキルのみです

 注意:表示されている取得可能スキルは、現在取得条件を満たしているものだけです

 注意:未達スキルと未開放スキルの詳細は表示されません

----------------------------------

 

 鑑定と収納は、ここにはない。

 

 商人系に入っている。

 

 澪は少しだけ安心した。

 

 混ざっていない。

 

 神様は、そこは分けてくれたらしい。

 

「そこは見えなくて助かりました」

 

 戦闘系の変な名前が出ていないことにも、かなり安心した。

 

 職人系も開く。

 

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職人系スキル

 職人系既得スキル:手仕事:6 +

 職人系既得スキル:彫金:3 +

 取得可能

 簡易修理 必要SP:3 +

 打ち直し 必要SP:4 +

 装備調整 必要SP:3 +

 廃品回収 必要SP:3 +

 未開放系統:あり

 注意:強化できるのは既得スキルのみです

 注意:表示されている取得可能スキルは、現在取得条件を満たしているものだけです

 注意:未達スキルと未開放スキルの詳細は表示されません

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 澪は、星五つのバレッタを思い出した。

 

 銘入れ、という文字は出ていない。

 

 それが少しだけ嬉しかった。

 

 あれは、まだ狙ってできる技能ではない。

 

 表示されないことに、逆に安心する。

 

「まだ偶然扱いですね」

 

 最後に、特殊スキルを開く。

 

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特殊スキル

 特殊系既得スキル:安息:1 +

 特殊系既得スキル:並行思考:1 +

 未開放系統:あり

 注意:未開放系統の詳細は表示されません

 注意:特殊スキルは通常ジョブでは取得できません

 神様メッセージ:今見える範囲だけで十分です

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 澪は、未開放系統の詳細が出ないことに心底ほっとした。

 

「そこは見えなくていいです」

 

 見えていたら、きっと怖いものが並んでいた気がする。

 

 かなり本気で、見えなくてよかった。

 

 

 

 

 

 表示はまだ終わらなかった。

 

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成長システム

 スキルアップ:その場で可能

 スキルポイント消費:本人の意思に応じて自動配分

 選択補助:鑑定、収納、並行思考により表示可能

 ジョブ変更:この場では不可

 ジョブ変更場所:神殿/司祭の認証が必要

 注意:通常の者は明確な選択画面を持たず、望む方向へ自動的に成長します

 注意:澪は選択肢を確認できます

 神様メッセージ:技はその場で磨けます。職を変える時は司祭のもとへ

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「通常の者は明確な選択画面を持たず……」

 

 澪はそこで止まった。

 

 通常の者。

 

 その言葉が引っかかった。

 

 これは、澪専用ではない。

 

 そう考えた瞬間、次の表示が開いた。

 

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世界改変:第一段階

 分類:成長補助/職業系統表示

 対象:異世界全域

 起点:篠原澪

 状態:試験反映中

 影響:条件を満たした者に、職業系統と技能成長が可視化されます

 注意:表示形式は対象者の理解に合わせて変化します

 神様メッセージ:物語は、ひとりでは進みません

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 澪は固まった。

 

「……対象、異世界全域?」

 

 一度読む。

 

 二度読む。

 

 理解したくない。

 

「神様」

 

 澪は畑の真ん中で空を見上げた。

 

「それ、私だけじゃないんですか」

 

 返事はない。

 

 表示の最後の一文だけが、やけに落ち着いている。

 

 物語は、ひとりでは進みません。

 

 澪は小さく言った。

 

「巻き込む気ですね?」

 

 リュシアが聞く。

 

「今度は何だい」

 

 澪はゆっくり振り向いた。

 

「この世界の人たちにも、そのうち出るかもしれません」

 

「何が?」

 

「ジョブとか、スキルとか、ステータスとか」

 

 リュシアが少し黙った。

 

 畑の風が二人の間を通る。

 

 それから、リュシアは言った。

 

「……まず司祭様に相談だね」

 

 澪は深くうなずいた。

 

「はい。司祭様に、ものすごく怒られそうです」

 

「怒られるだけで済めばいいね」

 

「やめてください。怖いこと言わないでください」

 

 リュシアは笑わなかった。

 

 それが余計に怖かった。

 

 

 

 

 

 農場主は、澪が何を見ているのか分からない。

 

 けれど、澪が殺鼠剤を置いた場所は、どれも農場主が「そこは確かに荒らされる」と思う場所だった。

 

 作業員たちも、置かれた場所を見て顔を見合わせている。

 

 偶然ではない。

 

 リュシアも、それを理解していた。

 

 ただし、澪に毎回農場を歩かせるわけにはいかない。

 

 リュシアは畑の端に置かれた殺鼠剤を見た。

 

 それから、澪の顔を見る。

 

「澪、これは仕入れられるかい」

 

「殺鼠剤ですか」

 

「ああ。あんたが毎回ここへ来るんじゃなくて、こちらで買って、こちらで置けるようにする」

 

 澪は少しほっとした。

 

 自分が毎回歩かなくていい。

 

 それだけで、肩の力が少し抜ける。

 

「それなら、あたしの国で買ってきます。置く場所は最初に一緒に確認しますけど、次からはリュシアさんたちで見てもらえるようにします」

 

 リュシアはうなずいた。

 

「やり方を覚えるよ。商人が扱う以上、効果のある品かどうかは自分の目で見ないとね」

 

 澪はリュシアを見た。

 

 少しだけ、嫌な予感がする。

 

「……リュシアさんも、レベルアップするかもしれません」

 

「何だい、それは」

 

「たぶん、神様がそういう方向に世界を変え始めています」

 

 リュシアは一瞬だけ黙った。

 

 それから畑を見る。

 

「なら、なおさら覚えないといけないね」

 

 その言い方は、怖がっているというより、商機を見ている時の声に近かった。

 

 澪は、殺鼠剤の袋より重い仕事が、自分からリュシアへ少し移った音を聞いた気がした。

 

 そして、その音はたぶん、仕事が消えた音ではない。

 

 仕事が増える前の、分岐音だった。

 

 

 

 

 

 農場の端で、澪は手帳を開いた。

 

 最初は、大豆と芋の生育確認だけの予定だった。

 

 そのはずだった。

 

 けれど、ページの余白に書き足した文字を見て、澪は目を伏せた。

 

 ラージラット対策の再確認、殺鼠剤の追加購入、リュシアへの卸値相談、設置地点の確認手順、数日後の食害確認。

 

 そこまでは、まだ農場の話だと言い張れる。

 

 問題は、その下だった。

 

 司祭様への相談。

 

 ジョブツリー確認。

 

 スキルツリー確認。

 

 スキルポイント保留。

 

 世界改変の相談。

 

 澪は、手帳を閉じた。

 

 閉じても予定は消えなかった。

 

 リュシアが横で言う。

 

「今日はよく働いたね」

 

「農場視察だったはずなんですけど」

 

「視察して、問題を見つけて、対策したんだ。立派な仕事だよ」

 

「そう言われると逃げ場がないです」

 

 澪は空を見る。

 

 神様は返事をしない。

 

 けれど、どこかで異世界小説を読みながら、次の展開を待っている気がした。

 

 レベルは十になった。

 

 ジョブツリーもスキルツリーも開いた。

 

 けれど澪の予定表から、休みはさらに遠ざかった。




切り口って神様が異世界物小説にハマって自分の世界をRPG風にしちゃうものです。
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