蒼翼のフリューゲル“Two beyond dimensions.” 作:フルス・シュタイン
空は、すでに地獄だった。
無数の光が交差する。爆発。機体の残骸が落ちていく。
その中心に――フリューゲル。
「……数が減らない」
ユーヤの声は低い。
ライフルの連射。正確無比。だが――
「硬い……!」
命中しても貫けない。大型個体。装甲が明らかに強化されている。
さらに――周囲を護るように、小型群体が展開していた。
「ガードしてる…のか…?」
ありえない。これまでのギアノイドにはなかった動き。
『戦術行動……?』
ナツキの声がわずかに揺れる。
ユーヤは即座に判断する。
「違う」
加速。
「ただの最適化だ」
感情も意志もない。
だが効率だけで動いている。
感情や思考などあるはずがない。
だからこそ厄介だった。
回避。旋回。接近。だがその瞬間――
「――っ!」
側面からの一撃。衝撃。フリューゲルが弾かれる。
『ユーヤ!?』
「問題ない……!」
姿勢制御。即座に立て直す。だが――
包囲される。四方からの攻撃。
「……くそ」
回避しきれない。
最大加速。スラスター全開。
最小限の被弾で切り抜ける。
その時――
『ユーヤ、聞こえる!?』
『新装備、間に合ったわ!』
「……!」
『空中投下する!座標送る!』
表示されるポイント。ユーヤは即座に加速する。
「了解!落下ポイントに向かう!」
敵の包囲を突っ切る。光の翼が軌跡を描く。
そして――落下してくるコンテナ。
「――待ってたぞ」
空中でキャッチ。瞬時に展開。
現れるのは――専用の折り畳み式長距離狙撃ランチャー、通称イフリート。
フリューゲルの出力を想定した専用の高火力武装。
「……よし…いける!」
構える。一瞬の静止。
そして――
「――ッ!」
発射。閃光。
大型個体の装甲を――貫通。
『抜いた!?』
ナツキの声。ユーヤはすでに次の動きに入っている。
連射。弱点を正確に撃ち抜く。護衛群体が崩れる。
「今だ!」
加速。懐へ。大型個体が反応する。だが遅い。
「終わりだ」
右手を伸ばす。接触。インパクトショット。全出力。
叩き込む。
閃光。爆散。巨大な影が崩れ落ちる。
残存個体が一斉に動きを止める。
そして――撤退。空に静寂が戻る。
戦闘終了後。
ユーヤは息を吐く。
「……終わったか」
だがその声は重い。明確に感じていた。
「……強くなってる」
敵は最適化により強化されている。確実に。
管制室。
ナツキがモニターを見つめる。
「被害は?」
「量産機、数機損失……損傷多数」
決して軽くはない。だが――
「フリューゲルがいなければ……」
誰も続きを言わない。
言えばこの戦いが、いかに人類にとって過酷なものであるか再認識してしまう。
恐怖を押し殺すため、誰も続きは言わなかった。