蒼翼のフリューゲル“Two beyond dimensions.”   作:フルス・シュタイン

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3章⑱共闘の果て

静かな宇宙。

戦場から離れたこの場所だけが。

異様なほど静かだった。

その沈黙の中。

最初に口を開いたのはアダムだった。

「……さて」

淡々と、

感情の薄い声。

「残る問題は一つ」

一拍。

「サタンのみだ」

その名が空間を重くする。

黒きギアノイドの王。

憎悪の化身。

人類殲滅を掲げる存在。

ユーヤは静かに目を閉じ、

そして開く。

「……俺が倒す」

迷いはなかった。

その言葉には。

覚悟しかない。

「ギアノイドの憎しみも」

「怒りも」

拳を握る。

「――全部、俺が断ち切る」

静寂。

六体の上位個体たちは何も言わない。

否定もしない。

止めもしない。

ただ、

それが可能な存在は彼しかいないという確信があった。

 

     

「サタン本体は?」

ユーヤが問う。

イブがすぐに応答した。

『…不明です』

その声はいつもより僅かに重い。

『現在も量子ネットワークを用いて探索を継続していますが』

一瞬の間。

『位置の特定には至っておりません』

アダムが続ける。

「情報網に一切引っかからない」

「極めて高度な隠蔽だ」

カインが補足する。

「遠方から機を窺っている可能性が高い」

ユーヤは小さく舌打ちした。

「……厄介だな」

『はい』

イブが応じる。

『サタンは既に単純な戦闘個体ではありません』

『知性と憎悪を同時に最適化している』

『極めて危険です』

「しかも頭まで回るってか……」

ユーヤは苦く笑った。

「笑えねえな」

 

エリスが隣で不安そうに彼を見る。

「……ユーヤ」

「ん?」

その声は小さかった。

「サタンを倒したら……どうなるの?」

空気が止まる。

誰も即答できない。

ユーヤの表情が曇った。

「……どうなるって……」

言葉に詰まる。

それが答えだった。

しばらくして。

ユーヤはゆっくり口を開く。

「サタンを排除できたとして、他のギアノイドは人類を滅ぼすつもりはない…けど…」

それは事実だ。

だが、

「でも……」

ユーヤは視線を落とす。

「次元粒子は必要だ」

静かな声。

「つまり……エネルギー問題は何一つ解決してない」

重い現実。

誰も反論できない。

次元粒子。

それは人類文明の根幹。

同時に、

ギアノイドにとっての“食糧”。

奪い合いは終わらない。

ユーヤは苦しそうに息を吐いた。

「最悪の場合……」

そして、

六体を見る。

「ここにいるお前たちとも」

一拍。

「また戦うことになる」

沈黙。

長い沈黙。

否定する者はいなかった。

アダムたちも理解している。

これは友情ではない。

奇跡でもない。

“取引”だ。

エリスを取り戻すための共闘。

サタン討伐という共通目的。

だが、

その先は未定。

未来はまだ決まっていない。

エリスが静かに俯く。

「……そんなの……嫌だよ」

小さな声。

「せっかく……」

震える。

「せっかく分かり合えたのに……」

ユーヤは何も言えない。

拳を握る。

アダムも沈黙していた。

敵を倒しても、

世界は救われない。

むしろ、

本当の問題はその後に残る。

では、どうする?

人類は、

ギアノイドは、

共存できるのか。

それとも、

再び殺し合うのか。

空気が重く沈む。

だが。

誰も目を逸らさなかった。

もう、

逃げられない問題だった。

 

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