蒼翼のフリューゲル“Two beyond dimensions.”   作:フルス・シュタイン

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3章㉒絶望

ユーヤは歯を食いしばり、脳波リンクを解放する。

マルチプルビット、八機全機展開。

六機を防御に。

残る二機を攻撃へ。

ブレードナイフを投擲せずにそのまま射出。

旋回し、サタンへ向かって飛翔する。

全方位からの同時制圧。

「遅い!」

サタンの声が、冷たく落ちる。

「無駄ダァァ!」

一閃。

二閃。

視界が、光で裂ける。

攻撃にまわっていたマルチプルビットとブレードナイフが瞬時に叩き落される。

次の瞬間――

サタンの急速接近。

咄嗟に残っていたマルチプルビットのバリアを展開。

多重構造のバリアを形成する。

だが、

バリアをねじ切るように、ビームを放出する爪を立てるサタン。

バリアを、貫通する。

爆発。

そして、

気付けば、

遠隔武装すべてが、撃墜されていた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「――っ!?」

理解が追いつかない。

その刹那。

サタンが、踏み込む。

巨大な爪の刃が、一直線に振り下ろされる。

ユーヤは咄嗟にビームソードを構え、受け止める。

衝突。

空間が軋む。

「ぐっ……!」

押される。

止まらない。

機体ごと、押し潰される。

「くそぉぉぉ……!」

腕が悲鳴を上げる。

骨が軋む。

意識が白く弾ける。

それでも、押し返せない。

圧倒的すぎる。

この差は、何だ。

なぜ――

こんなにも、届かない。

刃が、さらに食い込む。

限界が、近い。

その瞬間――

 

蒼い閃光が、戦場を切り裂いた。

数体のブルーギアノイドが、ためらいなくサタンへと突撃する。

自壊すら恐れぬその軌道は、まるで意志を持った弾丸だった。

「ちっ――」

サタンが舌打ちとともに腕を振るう。

その一撃で、ブラウフリューゲルTypeⅡの巨体が横へと弾き飛ばされた。

衝撃。

視界が回転する。

だが、その隙にブルーギアノイドたちは距離を詰める。

一瞬。

ほんの一瞬だけ、サタンの注意が分散した。

「愚か!」

低く吐き捨てる声。

次の瞬間、蒼は黒に呑まれた。

斬撃が走る。

爆散。

貫通。

圧壊。

突撃したブルーギアノイドは、文字通り“次々と”撃破されていく。抵抗など存在しないかのように、ただ消されていく。

だが――

その“無意味な突撃”は、確かに意味を持った。

わずかな隙。

それが、生まれた。

「……っ!」

ブラウフリューゲルtypeⅡが地面を滑りながら姿勢を立て直す。

各部スラスターが唸り、無理やりバランスを取り戻す。

戦闘再開。

 

だが――

「はあ……はあ……」

コックピットの中で、ユーヤの呼吸はすでに限界に近かった。

汗が視界を滲ませる。

血を流しすぎている。

いつ死んでもおかしくない。

(まだ…倒れるわけには…あと……何秒…戦える……?)

思考が、途切れ途切れになる。

(倒す手段は……あるのか……?)

答えは出ない。

出るはずもない。

その腕の中で――

「やめて……やめてよぉ……!」

エリスが泣き叫んでいた。

震える声。

しがみつく指先。

その温もりが、やけに現実的だった。

愛しい人が、今まさに命を散らそうとしている。

それを、止められない。

どうにもできない。

どうしようもない。

絶望が、静かに心を満たしていく。

 

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