蒼翼のフリューゲル“Two beyond dimensions.” 作:フルス・シュタイン
前回の戦闘から、一週間。
次元リアクター管理局は、休む暇もなく動き続けていた。
「グラム、出力安定しました!」
「イフリートのチャージ試験、最終段階に入ります!」
格納庫。
フリューゲルの周囲に、多数の装備が並ぶ。
折り畳まれた大型剣。背部にマウントされる長距離砲。
肘部に装着されたスローイングブレードナイフ。
腰にマウントされる二丁のビームピストル。
「……ようやく、か」
ユーヤは機体を見上げる。
初陣では足りなかったもの。それが今、揃おうとしていた。
「これで、戦える」
その言葉には、確信が込められていた。
管理局・通路。
足早に歩くユーヤ。
「次のシミュレーションは三十分後だ!」
「了解」
休む時間はない。
食事も簡単なもので済ませる日々。
ふと、足が止まる。
端末に表示されるメッセージ。
エリスからだった。
『今日、帰れる?』
短い一文。ユーヤは数秒見つめる。
そして。
『遅くなる』
それだけ返信し、端末を閉じた。
自宅。
エリスは画面を見つめる。
「……そっか」
小さく呟く。
テーブルの上には二人分の料理。少しだけ冷めている。
時計を見る。時間は、淡々と過ぎていく。
「……」
ゆっくりと椅子に座る。ひとりで食べ始める。
味は、いつも通り。でも――
「……おいしくない」
小さな声。
管理局・格納庫。
最終調整が進む。
「全武装接続確認!」
「粒子供給ライン、問題なし!」
フリューゲルは、完全な姿になろうとしていた。
背部の光の翼。各所にマウントされた武装。
それはもはや試作機ではない。――“完成形”に近い。
夜・自宅。
扉が開く。ユーヤが帰宅する。遅い時間だった。
「……ただいま」
返事はない。
リビングを見ると、エリスがソファで眠っていた。
テーブルには片付けられないままの食器。
「……」
ユーヤは少し立ち止まり、ゆっくりと近づく。
エリスの寝顔。静かで無防備で――どこか寂しそうだった。
「……悪い」
小さく呟く。だが、その言葉は届かない。
エリスの肩にそっとブランケットをかけ、一瞬手が止まる。
触れそうになるが――そのまま離れる。
翌朝。
エリスは目を覚ます。ブランケット。
「……ユーヤ?」
周囲を見渡す。もういない。
テーブルには空の皿と――短いメモ。
『行ってくる』
それだけ。エリスは見つめる。
「……ユーヤ…」
小さく呟く。だが、少しだけ顔が赤かった。
格納庫。
フリューゲルが完全武装で立つ。
白と青の機体。光の翼。
その姿は――まるで、戦うために生まれた存在。
ユーヤは見上げる。
「……フリューゲル…」
その瞳は、すでに戦場を見据えていた。
一方でエリスは、空を見上げる。
「……ちゃんと、帰ってきて」
願うように。静かに。