蒼翼のフリューゲル“Two beyond dimensions.” 作:フルス・シュタイン
ブラウフリューゲルtypeⅡに弾き飛ばされ、黒き巨体は、大きく弾け飛んでいた。
サタンは空中で姿勢を崩し落下、真っ白な空間で膝をつく。
その再制御にわずかな時間を要している。
ほんの数秒――だが、この戦場においては致命的とも言える“空白”。
その瞬間を、逃す者はいなかった。
『今しかありません』
イブのテレパシーが、鋭く味方全体へと響き渡る。
『ユーヤ。全ての希望を、あなたに託します』
一拍の静寂。
そして、問いかける。
『皆、よろしいですか?』
即座に、応答が重なった。
――異議なし。
アダム。
カイン。
アベル。
セト。
ヤハウェ。
五つの意思が、迷いなく一つに揃う。
次の瞬間。
カイン、アベル、セト、ヤハウェが一斉に手を掲げた。
その動作は、まるで儀式のように静かで、そして力強い。
呼応するように――
残存していたブルーギアノイドが動く。
一斉に、ブラウフリューゲルTypeⅡへと集結していく。
「……何だ……?」
ユーヤが戸惑いの声を漏らす。
蒼い機体群が、機体の周囲を旋回する。
そして――
触れた。
その瞬間。
境界が、消えた。
ブルーギアノイドたちは、まるで液体のように機体へと溶け込み、融合していく。
「これは……?」
外装が、変質する。
内部構造が、再構築される。
損傷した箇所が、修復されていく。
それだけではない。
装甲はより強靭に。
フレームはより柔軟に。
出力は、桁違いに跳ね上がる。
再生。
強化。
そして――新生。
ブラウフリューゲルTypeⅡは、その面影を確かに残しながらも、まったく異なる存在へと変貌していく。
蒼と蒼が混ざり合い、新たな輝きを放つ。
ブラウフリューゲルTypeⅡはギアノイド力を受け、
そして、
再誕した。
その姿を見て、ユーヤは小さく笑った。
「……ブラウフリューゲルtype G(ギアノイド)ってとこかな…」
その軽口に、すぐさま応じる声がある。
『―その認識で構わない』
アダムの声だった。
冷静で、しかしどこか肯定を含んだ響き。
「え……な、なにこれ……」
エリスが、呆然と呟く。
目の前で起きている変化に、理解が追いつかない。
だが――
その中心にいるユーヤは、違った。
すでに順応している。
いや、受け入れている。
『では、あとは頼みました』
イブの声が、静かに響く。
その言葉は、命令ではない。
託す、という意志そのものだった。
ユーヤは、前を見据える。
視線の先には、体勢を立て直しつつあるサタン。
深く、息を吸う。
「……任せろ」
短く、しかし力強く応えた。
新たな存在。
新たな力。
そして――すべての希望を背負って。
決戦が、始まる。