蒼翼のフリューゲル“Two beyond dimensions.”   作:フルス・シュタイン

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3章㉘終わりと始まりと

光が収まったあと、そこに残っていたのは――崩れゆく存在だった。

サタンの身体は、粒子となって静かに崩壊していく。

巨体はもはや維持できず、輪郭は砂のようにほどけ、空間へと溶けていく。

だが、

その口だけは、まだ動いていた。

「……馬鹿な……」

かすれた声。

「我が……人間に……滅ぼされる……など……」

誰も、言葉を発しなかった。

ユーヤも、エリスも、アダムも、イブも、カインも、アベルも、セトも、ヤハウェも――ただ静かに、その最期を見つめていた。

やがて、サタンは歪んだ笑みを浮かべる。

「……はは……ははは……」

崩れながら、それでも嗤う。

「我が消えたところで……憎しみは……消えたりしないぞ……」

その声は、呪いのように空間へ染み込んでいく。

「ギアノイドも……人間も……いずれまた……争う……」

 沈黙。

「それが今か…後か…それだけの違いだ…憎しみは終わらない…」

 その言葉を、ユーヤが受け止める。

 そして、静かに――だが確かな意志を込めて答えた。

「……憎しみは、乗り越えられるさ」

 サタンの瞳が、わずかに揺れる。

「俺たちのようにな」

ユーヤの視線は、ただ前を見据えていた。

「もし……人間とギアノイドが再び争うことになれば――」

一瞬の間。

「俺が……いや……」

小さく、しかし強く、言い直す。

「俺たちが、止めるさ。今やったことを何度でもするだけさ…」

その言葉に、背後の意志たちが静かに重なる。

サタンは、それを見て――

再び、笑った。

「……できるものなら……やってみろ……」

崩壊は、もう止まらない。

「…まだ我の意思を宿した個体は残っている…不可能……だろうがな……」

最後の言葉が、風に溶ける。

 

そして――

サタンは、完全に消滅した。

静寂が訪れる。

戦いの余韻だけが、空間に残る。

誰かが、深く息を吐いた。

張り詰めていたものが、ゆっくりとほどけていく。

エリスがつぶやく。

「……終わった?……」

その言葉は、確かな実感を伴っていた。

だが、

ユーヤは、静かに首を振る。

「……いや」

視線の先には、もう敵はいない。

それでも――彼の瞳は未来を見ていた。

「違う」

ゆっくりと、言葉を紡ぐ。

「――始まったんだ」

風が吹く。

戦場の残骸を撫で、遠くへ運んでいく。

「人類とギアノイドの……未来が」

その言葉は、静かに、しかし確かに世界へ刻まれた。

光の残滓が消えていく中で、新たな時代の気配が芽吹いていく。

戦いの果てに生まれたもの――それは終わりではない。

始まり。

共に歩むか、それとも再び争うか。

その選択を背負いながら――

物語は、次へと続いていく。

 

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