蒼翼のフリューゲル“Two beyond dimensions.”   作:フルス・シュタイン

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1章⑧光翼解放

警報は、もはや日常になりつつあった。

『ギアノイド群体、出現』

『規模、中規模――大型個体複数確認』

だが、以前とは違う。

「迎撃部隊、展開完了!」

「各機、戦闘配置につきました!」

管制室の声に、焦りはない。

準備は整っていた。

 

格納庫。

フリューゲルが、そこに立っている。

白と青の機体。背部には光の翼を形成するスラスター。

そして各所に装備された武装。

折り畳まれた巨大剣、グラム。

背部マウントの長距離砲、イフリート。

肘部に装着されたスローイングブレードナイフ。

腰部ビームピストル。

これが“完成形”。

ユーヤはコックピットに収まる。

『神経接続、正常』

視界が変わる。機体と一体化する感覚。

「……いける」

『発進準備完了』

ナツキの声。

『今回は全武装の実戦テストも兼ねるわ』

「了解」

『無理は――』

「しないさ」

短い返答。だが、余裕を感じさせる。

『フリューゲル、発進許可!』

一瞬の静寂。

「フリューゲル、出る!」

射出。光の翼が展開する。空が裂けるように加速する。

 

戦場。

国際連合軍防衛部隊がすでに交戦中。

『敵群、接近中!』

『大型個体、三!』

その中心に、白い閃光が突入する。

フリューゲルの最大加速。

一瞬で距離を詰める。

「まずは――」

背部。イフリート展開。長距離狙撃形態。

「落とす」

チャージ。放つ。閃光が空を貫く。

大型個体の一体が――消し飛ぶ。

『一撃……!?』

動揺が走る。だがユーヤは止まらない。

即座に加速、敵陣へ突入。

「次」

ライフル・ビームピストルの同時連射。

精密射撃。弱点だけを撃ち抜く。

小型群体が崩れる。

そのまま。

「――いくぞ」

グラム展開。巨大な剣。光の刃が伸びる。

振り抜く。斬撃が広範囲を裂く。

中型個体がまとめて消える。

『な、なんだあれ……』

国連軍パイロットの声。戦場が、変わる。

大型個体が迫る。

振り下ろされる一撃。

だが、フリューゲルは消える。残像。背後へ。

「遅い」

スローイングブレードナイフ、投擲。生きているように飛び、切り裂く。

さらに接近。腕を突き出す。

「――終わりだ」

インパクトショット。至近距離。粒子を叩き込む。

爆散。大型個体、沈黙。

 

戦場は終盤。

残存個体が撤退を開始する。

『敵群、後退!』

歓声が上がる。だがユーヤは追わない。

「……十分だ」

静かに機体を止める。光の翼がゆっくりと収束する。

 

管制室。

誰もが、言葉を失っていた。

「……これが」

「フリューゲル……」

圧倒的。それ以外の言葉がない。

 

自宅。

エリスは窓の外を見ていた。

空は、もう静かだった。だが。

「……?」

胸の奥が少しだけざわつく。

自分に言い聞かせるように、手を胸に当てる。

その表情は、ただ――帰りを待つ少女だった。

 

フリューゲルが帰還する。夕焼けの空。

そのシルエットは、

 

まるで守護者。

 

【挿絵表示】

 

 

ユーヤは目を閉じる。

「……まだだ」

勝利。だが、それは終わりではない。

次の戦いへ向けた、通過点に過ぎなかった。

 

 

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