蒼翼のフリューゲル“Two beyond dimensions.”   作:フルス・シュタイン

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3章㊴返答

視線が、四体へと集中する。

彼らは、変わらず静かだった。

動揺も、躊躇もない。

ただ――

次の言葉を、選んでいる。

その一言が、世界の未来を決める。

そして、

ギアノイド側の答えが、告げられようとしていた。

 

静まり返った会場に、低く、再度重い声が落ちた。

ゲンゾウが、ゆっくりと口を開く。

「――次元リアクターの核。過去のギアノイドの遺体の返却……それが望みか?」

その一言で、場の空気が凍りついた。

誰もが理解している。

それを実行すれば――次元リアクタープラントは停止する。

エネルギーは枯渇し、文明は崩壊し、やがて人類は滅びる。

否応なく、その未来が脳裏に浮かぶ。

ざわめきは起きない。

代わりに、重苦しい沈黙が、全員を押し潰していた。

だが――

「否」

カインの冷静な声。

静寂を切り裂いたのは、ギアノイド側の声だった。

「否定する」

はっきりとした拒絶。

顔を上げる者が増える。

「過去の同胞の亡骸。あれの所有権は、すでに我々にはないと認識している」

「……は?」

思わず漏れたとある研究者の1人の声が、引き金のように会場を揺らした。

どよめきが、一気に広がる。

ゲンゾウでさえ、わずかに目を見開いていた。

「では……何を望む?」

低く問い返す。

ギアノイドの代表――カインが、一歩前に出た。

「我々の要求は――」

一拍の間。

「次元粒子の、部分的かつ定期的な譲渡である」

空気が、止まった。

「人類の滅びは、我々は望んでいない」

さらに続ける。

「簡潔に言おう。……次元粒子を、分けてほしい」

――どよめき。

今度は、抑えきれなかった。

誰もが同じ結論に至っていたからだ。

(全て返せ。さもなくば滅ぼす――そう来るはずだった。そう予想していた)

だが、提示されたのは――共存の条件。

あまりにも、拍子抜けで。

あまりにも、人類に有利すぎる。

「……量は?」

ゲンゾウが問う。

その声には、わずかな警戒が混じっていた。

カインは迷わず答える。

「人類が生存に必要とする量、その余剰分で十分だ」

再び、ざわめきが広がる。

「定期的な譲渡が確約されるなら、その量は人類側の事情を考慮しよう」

「……!?」

驚愕が、会場を満たした。

――あり得ない。

――何か裏がある。

――でなければ、こんな条件が出るはずがない。

疑念が渦巻く中、カインは静かに言った。

「信じ難いのも無理はない。だが、これは――」

一瞬、視線が遠くを見る。

「“蒼き翼”と協議した結果、我々が選んだ答えだ」

その名に――

空気が、変わった。

蒼き翼。

そこから連想できるものなど一つしかない。

蒼き英雄。

それを知らぬ者は、この場にいない。

人類側の英雄。

終戦へと導いた存在。

そして――その意志が選んだ結論。

“分かち合うこと”。

誰も、言葉を発せなかった。

ただ、沈黙だけが広がる。

その中で、ゲンゾウは静かに目を伏せた。

(……蒼き翼か…)

脳裏に浮かぶのは、一人の少年の面影。自らの孫。

(やはり――この状況を作り上げたのが…)

ゆっくりと、息を吐く。

「あやつめ……」

かすかな苦笑が、口元に浮かぶ。

「とんでもないことを、しでかしおったな……」

だがその目は――

確かに、未来を見据えていた。

 

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