蒼翼のフリューゲル“Two beyond dimensions.”   作:フルス・シュタイン

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3章㊵疑念

ざわめきは、まだ収まらない。

否――むしろ広がっていた。

困惑と警戒、そして微かな期待が入り混じり、会場は異様な熱を帯びている。

その只中で、カインは再び一歩、前に出た。

「更に提案を行う」

その一言で、空気が張り詰める。

「次元粒子の定期譲渡。その過程において――」

静かに、しかし確実に言葉を重ねる。

「我々ギアノイドは、人類が現状有していない技術の提供も可能である。人類側の要望次第ではあるが」

――どよめき。

先ほどとは質の違う、鋭い動揺。

誰もが息を呑む。

「例えば――」

カインの視線が、会場の一角へ向けられる。

「我々が搭乗させてもらった宇宙用移動機械、ならびに地上用移動機械」

一瞬の間。宇宙輸送機と車の事だ。

「あれらの次元粒子使用効率には、明確な“無駄”があると認識した」

ざわめきが、一段と強くなる。

「その修正案、ならびに技術体系を提供することができる」

――会場が揺れた。

驚愕が、今度こそ抑えきれない形で噴き出す。

(効率改善……だと?)

(エネルギー問題の根幹に関わる……)

(それを、無償で……?)

誰もが疑念を抱く。

だが、それ以上に――理解してしまう。

それが実現すれば、人類の技術水準は一段どころではなく跳ね上がる。

カインは、さらに続けた。

「加えて――」

その声音が、わずかに低くなる。

「我々は、有機生命体である人類の構造解析を、すでに完了している」

解析の経緯および方法については述べない。

必要が無いと判断している。

淡々と告げる。

その裏にあるものを、あえて語らない。

解析の経緯について、心当たりがあるのはゲンゾウだけだった。

カインの言葉は止まらない。

「その結果として、人類が現在、治療不能としている疾患――ならびに重篤な損傷の修復に対し、我々ギアノイドの組織を用いることで、代替機能としての補完が可能である」

――静寂。

完全な沈黙が、会場を支配した。

音が消えたかのような、重い無音。

(不治の病……が?)

(治る……?)

(身体の欠損すら……?)

誰一人、すぐには反応できない。

あまりにも、現実離れしていた。

あまりにも――都合が良すぎた。

ギアノイド側は、それ以上は語らない。

だが、

(……すでに実証済み、か)

ゲンゾウだけは、察していた。

しかし、ゲンゾウは疑問を投げかける。

「……なぜだ」

その声は、かすれていた。

「なぜ、そこまでする」

問いは、誰の胸にもあった。

「次元粒子の分与、技術提供、医療技術……」

「いずれも、人類側に利益が偏りすぎている」

疑念が、言葉となって溢れる。

「我々に都合が良すぎる」

「対価として釣り合わない」

そして――核心。

「真意を、お聞かせ願いたい」

視線が、一斉にギアノイドへと向けられる。

カインは、しばし沈黙した。

その沈黙は、拒絶ではない。

選んでいるのだ。

どこまで語るかを。

やがて――

ゆっくりと、口を開いた。

「……我々の真意は――」

その言葉が紡がれる直前。

会場の誰もが、息を止めた。

人類の未来を左右する“理由”が語られる。

 

 

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