蒼翼のフリューゲル“Two beyond dimensions.”   作:フルス・シュタイン

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3章㊷総意

誰もが、言葉を失っていた。

カインの説明は、あまりにも重く――そして、あまりにも鮮烈だった。

蒼き英雄が成し遂げたもの。

ギアノイド過激派の撃破。

そして、人類とギアノイドを繋ぐ“橋”となったこと。

もはや――偉業としか言いようがない。

静まり返る会場の中で。

ただ一人。

ゲンゾウだけが、わずかに口元を緩めていた。

(よくもまあ……ここまでやりおった)

胸の奥に込み上げるのは、驚きでも、呆れでもない。

純粋な――誇り。

(あやつめ……)

かすかに息を吐く。

その目には、確かな歓喜が宿っていた。

その時、

「――我々は」

カインの声が、再び場を引き締める。

「この場において提示すべき情報は、すべて提示したと判断する」

淡々と、しかし揺るぎなく。

「以後は――人類側の判断を待つ」

それだけ告げると。

ギアノイドたちは、一斉に席へと戻った。

まるで、すでに役目は終えたと言わんばかりに。

残されたのは――選択だけ。

ゲンゾウが、ゆっくりと口を開く。

「……しばし、時間をもらおう」

カインは即答した。

「いくらでも待とう」

その一言に、焦りは一切ない。

ただ、信じているようだった。

人類の選択を。

――そして、討論が始まる。

だが、

それは建設的なものとは言い難かった。

「責任はどうする!」

「リスクが高すぎる!」

「いや、これは機会だ!」

「罠かもしれない!」

声がぶつかり合う。

責任の押し付け合い。

決断の先延ばし。

混乱、困惑、希望、疑念――

あらゆる感情が渦を巻く。

そして、

「……いい加減にしろ!」

低く、鋭い声が、それらすべてを断ち切った。

ゲンゾウだった。

その一声で、会場が凍りつく。

「くだらん話はやめろ」

圧が、場を支配する。

「今考えるべきは一つだ」

一歩、前に出る。

「ギアノイドの提案を――受け入れるか、拒否するか」

それだけ。

それ以外は、すべて枝葉だ。

沈黙。

誰も反論できない。

「……今一度、考えろ」

静かに、だが深く響く声。

「ギアノイドという地球外生命体を拒絶するのか」

一拍。

「それとも――」

わずかに視線を上げる。

「蒼き英雄が示した通り、対話を受け入れ、共存の道を選ぶのか」

言葉が、突き刺さる。

「今こそ――決断する時だ」

完全な静寂。

誰もが、己の内と向き合う。

やがて、

「……決をとる」

ざわめきが、わずかに戻る。

ゲンゾウは小さく息を吐いた。

「やれやれ……」

(答えなど、最初から決まっておる)

自らの中では、すでに結論は出ていた。

孫が示した未来。

その光明を、否定する理由など――ない。

「では――」

時間が来た。

ゲンゾウが、宣言する。

「提案を受け入れる場合、賛成を」

表示装置に、結果が集計されていく。

(まあ、ある程度は反対が出るじゃろうな……)

現実的な見立て。

(その時は、抑え込まんとな……)

だが、

「……ん?」

次の瞬間、

ゲンゾウの思考が、止まった。

表示された結果は、

 

――拒否 0

 ――賛成 168(全数)

 

「……なん…じゃと?」

思わず、声が漏れる。

誰もが、同じ表情をしていた。

信じられない、という顔。

だが――

それは紛れもない事実だった。

人類は、今。

一つの答えを選んだのだ。

ゲンゾウは、しばし呆然とし――

やがて、ゆっくりと息を吐いた。

「……まあ」

小さく呟く。

「全員が納得したわけではあるまい」

それでも。

「それでも――」

視線を上げる。

「大きな一歩、か……」

そして、

その場の全てを背負う者として。

はっきりと、宣言した。

「――決はなされた」

立ち上がる。

「次元リアクター管理局所長、並びに人類代表として告げる」

声が、会場全体に響き渡る。

「我々人類は――ギアノイドの提案を受け入れる」

一瞬の静寂。

そして、

「人類は、ギアノイドとの共生を選択する」

その言葉と同時に――

誰かが立ち上がった。

そして、拍手。

ひとつ、またひとつと広がり――

やがて、会場全体を包み込む。

拍手。

拍手。

拍手。

人類の選択が、刻まれた瞬間だった。

無論――

この決断に、すべてが賛同するわけではない。

外では、反対の声も上がるだろう。

混乱も、軋轢も、生まれる。

それでも、

それでもなお――

これは、確かな一歩だ。

未来へと進むための、

最初の一歩だった。

 

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