蒼翼のフリューゲル“Two beyond dimensions.”   作:フルス・シュタイン

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1章⑩異質

警報は、低く鳴っていた。

これまでとは違う、どこか異質な音。

『エネルギー反応、検出』

『降下地点、日本近海』

『……反応数、一』

管制室にざわめきが広がる。

「一体……?」

少なすぎる。だが――

「……異常値だ」

オペレーターの声が震える。

「出力、過去最大反応を上回っています!」

一体で、群体以上。

一見すると人型にも見える黒い異形。

その意味は――

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

格納庫。

ユーヤはすでに機体へ向かう。

「情報は?」

ナツキが答える。

『単体。だが規模不明』

『これまでのデータに一致しない』

「……新型…最適化個体なのか?」

『分からない。でも――』

一瞬、言葉が止まる。

『嫌な感じがする』

珍しい言い方だった。

ユーヤはコックピットへ滑り込む。

『神経接続、正常』

「フリューゲル、出る」

射出。光の翼が展開する。

 

戦場。

日本配属の連合軍バスターアームズ小隊が迎撃に入る。

だが、空は静かだった。敵が、いない。

「……どこだ」

センサーを最大にする。その時――

「――っ!?」

視界が歪む。

“そこにいた”。

突然、目の前に。

黒。これまでのギアノイドとは違う。

金属質の外殻。無機質な形状。

そして――“静かすぎる”。

 

次の瞬間、小隊反応はロストし通信も途絶した。

管制室のモニターには、ただ黒い海と空だけが映っている。

「な、なんだ……?」

若いオペレーターが声を震わせる。

「小隊、応答しろ!返答を!」

連合軍指令室のベテランが必死に呼びかけるが、返事はない。

「全機、スクランブル準備!対象確認!」

別のオペレーターが叫ぶ。

画面には、わずかに揺れる黒い影。

 

次元リアクター管理局の空気が、一瞬で凍りつく。

「……一体で、群体以上の出力……?」

誰かがつぶやく。

「確認中……いや、異常よ。過去のデータとまったく一致しない!」

ナツキが眉をひそめ、椅子から立ち上がる。

「所長どうすれば…」

オペレーターの声がさらに震える。

「落ち着け。まずは状況を正確に把握しろ。」

ゲンゾウが叫ぶが、口調の裏に動揺が見える。

「……一体で、連合軍小隊全滅か」

別のスタッフが息を呑む。

 

フリューゲルが戦域に到着する。

「……一体か」

ユーヤは構える。ライフル。

「――ッ!」

発射。直撃。だが――

「……効いてない?」

装甲に傷一つない。

次の瞬間、消える。

「なっ――」

背後。衝撃。フリューゲルが吹き飛ぶ。

『ユーヤ!?』

「……速い」

姿勢制御、再捕捉。

しかし、視界に入らない。“見えない”。

「どこだ……!」

次の瞬間、上空。振り下ろされる一撃。

回避。だが掠る。装甲に深い傷。

『損傷確認!』

ユーヤは歯を食いしばる。

「やるじゃないか……」

だが、恐怖はない。むしろ、集中が深まる。

フリューゲル、全開。光の翼が広がる。加速、残像。

互いに高速戦闘。

だが――

「……追いつかない」

相手の方が、わずかに上。

それでも――

「なら――」

イフリート展開。チャージ。放つ。直撃。爆発。

煙が晴れると――“無傷”の敵。

「……なに!?」

理解が追いつかない。その瞬間、敵が動く。

一瞬で距離を詰める。ユーヤは反応するが、間に合わない。

衝撃。フリューゲルが大きく弾かれる。

『ユーヤ!!』

ナツキの叫び。

ユーヤは息を吐く。

「……ぐっ⁉…くそっ…」

その言葉には、わずかな動揺が混じっていた。

空に対峙する二つの存在。

白と、黒。光と、影。

均衡は、崩れかけている。

ユーヤは構える。

「……倒せるか」

初めて浮かぶ疑問。

だが、その答えは、まだ出ない。

戦いは、続く。

 

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