蒼翼のフリューゲル“Two beyond dimensions.” 作:フルス・シュタイン
緊急招集。
連合軍バスターアームズ増援部隊が集結する。
辺り一帯の戦力を集中した総力戦。
『全機、包囲展開!』
数十機の量産機。
ユーヤが叫ぶ。
「連合の増援部隊⁉だめだ、下がれ!距離をとれ!」
バスターアームズ増援部隊同時に綺麗な陣形で一斉攻撃を試みる。
弾幕が空を覆い、ビームが閃く。
だが――
黒い異形は、避ける、避ける、全て。
まるでビームの軌道がわかっているかのように。
『当たらない!?』
オペレーターの声が緊張で震える。
「……解析?予測されてる?」
理解できない。
しかし敵は攻撃をやめない。
一瞬の接近、一撃。
一機、撃墜される。
『くそっ!』
連合軍機パイロットの叫び。
連携は崩れ、包囲は意味をなさない。
「散開しろ!」
ユーヤの声も必死だった。
だが遅い。
次々と機体が撃ち落とされていく。
「……まずい」
フリューゲルが前に出る。
「俺が引き受ける」
『ユーヤ!無茶よ!』
ナツキが叫ぶ。
「他に手がない」
即答するユーヤ。
加速。光の翼が広がる。
白と黒。高速で交錯する戦場。
敵の動きを追う。
「……捉えた!」
イフリート、最大出力。
発射。直撃。爆発。
――しかし。
そこに、敵はいない。
「……!」
横から衝撃。
フリューゲルが大きく弾かれる。
『損傷拡大!』
オペレーターの声。
増援部隊は大打撃。
残存戦力は既に後退を始めていいる。
残るのは、フリューゲルのみ。
「……マジかよ…」
ユーヤは深く息を吐き、姿勢を立て直す。
だが、戦況は最悪だった。
空は、静まり返っていた。
フリューゲルと、黒い異形。
互いに睨み合うように、対峙する。
「……来い」
ユーヤが握る操縦桿に力を込める。
瞬間、白と黒―フリューゲルと異形が高速軌道を開始した。
光の残像が空に引かれ、二つの存在は互いに高速で交錯する。
ユーヤはライフルを握り、狙いを絞る。
「ここだ!」
引き金を引く。
ビームが放たれる。
しかし、掠る。効果は薄い。
「ちっ……!」
敵が急速接近してくる。
(しまった、距離が詰まりすぎた!)
右手のライフルが強烈な衝撃で弾き飛ばされる。
無意識に左のライフルを構えるが、返しざまにまたも衝撃が襲い、左手ごと吹き飛ばされる。
ライフルを落とす。
体制を整えつつ、ユーヤはナイフを投擲する。
――当たる!
だが紙一重で敵に交わされ、叩き落される。
「嘘だろ……」
再び、黒い異形が急接近する。
ユーヤの呼吸は荒く、腕も足も痛む。
黒い異形の追撃。
ビーム照射。
「――っ!」
反応するも、間に合わない。
直撃。
コックピットに衝撃が走る。
「ぐああっ……!」
血が滲む視界。
『ユーヤ!?応答して!』
ナツキの叫びが無線越しに響く。
「……まだだ」
ユーヤは意識を繋ぎ止め、フリューゲルを立て直す。
「終わってない」
再び構える。
グラム展開。
「――ッ!」
光の刃が振り抜かれる。
初めて、わずかに傷が入る。
「……通った!」
しかし次の瞬間、敵が反応する。
速度が跳ね上がり、爪のような腕から連撃が襲う。
「なっ――!」
回避しきれない攻撃。
装甲が剥がれ、金属が軋む音。
『損傷限界!』
オペレーターの必死の報告は響く。
それでも、ユーヤは突っ込む。
最大加速。
インパクトショット、全力の一撃。
直撃するも、弾かれる。
「……!」
そして。
一瞬の隙を突かれ、敵の一撃が胸部を貫く。
『――――』
無線も音も、消えた。
視界が揺れ、世界が揺らぐ。
「……あ……」
機体が沈む。
光の翼は消え、フリューゲルは落下する。
『ユーヤ!!』
叫びは届かない。
地面に激突。
爆煙と粉塵。
静寂だけが残った。
黒い異形は、空に浮かんでいる。
追撃はしない。出来ない。
撃破には至らなかったが、フリューゲルのインパクトショットは確実にダメージを与えていた。
静止。
まるで――自身の損傷状態を確認しているかのように。
数秒の後、反転。その場を去る。
次元リアクター管理局管制塔
オペレーターが安堵した声でつげる。
「敵ギアノイド去っていきます…戦闘継続は困難と判断したかと…」
安堵の雰囲気が流れる管制室。
ゲンゾウが叫ぶ。
「ぼやっとするな!フリューゲルの状態を確認しろ!パイロット保護が最優先だ!」
「はっはい!」
ゲンゾウは表情にこそ出さなかったが、孫の状態が気がかりだ。
ナツキも心配の表情を浮かべる。
「ユーヤ…」
一方。
大破したフリューゲルの中で、ユーヤは血を流しながら も、わずかに意識を保っていた。
「……まだ……終わって……ないぞ……」
かすれた声。
しかし、強い意思が宿る。
戦いは、痛み分け、いや、敗北に終わった。
だが、ユーヤの瞳には、まだ光が残っていた。
それでも――意識が――消える。