蒼翼のフリューゲル“Two beyond dimensions.” 作:フルス・シュタイン
警報は――突然だった。
『ギアノイド反応、確認!』
次元リアクター管理局。
オペレーターたちが、一斉に動き出す。
「規模は!?」
『……小規模です』
一瞬だけ、空気が緩む。
だが。
『ですが……反応が、異常の個体がいます』
その一言で、再び緊張が走る。
スクリーンに映し出される敵影。
数は少ない。
だが――
「……なんだ、あれは」
誰かが呟く。
形状が違う。
これまでのギアノイドとは、明らかに異質。
より鋭く。
より細く。
無駄がない。
まるで――
「……戦うためだけに、最適化されている?」
その言葉に、誰も反論できなかった。
ユーヤは出撃の準備を済ませていた。
「ユーヤ!」
ナツキの声。
「行ける?」
短い確認。
だが、その奥にある信頼は重い。
「当然だ」
即答。
迷いは、ない。
格納庫。
蒼い機体――ブラウフリューゲル。
翼が静かに展開する。
「発進シークエンス、開始」
機体が光に包まれる。
そして――
「――ブラウフリューゲル、出る!」
射出。
蒼い閃光が、空へと解き放たれる。
うごめくギアノイドの群れ――その中心に、黒い異形が鎮 座していた。
「じゃまだ!」
ユーヤの声と共に、ブラウフリューゲルが砲門を展開する。
ビームと弾丸が空中を裂き、雨のように降り注ぐ。
小型のギアノイドは瞬時に塵と化す。
だが――黒い異形は微動だにしない。
光を浴びても、その影は揺らがず、ただ威圧だけを放つ。
戦場が、一瞬、静止したかのような錯覚に包まれる
だが――
次の瞬間。
“消える”。
「――速い!」
ユーヤの目が見開かれる。
違う。
これまでとは、明確に。
速い。
交錯する。
ブレードライフル。
斬撃。
しかし――
当たらない。
「避けた……!?」
ギアノイドが回避する。
ただの反応ではない。
“予測している”動き。
本来、学習しないはずの存在が。
反撃が来る。
死角。
背後。
衝撃。
ブラウフリューゲルが弾かれる。
『被弾!軽微ですが…』
管理局オペレーターが報告する。
管理局管制塔に緊張が走る。
「……今のは」
ユーヤの表情が変わる。
「狙ってきた」
偶然ではない。
弱点、隙を的確についてくる。
深く息を吐く。
「…戦闘の癖を読まれたのか?」
まるで前回倒した奴から学習したかのように。
瞳が、研ぎ澄まされていく。
「厄介な…」
静かに、闘志が灯る。
応戦する。
ブレードビット展開。
三方向からの同時攻撃。
だが。
すべて、紙一重で回避される。
さらに――
逆にビットが叩き落とされる。
「……マジかよ…」
理解が、追いつかない。
気合を入れる。
ユーヤの動きが変わる。
加速。
限界へ踏み込む。
翼が光を引き、残像が空を裂く。
その中で。
“読む”。
敵の軌道。
思考の癖。
次の一手。
ブレードライフル。
一閃。
直撃。
初めての、確かな手応え。
だが、敵は、崩れない。
耐える。
そして――
即座に反撃。
さらに速い。
さらに鋭い。
『機体バランス崩壊!』
「……っ!」
国連軍機が援護に入る。
『援護する!』
だが。
一瞬。
本当に一瞬で――撃墜。
速すぎる。
対応する暇すらない。
ユーヤは即座に判断する。
「下がれ!俺が相手をする。戦線を維持しろ!」
小型のギアノイドはまだ戦域に残っている。
戦線を崩すわけにはいかない。
気持ちを切り替える。
ソードブラスター構え。
狙撃。
あえて外す。
誘導。
回避先を限定する。
そこへ――
レールキャノン。
全門同時発射。
直撃。
効いている。
だが、まだ向かってくる。
一体、撃破。
次元リアクター管理局オペレーターが叫ぶ。
『出力上昇、機体負荷増大!』
ユーヤの呼吸が荒くなる。
まだ戦える。
だが、余裕は、確実に削られている。
そして、決断する。
「……ケリをつけてやる」
翼、展開。
全武装、待機。
だが、フルバーストは使わない。
見られている。
観測されている。
“学習される”。
「……なら」
近接。
速度勝負。
突撃する、
蒼い閃光が、敵の間を縫う。
斬る。
撃つ。
蹴る。
すべてが一つの流れとして繋がる。
圧倒的操縦センス。
人の限界を、踏み越えた動き。
距離を詰める。
右腕――インパクトショット改。
炸裂する。
「――終わりだ」
接射。
爆発。
敵が消滅していく。
静寂が広がる。
戦場が、止まる。
だが、誰一人として、安堵していない。
違和感を感じる。
「……何なんだ、アイツ」
ユーヤの呟き。
あれはもう。
これまでのギアノイドではない。
“別の何か”だ。
空を見上げる。
静かな空。
だが――
その奥に。
確実に、“何か”がいる。
進化している。
こちらを見ている。
観測している。
そして。
次は、もっと強くなる。
その予感がする。