蒼翼のフリューゲル“Two beyond dimensions.”   作:フルス・シュタイン

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1章㉒戦略の綻び

会議室は荒れた空気に包まれていた。

「あり得ない!」

机を叩く音が響く。各国代表の表情は険しい。

「“学習するギアノイド”だと?」

「これまでの前提が、完全に崩れている!」

「学習というより、最適化ということだが…」

「どっちでもいい!」

怒号。焦燥。そして恐怖。

だが、現実。

巨大スクリーンには戦闘記録が映し出される。

ブラウフリューゲルでさえ苦戦した映像――その一瞬一瞬が、現状の深刻さを物語っていた。

「従来戦力では対応不可能だ」

「量産機は完全に後手に回っている」

「このままでは、防衛線は維持できない」

誰も否定できない現実。

結論を出す。

「……一点集中だ」

誰かが呟く。

「ブラウフリューゲルを中心とした戦術に切り替える」

会議室が静まる。その意味は明白だ。

「……一機に頼るというのか?」

「他に手はあるか?」

沈黙。ない。

自然と全員の視線が、ゲンゾウに集まる。

「どう考える」

短い問い。

ゲンゾウはゆっくりと目を閉じる。

「……危ういの」

静かな声。

「一機に戦局を預けるなど、戦略とは呼べん」

その通り。だが。

「しかし」

目を開く。

「現状、それしか手がないのも事実じゃ」

少し間が空く。

「ただし」

声が鋭くなる。

「ブラウフリューゲルを“消耗品”として扱うなら――」

一瞬の間。

「その瞬間に、終わりじゃ」

誰も反論できない。

以下の項目が決定された。

・ブラウフリューゲルを中心とした防衛戦術へ移行

・量産機は支援・時間稼ぎに特化

・新型ギアノイドのデータ収集を最優先

 

決まった。“依存”が、ここに明確になった。

 

一方、そのころ格納庫

整備中のブラウフリューゲル。傷は浅い。だが内部ログは正直だ。

『神経負荷、増大傾向』

『反応速度、限界域に接近』

整備員たちが顔を見合わせる。

「……これ、人間が扱うレベルじゃないぞ」

 

ユーヤはベンチに座る。目を閉じる。眠っているわけではない。ただ、動かない。

「……大丈夫?」

エリスの声。隣に座る。

「……ああ」

短い返事。だが、少しだけ遅い。

「無理してる」

エリスは責めるのではなく、静かに見守る。

「してないよ」

「してる」

即答。ユーヤは少し苦笑する。

「……ちょっと疲れただけだよ…」

「…うん」

 

少しの沈黙。エリスがそっと肩に触れる。

「……一人で背負わなくてもいいよ…」

小さく、でも強い言葉。

ユーヤは目を伏せる。

「……一人じゃないさ」

視線を上げる。格納庫。整備員。仲間。そしてエリス。

「でも」

「やるのは、俺だ」

エリスは何も言わない。ただ手を握る。強く。

「……じゃあ」

少し笑う。

「終わったら、また出かけよう」

ユーヤは少し驚く。

「……またか」

「うん」

「約束したでしょ」

ユーヤは少し笑う。

「……ああ」

 

警報が、すぐに鳴る。

まるで、その約束を試すかのように――

『新たなギアノイド反応!』

『……複数、同時出現』

 空気が凍る。攻勢は、止まらない。

 

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