蒼翼のフリューゲル“Two beyond dimensions.” 作:フルス・シュタイン
警報は、連続して鳴り響いていた。
『ギアノイド反応、複数確認!』
『前回個体に酷似したもの、同時出現です!』
管制室の空気が張り詰める。
スクリーンに映る敵影。
一つではない。二つでもない。五つ。
すべて――“あの型”。
「……ふざけてるな」
誰かが呟く。冗談ではない。
あの黒い異形が五体。
戦場の均衡が、今まさに崩れようとしていた。
格納庫。
ブラウフリューゲルが静かに佇む。その前に立つユーヤ。
「……来たか」
短く呟く。
「ユーヤ」
エリスが呼ぶ。振り向く。
少し不安そうな顔。だが、信じている目がそこにあった。
「……大丈夫」
ユーヤは自分に言い聞かせるように言う。
「すぐ戻るさ」
エリスは小さく頷く。
「……うん」
一歩近づき、そっと手を重ねる。
「待ってる」
それだけ。
それだけで十分だった。
発進シークエンスが始まる。
「――ブラウフリューゲル、出る!」
蒼い閃光が、戦場へ駆ける。
戦線はすでに崩れかけていた。
連合軍機は次々と撃墜される。速すぎる。強すぎる。
単体の戦闘力が高すぎる。
「……全員下がれ!」
ユーヤが叫ぶ。
「ここは俺がやる!」
対峙する。
五体の異形。
それぞれ異なる動き。包囲され、逃げ場はない。
「……いいさ」
ユーヤは静かに息を吐く。
「全部、相手してやるよ」
一斉に襲い来る五方向の攻撃。
普通なら回避不可能。だが、ユーヤは動く。
加速――限界を越えた機動。
紙一重で避ける。
同時にブレードビット、スローイングブレードナイフ改、
全射出。
戦場が、刹那のうちに光と斬撃に染まる。
圧倒されない。
一体を斬る。もう一体を撃つ。
だが、終わらない。残りが襲う。休む暇はない。
「……っ!」
被弾。装甲が削れる。
『ダメージ軽微!』
だが、確実に消耗している。
負荷が増加する。
『神経負荷上昇!』
警告。視界が一瞬、歪む。
「……まだだ」
歯を食いしばる。
「……崩す」
ユーヤは冷静に分析する。
連携こそが強さの本質。なら――断ち切る。
突破口を開こうとする。
一体に突撃。あえて深く踏み込む。
他の四体が動く。
その瞬間、レールキャノン全門同時発射。牽制。
わずかな遅れ。
その隙に、ブレードライフル一閃。出力を上げ一気に断ち切る。
一体撃破。
(前にも戦った個体に酷似している…ならば、再生の暇すら与えず仕留める!)
既に戦ったことのある個体。
ユーヤも学習している。
切り札であるヘクステッドキャノンを使わずに仕留める算段をつける。
砲門の一斉展開で弾幕をはる。
当てることが目的ではない。
包囲が乱れる。ほんのわずか。だが、それで十分。
「……もらった!」
速度を上げる。さらに上。限界を超える。
ライフルを即座に大剣ヴルトガンク2刀に持ち替える。
近接戦闘で一気に勝負を決めに行く。
急速接近。
二体目に左のヴルトガンクが突き刺さる。
三体目が背後より迫るが予想の範疇。
背部ガトリングの斉射。
足が止まる。
隙は見逃さない。即座に反転。
右のヴルトガンクで貫きとどめを刺す。
ヴルトガンクごと爆散する。
だが、残り二体。動きが変わる。
より慎重に、より鋭く。
「……あと2体!」
最終局面を迎える。
ユーヤは深く息を吐く。疲労が蓄積する。だが止まらない。
「……来いよ」
再びブレードライフルとブレードブラスターを構える。
二体同時突撃。真正面から受ける。
ブレードライフルがぶつかる。火花。押し切る。
敵を弾き飛ばす。即座に判断。
ブレードライフルを手放し、加速全開、距離をつめる。
インパクトショット改による接射。一体消滅。
残り一体、逃げようとする。
「逃がすか!」
ブレードブラスター狙撃。直撃。倒しきれない。
しかしこの隙を逃さない。
「フルバーストショット!」
ブレードブラスター、レールガン(レイブン)、収束ビーム(レーヴァテイン)を叩きこむ。
最後の一体を蜂の巣にする。
爆散。
静寂が訪れる。
戦場が止まる。
だが、歓声はない。誰もが理解していた。
これは、“勝利ではない”。
コックピット内、ユーヤ。呼吸が荒い。視界がわずかに揺れる。
「……やった…」
だが、その言葉は、少しだけ無理をしていた。
蒼い機体が空に立つ。
だが、その輝きは、ほんのわずかに――揺らいでいた。