蒼翼のフリューゲル“Two beyond dimensions.” 作:フルス・シュタイン
それは、異様だった。
『新たなギアノイド反応!』
だが、数は多くない。
無数の小型ギアノイド、その中心に――三体。
しかし。
その報告に、誰一人として安堵はしなかった。
「……来るぞ」
うごめくギアノイド。
その中心に鎮座する、三つの影。
左右の個体は以前の人型に近い形。
さらにその中心に位置する一体だけが、明らかに異質だった。
より大きく。
より重く。
球状に触手ようなものが生えた形状。
そして――異様なまでに“静か”。
存在しているはずなのに、気配が希薄だ。
「……あれは⋯新型か⋯」
ユーヤの直感が、警鐘を鳴らす。
管理局管制塔に通信を飛ばす。
「雑魚は連合軍機に任せていいか⁉」
ゲンゾウが応答する。
「構わん!気にせず親玉に集中しろ!」
ユーヤが短く返答する。
「…了解」
両脇の二体が動く。
だが、その挙動はこれまでのギアノイドとは違っていた。
連携ではない。
もっと明確な意志。
――“指示に従っている動き”。
「……指揮をしている?」
あり得ない。
だが、目の前の現実がそれを否定しない。
戦闘が開始される。
ユーヤが先に仕掛ける。
加速。
いつも通り――いや、それ以上。
神経接続を限界まで引き上げ、一気に間合いを詰める。
だが、敵は動じない。
回避も迎撃も、すべてが一瞬早い。
まるで――
“先を読まれている”。
体勢を崩される。
「くっ…」
体勢を整えつつブレードビット、射出。
無数の刃が軌道を描き、敵を包囲する。
だが。
全て、正確に迎撃される。
「……っ!」
死角からのスローイングブレードナイフ改による追撃。
しかしそれすらも、紙一重で回避される。
完全に、動きを見切られている。
中央の個体は、なおも動かない。
ただ、そこに在るだけ。
それだけで。
戦場のすべてが、その掌の上にあるかのようだった。
「……まずい」
言葉とは裏腹に、背筋に冷たいものが走る。
だが、攻める
ユーヤは決断する。
狙うべきは、中央。
指揮系統を断つ。
それ以外に勝機はない。
突撃。
だが、二体が即座に割り込む。
完璧な防御。
寸分の狂いもない動き。
そして――反撃。
強烈な衝撃。
ブラウフリューゲルの機体が、大きく弾き飛ばされる。
管理局オペレーターが叫ぶ。
『ダメージ中程度!』
別のオペレーターがつぶやく。
『…初めてだ…ここまで、ブラウフリューゲルが一方的に押されるのは…』
『神経負荷、危険域接近!』
警告音が耳を刺す。
視界が歪む。
思考がわずかに遅れる。
反応速度が、確実に落ちている。
「……まだだ」
ユーヤは歯を食いしばる。
ユーヤは目を細める。
敵を見る。
動きの流れ。
攻防のリズム。
そして、その中心。
「……あいつが、全部やってる」
確信。
あの“静かな個体”こそが、戦場そのものを制御している。
「中央のアイツが、最適行動を指示しているのか⁉」
一点突破、それしかない。
決める。
全力。
翼、全開。
推進器、限界出力。
最大加速。
一直線の突破。
迎撃に入る二体。
だが――読める。
わずかな遅れ。
その隙間を縫う。
回避。
すり抜ける。
そして。
中央へ。
到達する。
目前。
異形。
その個体が、初めて動く。
――速い。読まれた。
これまでとは、次元が違う。
ムチのような触手が正確に振るわれる。
「……ッ!!」
反応が、間に合わない。
直撃。
衝撃。
ブラウフリューゲルが、大きく弾き飛ばされる。
明かに劣勢。
空中で、かろうじて体勢を立て直す。
だが。
押されている。
完全に。
(……勝てない…?)
一瞬。
その言葉が、脳裏をよぎる。
三体が並ぶ。
静かに。
確実に。
逃げ場を削り取るように、距離を詰めてくる。
その圧は、これまでの敵とは明らかに違う。
そしてユーヤは、初めて理解する。
これは――
“今までの敵ではない”。