蒼翼のフリューゲル“Two beyond dimensions.”   作:フルス・シュタイン

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0章③託されたもの

あの日の別れの直前に――

関谷リョウイチは、ひとつだけ“未来”を託していた。

まだ幼いユーヤに対し、彼はフリューゲルの存在を語っていたのだ。

そして制御できるのはユーヤだけだということを。

 

「ユーヤ…お前に託す…これはお前にしかできないんだ…」

 

ただし、その核心――ブラックボックスの正体だけは伏せたまま。

それでもユーヤは理解していた。

それが人類の希望であることを。

フリューゲルが、人類を守る可能性を秘めた“特別な機体”であることを。

 

そして時は流れ、ナツキが次元リアクター管理局の副指令へと就任した頃――

ユーヤは自ら、その運命へと踏み出す。

「……俺、フリューゲルに乗る」

迷いのない言葉だった。

当然、ナツキもゲンゾウも強く反対する。

それはあまりにも危険で、あまりにも残酷な道だと分かっていたからだ。

だがユーヤは引かなかった。

何度拒まれても、何度でも志願し続ける。

その意志の強さに、やがて二人は折れることになる。

こうして、フリューゲルパイロット候補としての訓練が始まった。

 

最初に行われたのは、シミュレーターによる操縦適性試験。

だがその結果は、関係者すべてを沈黙させるものだった。

常識を超えた数値。

射撃精度、近接戦闘センス、反応速度――そのすべてが、熟練パイロットを遥かに凌駕していた。

「……これは、天才だな」

誰かがそう呟く。

だが別の誰かは、言葉を失っていた。

それは“優秀”などという言葉では片付けられない、異常な領域。

まるで最初から“それに適応するように作られている”かのような適性だった。

とはいえ、それはあくまでシミュレーター上の話。

実機――フリューゲルとの接続起動は、いまだ許可されていない。

その危険性を、誰もが理解していたからだ。

 

一方で、世界は奇妙な静寂に包まれていた。

リョウイチが命を落としたあの戦いは、「ギアノイド第一次大規模侵攻」と名付けられる。

そしてその戦いを境に――ギアノイドの襲来は、ぴたりと止んだ。

あまりにも不自然な沈黙。

国際連合は、あの侵攻こそがギアノイドの本体であり、すでに脅威は排除されたのではないかと結論づける。

世界には、安堵の空気が広がっていった。

だが――

次元リアクター管理局だけは違った。

「あれは……先兵に過ぎない」

そう確信していた。

静寂は終わりではない。

嵐の前触れに過ぎないと。

そして――

十年の時が流れる。

少年は成長し、運命は再び動き出す。

すべてが交錯する、本編の幕が――静かに上がろうとしていた。

 

 

登場人物紹介

 

関谷ユーヤ

 

本作の主人公。

次元リアクター管理局に所属する少年パイロット。幼少期から天才研究者の父リョウイチに育てられ、彼の遺した試験機「フリューゲル」の唯一の適合者となる。冷静で優しい性格だが、内には強い責任感を抱えており、「自分が戦わなければ誰かが死ぬ」という思いから最前線に立つ。

 

 

関谷エリス(旧姓 エリス・アークライト)

 

本作のヒロイン。

金髪ツインテール。リボンで髪を結んでいる。

ユーヤの幼なじみであり、最も近い存在。穏やかで優しい少女だが、芯は強い。通信制教育を利用しており、普段はユーヤと共に静かな日常を過ごしている。

 

 

朝倉ゲンゾウ(祖父)

 

次元リアクター管理局長。

ナツキの父であり、ユーヤの祖父でもある老人。普段は冷静沈着な指揮官として振る舞うが、ユーヤの前では孫を心配する優しい一面を見せる。

 

 

関谷ナツキ(母)

 

次元リアクター管理局副指令。

実務面を支える有能な女性士官。ユーヤを戦わせることには最後まで葛藤しているが、それでも彼を支え続ける。

厳しさと優しさを併せ持つ姉のような存在であり、エリスの相談相手でもある。ユーヤとエリスの関係を誰より理解している人物。

 

 

関谷リョウイチ

 

故人。

フリューゲルを生み出した天才研究者。次元粒子技術の第一人者であり、神経接続システムを完成させた人物でもある。

ギアノイド第一次大規模侵攻で死亡。

 

 

 




ようやく本編に入れます。SFってどうしても前置きが長くなりがちですよね。
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